イヨネスコ『授業』
楽園王
サブテレニアン(東京都)
2024/12/17 (火) ~ 2024/12/21 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
イヨネスコ「授業」は、楽園王を始め いくつかの劇団 公演で観ている。不条理をいかに不条理劇として観せるか、それをどう味わい深く伝えるかは、相当難しいのではないか。本公演も説明にあるように、構成を大きく分断し 戯曲の後半部分を先に、前半部分を後に上演して不条理劇の不条理を倍増させる工夫をしている。
自分では、難解?もしくは自由過ぎると敬遠しがちだった不条理劇の魅力を感じることが出来た。今作は、不突合・不調和といった状況下における可笑しみ、同時に恐怖を感じた。また後半部分を先に表現することによって、不条理の(本)質というよりは、ループすることで不条理の連鎖なり重層、その量を意識させられた。まさに この世は不条理で満ち満ちているといった印象である。
演出が好い。出演者の衣裳や行為(動き)、そして音楽の雰囲気が前半(最初の生徒)と後半(二番目の生徒)とでは違って、同じ不条理の光景(場景)でも その印象が異なる。この外観的な中に、不安・不穏もしくは苛立ち・怒り といった表現し難い感情が透けて見えてくる。勿論 生徒が鎖の付いた手錠をしていることは奇異であるが、教授と生徒という立場の違いを表しているのだろう。
(上演時間65分) 12.23追記
トリオ
NonoNote.
シアター711(東京都)
2024/12/18 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
小劇場で笑劇を至近距離で観て楽しむ、そしてラストは衝撃的な そんな洒落の効いた公演。劇中とは言え、1970年代の寂れた劇場の楽屋や音曲漫才の雰囲気が味わえる。3者三様の歌声が軽快なリズムに乗せてこだまする。何と無くではあるが、かしまし娘を連想してしまう。楽器を奏でながら面白可笑しい話、そして時事ネタを盛り込む といった話術が懐かしい。
物語は 説明にある通り、舞台では息の合った漫才を披露する3人だが、楽屋へ戻ると日々 大喧嘩。原因は「トリオ」というあだ名の副支配人・鳥居一男の奪い合い。そして遂には刃傷沙汰へ…。表情豊か 誇張した演技が見どころ。小笑・爆笑など笑いの渦だが、時にオルゴールから流れる ゴンドラの唄がしみじみと。ちなみに この歌、大正時代の歌謡曲で、芸術座公演『その前夜』の劇中歌として松井須磨子が歌ったのは有名。自分は、映画「生きる」で主人公を演じた志村喬が この歌を口ずさみながらブランコをこぐシーンを思い出す。
音曲漫才師の3人は、それぞれ苦労を重ねて生きてきた。そして やっと一緒になりたい男を見つけたが、それが何と皆同じという悲劇。ゴンドラの唄の歌詞は♫恋愛讃歌のような、たとえ気心知れた仲良しであっても恋の路は譲れない。そこに普遍的とも思える「愛情」と「生活」が滲み出ている。
今回の演出は 武藤晃子女史。10年ほど前 この演目(LEMON LIVE vol.10公演)に役者として出演しているが、今回は演出を担当している。そして当日パンフには、NonoNote.主宰の璃音さんを称え、そして激励するような言葉を綴る。ノンストップ女3人芝居、そこに日替わりゲストが加わり、実に味わい深く紡いでいく。観応え十分、ぜひ劇場で。
(上演時間1時間30分)
ちち
座・だるま水鉄砲
小劇場 楽園(東京都)
2024/12/18 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。この旗揚げ公演は観応え十分。
増澤ノゾム氏の脚本・演出による記憶・追想を辿るような物語…人が持っている表し難い感情を上手く表した人間劇であり家族劇。登場人物は男女4人、それぞれの性格を繊細に 立場を丁寧に描き、今ある状況を巧みに描き出す。人が抱えた問題は、その時の生活状況や社会情勢によって影響を受ける。そして思わぬ行動に出てしまうこともある。その心情が痛いほど伝わる。そして 紡ネン を介して蟠りが少しずつ溶けていくような。
役者陣の演技が圧巻。何処にでもいそうな人物をさり気なく演じる、その自然体の演技が物語へ巧く誘う。冒頭から一瞬のうちに引き込まれる。登場人物が4人しかいないことから、それぞれの関係性が鮮明に そして濃密に描かれる。これによって 1人ひとりの人間性が浮き彫りになってくる。
物語は、行方不明だった父親が見つかり 兄弟のところに引き取られたところから始まる。兄弟が覚えている父は暴力的な人だったが、目前にいる男は 記憶の中の父とは別人の 天使のよう。そして兄の恋人も巻き込んで という設定が妙。
(上演時間1時間35分) 追記予定
BACK FIRE WARS
KOTH
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2024/12/17 (火) ~ 2024/12/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
当日パンフにKOTH主宰の柾木信広 氏が「STAR WARSオタクの友情」がテーマと記しているが、まさにその通り。世の悪戯・悪事 対 STAR WARSオタクを対峙させるが、大立ち回りのようなアクションがあるわけでもない。あくまで友情 その絆の物語である。
説明にあるジェダイナイトに憧れ、真摯にジェダイの掟を守る真田・清水・小島の仲良し三人組。レイヤ姫のような女性に出会ったことで、三人の絆に陰りが見え、仲違いをする話。掟をないがしろにし始めた2人と決別して新たな仲間 その怪しいサークルの話。それぞれの話が緊密に結びついて展開するわけではなく、ニュース等でよく話題になる典型的な悪を点描する。最終的に その矛先は政府に向かう。
劇的というよりは淡々と進み、大きな盛り上がりといった場面がなく印象が弱い。もう少し対決色を強める等、観せ場を作ってほしかった。全体的に平板で、タイトルにSTAR WARSが付いている割にはダイナミックさに欠ける。
「STAR WARSオタク」ではあるが、オタク=変人もしくは世間知らず といった偏見ではなく、仕事に就き 社会人としての常識は持ち合わせている。それゆえ突拍子もない物語ではなく、むしろ日常に見られる光景が描かれている。
なお「STAR WARS愛」が伝わるような情報、その蘊蓄が随所で語られるが 分からなくとも それなりに楽しめる。そして某社への批判的なことにも踏み込んでいるが…。
(上演時間1時間30分)【Bチーム】 12.20追記
昭和歌謡コメディVol.20
昭和歌謡コメディ事務局
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/12/17 (火) ~ 2024/12/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「江藤博利プロデュース『昭和歌謡コメディVol.20』笑い続けて丸10年!遂に最終回」…観てきた。いつも通り 1部は芝居、2部は歌謡ショーという二部構成で、最終回だからと言って気負うところはない。観(魅)せて笑わせる いつものスタイルにホッとする。
これも いつもの光景であるが、コアなファンが熱心に応援している。お揃いの法被もしくはTシャツを着込んで 声援を送り、紙テープを投げ サイリウムライトスティックを振る。自分も2014年3月の旗揚げ公演から断続的(今回含め12公演)に観ており、ずいぶんと楽しませてもらい 癒されたものである。理屈ではなく 如何に楽しむか、そして演者と観客が一体となって会場を盛り上げる。そんな公演が見納めになるとは残念だ。
感謝を込めて★5つ。
(上演時間2時間20分 途中休憩15分含む)
荒野に咲け
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/12/15 (日) ~ 2024/12/24 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い。
或る事件や伝承的な出来事といった題材ではなく、身近な家族・親戚 いや人間の心に蠢く羨望や嫉妬といった思いを描く。それを家族崩壊と街の衰退を重ねるように紡いだ群像劇。本作は劇団創立25周年記念ということもあり、あえて劇団員のみの公演にしたと。
この劇団の特長である仕掛けのある舞台装置、本作でも その迫力と印象付けといった効果は十分に発揮している。それが 新作公演とはなっているが、過去公演からの繋がりのようで 地続きの光景を思わせる。物語の中心人物 篠塚香苗役を大手忍さんが演じているから、なおさら その思いを強くした。話としては、ありふれた と言っては語弊があるかもしれないが、桟敷童子公演としては実にリアルだ。当日パンフに「オリジナルの物語であるが、モデルはある」と。ただ、話の肝になるであろう父親の行為、その動機なり理由の描き方が足りないような気がする。
ちなみに 少しネタバレするが、タイトル「荒野に咲け」の「荒野」とは「この世」の意、まさに地に足をつけたような公演。社会(派)的なダイナミックさはないが、人それぞれの感情が弾け飛ぶ。観応え十分。
(上演時間1時間55分 休憩なし) 12.20追記
S(さりげなく)F(fiction)~知る由もない彼らの人生~
藤一色
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/12/14 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「藤衛門」観劇。
時間軸の長い、というか悠久の時の中に無常と悲哀を紡いだ一人芝居。チラシにもある通り、藤衛門は江戸時代の からくり、機械人形である。性別があるわけではないが、「彼」と書かれている。そして彼を蔵で見つけたのが小学4年生だった少女 タビノちゃん。
物語はタビノちゃんやその友達と過ごした変哲もない日々、それを藤衛門が回想する形で展開していく。機械人形でありながら感情を持ち合わせたような、現代でも開発できていない高度なロボットである。藤一色が掲げる「遠くないファンタジー」、そこで描かれているのは「ささやかで切実な異聞奇譚」…珠玉作。
一人芝居であることから必然的に一人称で語る。ロボットであるから壊れなければ、ずっと一緒、しかし命ある人間は いずれ死ぬ。チラシには「いつか時が流れて必ず辿り着く、少しだけ不思議な、普通だった頃のお話」とある。ラストに流れる音楽「美貌の青空」(作曲:坂本龍一)が少し切ないような余韻を残す。
(上演時間50分)
明日、宇宙人になります
劇団銅鑼
銅鑼アトリエ(東京都)
2024/12/14 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昨年の試演会「ガラスの動物園」が良かったので、今年も観にいったが とても面白かった。説明の「人間が地球外生物になる?世界中が大騒ぎ・・明日、宇宙人になるかもしれないこの時に…」からSFを連想したが、もっと最近の出来事を描いているように思えた。未知ゆえに その対処法が分からず右往左往、そして混乱・迷走した施策を思い出す。
とても劇団員補とは思えない演技、当日パンフを見ると他の劇団研究所出身者が多く、その実力は肯ける。登場人物は5人、それぞれのキャラや立場などをハッキリ立ち上げ、多様な人間性を描き出す。明日、宇宙人になるかもしれない不安・恐怖といった状況の中で、思い残したこと 気掛かりなことを味わい深く紡ぐ。究極的なことを言えば余命宣告されたような、しかし物語はそこまで追い込まず余韻を残している。試演会ということもあろう、最小限の舞台セットと照明・音楽で効果を出していた。
宇宙人になります…大きな観点で見れば地球人も宇宙人。しかし、敢えて その違いの中に排他的もしくは差別的な意味合いが込められているよう。勿論「世界中から原因不明の痒みが報告されている。検査をしたところ、体内から検出されたのは地球に存在しないDNA」という件に関連してくる。私ごとで恐縮であるが、この検査とその後に係る業務に就いていたことがあり、とても考えさせられた。
(上演時間1時間 休憩なし)
蒲田行進曲
“STRAYDOG”
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2024/12/11 (水) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観応え十分。
この作品、演劇だけではなく小説で直木賞を、映画で日本アカデミー賞を受賞するほど有名なもの。つかこうへい作品らしく、登場人物の台詞は早口のようなリズミカルさ、それが心地良く響いてくるような公演。固有名詞を使ってリアリティ、そして今では敬遠されそうな差別用語が…。笑うに笑えないような台詞の奥に差別の裏返しのような素朴で温かい情愛が浮かび上がってくる。同時に屈折した心理を潜ませ、人のどうしょうもない理不尽さも描き出す。そこに つか作品の真骨頂をみたような。
舞台美術は素舞台、当然 役者の演技力が問われる。上演時間2時間(休憩なし)を飽きさせるどころが、舞台にくぎ付けだ。物語の舞台は 京都の映画撮影所。敬愛する銀幕スター銀ちゃんに、絶対服従の大部屋俳優のヤス、そして銀ちゃんが妊娠させた女優 小夏、この3人が主要な登場人物。銀ちゃんの命令でヤスは小夏を妻にし、銀ちゃんの初の主演映画のために、命をかけて「階段落ち」のシーンを演じるが…。この3人の迫力が迸り 情念が滲む、そんな圧倒的な演技力に観入ってしまう。同時に切ないといった感情が こみ上げてくるが、それを自分の拙い言葉で説明することは出来ない。ぜひ劇場で。
(上演時間2時間 途中休憩なし)【朋 組】
その男ホーネット加藤
映像劇団テンアンツ
「劇」小劇場(東京都)
2024/12/11 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
㊗上西雄大さん 60周年記念公演…面白い。
タイトル「ホーネット加藤」、その面白可笑しい前説で盛り上げ そのまま本編に入るが、そこでの生業も前説という設定である。公演の魅力は、父親の娘を思う気持ちと胡散臭い男を見るような娘、その心情的な距離がどう縮まっていくのか。そんな物語をテンポよく展開し、時にボケとツッコミの漫才のような場面を挿入し楽しませる。テンアンツらしい笑いと泣き、その感情の揺さぶりが凄い。
手際のよい舞台転換によって、瞬時にその状況や情景へ誘われる。少しネタバルするが自転車を使った場面などは映画のワンシーンを見ているような感覚。またスナックでのカラオケ場面を始め、所々で歌を歌い和ませる。「劇」小劇場という空間、そこに1970年代のカンフー映画へのオマージュというかパロディのような世界観を持ち込んだエンターテインメント。ホーネット加藤の顔つきやアクション、そして衣裳がその映画を連想させる。上演時間は2時間を超えるが、アッという間の感覚だ。勿論「vol.1 燃えよ前説ドラゴン」も観たくなる。
(上演時間2時間15分 途中休憩なし)【ドラゴン孤独の鉄拳】
星降る教室
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2024/12/07 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。深みある味わい。
大自然、そしてノスタルジックで夢幻のような雰囲気が漂う中、或る女性教師の回想を通して紡がれる心温まる物語。青☆組公演の魅力は、物語に新たな息吹を吹き込んだような世界観(今回は宮沢賢治の世界観に呼応)を舞台美術や技術で表出し、観客の心を揺さぶるところ。そして発語を意識 そして大事にしたといった印象だ。
今回は劇団初のクリスマス公演らしく、シンプルだが美しく、優しく、そして温かい雰囲気をしっかり演出していた。キャストはスカートやベストなど、どこかに格子柄がある衣裳で整える といった拘りもみえる。
(上演時間1時間)
東京夜行
パフォーマンスユニットcoin
パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)
2024/12/07 (土) ~ 2024/12/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
観(魅)せるを強く意識したダンス公演。印象としては、振付が先なのか音楽に合わせたのか分からないが、ダンスと選曲がピッタリ。そして照明や衣裳・小物の配色にも気を配る。勿論 ダンスの力量は確か(観応え十分)。
舞台はメインとサブステージが二か所。サブステージは少し段差を設え、別の場所であり時間もしくは俯瞰といった違いを表現する。また絵空箱にあるBARカウンター内も利用し、この会場全体を使って舞台化している。
ダンスパフォーマンスゆえ、何か物語性があるという訳でもないと思うが、ある出来事をイメージしてしまう。心象であり日常の光景、そして再生といった時間の流れを感じる。当日パンフには「夜の東京を旅する 賑やかで、静かで、華やかで、孤独で そして儚い私の街」とある。しかし、自分は別の出来事(イマーシブ・ダンス)を連想してしまう。
(上演時間1時間5分 休憩なし)
十二月、田中、がんばれ!
劇団うぬぼれ
ART THEATER 上野小劇場(東京都)
2024/12/07 (土) ~ 2024/12/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
🔞 R-18朗読劇ということに興味を持って観たが、思っていた以上に面白かった。典型的な娯楽作。発想はエロいが、内容は極めてまっとうで惹き込まれてしまう。この劇団の特長であろうか、マンガを読むような感覚で 分かり易い演出が好い。その資料-両面35頁(非売品)を配布、笑ってしまうが なかなかの力作。衣裳は男女ともに白シャツに黒ズボンで、外見で惑わせることなく朗読力で聴かせるといった矜持を感じる。それだけに 冒頭は正確に読むことを優先し(心掛け)たかのような棒読みが惜しい。
この朗読劇、上野小劇場という比較的小さい空間だから面白味が感じられると思う。今後、別の劇場 どのような公演を行うのか。
27歳の中学校体育教師 田中純平が、なんとか今年のクリスマスに童貞を卒業したいと…。登場するのは純平をはじめ賢者・性欲・睡眠欲・食欲そして先走り宣教師、人間の三大欲を顕に悶々とした姿が滑稽に描かれる。
童貞を捧げたいのが同僚の社会科教師 岸野つかさ 29歳。口説くどころか まだ交際もしていない。クリスマスまであと一か月、岸野先生と懇ろになるための脳内シュミレーションが先走る。ちなみに説明にあるクリスマスアダムとは、早い段階で明らかになるが、先走り宣教師はラストにその真の姿が明らかになる。
少しネタバレするが、岸野先生を巡って同僚の音楽教師 中山金太郎(32歳童貞)という恋敵が登場する。そして中山先生や女子生徒との保健体育(避妊具の使用)に係る会話も興味深い。
シンプルな舞台美術と照明だが、朗読劇としては十分に その効果を発揮していた。
(上演時間1時間45分 休憩なし)
はんなま砦は夜更けまで
大統領師匠
駅前劇場(東京都)
2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
観(魅)せ 楽しませることを強く意識した快作。チラシにある謎めいた説明、その世界観そのものが物語の肝。そこが どこでといったことが「閉じ込められた真実」(ネタバレ)に直結する。
未見の団体。この団体、コア ファンに支えられているようで、観劇した日は最前列に多くの女性ファンが陣取っている。上演前には〇回観る予定など お喋りに花を咲かせている。グッズも見せ合っている。勿論 開演したら熱心に観て、時に大笑いする。一方 団体は前説で優しく和ませるような話(本来の注意/依頼事項含め)から本編へ、そのサービス(精神)が劇中から伝わってくる。
登場人物の性格や立場、その特技などの面白い設定が妙。そして舞台装置を可動させダイナミックに観せ、勇ましく煽るような音響/音楽、強い目潰し照明などを駆使する工夫。映像で観るようなイメージのものだが、舞台という至近距離ゆえ臨場感がある。興味を惹く内容、それをアップテンポで展開し 心地良く飽きさせない。
(上演時間1時間55分 休憩なし)
みえないもの(アーカイブ配信予約受付中)
アンティークス
「劇」小劇場(東京都)
2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
㊗20周年公演。面白い、お薦め。
いくつかの小さな物語を意味深に描き、それらを大きく包み込むように紡いだ公演。アンティ-クスらしく丁寧に 優しく考えさせるような内容だ。現実と幻想、そして過去や現在の話を縦横無尽に綴り込み、重層的に描き出す。
この不思議な世界観、それが何なのか最後に明らかになる。演劇としては典型的な展開だが、何となく清々しく充実感を覚える。全体的に見守り 寄り添う、そんな包容力を感じさせる珠玉作。
当日パンフにテーマらしきこと、「あなたの大切な『存在』に捧げます」とある。つまり「生きる」「生かされている」ということではないか。たとえ亡くなっても、その人のことを忘れなければ、残された人々の心の中で生き続ける。タイトル「みえないもの」は人の<思い>であり<想い>、その感性のようなもの。言葉では言い表せないこと、それを演劇という虚構の中でリアルに表現して伝える。
少しネタバレするが、いくつかの話は日常、そして戦争や災害といった広がりがあるもの。しかし、それぞれの話を深追いせず点描することで「存在」というテーマを暈けさず 捉えて離さない。勿論、役者の演技力は確かで、物語を支える舞台美術や音響・音楽そして照明などは巧い。観応え十分。
(上演時間2時間5分 休憩なし)
ポプコーンの降る街2024
劇団大樹
Route Theater/ルートシアター(東京都)
2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初日観劇、ほぼ満席。
現実と夢想を交差させ、優しくも切ないファンタジー作品。それは心の彷徨のようでもある。梗概は説明の通りだが、その謎めいたことを記すとネタバレになってしまう。当日パンフによれば、本作は1992年 文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞し、劇団大樹では2005年に初演したとある。そして20年振りの再演にあたり、新たなシーンを追加し更に深みが加わっていると。初演を観ていないから何とも言えないが、タイトルや説明にある「ポプコーン」が膨らんで弾けたような…映画を観ながら食べた記憶があるが、その懐かしき味わいと香りがするよう。
登場する中で、名前があるのは探偵・野放風太郎と助手・タキ、それ以外は女・男・老人であり正体が知れない。この抽象的な設定が肝かもしれない。人物の過去や現在など背負っているものを明らかにしていない。唐突にして曖昧な出会い方、緩い関係性の中で謎を膨らませていく。そして絵画の人物とは という謎へ繋げていく。途中から だんだんと事情が分かってきて、言葉の端々から滋味溢れる物語が構築されていく。全体的に抒情的な印象だが、物語とその雰囲気を支えているのがアコーディオンの生演奏、とても好かった。
コロナ禍を経て不寛容・無関心といった世の中になったような気がするが、本作は未練と想いが しっかり詰まっている。それは人間だけではなく身近な動植物に愛と情を注いでいるよう。少しネタバレするが擬人化した猫、そしてアンサンブルとして踊る姿が愛らしく、しかも力強いといった感じもする。そこに過去だけではなく未来が…。
(上演時間1時間50分 休憩なし) 12.08追記
サド侯爵夫人
プロジェクト榮
銕仙会能楽研修所(東京都)
2024/11/30 (土) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。観応え十分。
現代戯曲を能舞台で、その独特の空間の中で強靭な台詞が火花を散らすような緊張感。よく言われる言葉と無言といった舞台ではなく、心情を激白し合う感情劇。勿論タイトルから分かるが、サド侯爵夫人をはじめ周りの人々との会話を通してサド侯爵を浮き彫りにしていく。
原作は三島由紀夫、台詞と構成そして登場する6人の心情がハッキリ解る。長い時間軸の物語にあって、心と時代の変化をしっかり感じ取ることが出来る稀有な公演。言葉の激流が俳優たちの身体を借りて愛憎という情念を描き出す。その迸るような激情が観客の意識を捉えて離さない。一瞬たりとも言葉を聞き逃すことが出来ない。
3幕/上演時間3時間(途中休憩10分×2回を含む)、少し緊張が解れるのが 場転換で奏でられる二十五絃箏。演奏によって場に流れた憎悪のような感情が昇華していくよう。能舞台に和の演奏は映え調和する。それは単に場転換の繋ぎというよりは、昂った観客の気持ちを和ませ、新たな場面への期待といった効果を感じる。勿論 照明効果もすばらしく、暖色と白銀の二段になった照射 更にその諧調によって場景の雰囲気を変える。
(上演時間3時間 途中休憩 計20分)追記予定
ロケット・マン
劇団鋼鉄村松
劇場MOMO(東京都)
2024/11/28 (木) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
㊗30周年記念公演…面白い、お薦め。
宇宙という悠久のロマン、そこに関わる人々の思いを人間的そして国家的といった観点で描き出す壮大な物語。人間にとっては長い時間軸、しかし宇宙的な感覚からすれば瞬く間、それを硬軟ある観せ方で飽きさせない。まさに観劇はアッという間の感覚だ。
説明にある「人類は光速到達実験『プロメテウス計画』を開始」…科学的な専門用語(台詞)もあるが 物語の中で不思議と解っていく。小難しいことは抜きにして楽しめる。そして1人何役も担うが時間の経過とともに現れる(人物が違う)ため、混乱することはない。ただ 1人の宇宙船乗組員 カーフ(通称 ロケット・マン)の宇宙への思いと彼を地上から見守る人々の思いは なかなか重ならない。ロマンとリアルの思いの鬩ぎ合いのような…。
少しネタバレするが、冒頭に出てくる 世界最初の宇宙船乗組員である一匹の犬 ライカ、それがラスト、カーフと邂逅する。始めの台詞「スプートニク(ロシア語)」こそ、この物語そのものを言い表している。それは観客を<(宇宙)旅の同行者>として誘っている。勿論 某国の人工衛星打ち上げ計画に因んでいるが。
(上演時間2時間 休憩なし) 追記予定
ウソの歴史のツクリカタ
劇団KⅢ
萬劇場(東京都)
2024/11/27 (水) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
説明の「男も及ばぬ大力無双 毘沙門天の化身と言われる上杉謙信。その名を歴史に残した武将。史実に謎を残した男」から、何となく<ウソの歴史>の想像がつく。この設定は 根強く囁かれており、他の謙信を扱った舞台でも観たことがある。
本作は、戦国時代らしく影武者という存在を絡めることによって、心の深淵を覗き込むような深みを持たせている。特に中盤から終盤にかけての謙信と影武者、夫々の葛藤を激白する場面は面白い。それだけに前半の緩い冗長のような場面が惜しい。前半の柔らかさと後半の硬さ、その落差というかギャップで印象付けようとしたのだろうか。
スピード感ある殺陣、それを効果的に観(魅)せる照明、迫力を煽るような音響音楽は好かった。
タイトルは、現代的な問題も潜ませており興味深かった。戦国時代という生き残りをかけた修羅の時代、翻って 今は剣からペンへ、さらにインターネットという目に見えない武器を駆使して勝者となる。そこに風評という魔物が…。
(上演時間2時間5分 途中休憩なし)
レットイットビーム
コメディアス
OFF OFFシアター(東京都)
2024/11/27 (水) ~ 2024/12/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
RTA(Real Time Attack)のようなライブ感ある公演。確かに「光路を作り出す過程を描いた光学演劇、光VS人間のレーザーコメディ!」という謳い文句の通りなんだが…。
前説の中に設定を語らせ物語が始まる。しかし始まってしまえば設定等 ほとんど関係なく目の前の装置とアイテム入手に集中する。今まで密室や迷路からの脱出劇は観たことがあるが、シャレの意味で古さを省いた<光学>ならぬ<考学>といった公演。色んな意味で評価が分かれそうな気がする。
RTAといっても公演時間内には完結する。ちなみに装置は手動ではなくセンサーで反応させているため、機器の調子と役者の操作の加減によって上演時間が長くなるかも といった情報が前もって知らされた。公演情報では上演時間80分であったが、観た回は90分(途中休憩なし)だった。
全編を通してレーザーのパズルがどのように解決していくのか、その遊び心ある過程には観(魅)入らされた。