Koujiの観てきた!クチコミ一覧

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シューマンに関すること

シューマンに関すること

劇団東京イボンヌ

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/09 (火) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★

劇構造がシューマンの交響曲のようだ。
 シューマンの物語かと思いきや、シューマンの生まれ変わりと思っている男の物語。そしてそれを小説にしようと思っている作家がいたりして、物語は二重三重の構造を持つ。

 そしてその生まれ代わりと思う男とその男を愛する妻の物語がある。この妻がとてもかわいそうだったが最後に少し救われた。

 役者では作家役の奈良崎まどかと夏樹役の太田亜希が魅力的だった。また個性的社長役の秋定里穂がとてもチャーミングだった。

ネタバレBOX

 東京イボンヌはクラシックと舞台の融合を目指している劇団。こういうふうに方向性がはっきりしている劇団はいい。

 最後に妻がクララと呼ばれたとき、今までの苦労がすべて解消したような感じがして涙が流れた。

 太田亜希が新人編集者を演じるときと、クララを演じるときでがらっとタイプが変わり、その変化の見事さに感心した。
パントマイム舞☆夢☆踏LIVE vol.18

パントマイム舞☆夢☆踏LIVE vol.18

パントマイム舞☆夢☆踏

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/03/12 (金) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★

面白い!
 セリフが時々出てくるパントマイムオムニバス。従来のパントマイムの枠におさまらず、自由に演じているところが素敵だ。

 体の動きがしなやかで、表情が豊富で、登場する役者が皆魅力的だった。最後の予告編という寸劇は、とくによくできていた。

ラ・ムーの一族

ラ・ムーの一族

劇団阿佐ヶ谷南南京小僧

明石スタジオ(東京都)

2010/03/11 (木) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★

家族をテーマにした誰でも楽しめるコメディ。
 序盤は少し、初日ゆえの未完成な部分と安っぽさを感じる部分があったが、後半どんどん引き込まれていった。コメディ仕立ての中に、家族の問題、特に父親の問題を語り、桜の園で象徴される家族こそ幸せの原点というテーマを見事に表現していた。

 歌有り踊り有りというエンターテイメントだが、どちらかというと、ドサ回りの一座のように垢抜けてないエンターテイメントがこの劇団の特徴だ。舞台装置を全部段ボールで作っているのもその象徴。それが不思議な味を出して、えも言われぬ魅力のある劇団である。

 役者ではまず、サクラ役のえびのがいい。少女の役を自然に演じ、それでいて魅力たっぷりだった。続いてお母さん役のたなか智保がよかった。コメディの中で母親の凜とした強さと哀しさを演じていた。桜の精を演じた伊藤昌子のいつもながらの熱演も芝居を盛り上げていた。1時間30分があっという間だった。

月並みなはなし[2010]

月並みなはなし[2010]

時間堂

座・高円寺2(東京都)

2010/03/11 (木) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

完成度の高い名作!
 プレビュー公演を観させていただいたが、プレビュー公演とは思えない完成度の高さ。十分練習を積んできたということがよくわかる役者たちがステージをていねいに楽しんでいる様子に好感が持てた。

 物語は近未来のちょっとSF的要素のある会話劇。設定がとても面白く、また登場人物一人一人の個性が魅力的だった。

 役者ではラストシーン、揺れ動く心を目線でしっかりと表現した鈴木浩司が光った。夫への確かな愛とその裏返しの不安を見事に表現した百花亜希も魅力的だった。また物語にスパイスを与える役として登場した大川翔子の明るい演技もいい味を出していた。

 3回目の再演だそうだが、よく練られた脚本をうまい役者が十分練習をして舞台にあげている。チラシ、ホームページ、豪華な当日パンフ、その全てから今回の公演に賭ける時間堂の熱い気持ちが伝わってくる。黒澤世莉の集大成がこの舞台にはある。

ネタバレBOX

 レストランでありながら、その周りには宙に浮かぶ島のような緑色のオブジェがあり、宇宙的広がりを感じさせる素敵な舞台美術だった。

 舞台のスタートがゲームのような役者紹介でとても楽しそうな雰囲気が最初から伝わってきたのもよかった。
棄憶~kioku~

棄憶~kioku~

G-up

青山円形劇場(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/11 (木)公演終了

満足度★★★★

役者同士の火花を見る!
 この作品を観ながら、野木萌葱の「東京裁判」を見たときの感動を想い出した。ストーリーの重厚さとか、脚本の質の高さという前に、野木萌葱の作品は役者の演技力を最大限に引き出す芝居であり、観客に役者を堪能させる作りだと思う。

 有馬自由の里中少将にしびれた。

Nobody,NO BODY

Nobody,NO BODY

パパ・タラフマラ

ザ・スズナリ(東京都)

2010/03/03 (水) ~ 2010/03/09 (火)公演終了

満足度★★★★

鍛え上げられた役者達の競演!
 鍛え上げられたと簡単に言うが、ダンスの切れはもちろんのこと、演技、歌、マイム、その他のことがいずれも合格点を与えられる役者は少ない。

 たった4人の舞台だったが、その条件にかなう役者が4人もいるのだと驚いた。そして、その鍛え上げられた役者によってのみ成立するパパ・タラフマラの公演。ただただ酔いしれた。

ネタバレBOX

 「ゴドーを待ちながら」は私の好きな作品。そのゴド待ちをこんなふうに表現すること自体が新鮮な驚きだった。
『トロカデロ・ライモンド』!!実験終了☆次回は6月中野ポケットにて初の音楽劇『巨人達の国々』!!

『トロカデロ・ライモンド』!!実験終了☆次回は6月中野ポケットにて初の音楽劇『巨人達の国々』!!

舞台芸術集団 地下空港

ギャラリーSite(東京都)

2010/03/06 (土) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

すべてにおいて幻想的な芝居!
 オフオフブロードウェイのようなテイストの芝居。そして、オフオフブロードウェイで成功し、オフブロードウェイで成功し、ブロードウェイのロングランを勝ち取ることが出来るようなそんな予感を感じさせる作品だった。終わった瞬間、まだまだ終わらないでほしいと心から願った。

 実験劇と銘打っているが、すべての試みが計算され完成されており、これこそ正当派幻想劇だと感じた。客席の中から歌声が聞こえてきたときには鳥肌がたった。

幻想的な物語、想像力をかき立てる言葉、そして手作りの音響、象徴的な照明、そして表現のしようのない合唱。すべてが効果的だった。

 幻想的な世界観と田代絵麻さんの顔立ちがぴったりしていてとても素敵だった。眠っているときの姿はロミオとジュリエットのジュリエットかと思った。

ネタバレBOX

 体調がよくなく、しかも天候が悪く、ずいぶんキャンセルしようかどうか迷ったが行ってよかった。もっとロングランをしてたくさんの人に見せたい作品だ。

 外人が見に来ていたが、言葉が少々通じなくても世界に通用する作品だと思った。
ハピネス

ハピネス

劇団てあとろ50’

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★

きらめく感受性、切ない物語。
 才能というのは残念ながら努力とイコールにならないものだ。特に芸術の世界では自分より才能がある仲間を見る目は羨望と嫉妬でしかない。その友と仲良くつきあっていくためには仮面をつけて生きていかなければいけない。しかし・・・。

 若き芸術家の苦悩を描きながら、この作家はロマンティストだ。ハピネスの曲の流れる喫茶きらら、それは幻のユートピアだ。青年時代、誰しも想い出の場所を持っている。誰にも侵されたくない場所。これはそこを守ろうとする人たちと、そこから旅立とうとする人たちの物語。

 ナイーブで壊れやすい感情のひだを的確に描写してみせたり、人を簡単に傷つけてしまうナイフのような台詞が飛び交ったり、青春の荒々しさが舞台全体をみずみずしいものにした。

ネタバレBOX

 荒削り、あるいはもっと練習すればというようなところももちろんあるが、青春の傷跡を身を削ってみせたような役者たちの演技に拍手を送りたい。

 1年生とは思えないうまい役者が数名、将来性十分の魅力的役者が数名いた。今後が楽しみだ。
昆虫大戦争

昆虫大戦争

こゆび侍

RAFT(東京都)

2010/03/05 (金) ~ 2010/03/08 (月)公演終了

満足度★★★★

ストレートな感動作品!
 題名からして「妖怪大戦争」や「怪獣大戦争」のようなB級大作かそのパロディかと思ったが、ストレートな感動物語だった。

 観る側としては、変化球を待っていたのに、ずばっと直球がやってきてちょっと面食らったというところはあるが、それを差し引けば良くできた作品だ。もちろんその面食らった感も作家の狙いだろう。

 また、視点を少し変えるだけで、これだけ違った見方が出来るということで、民族問題や神と人間の関係などもさまざま考えながら観させていただいた。

 作演、成島秀和の昆虫に対する博識ぶりと愛情をたっぷりと楽しませてもらった。

ネタバレBOX

 ふんころがしを舞台にして、あたかも戦時中の沖縄を描いたような舞台だった。感動し、号泣しながらも、それがふんころがしの世界であるということに不思議な気持ちを抱く。その違和感こそが、成島秀和の狙いであろう。やられた。

佐藤みゆきが純粋なふんころがしを好演。「ひめゆりの塔」か「二十四の瞳」にでも出てきそうな登場人物だ。こんなふんころがしがいたら惚れてしまうと思った。
喪服の時間

喪服の時間

弾丸MAMAER

なかのZERO(東京都)

2010/03/03 (水) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

隅から隅まで上質な作り!
 葬儀場を舞台にして、様々な事件が起こる、その人間模様を見事に表現している。役者の演技の小気味よさ、そして演出のテンポの良さは特筆もの。竹重洋平の芝居はコメディを描いているのではなく、人間を描いているのだと思う。しかし、その間合いが絶妙なので観ている観客は、思わず笑ってしまうのだ。

 長男を演じた中村哲人が、若干気が弱いお人好しを好演した。

ネタバレBOX

 前回、貞淑で健気なやまとなでしこを好演した沢樹くるみ、今回は元亭主と現恋人に裏切られる役をこれまた好演。しかし、彼女は今後どうやっていきていくのかが心配。
 Y時のはなし 【Vacant公演終了!Y時は次 5月に山口県YCAMとシンガポールにいきます!!!YCAM公演チケットは4月3日より発売!!!山口で会いましょう~~ぜひ】

Y時のはなし 【Vacant公演終了!Y時は次 5月に山口県YCAMとシンガポールにいきます!!!YCAM公演チケットは4月3日より発売!!!山口で会いましょう~~ぜひ】

快快

Vacant(東京都)

2010/03/04 (木) ~ 2010/03/06 (土)公演終了

満足度★★★★

サービス精神満点!
 映像や様々な仕掛けを駆使して、これでもかこれでもかと観客を楽しませてくれる。サービス満点の劇団だ。

 物語は学童保育を舞台にして、大人と子供のかみ合わない関係を描く。エンタメ要素満載でコメディのように物語は進行していくが、そこで語られているのは、現代日本の抱えるさまざまな問題。

 登場人物は今回たった4人だが、その4人が舞台せましと飛んだりはねたりの大活躍で、とてもエネルギッシュだった。 役者ではおにいさん役の山崎皓司とせんせー役の中林舞が素敵だった。特に山崎皓司のかろやかな動きは見事だった。

 私が観た回は、それに加え、音楽を担当する蓮沼執太のコンサートもあり、お得感たっぷりの公演だった。

ネタバレBOX

 紙飛行機を観客に与え、芝居に参加させるという手法は面白い。芝居が始まる前からわくわく感があった。歌や踊りがあったわけではないのだが、コンサート会場のような雰囲気があった。

 世界を視野にいれて活動を繰り広げる快快、今回も英文字幕を入れての公演。この芝居なら十分海外でも通用するだろう。 
喫茶久瀬

喫茶久瀬

文月堂

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/02 (火) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★

家族の絆をていねいに描く!
 どこか懐かしい感じでいっぱいの喫茶久瀬、そこで巻き起こる様々な人間ドラマを若干ノスタルジックに描いている。

 人には歴史がある。登場人物はそれぞれいい人ばかりだが、それぞれが悩み事を抱え、もがきながら生きている。そんな辛いどうしようもない人生だけど、もう少しがんばってみればいいことだってあるさ、とすべてのことを前向きにとらえる気持ちを与えてくれるドラマ。

 作演の三谷智子の人を見る目が温かく、登場するエピソードのひとつひとつがそれぞれ素敵だ。

 役者陣では店長を演じた川本裕之とその友達役の安東桂吾に魅力を感じた。

ネタバレBOX

 やくざの事務所からアメージンググレースを歌いながら脱出するシーンはツボだった。
笑いながら感動した。

 ラストシーンのブルースブラザーズは予定調和的だったが、それでもふたりの軽やかな踊りに見とれてしまった。お見事。

 2時間超とちょっと時間が長かったが、だれることなくしっかりと家族の物語を描いていた。
テトリミノ=ファクトリー・プラス【ご来場ありがとうございました】

テトリミノ=ファクトリー・プラス【ご来場ありがとうございました】

Aga-risk Entertainment

タイニイアリス(東京都)

2010/03/03 (水) ~ 2010/03/08 (月)公演終了

満足度★★★

発想力の斬新さ!
 テトリスというゲームから発想を広げたSFコメディ。

 私自身はファミコンなるもの、テトリスなるものとほとんど接点なく過ごしてきたので、ストーリーに対する感情移入は他の観客に比べてきわめて低いものだった。それでもこの物語で作り手がやろうとしていることは非常に興味深かった。

 コメディ風のつくりの中にSF的要素があり、また社会性を帯びている。

 役者では、マニュアル役の浅越岳人にうまさと魅力を感じた。また主婦役の宮原知子もいい味を出していた。

ネタバレBOX

 テトリスの中で次々と落ちてくるボックスを、実は作っている人がいるという発想。実はそれはまやかしで雇用創出のためにわざわざ面倒くさいことをやらされているのだという発想。そして彼らがそこから覗ける女の裸を見ることに子供のように喜びを感じるわけだが、実はそれは巧妙に仕掛けられたものだということがわかったときなどぞくぞくっとした。すべてにおいて発想が新鮮だ。

 映像で作られていたテトリスが見事で、役者の動きとリンクしていた。そこらへんのスタッフ力も見事。
恋2 【満員御礼!ありがとうございました!】

恋2 【満員御礼!ありがとうございました!】

ろりえ

王子小劇場(東京都)

2010/03/03 (水) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

ほとばしるエネルギー、青春の光と影!
 ろりえの芝居には甘酸っぱさが漂う。エロティックであったり、グロテスクであったりしても、それらはすべて若さのもどかしさの表現であって、嫌悪感を伴うものではない。今回グロはほとんどなく、エロも従来に比べれば控えめ、初見の方も見やすいだろう。

 しかし、芝居の持つエネルギーだとか熱量だとかいうものは、他の芝居とは比べものにならない。初日とは思えない完成度の高さ。間違いなく名作である。

 奥山雄太の芝居は、シーンと一体になった台詞の切れ味、感性のきらめき、そして大仕掛けな演出の妙、この二本立てだと思う。あえて言えば、清水邦夫と蜷川幸雄の才能を併せ持ったような人材だ。早く、蜷川が1本の芝居にかけるくらいのお金を与えて、奥山雄太に思う存分演出をさせてみたい。

 ハイバイの坂口辰平のナイーブな演技が素敵だ。柿喰う客の深谷由梨香も柿とはまたひと味違った形で体を張って輝いていた。しかし、ろりえには梅舟惟永、徳橋みのり、志水衿子という豪華女優陣がいる。そして男優では若手俳優ナンバー1の実力を持つ高木健がいる。豪華客演陣を呼ぶ必要はあまり感じないのだが。個人的には高木健にもっともっと前面に出てきてほしかった。

 オープニングとラストシーンは名場面、鳥肌がたった

ネタバレBOX

 腹に響く重低音、会場内に吹き抜ける嵐、ろりえの芝居はロックコンサートのようだ。

「ご注意、絶対に立たない、手に何も持たない、膝の上に何ものせない、スタッフから指示が出た場合はお従いください。お従い頂けなかった場合は、安全の保証はいたしかねますのでご了承ください。」いつものことだが、開演前からたっぷり脅してくれる。客席にまで心地よい緊張感を与えてくれる劇団はそうない。

 今回も客席は無事ではなかった。しかし、それこそが本来の演劇の楽しみである。
農業少女

農業少女

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2010/03/01 (月) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★★★

多部未華子の圧倒的存在感に驚嘆。
 まず、多部未華子の存在感に驚嘆した。芸達者達に囲まれても、一歩も引けをとらない。ただのかわい子ちゃん女優ではなく、したたかな部分と色っぽい部分と、シリアスな演技をさせたらそれも出来そうだという将来性を十分感じさせた。

 他の役者も秀逸。たった4人の芝居だということに驚くくらい、舞台から観客から縦横無尽に使って、いったい何十人登場したのかと感じさせるくらいの迫力である。

 台本がいいのはもちろんだが、松尾演出が素晴らしかった。あの演出力なら、別に野田戯曲でなくても松尾の手にかかっただけで名作になるのではないかと思ったくらいである。

 遊び心満載で、笑ってるうちに、物語の持つ社会性に胸打たれた。お見事である。

リズム三兄妹

リズム三兄妹

岡崎藝術座

横浜にぎわい座・のげシャーレ(神奈川県)

2010/02/27 (土) ~ 2010/03/02 (火)公演終了

満足度★★★★

召田実子の圧倒的存在感!
 前作「ヘアカットさん」で岸田戯曲賞にノミネートされて波に乗る岡崎芸術座が、2年前の話題作を横浜のげシャーレにぎわい座で再演した。神里雄大は身体とそのリズムにこだわる演出家だ。リズム三兄妹にはまさにそのエッセンスが詰め込まれている作品。

 開幕からしばらくの間は、いったい何が始まるのか、この作品は何をしようとしているのかよくわからなかった。しかし、次第にドラマが動き始め、テンポが速くなっていくと俄然面白くなった。そして極めつきは召田実子の登場、恐るべき破壊力と恐るべき存在感を持った女優だ。1月のFUKAIPRODECE羽衣でも存在感を見せたが、今回は全ての登場人物を食って彼女のオンステージのように見えた。リズムをテーマにした芝居で、わざとリズムをはずすということがいかに難しいことか。そしてはずれているんだけど、それでいながら召田実子という存在はまさにリズム感の塊だった。

 神里雄大の演出はまるで巧妙なオーケストラのようだ。静かに静かに始まり、主旋律をさりげなく繰り返しながら、最後に全ての楽器で(役者のこと)クライマックスを作るという手法。それらを計算づくでなく、神里雄大の感性でやってしまうのであろうと感じた。戯曲家としてだけでなく、演出家としても将来が楽しみである。

 巣恋歌を演じた西田夏奈子の歌も魅力的だった。

ネタバレBOX

 地明かりのように見せて、要所できらめく照明と、センスのいい音楽も素敵だった。ラストシーンはただ、あっけにとられて観ていた。
The Heavy User

The Heavy User

柿喰う客

仙行寺(東京都)

2010/02/27 (土) ~ 2010/03/02 (火)公演終了

満足度★★★★

新しく、そして普遍的・・・。
 前回のスポーツ演劇に続いて、柿喰う客は身体とリズムにこだわった実験的公演を行った。お寺の本堂を借り、地明かり、音響も無しという中で演劇の原点を問うような公演。

 英語の発声練習からスタートして、様々な音声的遊技をからめながら、サスペンスドラマが進行する。柿喰う客の芝居はいつもどこにもない芝居だ。

 これから3月はフランス公演、4月は二本立て公演、5月はオール女性キャストによる本公演と怒濤のようなスケジュールが続くらしい。

 快進撃を続ける柿喰う客だが、スケールの大きい名作「悪趣味」を堪能した身としては、早く中屋敷渾身の本公演が観たくてたまらない。

機械城奇譚【当日券あり!1時間40分です】

機械城奇譚【当日券あり!1時間40分です】

少年社中

劇場MOMO(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

少年社中ワールドを堪能!
 トーンとしては若干暗めで、壊れた機械が並ぶ古びたお店が舞台というのが今回の作品だが、内容は少年社中得意の暖かいファンタジー。終わった後、誰もが感動の余韻に浸る素晴らしい作品だ。

 入った瞬間から見えるお店のセットが幻想的で、あたかもジブリの作品のように味のある作り。ただ古びた機械を並べるだけではあの雰囲気は出ない。舞台美術担当者のセンスを感じた。

 物語は序盤、荒唐無稽なおとぎ話のようにスタートしたが、映写機役の堀池直毅のエピソードあたりからどんどん引き込まれ、最終的にはとても深い感動的な物語となった。どこかの国で長く語り継がれている童話のように、シンプルだが、魅力あふれる物語である。元ネタなしにこの物語を作ったとしたら、毛利宣宏は物語を作る天才である。

 役者では早大劇研の先輩劇団総数姉妹からの客演小林至が店長役でいい味を出していた。謎の客で、実は○○で、その実は△△だったという難しい役を演じた大竹えりが奥の深い演技で、これまたすてきだった。

 相変わらず証明や音響や衣装等のスタッフワークがお見事。少年社中ワールドを堪能できた2時間だった。

halshinam【ご来場ありがとうございました】

halshinam【ご来場ありがとうございました】

劇団森

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

前衛的で刺激的!
 久しぶりにアバンギャルドな芝居を堪能した。早大学生会館のステージを広々と使い、劇場に入った瞬間から新鮮さを感じた。B203ってこんなに広かったのだ。ステージがとても広く感じた。そう感じさせただけでも影山直文の演出の成功だろう。

 物語は難解、ビートルズが出てきたり、宇宙人が攻めてくるということで防衛隊を組織したり、お掃除ロボットを開発したり。しかし、ストーリーに重きはなく、それぞれのシーンの詩的なイメージを紡いで演劇にしていくという作り。

 定期的に挿入される音楽がまさにツボで、素敵だった。ビートルズの歌を口パクするときの田中晶の表情がたまらない。また影山直文の書く台詞が全て詩になっているところに驚く。わざと抑揚を抑えたしゃべり方をさせ、まるで本を棒読みしているかのような台詞術が逆に詩的なリズムを形成している。とても刺激的な芝居だった。

ネタバレBOX

 物語の流れがやや単調だったことが残念。詩的な台詞もときどき子守歌に聞こえたりして眠気が襲ってきた。さまざまな面で実験的な非常に刺激的な芝居なので、もう少し照明や装置でメリハリをつけ、シーン毎の美しさを表現出来ればもっともっと面白かったのにと思う。

 方向性で言えば、サンプルの松井周に似ているか。最近あまりお目にからない前衛的要素も私の世代には懐かしかった。
今宵、花の宴の姫君は。

今宵、花の宴の姫君は。

メッテルニッヒ

萬劇場(東京都)

2010/02/26 (金) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

美しく哀しい平安王朝コメディ!
 宇宙人にゲームソフトをもらい、そのソフトで平安時代のギャルゲーを作り、自分がゲームの登場人物になるというストーリー。荒唐無稽な話で、主人公がゲームの主人公になるというストーリーは最近よくある設定。

 物語のスタートは若干心配をしながら観ていたが、途中からぐいぐ引き込まれた。平安時代の物語がまずしっかりと練りあがっている。だからゲームの中の物語とはいえ、感情移入してしまった。そちらの物語は王朝絵巻、格調高く、美しく、かっこよく、そして哀しい。

 メインストーリーが荒唐無稽なコメディで、、ゲームの中が重厚でシリアスなラブロマンと、通常とは逆の構成になっているところが面白い。そしてそのゲームの中の悲恋があまりに美しいので、全体のコメディ仕立てがちゃちにならない。そこら辺見事だ。

 出てくる役者、出てくる役者がイケメンと美女ばかり、そのことにも驚いた。演技も含めて関屋役の葵鴒と男装の検非違使蛍を演じた瀬戸山京子が特に素敵だった。

 作演の高橋幹は場面展開がうまく、それぞれが絵になっている。また随所に視覚的に美しいシーンを用意し、素敵でかっこいいお芝居になっていた。王朝悲恋が好きな人にはたまらない作品。

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