土反の観てきた!クチコミ一覧

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サザンカの見える窓のある部屋

サザンカの見える窓のある部屋

カムヰヤッセン

小劇場 楽園(東京都)

2011/03/03 (木) ~ 2011/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

SFの顔をしたホームドラマ
SF的設定を用いて、記憶をモチーフに家族の愛憎という古典的テーマを描いた作品でした。タイトルからは想像できない展開でしたが、真面目なテーマを時折ユーモアを交えながら丁寧に描く充実した内容で、楽しめました。

回想シーンが何度もあるのですが、物語の設定上そのことに必然性があって、説明的なシーンには感じられない脚本が巧みでした。専門用語で早口バトル、劇中劇、一人芝居、パロディーなど、色々な要素を盛り込んでいたのも良かったです。
個人的には後半は少し冗長に感じました。もっと余白がある終わり方でもテーマは十分に伝わると思いました。

ノスタルジーを感じさせる舞台美術が作品の内容にマッチしていて効果的でした。

繊細な雰囲気の金沢啓太さん、小島明之さんと、ユーモラスな要素の強い役を演じた北川大輔さんの対比が良かったです。

終盤、暗転した後に照明がつかなくなってしまうハプニングがあってハラハラしましたが、役者たちは動じずに暗闇の中で台詞を続けて、中断することなく復旧しました。上演する側からすると痛いトラブルだったでしょうが、かえって劇団員たちの結束力を見ることが出来たように思います。

更地5

更地5

produce unit 大森そして故林

シアター711(東京都)

2011/03/01 (火) ~ 2011/03/06 (日)公演終了

満足度★★★

演技力の光るコント
アクションシーンを交えた勢いで見せるものから、奇妙な方向へ展開する会話で笑わせるものまで、バラエティー豊かな13本の短編コントを立て続けに上演し、あっという間の約80分間でした。
正直いまいちなものもいくつかありましたが、スピード感が最後まで衰えず、楽しかったです。

ガールズトークが次第に険悪な雰囲気になって行き、ちゃんとしたオチで締める「宴の後」と、お節介なマスターが客の2人の関係をギクシャクとしたものにしてしまう「もめ喫茶」のような、爆笑ではなくクスリと笑わせるタイプの作品が個人的には面白かったです。

東京ヴォードヴィルショーの山口良一さんや大森ヒロシさんの演技が流石の面白さで、女優陣では、パワフルななしお成さんと、普通そうに見えてエキセントリックな役を演じた西田薫さんが印象に残りました。

交換 L'Echange

交換 L'Echange

青年団国際演劇交流プロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/04/06 (水) ~ 2011/04/11 (月)公演終了

満足度★★

プレ公演
4月の公演に向けたプレ公演としての抜粋版のリーディング・パフォーマンスと、翻訳者とドラマターグを迎えたアフタートークで、予告編といった趣のイベントでした。

台本を持ちながらでしたが、テーブルと椅子の他に小道具も使って、ただ読むだけではなく演技もある形式での上演でした。
旧大陸と新大陸との価値観の衝突を描いた話とのことでしたが、いかにもフランス語的なレトリックの台詞がすんなりとは頭に入って来なくて、意味があまり汲み取れませんでした。それぞれの単語自体は特殊なものではないのですが、文章や会話としてのレベルで見たときにはっきりしたイメージが湧かず、モヤモヤとした感じを受けました。

本公演で美術や照明、音響などの要素が入ったときに、この難しい本がどのように立ち上がってくるのか楽しみです。

「したごころ、」【満員御礼!千秋楽を無事迎えることが出来ました!】

「したごころ、」【満員御礼!千秋楽を無事迎えることが出来ました!】

エビス駅前バープロデュース

エビス駅前バー(東京都)

2011/02/25 (金) ~ 2011/03/20 (日)公演終了

満足度★★★

楽しい60分間
こじんまりとしたバーで小難しいことを考えずにお酒を飲みながら目の前で行われる芝居を観るという楽しい60分でした。ちょっとビターテイストのラブコメという内容で、普通の劇場で上演すると距離感を感じてしまいそうですが、実際のバーの空間で上演されると自分もその場に立ち会っている客の1人に感じられて、良い雰囲気でした。

雇われバーテンダーと、料理が得意な幼馴染みが店に入っている晩に、似非ホストや結婚詐欺女やDVカップルなど面倒くさい客が店に入れ替わり立ち替わり訪れるドタバタっぷりを描いた物語で、来る客がことごとくトラブルメーカーである設定が面白かったです。
レトロなラグタイムの音楽に乗せてトーキー映画のような無言劇が演じられる、幕間劇的な場繋ぎのシーンも洒落た趣向で楽しかったです。
ツッコミ的役割を担っているバーテンダーを演じた蒻崎今日子さんの演技が楽しげで良かったです。

この公演は公演期間が長くて21時開演の回もあり、内容も気楽に観られるものなので、仕事帰りに飲むみたいに観ることが出来て、良い企画だと思います。

櫻井さん

櫻井さん

MCR

駅前劇場(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/28 (月)公演終了

満足度★★★

意外とダーク
最初から最後まで舞台中央に櫻井さんがいる中、コミカルに始まり次第に重い内容になって行く展開の作品でした。感動して泣かせる要素のない、潔い構成が気持ち良かったです。台詞のやりとりは勢いがあって面白かったのですが、物語としてはあと一つ突出したものが欲しく感じました。

夢を追って定職に就かずダラダラ生きる青年という良くあるモチーフをバカバカしい会話や演出で見せることによって、対比的にシリアスな要素が鮮明になっていたと思います。序盤の警察官のやりとりはもう少し短くても良かったと思います。逆にちょっと気不味い感じの家族のシーンはもっと観たかったです。

チラシに「劇団員に華がない」と書いてありましたが、そんなことはなく、個性的な役者たちの体を張った演技も楽しめました。ただし、あの劇場のサイズだともう少し声の大きさを抑えても良いかと思いました。

カラフルな床面や、1段高いステージ状の部分があったりする舞台美術が安っぽく見えて、演出上・物語上も必然性を感じられないデザインだったのが勿体なく思いました。素舞台に近い状態で、「櫻井さん」部分だけ作り込んだ方が効果があったと思います。

本編上演後にあった櫻井さんとブラジルの辰巳智秋さんによる2人芝居は他愛のない内容でしたが、笑える台詞の応酬が楽しかったです。このような短編集のオムニバス公演をしても面白そうです。

ドロシーの帰還

ドロシーの帰還

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★

心に刺さる良作
『オズの魔法使い』をベースに3つの系列の物語が絡み合う構成で、人の嫌な面をシリアスに描きつつも所々にコミカルなシーンもあり、最後には希望の光が見える、バランスの良い完成度の高い作品でした。

ダークファンタジー小説『オズの世界』を書いて人気のベテラン作家と、作家志望の4人の若者のそれぞれの悩みがドロシー、ブリキ、ライオン、かかし、悪い魔女の欲しているものに重ね合わされ、心に突き刺さるような厳しい台詞もたくさんあって、なかなか重い内容でしたが、各登場人物の思いが強く伝わって来て、引き込まれっぱなしの2時間でした。

『オズの魔法使い』の登場人物を演じるシーンは劇中劇として見せるために児童劇のような典型的なキャラ作りをしていたのですが、他の現実的なシーンとの対比を出すためにもっとわざとらしさが感じられる演技をした方が良いと思いました。

効果音や音楽を多用し過ぎているように感じました。せっかく演技だけで十分に表現できる役者が揃っていたので、音に頼らずに演技力で雰囲気や感情を感じさせて欲しかったです。
騙し絵的な遠近法を用いた美術が不思議な空間を作り出していて面白かったです。

オズの魔法使いを演じた中田顕史郎さんが美声で、良い意味でうさんくささ溢れる演技がチャーミングで素晴らしかったです。魔法使いとドロシーの父の演じ分けも見事でした。小玉久仁子さんと梅舟惟永さんが現実にもこういう感じの女性がいると思わせるナチュラルな雰囲気で印象に残りました。

サロメ

サロメ

東京二期会

東京文化会館 大ホール(東京都)

2011/02/22 (火) ~ 2011/02/26 (土)公演終了

満足度★★★★★


音楽と歌詞はそのままに、大胆な読み替え解釈の演出によって純粋な愛の物語に変貌した『サロメ』、とても素晴らしかったです。キワモノ的な演出なのかと思っていたのですが、不覚にも感動して涙を流してしまいました。

時代は近未来の核戦争後の設定で、閉塞感漂うシェルターの中に暮らす人々が未来に希望を持てず堕落した享楽に耽っている中、サロメが初めて愛を知り、ヨカナーンと共に新しい世界へ歩み出すという(ヨカナーンは死にません)、従来の『サロメ』とは全く異なるハッピーエンドになっていて驚きました。


チラシに「セクシャルかつ常軌を逸したアヴァンギャルドな表現を含んでおりますので、ご了承ください」とある通り、前半は乱交、レイプ、死姦、食人と、普通のオペラではやらないような演出が延々と続き、後半にサロメが愛に目覚めるシーンとの対比が際立っていました。
元の台本と異なる演出をしている箇所がたくさんあったのですが、どれ表面的な奇抜さを狙っただけでなく、作品の内容をより明確にする、納得できる表現になっていました。

地下の牢獄に幽閉されているヨカナーンが舞台裏で歌う部分を、頭に紙袋を被って冒頭から舞台で歌っていたのですが、紙袋によって舞台裏から聞こえるようなくぐもった音色の効果を出していました。また、サロメが井戸から地下を覗き込んで暗いと歌うところも紙袋の中を覗き込むこみながら歌うようにして、歌詞と整合が取れていたのが巧みでした。

サロメがヨカナーンに惹かれていると知って絶望し自殺するナラボートが、この演出ではヘロデに射殺されていました。そうすることによって、後のシーンでヘロデがナラポートの遺体を見て「誰が殺したのか?」と歌うシーンが、自分でやっておきながら知らないフリをするという形になっていて、ヘロデのどうしようもない性格を強調していたのも、面白い演出でした。

ヘロデに願いを聞き入れてもらうためにサロメが踊りながら服を脱ぎ捨て裸になることで有名な「7つのヴェールの踊り」のシーンは感動的でした。サロメは脱ぐことなく逆に周りの人たちを踊らせ、この閉塞した世界に耐え切れなくなったサロメが部屋の壁にドアを描き体当たりして外へ出ようとすると、他の全員も真似してドアを描き外の世界を求めるシーンが切なかったです。その後、叶わぬ希望と分かると絶望して殺伐とした殺し合いに発展し、サロメ、ヨカナーン、ヘロデ、ヘロディアスだけが生き残るのですが、「7つのヴェールの踊り」の中で音楽的に一番盛り上がるところで、サロメの前に白いワンピースを着た5、6歳程度の小さな女の子(サロメの若い頃か、将来生まれてくるであろうサロメの娘でしょうか?)が突如現れ、「希望」や「愛」を象徴していたのがとても美しかったです。

ヨカナーンは首を切られるのですが、その後すぐに生きたヨカナーンが現れ、2人が椅子に座った状態で歌われるサロメの長いモノローグはとても強く美しいラブソングとして響いていました。

普通はヨカナーンの首にキスをするサロメを見たヘロデが「あの女を殺せ!」と歌って幕切れなのですが、この演出では愛に目覚めたサロメとヨカナーンが自らの手でいかにもオペラ劇場といった感じの赤い舞台幕を両袖から引いて閉じて立ち去り、舞台上には何も無い状態になったところで、突如客席の1人が立ち上がり日本語で「あの女を殺せ!」と叫んで終わりました。観客の無意識的な欲望を代弁した形になっていて、この作品内で繰り広げられた欲望と堕落が渦巻く世界が、実は現実世界と変わらないものであると痛感させられ、秀逸な効果をあげていたと思います。
また、コンヴィチュニーさんの演出では毎回ブーイングが出ることを逆手に取った自虐的ギャグの意味も重ねてあって、怖さと可笑しさが同時に感じられました。
ちなみに叫んだサクラの人はカーテンコールで盛り上がっている最中にブツブツ文句を言いながら出て行くというところまで演技をしていて、その様子も楽しかったです。

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』やレンブラント『解剖学講義』など名画を引用した人物の配置や、過剰なエロ・グロ・暴力を高い美意識でまとめる手法は、ピーター・グリーナウェイ監督の映画『コックと泥棒、その妻と愛人』との共通点を感じさせました。


常に焙りや注射をしているジャンキーで軽薄なダメ人間のヘロデを演じた高橋淳さんとドラァグクイーンの様な出で立ち・振る舞いのヘロディアスを演じた板波利加さんが強烈なキャラと歌声でインパクトがありました。サロメを演じた林正子さんも、体中をまさぐられながら、走りながら、転げ回りながらと歌うのにかなり負荷がかかる演技をしながら歌いきっていて素晴らしかったです。パンキッシュでコケティッシュな姿も魅力的でした。
他の歌手のたちも歌のみならずセクシャルな大胆な演技や、隅の方でこそこそ小ネタをしたり、後半30分間はずっと舞台上で死んだ姿のままという大変な演出をこなしていて良かったです。

物を投げつけたり、テーブルを引っくり返したりとガチャガチャ物音がうるさく(実はちゃんと楽譜と密接なタイミングでのアクションになっていました)、歌手もかなり動き回りったり無理な体勢で歌うので、ただ綺麗な音楽を求める人には不向きですが、現在の世の中を反映する演劇作品としても最高の出来で、演劇ファンの人にも観てもらいたい作品でした。

オーケストラも大掛かりなセットも照明も素晴らしかったので、ぜひレパートリー作品にして再演をして欲しいです。

眠狂四郎無頼控

眠狂四郎無頼控

松竹

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2011/02/16 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★

Gackt様オンステージ
分かりやすい物語と演出の時代劇ですが、演劇作品としてはいまいちな出来でした。省略や見立てといった観客に想像を喚起させる演劇ならではの「余白」的要素がなく、映像で何でもかんでも説明していて、「舞台を観た」という満足感があまり得られませんでした。
Gacktさんのファンの人以外にはチケット代(1~3万円)の分の価値は感じられないのではと思いました。

回想シーンや背景、効果などで映像を多用して時間や空間の広がりを演出していたものの、舞台上の役者、大道具とチグハグな感じを受けました。
殺陣のシーンでは役者の動きに同期して格闘ゲームみたいな刀の軌跡や火花が背後に写し出されるという、派手な演出が施されていましたが、その大袈裟さが逆に安っぽく感じました。役者の後ろで映像がキラキラしているのが妙な感じなので、スモークか紗幕を使って役者より手前に映像効果が来るようにした方が良いと思いました。
3Dモデリングで作られた背景映像は質感がいかにもCGといったギラギラした感じで、実在する大道具に対して浮いていました。

寡黙な眠狂四郎を演じたGacktさんは流石に格好良かったです。殺陣も決まっていました。しかし、「…ふっ…」と「…はぁ…(溜め息)」という台詞が多く、しつこさを感じました。モノローグのシーンではライブカメラで顔のアップが映されるためか、生台詞でなく録音だったのが残念でした。
眠狂四郎のライバル三雲を演じた嶋田久作さんの低い声と存在感のある佇まいが素敵でした。

カーテンコールも芝居仕立てで世界観を壊していないのは良かったのですが、ちょっと時間をかけ過ぎのように感じました。全体としても休憩込みで3時間半弱は長く、刈り込んでスピード感を持たせた方が良いと思いました。

パペット・オン・ザ・パニック 完全版【全ての公演は終了致しました。ご来場いただき本当にありがとうございました!!】

パペット・オン・ザ・パニック 完全版【全ての公演は終了致しました。ご来場いただき本当にありがとうございました!!】

隕石少年トースター

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/02/17 (木) ~ 2011/02/21 (月)公演終了

満足度★★★

オーソドックスなコメディー
チラシの文章を読んで想像していたようなブラックさもほとんど無く、老若男女が安心して観ることの出来るコメディー作品でした。大阪の劇団ということでコテコテな作風かと思っていたのですが(大阪に対する偏見ですね…)、良くも悪くも癖のない雰囲気でした

ちょっとグロテスクな、本当の『カチカチ山』を上演しようとする人形劇団が、劇場の元プロデューサーの陰謀によって上演が困難になり、なんとか上演するために、その劇場の居合わせた劇団のメンバーや現プロデューサーが力を合わせてなんとかやり遂げるというシンプルな物語でしたが、本当の『カチカチ山』をやりたい人形劇団の人と、子供に対する影響を心配する親との対立や劇団の主宰と役者の対立など、すんなり行かない要素が色々と盛り込んであって、話の幅を広げていたのが良かったです。表面上はコメディーですが、うっすらシリアスなトピックを入れてあるのも好印象でした。
また、実際の登場人物はそれほど多くないのですが、舞台上に出て来ない他の人たちの存在を感じさせるのが上手いと思いました。

好きな俳優と顔が似ているというだけの理由で、劇団主宰の人物がキモい性格の人物に惚れてしまうのが、物語の展開上でその設定が上手く活かされてもいなかったので、腑に落ちませんでした。
後半の盛り上がりが欠けるように感じました。ラストに向けて、もっと少し畳み掛けるような展開と笑いが欲しかったです。

元プロデューサーの手先の滝口を演じた関敬さんが、気持ち悪さと愛嬌のバランスが絶妙で面白かったです。あと、仕掛けのある美術が、素晴らしかったです。まさかあのように動くとは思ってもいませんでした。

マッチ売りの少女

マッチ売りの少女

MODE

座・高円寺1(東京都)

2011/02/11 (金) ~ 2011/02/20 (日)公演終了

満足度★★★

静かで奇妙で美しい作品
ある老夫婦の家に、その夫婦の子だと名乗る女性が訪ねて来る話で、その女性が『マッチ売りの少女』の主人公と重ね合わされて描かれていました。地味な内容ですが、怖くて不思議な雰囲気の物語と、ベテラン役者の落ち着いた演技に引き込まれて、90分間弱の上演時間がもっと短いように感じました。

前半は淡々とした会話が続きますが、弟が出て来てからはいかにも別役さん的な奇妙な展開になって行き、夫婦が姉弟に翻弄されて行く姿が滑稽でした。

「良い人」であろうと振る舞う夫婦の大崎由利子さん、福士惠二さんの演技がとても良かったです。姉弟の2人は笑いを取る部分の演技が上手く行ってないように感じました。

マレーヴィチの絵画を思わせるセットや、実在感のある小道具、照明、音楽も洗練されていて美しかったです。松本修さん演出で定番のロングコート・帽子・トランクは今回も健在でした。この格好で静かに立っている姿が印象に残りました。

この公演のチラシを見掛けたことがなく、こりっちで知ったのですが、このようなしっかりと丁寧に作られた作品があまり宣伝されていないのは勿体ないと思いました。

不機嫌な子猫ちゃん

不機嫌な子猫ちゃん

青年団若手自主公演 田川企画

アトリエ春風舎(東京都)

2011/02/15 (火) ~ 2011/02/21 (月)公演終了

満足度★★★

「えっ?」
家具が数点あるだけのシンプルな空間の中、それぞれ一癖ある自分の価値観に従って突き進む人たちが組み合わせを変えながら噛み合ない対話を続けるだけのシンプルな物語でしたが、台詞や役者に魅力があってじわじわと引き込まれる作品でした。

「えっ?」や「何?」といったコミュニケーションが取れていない言葉が多用されていて、印象に残りました。その場にいると笑えないような会話やシチュエーションなのですが、外側から見ているとそのどうしようもなさがシニカルでユーモラスでした。
前半はちょっと変だけど日常的な光景だったのが、後半に少し幻想的な感じになるのも違和感がなく、そういうのもありかもと思わせる、不思議な雰囲気が面白かったです。

奥にちょっと怖いものを感じさせながら娘を溺愛する母を演じた兵藤公美さんの台詞の間の取り方が絶妙でとても良かったです。

上演中に天井の配管を流れる排水の音が聞こえたり、建物がミシミシと鳴ったりしたのも効果音のように聞こえて来て作品の雰囲気作りに一役買っていたように思います。

FLASH

FLASH

オフィスエルアール

座・高円寺2(東京都)

2011/02/15 (火) ~ 2011/02/16 (水)公演終了

満足度★★

不完全燃焼?
記憶をテーマに、全くタイプの異なる2作品を上演したのですが、残念ながらどちらも中途半端に感じました。

『赤よりも碧く、なほ、かがやく黄色』
LED式の青信号を見ると苦しくなる症状を患った男のトラウマが明らかになる物語でした。
分かりやすい展開でしたが、台詞回しや台詞の間が上手く行ってなくて、上滑りしている印象を受けました。コミカルな場面や子供時代の場面が役者の色々な演技を見せるために無理に入れているように感じられて、楽しめませんでした。
全体的に演技がオーバーだったので、繊細な部分も観たかったです。

『晩鐘』
ある夫婦の半生を様々な演出手法を用いて描いた作品でした。
文節を壊した台詞、役の入れ替わり、時間軸を行き来する構成、マイム的身体表現など色々盛り込んでいて凝った作りでしたが、手法を通じて表現したいものが見えて来ず、「手法のための手法」になってしまっているように感じました。
生まれ来る子供や晩年を描いたシーンが印象に残りました。スピード感や、ある程度観客を突き放すような思いきりの良さがもっと出てくれば良くなると思いました。

影のない女

影のない女

JAPAN ARTS

東京文化会館 大ホール(東京都)

2011/02/12 (土) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★★★

演出が残念
日本でも上演された『ハムレット』やミュージカル『マルグリット』の演出を手掛けた英国を代表する演出家、ジョナサン・ケントさんの演出ということで、観に行ったのですが、期待以上のものは感じられませんでした。しかし、歌手とオーケストラのパワーのある演奏は素晴らしく、贅沢な時間を堪能しました。

霊界は中国っぽい幻想的でエキゾチックな衣装や美術で表現され、人間界は現代のうらぶれたアパートの室内で衣装も普段着とリアリスティックに表現されて、対比がはっきりしていて良かったです。
映像を多用した演出で、場面転換の間奏曲の流れる部分では雲や波など自然現象を抽象的にしたような映像と、飛ぶ鳥のシルエットが投影されるのですが、毎回同じ様な映像で工夫が感じられませんでした。鳥の姿もいかにもCGな動きで残念でした。
アンサンブルの群舞も美しい動きで目立ち過ぎることもなく良かったです。

人間界の旦那が夜中に一人でテレビを見ているシーンで夫婦の噛み合ない様子が繊細に表現されていました。
1幕終盤の児童合唱による「この世に生まれなかった子供たち」のシーンでは室内にモノクロで赤ちゃんの映像が投影され、とってもホラー的で曲の内容にぴったりな演出だと思いました。

2幕最後の緊張感高まる場面で紗幕に燃え上がる炎の映像が投影され、その後ろでアパートのセットが一部を残して、舞台後方に回転しながら後退して行くシーンはお金を掛けたオペラだからこそできる演出で、とても迫力がありました。

3幕では1幕、2幕に出て来た車と巨木が上から吊り下げられて、地底の世界を表しているのは面白かったのですが、最後まで吊り下げっぱなしなのは邪魔に感じました。
最後の場面では合唱の人たちが現代の普段着を着て後方から大勢出て来て、愛情が世界や世代を超えて連なって行くことが表現されていて感動的でした。

幻想的な世界と現実の世界が交互に出て来て、象徴や比喩的な要素の多い、表現が難しい作品を分かりやすく演出していたと思いますが、4万円近くも料金を取るのなら、このプロダクションならではというものを演奏だけでなく演出でももっと見せて欲しかったです。

今年は二期会の『サロメ』、新国立劇場の『ばらの騎士』、加藤健一事務所の『コラボレーション』(リヒャルト・シュトラウスが主役の物語)など、リヒャルト・シュトラウス絡みの公演がたくさんあって楽しみです。

Sound Migration

Sound Migration

TPAM・国際舞台芸術ミーティング

スパイラルホール(東京都)

2011/02/12 (土) ~ 2011/02/12 (土)公演終了

満足度★★★

調和しないコラボレーション
日本とトルコそれぞれ2人ずつの先鋭的な音楽家の演奏に沈黙劇的なパフォーマンスが加わった、刺激的なコンサートでした。

アブストラクトな表現のギターとコントラバスに独特の節回しの歌が絡む様はアヴァンギャルドでありながらノルスタルジックな雰囲気もあり、不思議な感じでした。
それぞれ日本語とトルコ語で同時に歌ったり、ノイジーな演奏の上でメロディーを歌ったりと、安易に迎合しないコラボレーションが硬質な質感を出していて良かったです。

美加理さんのパフォーマンスも能を思わせる静かでありながら強さを感じさせる神秘的なもので素晴らしかったです。ただ立っているだけでもとても美しく、場の空気が変わる様でした。もっと美加理さんのパフォーマンスを観たかったです。

CHANTING HILL

CHANTING HILL

ケイタケイ

日暮里サニーホール(東京都)

2011/02/12 (土) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★

物足りなかったです。
大昔の漁や農耕作業、あるいは風や波など自然現象をを思わせる動きで、ダンス作品というよりかは古代の儀式のようでした。

大半が複数名でのゆったりとした動きだったのですが、ダンサーのレベルにかなり差があり、緊張感が感じられない体の使い方の人もいて、表現したいことがあまり伝わって来ませんでした。
各シーンが長く、ひとつのシーンの中ではほとんど展開がないため、実際の時間よりかなり長く感じられました。

古着を繋ぎ合わせて作ったロープ状の物でエリアを区切り、そのエリア内だけで踊るアイデアは面白かったので、もっと発展させて欲しかったです。

終盤になってやっと惹き付けられる瞬間があったので、そのような瞬間がもっと色々なところであればよい作品になると思いました。ケイタケイさんは70年代からニューヨークで活動されていたとのことなので、結構な年齢の方のはずですが、ソロのシーンではオーラのある動きで、良かったです。

葉のない木と生えてきたばかりの芽のオブジェが人生の始まりと終わりを暗示しているようで素敵でした。

ゾウガメのソニックライフ

ゾウガメのソニックライフ

チェルフィッチュ

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2011/02/02 (水) ~ 2011/02/15 (火)公演終了

満足度★★★★

日常的
チェルフィッチュ特有の文体と身体表現を通して「日常」とそれを抜け出すための手段としての「旅行」について語られる作品でした。ダラダラした雰囲気の中に緊張感があって、集中力を途切れさせない魅力に満ちていました。

「~ですよね」や「~なんですけど」といった言い回しや間投詞の多用、破綻した文法、妙な間など、リアルな日常会話体の淡々としたモノローグが交互に語られ、複数の人による会話のシーンはほとんどありませんでした。会話も素っ毛ない相槌が多く、現代の若者の人との距離感が的確に表現されていたと思います。

ビデオカメラで撮った役者の姿をリアルタイムでスクリーンに投影してドキュメンタリー的な効果を出しているだけではなく、終盤には映像と客席の関係が作品の内に取り込まれているのが面白かったです。

キャスターのついた箱で船や棺桶をイメージさせる詩的な演出は今までにあまり無かった要素で、リアルな言葉と身体の表現の中でとても新鮮に感じました。

今まで観たことのあるチェルフィッチュの作品の中で一番大きな空間での公演でしたが、空間を埋めようとせず、家具やオブジェがぽつんと配置されたスカスカな感じが印象的でした。照明もドラマチックな演出はないのですが、繊細でありながらざっくりした感じもあって良かったです。

グレート、ワンダフル、ファンタスティック

グレート、ワンダフル、ファンタスティック

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/02/09 (水) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★★

新しい展開
去年の『旅、旅旅』に衝撃を受けて、以降は全ての作品を観ている劇団ですが、今回は今までに比べてテンション低めでエロティックな表現もあったりと新境地を切り開いていました。いまいち上手く行ってない部分もありましたが、シュールなテイストの中に切なさや初々しい感覚のある独特の作風は健在でした。

物語を客観的に語る人物がいたりエピソードが細切れだったりで、全体の流れが掴みにくい構造でしたが、後半の高揚感はとても良かったです。

小道具を他のものに見立てる手法が少なめで、今回は突拍子もないイマジネーションの広がりをあまり感じることが出来ませんでした。
今回はクラシック中心の選曲で新鮮な雰囲気でしたが、今までにあったような、一昔前のヒットソングで盛り上がるシーンも観たかったです。

既に3月、4月、6月にオムニバス公演に参加することが決まっていて、所属役者の客演も多くあり、今年も目を離せなさそうです。

ピアノピア

ピアノピア

インパラプレパラート

シアタートラム(東京都)

2011/02/03 (木) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★

分かり易いエンターテインメント作品
1台のピアノと1人の女性が3つの時代を越えて関係していく、スケールの大きな物語でした。大勢のキャストが所狭しと動き回って躍動感がありました。

中世の王族、現代の高校、未来の荒廃した世界を通して1人の女性が成長して行くのを描いた脚本は良かったのですが、テンションの高い台詞回しや、漫画的な極端なキャラ作り、直接的なギャグを多用する演出は子供向けの舞台みたいに感じられて、好みのタイプではありませんでした。
声を張り過ぎて何を言っているのか聞き取れない箇所がたくさんあったのが残念です。

音と動きが同期した最後のパフォーマンス的なシーンが解放感があって、とても素晴らしかったです。映像の使い方も効果的でした。
あの様な趣向の演出を最後まで取っておかずに、もっと色々な場面で観たかったです。

世田谷パブリックシアター&シアタートラムはアーティスティックな作品を上演しているイメージがあり、今回もそのような作品だと思って鑑賞したので、ちょっと肩透かしを食らった感じでしたが、分かり易くて安心して観ることのできるエンターテインメント作品だと思います。

TOBARI

TOBARI

山海塾

世田谷パブリックシアター(東京都)

2011/02/03 (木) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★★

宇宙と人間
白砂の中央に黒い楕円盤が置かれたシンプルな舞台の上で8人の舞踏手が静かに舞う、とても美しい作品でした。別に退屈しているわけではないのにまどろんでしまうという、神秘的な雰囲気が心地良かったです。

具体的な物語はないのですが、ゆるやかに反復される動きから、宇宙の広がりや、その中に孤独に存在する個人をイメージさせるスケールの大きさを感じました。

「舞踏」と聞いて思い浮かべる、半裸に白塗りで歪んだ表情でゆっくり、または痙攣するように動くといった要素がたくさんあるのですが、美術や衣装のビジュアル要素も動きも非常に洗練されているので忌々しさはなく、崇高さを感じさせました。

山海塾は毎回オブジェ的な美術が綺麗で印象に残るのですが、今回も背後の壁と、床上の楕円盤に夜空の星のような細かい照明が仕込まれていて、宇宙空間で踊っているような浮遊感がありました。

弦楽器とパーカッションを主体にした音楽も美しかったのですが、クライマックスのときは身体表現だけで十分に伝わってくるものがあったので、音楽があおり過ぎているように感じました。

ロクな死にかた

ロクな死にかた

アマヤドリ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/02/03 (木) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★★★

死を受け入れること
家族や恋人、あるいは自分自身が死んだことを受け入れるまでの過程を多様なシチュエーションにおける会話やダンスで表現した、爽やかな作品でした。

死んだ人のブログが更新され続けているというミステリー的な話から始まり、次第にそれぞれの登場人物たちの死についての思いが見えてきて、重みのある話になっていました。

スピード感のある現代の若者の言葉使いで次々に場面が展開して行き、観ていて気持良かったです。時折、お笑い的だったり、様式的だったりする台詞回しが挿入されるのも効果的でした。

演劇で用いるダンスは、上半身の動きがメインのパラパラ風のものが多く、個人的には嫌いなのですが、この劇団はステップを重視したアイリッシュダンス的な振付で、迫力があって楽しめました。作品のテーマにも合っていたと思います。
衣装は日常的な格好なのですが、ブラウン系を基調にしていてるのが新鮮でした。

作品の構造も、入れ子的になっていたり、不思議な寂寥感を漂わせる終わり方など凝っていて面白かったです。

全般的に良かったのですが、出演者が多過ぎて、それに合わせてエピソードも少し盛り込み過ぎなように感じました。もう少しコンパクトにまとめるとより一層良くなると思いました

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