満足度★★★★
SFの顔をしたホームドラマ
SF的設定を用いて、記憶をモチーフに家族の愛憎という古典的テーマを描いた作品でした。タイトルからは想像できない展開でしたが、真面目なテーマを時折ユーモアを交えながら丁寧に描く充実した内容で、楽しめました。
回想シーンが何度もあるのですが、物語の設定上そのことに必然性があって、説明的なシーンには感じられない脚本が巧みでした。専門用語で早口バトル、劇中劇、一人芝居、パロディーなど、色々な要素を盛り込んでいたのも良かったです。
個人的には後半は少し冗長に感じました。もっと余白がある終わり方でもテーマは十分に伝わると思いました。
ノスタルジーを感じさせる舞台美術が作品の内容にマッチしていて効果的でした。
繊細な雰囲気の金沢啓太さん、小島明之さんと、ユーモラスな要素の強い役を演じた北川大輔さんの対比が良かったです。
終盤、暗転した後に照明がつかなくなってしまうハプニングがあってハラハラしましたが、役者たちは動じずに暗闇の中で台詞を続けて、中断することなく復旧しました。上演する側からすると痛いトラブルだったでしょうが、かえって劇団員たちの結束力を見ることが出来たように思います。