旗森の観てきた!クチコミ一覧

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陥没

陥没

Bunkamura/キューブ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2017/02/04 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★

高度成長期のオリンピック景気を背景にしたケラの新作。昭和三部作と銘打っているが、前二作と違って今回はそろそろケラも生まれている時期だ。それを考えれば、田中さんと鈴木さんの家があっという間に大きくなった【セリフ】時期の生理がもっと描かれてもよかったのではないか。いつものケラ喜劇で、役者も揃い、笑って3時間半の長丁場が持つのだが、人間関係や風俗にもっと時代色が欲しい。

ネタバレBOX

生瀬や山崎のような人物は確かにこの時代の産物であるが、女性たちはこのように飛んではいなかったと思う。都合よく、天界から戻ってくるという設定も、ケラの芝居らしいが少し安易に使われていたと思う。客はよく笑い満席で、このような芝居(ナンセンス喜劇)をコクーンに定着させた功績は大きいとは思うが、もうひと踏ん張りしまりのある(ブラックユーモアの効いている)作品が観たい。
たわけ者の血潮

たわけ者の血潮

TRASHMASTERS

座・高円寺1(東京都)

2017/02/02 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

いつもと変わらぬトラッシュマスターである。今回のテーマはかなり複雑で基本的には表現の自由と、具体的には大麻の容認が大筋になっているが、議論の基礎として、日本語と言う言葉の特性とか、憲法と諸法制との整合性とか、演劇の舞台では即断できない問題を扱っているので、いつものように爽快に時代を斬るというわけにはいかない。2時間45分、いつもながら長いが、ひかかる議論とそれを明確にしようとする定義づけが輻輳して疲れる。劇中でも触れられるが、俳優も台詞が肉体化しているかと言うと、いささか疑問。戯曲としてももう少し整理したほうがいいのではないか。

ネタバレBOX

演劇批評の(いかにも頼りない現在の演劇ジャーナリズムを体現していて笑ってしまった)女性評論家と同僚記者の話とか、上演が終わったばかりの芝居の話など端折ってもよかったのでは。憲法はどの国のものでも、理想は高くお経のような努力目標で、そこへ向かって現実に進むというのは、不可能だから、最後に憲法で裁くのはどんなものだろう。練られた憲法の言葉で感動する観客もいるだろうが、一方でこの解決では空々しいと感じてしまう観客もいる。座高円寺の椅子で3時間近いのはつらい観客もすくなくないだろう。現在珍しい正当な社会派演劇だが、かなり空席があったのは役者の力量にもよる。
ザ・空気

ザ・空気

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/01/20 (金) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

昔あった懐かしい社会正義・糾弾劇である。だが、今のご時世で敵役も、かつてのように、雲上の人や影の人でなく、法律や組織が明確に糾弾されている。しかし、それでは一筋縄ではいかないところがあり、喜劇仕立て、風俗劇仕立てになっている。ベテランの作者だからそこはうまい。だがドラマの構造として、そもそも、倫理的なジャーナリズム精神と、具体的な法律や組織を対峙させても、笑や糾弾はできるかもしれないが、ドラマ的な成熟はないような気がする。笑って見られるがしらけるところもあるし、この程度のことはお客様が先刻ご承知である。そこがメディアが拡散した現代の難しいところだろう。作者は、新国立の芸術監督問題でよほど傷ついたのであろう。それは理解できるが、そろそろこういう素材から離れて、現代の「時の物置」を探してほしい。

鯨よ!私の手に乗れ

鯨よ!私の手に乗れ

オフィス3〇〇

シアタートラム(東京都)

2017/01/18 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★

渡辺えり子と野田秀樹が、岸田演劇賞を同時受賞したのは1983年。もう35年もたつかと思うと感慨深い。えり子は「ゲゲゲのげ』、野田は「野獣降臨」が受賞作だった。年月がたって、今月、野田は池袋で「足跡姫」えり子(子はなくなったが)は三軒茶屋で「鯨よ!・」をやっている。ともに、自らの演劇を回顧しながら今も変わらぬ演劇への思いを舞台に乗せている。好きなんだなぁ、舞台が、と思う。この舞台がともに公共劇場であることも面白い。彼らは、勝手をやっているように見えながら、世間の演劇観を変えたのだ。今回も自分の劇団主宰公演で、松竹でも、エイベックスでもない。野田がこの種の新劇公演で初演大劇場で61公演と言うのは、戦後新記録だろう。えりの方は劇団にこだわっただけ広がりには欠けたが、本人はキャラを売って演劇人の存在を示して、三越や演舞場、明治座でおなじみになった。この二作は還暦を過ぎた二人の自分へのご褒美のようなものだ。よくやった、ご苦労さん、今の若い演劇人も小さな殻や理屈(が多すぎる)に閉じこもらずに、自分の好きを前面に出して破壊的な力(二人の受賞作を見よ!!)を発揮してほしい。「鯨よ!」はキャストも厚く、老人ホームのアイデアもいいが、話が中途半端になったのが残念。島の子供たちの話はなくてもよかったのではないだろうか。中段、久野の歌のあたりまでは好調だったのに、息切れした。

ネタバレBOX

鯨が嶋の子供たちを乗せていくというのがよくわからない。老人たちとの関連を戦時中の島の学童竿階から結びつけるのは無理だと思う。
初春歌舞伎公演「通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)」

初春歌舞伎公演「通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)」

国立劇場

国立劇場 大劇場(東京都)

2017/01/03 (火) ~ 2017/01/27 (金)公演終了

満足度★★

国立の初芝居はここの所あまり調子がよくなく、今回も専門家の渡辺保さんは「芝居として堪能するところも、感動するところも、現代性もない、これでいいのだろうか」と散々だが、まぁ、正月だから、歌舞伎らしいばかばかしさを詰め込んで、大化け猫から、研修生の猫の殺陣、ピコ太郎まで出てくる九州のお家騒動物語を転寝をしながらぼんやり見物するのは悪くない。梅枝がよかった。ほかは宙乗りも今や珍しくもなし、特段のことはなし。無駄に金のかかったところはやはり税金劇場の余裕だが、これもせせこましいよりはいいのだ。

ネタバレBOX

序幕で、鏡と巻物の対決と振って、鏡の方は本物偽物入り乱れて大詰めまで大きくすじにも関係するが、巻物の方はどうなったのかしらん。こっちが転寝をしている間にかたずいたのかな?
ユー・アー・ミー?

ユー・アー・ミー?

ラッパ屋

紀伊國屋ホール(東京都)

2017/01/14 (土) ~ 2017/01/22 (日)公演終了

満足度★★★

ラッパやはサラリーマン演劇を標榜して90年代の小劇場の中では異色の市民喜劇の劇団だった。サラリーマンの実感に基いた人情喜劇を時にはファンタジーに飛ばす主宰の鈴木聡の才に堅いファンがいた。そのファンも歳をとった。劇団も歳を重ねた。そのサラリーマンたちは今は主に40歳の終わりから50歳代。現在のパソコン片手の若手とはギャップがある。若手の仕事の進め方に馴染めるように「キャラ変」出来ない世代のサラリーマン喜劇である。流石に鈴木はうまいが、若手の生態が類型的なのが惜しい。彼らだって、それなりの切ない情熱をオフィスワークに持っているのだ。そこができていると重層的で面白い新しいラッパやが生まれたかもしれないが、それは次の世代の劇団の役割か。

フランケンシュタイン

フランケンシュタイン

東宝

日生劇場(東京都)

2017/01/08 (日) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★

舞台前のオケピにフルオケが入ったミュージカル。韓国製だけあって全面的にサービスたっぷりで、ホラーの原点的原作の色彩はない。ずいぶん筋も変わっていて、原作におなじみの人はびっくりするだろう。ホラーを甘くするというのはどういう意図かとも思うが、30歳代女性中心の観客はほぼ満足の様子。歌のうまい人が多く、濱田めぐみなど勿体ない使い方だが、それが日生劇場らしいのかもしれない。それにしても原作のつまみかたは随分乱暴だ。

ミュージカル★マーダー・バラッド

ミュージカル★マーダー・バラッド

ホリプロ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2016/11/11 (金) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

甘さもある小劇場ミュージカル
ハコが銀河なので大型ミュー-ジカルか、と言うとさにあらず、キャバレーショーの趣もある。話は単純な三角関係で、いい加減と言えばいい加減だが、現在のアメリカ(日本も近いが)の女上位の手前勝手さがよく出ているし、韓国で受けたのはあそこでは子供を抱えて家庭で悶々としている女性が多いからだろう。日本では、銀河のいい椅子で歌上手の四人のミュージカル役者を楽しめる。歌だけのミュージカルと言うと、筋売りに無理があったりして、あまり成功しない(レミゼは成功例)ものだか、これは話は単純のので、ソングは面倒な歌詞もなく、曲もさして難しくなく、皆気持ちよさそうに歌っている。ソロはもちろんだが、合わせて歌うところもうまい。中身はどうでもいい。これだけ面倒なtころを抜いてしまうと、当然時間はみぢかくなって、実尺は80分.こんなものを季節もののすぺっしゃる(たとえばクリスマス特番)で見せてくれる粋な劇場はないかしらん。セットはないしバンドも出演者も4人、リサイタル形式でもできる。活きに感じてやる人はいそうに思うが。パルコのラブレターは名企画だがこれだけやると飽きたよ。

貴婦人の訪問~THE VISIT~

貴婦人の訪問~THE VISIT~

東宝

シアタークリエ(東京都)

2016/11/12 (土) ~ 2016/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ミュージカルに向いている原作なのか?
ミュージカルの原作は難しい。平凡だと客が観ないし、複雑な心理描写が欠かせないとなると、時間が足りなくなる。客も飽きる。このドイツ演劇の代表作は筋書、テーマもはっきりしていて(あざとい話だ)ミュージカルに向いていそうに見える。これは東宝お得意のウイーン仕立てだが、同時期にブロードウエイでもやったそうだ。こちらは情報でしか知らないが、あざとい話を抽象化して表現主義的?にやったらしいが見事失敗。一月持たなかったと聞く。こちらのウイーン版は東宝が知恵をつけているのだからきわめて大衆的な解りやすさをのある宝塚の俳優を生かした東宝ミュージカルだ。元戯曲は金で愛情が買えるのか、金があれば復讐できるのか。現代の社会の法や倫理はそれに対抗できるのか、と言う、まぁ、新書版ハウツーもの向けのテーマをドイツ風にじっくり書いてある4幕物。
対立項が男女の愛と復讐だし、金が前面に出るのでわかりやすいが、そこが落とし穴。今最もモラルが輻輳化しているテーマでもある。終結は明かさないが、これでは今の若者、いや中年も何が言いたいかわからない。原作は別の解決をしていてその方がよかったと思う。
と、中身には疑問だが、クーリエは満員のお客様。音楽は今どきめずらしい絃などもたっぷり入っているし、最近多い凝りまくった曲もなく、ダンスや群舞は手慣れた東宝ミュージカル調で見ている間は楽しく見られる。でも出てからはあれどういうことと?と話し合うネタにはkと欠かないだろう。それでいいのだともいえるか・・・なぁ。
余計なことだが、カーテンコールでもオケが紹介されるのに姿が見えない。カラオケではないと思うが、ミュージカルはオケを見たいのだ

リボルバー

リボルバー

オフィスコットーネ

APOCシアター(東京都)

2016/11/18 (金) ~ 2016/11/23 (水)公演終了

満足度★★★★

埋もれた小劇場脚本の発掘
オフィスコットーネと言う小さな(だが実績も歴史もある)演劇製作社が大阪の小劇場の大竹野正典の義侠を再発掘している。本人は09年になくなっているので戯曲から入るというしゅほうそのものが小劇場としては非常に珍しい試みだ。、生きていればこその作者、演出家が小劇場と思っている人も多いが、こうしてみると、埋もれている小劇場のいまも使える本はある。今回の演出は伊東由美子。なつかしや、離風霊船の作演出だ。この劇団のホンも「ゴジラ」などやってみると面白いのではないか(どこかでやっていたようにも思う)。大竹野は全く東京ではやっていなかった作家、小劇場なのでコットーネの公演で初めて知った。「山の声」は、あまりのストレートな作りに大阪の小劇場にもこんなのがあったかと、感動した。今回の「リボルバー」はかなりコメディ風のつくりなので「山の声」とは違うが、つまらない新作よりはいい。大阪らしい笑いがきついが楽しめる。役者はさすが、三田村周三、伊東由美子の大姉御ぶり、若者の辻井彰大、池田智子は若さで行ける。中年夫婦三組にいますこし粒だった人がいるともっと面白かったかとも思うが、それは千歳船橋の出来たばかりのスペースの公演としてはないものネダリだろう。70人くらいのスペースが月曜夜の公演なのに満席だったのがよかった。

天使も嘘をつく

天使も嘘をつく

燐光群

座・高円寺1(東京都)

2016/11/18 (金) ~ 2016/11/27 (日)公演終了

満足度★★★

これでいいのか??
あらすじの筆頭に似掲げられている社会性のあるドラマ。確かに西南諸島の諸問題を扱っているが、切実さがまるでない。坂手洋二どうしてしまったのだろう。二十年前は、それこそさまざまな社会問題を、物語の中に取り込んでしかも一種独特の叙情性もある舞台を作っていた。「屋根裏」を最後に続く『社会問題劇』は、もう誰もがよく知っている情報を並べて悪代官裁きをするようなドラマばかりだ。社会劇作家はほかにいないと思っているかもしれないが、中津留や古川のように繊細な才能を持つ作家が出てくるとこの精選されていない情報過多、妥協的な結末ではもう、若者はついてこない。それにやたらに体言止めが多く、役者で台詞割にしたような台詞のくせも気になる。最初は、情報ならそれで却って効果があるかとも思っていたが、これだけ連発されると、役者をどう考えているのか疑問になる。ベテランにはちゃんと台詞が書いてあるではないか。今回は、舞台俳優としてはなかなかの力量のある馬淵英里何を連れてきているのに、なんだかよくわからない役になってしまった。
本心を言えば、坂手、鐘下、は大いに期待していたのだ。それだけにこういう作品を見せられると奮起一番、あたらしい世界を目指してほしいと思う。劇団を持っていてその売りが固定していることが足かせになっているのかもしれない。それでは客足が遠のいたのに銘柄にこだわった三劇団と同じではないか。

猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方

猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方

劇団ジャブジャブサーキット

ザ・スズナリ(東京都)

2016/11/11 (金) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

不思議な地方劇団
今回も筋書だけ読むと、なんだこれ!と言うむちゃくちゃな内容だが不思議につられてみてしまう。不思議と言えば、何年も岐阜の地方劇団が上京して打てるのはなぜだろう。作演出の長谷も最初の頃から脱力風だったがまだわかものの風貌だった。いまはさえない中年男風だが、作風は変わらない。細かいところは随分乱暴なところもあり、いいかげんにしろ!というような安易な性格設定があったりするが、時に、滅多に見られないすごくシャレているところがあって、全部許せてしまう。いや、ご苦労様、ぜひ次も見せてね、と言う気分になるのだ。ほんとに不思議な劇団だ。ひょっとすると、宇宙人の劇団かもしれない。

ゴドーを待ちながら

ゴドーを待ちながら

Kawai Project

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/10/19 (水) ~ 2016/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

生き生きしたゴドー
今までのゴドーは基本的には現代絶望型。アー空しいなーと言う基本路線だったが、この芝居は違う。この戯曲が興行としても面白いものだと確信して、観客に見せようとする。それが成功してこの芝居で珍しく一睡もしなかった。演技の中でも特にセリフ術がよく、耳に心地よい。秀逸だった。

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

治天ノ君【次回公演は来年5月!】

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2016/10/27 (木) ~ 2016/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

治天ノ君
トラムのベンチ席で二時間半休みなしは拷問かと思っていたが、俳優熱演でこの劇場ではそれがよく見え面白かった。天皇家をホームドラマで見せるという卓抜なアイディアでそれが現代史の根幹にかかわっているところが素晴らしい。もっとも私は政治的テーマにつられないよう、気をつけて見た。どの家でもタブーはあってそれを抱えながら肉親の関係はできていくのだ。そのドラマを的確に見せた脚本と俳優陣、ことに大正天皇夫妻は特にすばらしい。松本紀保のうまさとガラがこのように生かされた舞台は初めてだろう。間違っても肉親の情につられて帝劇なんか出るな!

マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」

マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」

ホリプロ

東急シアターオーブ(東京都)

2016/09/14 (水) ~ 2016/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

世界中で見られるということ
バレエもダンスも詳しいわけではないが、それでも次々に繰り出される情景に引き込まれた。以前この劇場で「トップハット」を見た時もつくづく感じたことだが、このジャンルだけはしばらく日本はイギリスには追いつけそうもない。眠り姫のダンスなどの技術も卓抜なのだろうが、若いダンサーがその役を楽しんでいる(少なくとも観客にそう思わせる)ことが伝わってくる、周囲の出演者も同じ。構成も演出も音楽もすごく解りやすく、しかし下品や幼稚ではない。ときどき、おおっつ!と言う仕掛けがある。
日本のダンスも進歩したが、理屈が先に立って楽しめない。苦虫をかみつぶして踊っていても見る方は楽しくない。楽しいということと笑うということを勘違いしている。マッシュ・ボーンにはそういう偏屈は一切ない。さすが!である。降参。

DISGRACED ディスグレイスト 恥辱

DISGRACED ディスグレイスト 恥辱

パソナグループ

日本特殊陶業市民会館(愛知県)

2016/09/27 (火) ~ 2016/09/27 (火)公演終了

満足度★★★★★

技巧を尽くしたアメリカ現代劇
やはりブロードウエイの力と言うのはすごいものだ。多人種国家のアメリカが抱える人種問題は今や世界的なひろがりがある。現実にその渦の中で戦ってきたアメリカ人の葛藤が、かくもみごとな夫婦の物語となって観客の心を打つ芝居になってしまう。千人の劇場がもつ娯楽作でもある。凄い。
人物造形の見事さ、ストーリー展開のうまさ、たとえば肖像画、とかセットの絵とかの小道具や、俳優たちの衣装など細かいところにも行き届いていて満足する。
これは劇場の席のせいかもしれないが、主演の二人の早いセリフが聞きにくいところがあった。内容の複雑さからかもしれない。しかし、この二人(小日向・秋山)の演技力は、舞台俳優としては一級の出来だ。演出も隙のない栗山節がいい。よくこの芝居を見つけてきた製作にも拍手。いい芝居を観たと素直に感動して家路をたどれた。

SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~

SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2016/08/31 (水) ~ 2016/09/14 (水)公演終了

満足度★★★★

カトケン喜劇
シェイクスピアの真夏の夜の夢の物語と、それを映画化しているアメリカハリウッドの映画制作の現場をないまぜンした喜劇。取り違えの喜劇が生きる設定だ。ドタバタで話は進むが、しっかり、ハリウッドの赤狩りの時事性(1950年ごろ)もとりいれていて二時間十五分飽きさせない。
カトケンの喜劇は例えば、見えない、ということなど舞台の約束事で強引に行くのだがそれがとおってしうだけの実績がある。惜しむらくは夜の公演がほとんどないことで(全部のうちたった2公演)、これでは若い人は集まらない。せっかく新しい客層を開いたカトケン事務所なのだから、若者にも宣伝して夜の客を増やさないと、旧新劇団のようにそっぽを向かれることになる。それは惜しい。若い人たちにもこういう芝居にも親しんでもらいたいと思うのだ。

三億円事件

三億円事件

ウォーキング・スタッフ

シアター711(東京都)

2016/09/03 (土) ~ 2016/09/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

三億円事件
脚本が面白い。よく出来ている。内容は今までに聞いたようなことがある話ばかりだが、構成がうまいのであきない。お互いに不信感がある二組の刑事たちが最後にしがみつくように解決の情熱を燃やすところが切ない日本人論になっている。(ここは「東京裁判」も同じだったが)。余りこのように書く人がいないので今後も新しい切り口で見せてください、期待しています。今回は、それにないより、小劇場界を網羅したようなキャスティングがいい。野木さんのホンはいつもいい役者で見たいと思うが今回はかなり満足した。欲を言えばもっといい役者で、もうすこし大きい劇場で、いい椅子で見たい。本多は無理かもしれないが、トラムや東芸の地下。制作も大変でしょうが、治天の君がもう完売しているのだからこういう芝居の客はいますよ。

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