満足度★★★★
日常的
チェルフィッチュ特有の文体と身体表現を通して「日常」とそれを抜け出すための手段としての「旅行」について語られる作品でした。ダラダラした雰囲気の中に緊張感があって、集中力を途切れさせない魅力に満ちていました。
「~ですよね」や「~なんですけど」といった言い回しや間投詞の多用、破綻した文法、妙な間など、リアルな日常会話体の淡々としたモノローグが交互に語られ、複数の人による会話のシーンはほとんどありませんでした。会話も素っ毛ない相槌が多く、現代の若者の人との距離感が的確に表現されていたと思います。
ビデオカメラで撮った役者の姿をリアルタイムでスクリーンに投影してドキュメンタリー的な効果を出しているだけではなく、終盤には映像と客席の関係が作品の内に取り込まれているのが面白かったです。
キャスターのついた箱で船や棺桶をイメージさせる詩的な演出は今までにあまり無かった要素で、リアルな言葉と身体の表現の中でとても新鮮に感じました。
今まで観たことのあるチェルフィッチュの作品の中で一番大きな空間での公演でしたが、空間を埋めようとせず、家具やオブジェがぽつんと配置されたスカスカな感じが印象的でした。照明もドラマチックな演出はないのですが、繊細でありながらざっくりした感じもあって良かったです。