八月納涼歌舞伎 公演情報 松竹「八月納涼歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    夜の第三部「桜の森の満開の下」
    野田歌舞伎の第四弾。今回は野田自身の戯曲を初めて上演する。ここまで新歌舞伎やオペラだねで十分様子を見たうえでの上演だ。野田は気合を入れたのだろうが、若い歌舞伎役者もすっかり野田演劇に慣れて、生き生きと演じて楽しい舞台になった。ことに七之助。華があって大舞台を支えるだけの力があった。勘九郎や染五郎は言わずもがな。裏方も大劇場の実力発揮。
    野田がずっと通底音のようにテーマにしてきた日本の国の天皇制の謎をここでもうまく使って、「ワンピース」とは一味違う現代劇ドラマになった(もちろんワンピースも快作で、少し後の世代の横内謙介の別の面からの歌舞伎現代化は大いに評価するが)。坂口の原作もきっと、あれだけの敗戦があっても、根底では揺れもしなかったこの国の構造を気味悪いと思ったことが作品の動機になったのだろう。野田はそれを現代にもつづく謎と考えていて、ひつこくテーマにする。野田の場合は、社会一般に落とし込まないで、個人の運命に突き詰めて行くところがうまい。シェイクスピアにも通じる時代物の演劇の活かし方である。今回は最後に七之助が舞台から見事に消えて、芝居のたのしさも味わせてくれた。
    ま、それにしても、一幕の設定(三人の職人や赤鬼青鬼などなど、いくら歌舞伎役者の数が多いからと言ってあれだけごちゃごちゃ登場すると客も混乱する)は少なからず過剰だったと思う。これだけ賑やかだと、深山の桜もひらひらと音もなくは降らない(原作引用部分は見事)だろう。
    舞台ではオペラの名曲がうまく使われているが、こうしてみるとこの話は先のごちゃごちゃを整理してオペラにすれば、作曲に恵まれれば世界的にも公演できるのではないかと思った。武満が生きていたら、彼の作曲でオペラ版で最後のシーンが観たかったなぁ。

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    2017/08/23 16:31

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