満足度★★★★
心に刺さる良作
『オズの魔法使い』をベースに3つの系列の物語が絡み合う構成で、人の嫌な面をシリアスに描きつつも所々にコミカルなシーンもあり、最後には希望の光が見える、バランスの良い完成度の高い作品でした。
ダークファンタジー小説『オズの世界』を書いて人気のベテラン作家と、作家志望の4人の若者のそれぞれの悩みがドロシー、ブリキ、ライオン、かかし、悪い魔女の欲しているものに重ね合わされ、心に突き刺さるような厳しい台詞もたくさんあって、なかなか重い内容でしたが、各登場人物の思いが強く伝わって来て、引き込まれっぱなしの2時間でした。
『オズの魔法使い』の登場人物を演じるシーンは劇中劇として見せるために児童劇のような典型的なキャラ作りをしていたのですが、他の現実的なシーンとの対比を出すためにもっとわざとらしさが感じられる演技をした方が良いと思いました。
効果音や音楽を多用し過ぎているように感じました。せっかく演技だけで十分に表現できる役者が揃っていたので、音に頼らずに演技力で雰囲気や感情を感じさせて欲しかったです。
騙し絵的な遠近法を用いた美術が不思議な空間を作り出していて面白かったです。
オズの魔法使いを演じた中田顕史郎さんが美声で、良い意味でうさんくささ溢れる演技がチャーミングで素晴らしかったです。魔法使いとドロシーの父の演じ分けも見事でした。小玉久仁子さんと梅舟惟永さんが現実にもこういう感じの女性がいると思わせるナチュラルな雰囲気で印象に残りました。