龍と虎狼ーepisode SOUJI- 公演情報 FREE(S)「龍と虎狼ーepisode SOUJI-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    前に「龍と虎狼-新撰組 Beginning-」を観劇したが、それにリンクしている と言ってもこちらが先になるような物語だ。説明では「何故、総司は人を斬ることになったのか、その背景となる過去を『龍と虎狼』シリーズのフィクションで描く」とあるが、沖田総司のエピソード0(ゼロ)として、その心情を巧く立ち上げている。勿論『龍と虎狼』シリーズを観ていなくとも十分楽しめる。

    物語に明確な前半と後半があるわけではないが、何となく後半 特に見せ場である殺陣はスピードと迫力がある。その中心にいる沖田総司役の市瀬瑠夏さんは、凛々しい青年剣士として殺陣はもちろん所作もキビキビしており美しい。顔立ちも憂いを帯びているようで孤高の剣士というイメージ。少しネタバレするが、稽古(練習)では強いが真剣(本番)では力を発揮できない。その心情を薩摩藩士 西郷信吾(西郷隆盛の弟)とも重ね、心も体も そして剣術も強くなければ生き残れない、そんな激動の時代に生きた青年像を立ち上げている。物語の肝もそこにある。

    物語は新撰組の前身ー壬生浪士組と名乗っていた時、京都の情勢を探るため江戸から来た4人、そして今で言うところの風評操作を行っていた薩摩藩士<尊皇攘夷の過激派志士>、そして遊郭の花魁たちを時代状況に重ねて描いた幕末群像劇。少し分かり難いのが有名な「寺田屋事件」の場面。そこに壬生浪士組が絡んでの殺陣になるが、その状況・事情等の背景がハッキリしないことから、突然 他の薩摩藩士が現れて藩内の同士(上意)討ち、捕縛が始まる。前半の敢えて芝居掛かった緩いシーンと 後半の殺陣シーンのギャップに違和感が…。
    (上演時間1時間35分 休憩なし) 4.13追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、下手の一部を2段ほど高くし別空間ー遊郭を設える。朱色の片引き戸、その両側は楓や牡丹の花柄の壁で華やか。それ以外は広い空間を確保しているが、勿論 殺陣シーンのため。

    壬生浪士組の4人が江戸から京都の情勢を視察に来たところ。その4人とは沖田総司、山南敬助、斎藤一、永倉新八で、それぞれの性格を早い段階で描く。まだ何者にもなれていない沖田、冷静沈着な山南、血気盛んな斎藤、楽天的な永倉といった感じ。沖田は剣術に優れているが、実は生身の人間を斬ったことがない。その躊躇する気持ちが命取りになる、そんな危うさがある。

    その頃、京都では薩摩藩のうち 倒幕に急進的なメンバーが幕府の悪評を流布していた。その中に西郷信吾がいた。彼も人を斬ったことがなく、さらに長兄(西郷隆盛)の活躍と比較され忸怩たる思いをしていた。そして情報収集や諸々の活動のため遊郭に出入りしていた。その遊郭に夕霧という花魁、その付き人として曰くある姉妹が仕えていた。西郷と夕霧、そして薩摩藩の動向を探る沖田と山南も夕霧と接触し…。初心な沖田は夕霧に恋心を抱くが、夕霧の態度は曖昧で要領を得ない。不穏な行動をする薩摩藩士、京都の町を火事にしてその隙に暴動を企てるが…。混乱の最中、浪士組と薩摩藩士が斬り合いになるが、西郷を庇って夕霧が沖田に斬られる。初めて人を、それも恋心ある花魁を。ちなみに西郷も人を斬ったことがなかった。

    その悲しみを乗り越え、使命を果たそうとする。その非情さが後々、新撰組一番隊長として恐れられた沖田総司を作る。同時に精神的な逞しさを身につけ、夕霧を慕っていた女2人を素知らぬふりをして観察方として引き入れる。この2人が くノ一のような格好で「龍と虎狼-新撰組 Beginning-」にも登場する。沖田総司が人斬りへ、それが後の新撰組の原動力になっていく。幕末の動乱期を 虚実綯交ぜで描くが、やはり見所は殺陣シーン。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/04/11 00:06

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