『BORDER〜罪の道〜』 公演情報 五反田タイガー「『BORDER〜罪の道〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    硬軟ある場面を絶妙に交え 飽きさせない巧さ。フライヤーのデザインから何となく分かるが、舞台は女子刑務所(キャストは女優のみ)。そこにいる看守・受刑者等によって紡がれる罪と罰。その観せ方は鬼気迫る衝撃的な場面、一転 小咄や笑劇的な場面を挿入し和ませる。

    少しネタバレするが、「次、生まれてくる時は 友人として会おう」というフレーズ、その奥にある思いは 劇中の「人は なぜ罪を犯すのか」という問いに繋がる。この台詞が公演のテーマとして強く重く響く。勿論、罪が罪を生むといった負の連鎖もしっかり描く。

    公演は歌やダンス、それを音響・音楽そして照明といった舞台技術で効果的に観(魅)せている。総じて若い女優陣の躍動感ある演技 パフォーマンスが楽しめる好公演。ぜひ劇場で。
    (上演時間2時間 休憩なし) 千穐楽に追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は 二階建監舎。2階に鉄格子の居房、1階は頑丈なドアの独居房、真ん中に階段があり対称の造作。上手/下手に監視塔が建っている。全体的に薄汚れており老朽化が進んでいるようだ。

    物語は、この女子刑務所に配属された新人刑務官が 所長に案内され、収容されている受刑者の性格や特徴等を聞くところから始まる。何となく明るく陽気な雰囲気、皆 同じように腹が減ったと訴える。この新人刑務官は副所長の娘であり、母を恨んでいる。母は夫の乱行に耐えかねて、高校生の娘を置いて出奔した。この母娘の確執が1つの物語。

    もう1つが、老朽化が進んだ別の女子刑務所の改築工事のため、そこに収容されている受刑者が移送されてくる。罪が重い受刑者が、この刑務所の受刑者を洗脳し いたぶるようになる。移送されてきた受刑者は、殺人・放火・暴行そして窃盗など重犯罪者ばかり、中には死刑囚もいる。そして凶悪、二重人格等といった性格付け。この説明シーンは、一人ひとりにスポットライトを照らし、心の声のような音響で語る。実に効果的な演出だ。

    実は新人刑務官、この刑務所の配属を希望していた。それには母との関係もあるが、実は死刑囚に婚約者を殺された恨みがある。その遺恨を晴らすためでもある。死刑囚は不遇な環境で育ち、人や社会に憎悪の感情しかもっていない。殺した婚約者は優しく接したが、自分を利用している といった被害妄想に取りつかれ、近づいてくる人間を殺してしまう。なお、公演に託けて過度に自分の主義主張を…いかがなものか。

    受刑者に別の刑務官が洗脳され、灯油をまき火事が起きる。所外に避難させたが 戻ってこない受刑者もいる。外で その受刑者に恨みを抱く者に殺害されるといった罪が罪を招く。その負の連鎖もしっかり描く。

    さて、死刑囚は脱獄せず そのまま刑務所内に止まっていた。誰か自分を殺してくれないか、かと言って自分では自殺できない。そこで法の裁き=死刑になることを望んだ。人は罪を赦せるのか、一概に結論を出せない難しい問題を投げかける。悩み困った時は、誰かの助けが必要。「次、生まれてくる時は 友人として会おう」が赦しなのかも…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/03/06 17:45

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