GREAT CHIBAの観てきた!クチコミ一覧

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殉情わりだす演算子

殉情わりだす演算子

電動夏子安置システム

赤坂RED/THEATER(東京都)

2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/26 (土) 13:00

第38回公演となると、もう大ベテラン。
今まで、この劇団が私の視野に入って来なかったのは残念なことです。もったいない。たまたま、高畑亜実さんがリオフェスに出ると知って、ちょっと調べたら行き当たりました。

上空から見ると「+」の形をしている建物。これが「演算子」と題される所以なのだけれど、この家には窓も扉もなく、しかし、入ることはできて、しかし、出ることができない、というとんでもない代物である。
建物は迷宮のようであり、また何となく死の香りを漂わせている。死んだ人物が生きていたり、失踪した人物がそこにいたり。
そもそも、館の中にいる人物は、みな生きているのか❓



ネタバレBOX

連れ去られたアカリの娘が生存していた件、どうやって世話をしていたのだろう。
相上も赤子もそもそも、生きて実在しているのか?
吸血姫

吸血姫

劇団唐組

雑司ヶ谷鬼子母神(東京都)

2018/05/19 (土) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/25 (金) 19:00

43年振りの再演とのこと。唐十郎氏もまだまだ若気の行ったり来たりしていた時期だと思う。起承転結やストーリー展開といったものに縛られずに、天衣無縫な舞台。歌あり、踊りあり、コスプレあり。
院長の「お世話したいのです」というセリフのリフレインが気持ち悪すぎて、気持ちよい。
このノリはどこかで観たなあ、と思ったら、月蝕歌劇団だ。高取英氏は寺山修司氏シンパだと思っていたのだけれど、時代的には唐十郎氏とも通底している部分があるんですね。
おまるや注射といった小道具が、70年代の喧騒を象徴し、銀粉蝶さんの演技が、よい意味で、ノスタルジーをかきたてる。
生の唐十郎氏が見守る舞台。どんな顔で観ているのか、気になってチラ見していたら、視線が合ってしまった。ちょっと怖かった。
台詞回しや、舞台転換、たたみかけるテンポといい完成度の高い舞台でした。

ネタバレBOX

テント公演をそんなに観ているわけではないけれど、舞台後景が崩れて、屋外に飛び出していく、という演出はよくある。
唐十郎氏というと、『恐怖劇場アンバランス』第4話「仮面の墓場」をすぐ思い出すのだが、あのラストはテント公演を想定したものだっったのだな、とふと思った。
母の法廷

母の法廷

劇団CANプロ

スタジオCAN(東京都)

2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/05/25 (金) 15:00

法廷物なので、Who、How、Whyなのだけれど、今回は犯人も手口も争われないので、Whyダニット。

ネタバレBOX

冒頭の弁護士、検事の身元や、中盤の裁判員の身元の発言も、物語には全く関連しません、悪しからず。

正直、意外な動機でもないし、社会的な背景を考えさせるような内容ではない。
どのような理由にしても、妊娠させた原因の半分以上は、犯人にあるのだし(彼が年長者であり、彼女の夢を知っていたという事実を考えれば到底許容できない)、ましてや、彼女の女優という夢を考えれば、顔を傷つけることには躊躇したはずだ。
つまり、どのような理由でも(彼女がセレブな家庭だということも含めて)、犯人の行為に同情の余地はない。
堕胎した彼女を、逆恨みして殺そうって、何?

彼女の人生は、すでに殺されているのだし。
母親の愛情云々ではないでしょう。

弁護士も、本来は呆れかえらないと。「がんばろう」ではないはずで、彼の更生とどう向き合うかなのだけれどなあ。

私は、この作品を作った方にWhy出したいなあ。
思いっきりドンデン返しでもあれば別なんだけれど。
害虫

害虫

劇団普通

ギャラリーLE DECO(東京都)

2018/05/22 (火) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/22 (火) 19:30

「帰郷」「換身」「害虫」と観ていくと、石黒さんの作風は、日常的な繰り返しを、時間経過や場面転換に拘ることなく、それぞれその場での登場人物の意識や心情の差異で見せていくのが好きなんだなあ、と感じます。

今回の舞台は、5人兄弟姉妹の関係を一応頭に入れて観ることをお勧めします。
ちょっと整理しておくと、変なことに気づきます。(石黒さんは、全く頓着していない部分かもしれませんが)

ネタバレBOX

長女・・・1人目の夫との子
長男・・・2人目の夫の連れ子
次女・・・2人目の夫との子
三女・・・3人目の夫との子
次男・・・付き合っていた(る?)男性との子
が同居しています。
整理が必要というのは、
本来の年齢順では、こうなっているはずですが、パンフレットでは長男と次女の順が逆になっています。
長男は2番目の夫の連れ子ですから、特殊な事情がない限り、次女より年長で、次女にとっては兄にあたることになります。
パンフレットを読み、舞台のセリフを聞いていると、錯覚に陥ります。
次女が長男の姉と思い込んでしまう、錯覚です。

また、長男は母親と血縁がありませんから、長女、三女、次男とも血縁はありません。唯一血縁があるのは、次女ということになります。

さて、次男は母親と婚姻関係のない男の子として生まれています。この兄弟姉妹の中で、長男と次男は最も遠い関係とも言えましょう。

兄弟姉妹で社会人として働いているのは長女だけのようです。(ただし、金曜の朝にゆっくりと食事の支度ができることを考えると、長男や次女と同じ境遇なのかもしれません)
長男はフリーターか、大学ないし専門学生(バイトをしている)。
次女も同様のことが言えます(夜、割烹で働いている)。
次男は、給食が出ていることから中学生か小学生のようです。
    給食の内容や、高尾山に関する空想話からすると小学生のような気もします     が、一方、空想話では担任の先生ではなく、複数の科目の先生が出てくること    から中学生も否定はできません。
三女は、次女と次男の間ですから、高校生と考えるのが妥当でしょう。

ところで、母親は存命ですが、滅多に家に帰って来ないようです。
普段、どこで寝泊まりをしているのかはわかりません。
また、3人いた夫の生死も判りません。
母には今恋人らしき男性がいるようですが、それが次男の父親なのか、別の男性かも判りません。

整理します。
この家には、ほとんど子供たち(兄弟姉妹)だけが済んでいます。それも血縁が皆一緒ではありません。私生児もいます。その上、5名は年齢もかなり近いのです。
ある意味、ここは楽園です。兄弟仲が悪いということはありませんし、お互いを許し合う風土があります。母親への思慕はあるようですが、それに耽溺することはありません。

しかし、
唯一の長男の血縁である次女は、過去にケーキを食べられた恨みから(これも長男が犯人と限ったわけではない)、自らがやっておきながら、長男が冷蔵庫の中身やご飯を食べたと叱責します。
三女は、次女の思惑を知ってか知らずか、面白がりながら、それに便乗するように長男に食べ物を盗まれたと嘘をつき、長男を疑惑の目で見ます。
長女は、三女や次男の空腹にも、彼らの身勝手に怒り、それを放置します。
皆は、次男の分のカレーを残してあげません。
母親は、カレーを作って欲しいという次女の望みを聞き入れません。

そうです。この家庭では、冷蔵庫が全てを食べてしまうのです。
繰り返します。この家は、兄弟姉妹にとって楽園です。ですから、物語の何年か後、皆が社会人になったようですが、まだ兄弟姉妹は同居しています。
母親も家にいるようになったみたいです。

冷蔵庫には、害虫が湧いていたのかもしれません。
その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

その探偵の名、〜エコソン少年の殺人〜

インプロカンパニーPlatform

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2018/05/19 (土) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/21 (月) 18:30

座席1階1列

この芝居の形式ついては、前にlatticeさんが判りやすく説明されているので割愛します。

ちなみに平日の回には、本編前に「レディ・メイの失踪」という短編(30分)が公演されて、どのように舞台が展開されるのか、予行的に見せてくれます。
私が観た21日の公演は、4回目で初めて犯人が当たったということです。
ただ、土日の公演ではこの短編がないので、前3回の公演で時間切れになったりした背景には、初見の方々の戸惑いなどで、舞台進行が停滞したかもしれません。

舞台は面白いですし、観客参加型としても十分成功していると思います。
役者の皆さんの即興性も、十分に成熟したもので、観ていて不安がありません。

ですから、どのような方にも十分にお勧めできます。
そこで、?と「すごい」と思ったことを書き連ねます。

・8つの感情カードに7名の容疑者ですから、カードは1枚余ります。(ここはネタバレ になるかな)この1枚に「殺意」がなった場合、7名の容疑者の中に犯人がいないこと になります。その場合は、どうするのでしょう。

・被害者の職業は、観客が指名されて決められます。被害者は街の著名人・大立者です ので、それなりに大金を稼ぐ職業ということになっります(今回は不動産会社の社長 でした)が、観客も皆素直ではありません。
 被害者の職業は、容疑者達との人間関係や話の展開を強く拘束しますし、横文字の余 りに難しい職業ですと、即興にしようにもイメージができません。下打ち合わせがほ とんどできない状況ですから(多少は舞台裏に引っ込んだ際にされているのでしょう が)、舞台進行をギクシャクしかねません。
 もちろん、それなりに整理して、話を進めやすい職業として収斂するのでしょうけれ ども。
 ちなみに、私は「男性ストリッパー」にしたいと思っておりました。ショービジネス 界の成功者として考えれば、これもありだと思います。
 石戸貞義さんの容姿が、まず私にそんなインスピレーションを起こさせました。

 最後に、即興劇でどうしても気になることがあります。
即興ですから、意外な演技が飛び出ると、それがコミカルなものであればもちろん、「あ、うまいな」と思われるものでも、つい舞台上の役者さんが笑ってしまうことです。これは、これで、観客の皆さんと一体になる(その演技を楽しむ)という点では、けして悪いこととは言えませんし、それを楽しんでいる観客の方々がおられることも承知しております。
 ただ、どうしても舞台の役者さんが、口を押えたり、後ろを向いてして笑っている姿に違和感を感じることがあります。このあたりは好みなので、どうしろということはないのですが(そのあたりは気遣って、口を押えたりするのでしょうけれど)、どうも楽屋受けな感じがして、私などはちょっと引いてしまうのです。



ネタバレBOX

1枚余ったカードは、捜査にあたる刑事イシトレードの兄の刑事の、弟の関連性という形で使われます。このことは、終劇後に語られます。
この兄刑事は、狂言回し的な存在で、当然刑事イシトレードから尋問を受けることはありません。(もちろん、幾つかのやりとりはありますが)

もし、余ったカードが「殺意」だった場合、この兄刑事が犯人となるのですが、その犯人当てはどうするのでしょうか。可能性としては、7人の容疑者のカードを全て当てて、そこで大どんでん返し、犯人は実は兄の刑事でした、ということがありえます。
そこは、兄の刑事役と、刑事イシトレード役の、動機や証拠に関してハイレベルな即興性が活かされるのでしょうが、どうみても時間的な制約で7人のカードを当てるのは無理そうです。(今回も「母性」「友情」「嫉妬」「殺意」までしか正解がありませんでしたし)

ただ、こんな回を観てみたい気はします。
ヘンリー五世

ヘンリー五世

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2018/05/17 (木) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/05/20 (日) 12:00

これは、戯曲そのものの構造的な欠陥だと認識しているのだけれど、百年戦争の件が冗長で、エピソードとして楽しめる部分も幾つかあるのだけれど、何とも眠気を誘う展開。舞台上で、四十七士の討ち入りは描けても、関ケ原の合戦は描けまい。ただただ、観客に想像力の駆使を懇願するけれども、あくまでも戦争自体は王宮や幕僚の外にしておかないと、演劇にならない。(やるなら、歌舞伎の回り舞台を駆使したような大掛かりでないと)

それともやはり、「ヘンリー4世」観ていないと、ちょっと感情移入しずらいのかな。

その戦争後の終盤、戦争の展開で人物描写が中途半端なままで(イギリス、フランス王宮内の描写が見えずらい)、登場人物の心象描写をやるもんだから、そこのところの取って付けた感になって、どうしても苦しい。
けして、役者さんや演出家が悪いとは思わないのだけれどなあ。

Trance

Trance

笛井事務所

明石スタジオ(東京都)

2018/05/17 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

開始は、バスとピアノの生演奏をバックに、レトロなマイクを前に歌唱が始まる。外は今年最高気温の29度。それを室内のクーラーの効いた部屋、暗闇にスポットライトで聞くと、頭がクラクラする。
舞台の設定は「覆面の舞踏者」、そして「赤い部屋」からのインスピレーションで舞台は赤い紐が垂らされている。

二十日会に新しい会員が招かれての歓迎会。ここの披露されるのが、各会員が体験した過去の話。その各話が、乱歩の諸作品ということになる。
なるほど、各話をエピソードとして繋げるわけではなく、あくまでも語りとして用いているのだな、と納得した次第。そして、最後に新人が語るのが「赤い部屋」の本編の件となるのだが、、、、
単に各説話が、繋がれているだけなのが少々残念な気がするのだけれど、それぞれの語り手の演技と演出が見事なので、飽きることがない。むしろ、これで1時間半なのかといえるほどの濃密な時間を味わえる。


ネタバレBOX

ラストがよく判らない。新人君は殺されたようだけれども、二十日会って何?
新人君が、会に誘われた件がリフレイン的に再現されて、この会はいつも新人を招くことで成立しているらしきなのだけれど、殺人趣味はないと会員たちは語っているし、、、、

ちょっとした仕草から、ダンスに至るまで、細かい所作が見事に練られていて、とても心地よいのだけれど、このラストの締めくくりが、どうもしっくりこないのが、個人的には残念。

それと「押絵と旅する男」の件で「ストーカー」という言葉が出てきたり、「恐ろしき錯誤」を語る男性が落とす手帳がキャンパスノートの小さいのといった、ちょっとしたことが、作品の世界観を崩しているのも残念。
うまい世界観の構築だなあ、と感心しているだけになあ。

以上で、★1つ減かな。
NOISE OPERA カスパー

NOISE OPERA カスパー

芥正彦

テルプシコール(TERPSICHORE)(東京都)

2018/05/05 (土) ~ 2018/05/10 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/07 (月) 19:00

座席1階1列

上演時間は1時間40分程度。
この日は昼過ぎから、強くて冷たい雨が降りしきるが、開場は開演15分前なので、通常の30分前感覚の来客は、開場前に狭いロビーに一杯。結果、雨中に路上で待つ人も出て可哀そう。天候も天候なんだから、早く開ければいいのにとか思うが、これも演出上致し方ない。

開場すると、全裸でうめきながら横たわるカスパーと、彼を研究材料としている研究者や医師の沈黙スロー劇、これ30分もやっていたら、開演と同時に息切れしちゃうものなあ。15分が限界だろう。(以前、体現帝国の「授業」も、同じテレプシで15分前開場だったけれど、やはり舞台上に役者が縛られたりの状態で配置されていた)この辺りは、観客大事としても難しいよなあ。

さて、ペーター・ハントケの「カスパー」
カスパーを石倉来輝氏と人形が交互の日程で演じる。
本日は石倉来輝氏でけれど、彼はほぼ全編動きっぱなし、喋りっぱなし。
初めの30分は全裸で言語ならざる声を出し、外的世界とのバランスに苦しむ身体表現を展開する。そこから、言葉を習得すると、言葉の海の中で溺れるように喋り始め、そして言葉に窒息するように倒錯、錯乱をきたす。

この辺りの石倉来輝氏の芝居は、ただただ圧巻。
そこに、研究者や医師たちの言葉やノイズが、時にリズミカルに、時に不快に挟まれる。外部からのノイズも入れられて、なるほど、カスパーの溢れかえる言語が歌とすれば、その他の音が演奏で、まさに「ノイズオペラ」か。

全編がカスパーの演技を堪能(?)する作品なので、これを人形とした場合に、
この迫力は出るのかなあ。

ネタバレBOX

舞台途中から登場する人形たちは、カスパーの幻想であり、カスパーの人格の拡散を表現する。
糸あやつり人形一糸座の、人間とのコラボ舞台は何度か観てきたが、今回の役割は、あくまでコンパクトな舞台で、カスパーの精神世界を描くという意味で人形を用いるということで、手段的な意味合いが強い。人形に人格が付与されていない。そういう意図で、人形を使うのもありなんだと、ちょっと感心した。

久しぶりに一糸座のムカデや、ゴキブリ、クモも拝見できました。

原作の戯曲を読んでいないので、ハントケの戯曲とラストが一緒なのか知らないけれど、こんな風に舞台オーデションというメタ構成はちょっと拍子抜け。ラストが何となくあっさりし過ぎというか、尻切れトンボというか。
確かに研究者達はスマホを持っていたりしたので、その時点でこれは現代の芝居だと気付くのもありかもしれないけれど。
終盤になるにつれて、言葉の文脈が失われていく高揚が凄まじいので、カスパーが暗殺されるという劇的なラストを想定していたのに。
まいっちんぐマチコ先生

まいっちんぐマチコ先生

舞台版まいっちんぐマチコ先生実行委員会

ブディストホール(東京都)

2018/05/03 (木) ~ 2018/05/06 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/05/04 (金) 13:00

座席1階4列

しいはしジャスタウェイさんの軽快さが、拡散しがちな舞台進行に芯を与えています。片岡さんは、グラビアしか見たことがないので、どんな感じになるのだろうか、不安もありましたが、かなり良くはまっていました。
マチコ台の風量が少なく(いや、団扇の風量のせいか)、肝心のパンチラは今一つ期待通りとはいきませんでした。片岡さんの露出がもっと欲しかったですね。
今回は、柳瀬早紀さんの水着もありませんでしたし。
露出は全体的に控え目でした。
とはいえ、水月桃子さんの水着は眼福、眼福。

渇生

渇生

HIGHcolors

「劇」小劇場(東京都)

2018/04/25 (水) ~ 2018/04/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/04/27 (金) 19:00

座席1階2列

「渇生」ですね。よい造語だと思います。
父親は生まれてくる娘のために、急ぐ車で2歳の子供を轢いてしまいます。
彼はその贖罪に一生を捧げようとします。その娘は24歳になっていますが、数年前に愛する夫を交通事故によって奪われます。
加害者である父と、被害者である娘。その重層が舞台全体に重い空気を漂わせます。

舞台の区切り方が絶妙ですね。
阿久津さんの部屋はやはり、阿久津さんの立位置としては必要ですし、センターを区切る道路はとても有効に使われていました。

阿久津さんと柊家の養子が、同じところで交通整理員をしている冒頭から、人間世界の因縁を感じさせます。

案外、柊さんの息子の直樹さんが、よいアクセントになっていました。
自分がいるじゃないか、いつまでも亡くなった実の息子に思いを馳せる母親に対していら立ちもあったでしょうに。それだからこそ、母親を受け入れたいという想い。
ラスト近く、阿久津さん夫婦と、柊さん夫婦の会話の中で、居場所のないように立ち続ける彼は、その因縁の結末を観たことで救われたのかなあ。

ネタバレBOX

柊さんが阿久津さんの頭にビールをかけて、その後、自身の頭にもビールをかけるシーンは印象的ですね。2人の悲しみを洗い流すような、よい演出でした。男親同士の気持ちをうまく交感させていました。ビールを買いに行かせる場面、まさかビール飲みながら話をしようというわけでもないだろうし、そんな演出だったら嫌だなあ、と思いつつでしたから、とてもよい意味で裏切られたな、と思いました。
息子の直樹さんも、そうした予想をしたでしょうに、それでも素直に買ってくるところに彼の親への実直さと一途な性格を見せましたよね。
柊さんも、息子の気持ちを一旦落ち着かせようという意図も読み取れます。

ラストの父と娘の邂逅は、あの道なしには成立しませんね。
ダム・ウェイター

ダム・ウェイター

Prayers Studio

Prayers Studio(東京都)

2018/04/28 (土) ~ 2018/04/28 (土)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/04/28 (土) 18:00

「不条理」とは何か?
座談会で1つのテーマになっておりましたが、私は日常とか慣習、普通とか常識といったものが突然に(あるいは暴力的に)外される、取り留めのない恐怖だと思います。言い換えると、つい先ほどまで何の意識もせずに、体を任せてきた椅子が、突然外されてしまったことが、トラウマになるような、非常な居心地の悪さ。

この舞台、はっきりと前半と後半に別れていて、前半はベンとガスの取り留めのない会話劇、後半はダム・ウェイターを介して展開される2人の行動劇。

前半の会話劇は、ただただ怖い。イラつくガスとそれを受け止めながら、極端な反応と全き無反応を繰り返すベン。彼らは、殺し屋でその指示を待っているということが、次第に判ってくる。だけれど、彼らの言葉と行動のズレは、おそらく何かを知っていて、何かを知らないことによるズレだということにも気付いてくる。
だから、この会話がやたらと居心地が悪い。フラストレーションが溜まり始めたころ、
ダム・ウェーターが動き出す。

ネタバレBOX

ガスがお湯を沸かそうとしたら、ガス欠ってシャレ?(両方ともGAS?)
「やかんに火を点ける」は正しい表現なの?
11歳の男の子が猫を殺したの?実は8歳の女の子が殺したの?
87歳の男は、なぜトラックの下に潜ろうとしたの?
なぜ2人に、ベッドがあてがわれているの?

なんて思っていたら、
なぜベンは、忖度しながら注文と異なる食物を階上に送ろうとするの?
ガスが持参した飲食物が、やたらと腐りかけたものばかりなのはなぜ?
ガスはどうして、階上にサラダとビールがあると思っているの?
ベンとガスの殺しの手筈は、何を想定して交わされているの?

などなど、わーっと訳わからない、と思っていたら、殺しの指示がきて、、、、
不条理劇は疲れるなあ。



~ラビット番長ノワール短編集~

~ラビット番長ノワール短編集~

ラビット番長

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2018/04/25 (水) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/04/27 (金) 14:00

座席1階E列10番

「黒い」「白い」と分けるよりは、ラビット番長の作劇の幅を証明するような舞台でしたね。

ただし、3本のうち2本組というと、どうしても1本観れないのが出てくるのがもったいない。こうした構成をしている舞台がたまにあるけれど、何ででしょう。作る側としても、せっかくだから全ての作品を観てもらいたいでしょうに。

リピーター狙いとしても、リピートしたいか否かは不透明ですしね。

さて作品ですが
「RS」
いろいろと不明瞭な点があるというご指摘がありますけれど、私的には好物です。真実は、、、という点では、ラストのオチは十分に効いていると思います。ただ、オチがあるにもかかわらず、どうしてあのようなロールプレイングに繋がっていったのかを少し解明はして欲しかったかな。(ヒントはあったようなのだけれど)

「パンジーな乙女たち」
妻を忘れさせた女性とは、あの中の誰なのでしょうか。妻を最後まで後ろ向きにさせておく演出はよかったですよ。「振り返る」という行為に意味が出てきますので。

ネタバレBOX

「RS」
1人だけ前夜外出ができたのは、彼だけが一般人だからなのね。
でも、本来受刑者である彼らが、どうしてタバコを持っていたのだろう。汚職事件に関与していたあの2人も、この機に共謀を図ることも考えれば、かなり警察側にしてもハイリスクでしょう。
ここで演じられる事件は、すでに解決済なのだから(それを全く事実と異なる形で演じさせる意図が不明瞭)、何もリスク冒してまで演じさせる強い理由が欲しかったかな。
それでも、こうした話は好物なので、今後もこうした作品にどんどんチャレンジしてください。

「パンジーな乙女たち」
私「バンジー」だと勝手に思っておりました。めちゃくちゃ危ない女性たち、というような意味で。
妻が、敢えて夫が愛したであろうと思われる女性たちを一か所に集めた意図が、単に自身のラジオを聞かせるだけでとすると、かなり意図が弱いですね。ドラマチックではあるけれど。妻を忘れさせた女性が誰なのかを特定するような強い情念と罠が欲しかったです。でないと、あのまま日曜の女以外が帰ってしまえば、物語終わっちゃうし。
あの男性が小説家ということを知らない女性がほとんどのようでしたから、ラジオのDJがその妻だとは判らないことも、大いにありえたわけで。
妻が、DJをやろうとした訳、「がんばれ」を口癖にしている訳なども、もう少し味付けとしてあったらよかったのでは。

まあ、ちょっと難癖付けましたが、今後も黒いうさぎさんを、どんどん出してください。楽しみにしております。

1984

1984

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2018/04/12 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/04/22 (日) 13:00

かなり、観るのをためらわれた作品。
だいたい、SF作品というのは舞台にするとやけに陳腐になる。
まず、舞台転換をする必要が多いのに、舞台装置も大掛かりになりやすく、ますます展開が鈍重にな悪循環が生じるし。一方で、展開しやすく舞台上を簡素にしようとすると、今度はイメージがしずらく、何が何だか訳が分からなる。

「1984」も、この傾向に陥ったかな。
本国やアメリカでは、なにやら称賛を受けた舞台だということで、結局は観ることとしたのだけれど、不安はあった。
1.ビッグブラザーという抽象的かつ絶対的な存在をどう表現するのか?
2.故大杉漣氏は、どの役をするの?(割とまじめに、当てはまるような題材絵は二と  思ったから)
3.1984年という四半世紀昔前の話をどこでどのように未来として描くのか?

2は残念ながらというか、代役になってしまったけれど、だからといって、大杉さんがこの役をやっても、それほど魅力的になっただろうかというと疑問。

3は、1984年というと陳腐にしか感じられない年代を、さらなる未来からテキストとして読み起こすという構造をとることで、それとなくクリア。

やはり問題なのは1か、だーって全然怖くないんだもの。全体主義、管理主義が。
確かに拷問のシーンはあったけれど、そこだけで見せてしまっているから、追い詰められ感がない。だから、不気味さがないままに、淡々と話が進んでいき、ひどい抑圧社会なのに、割と主人公たち、すらすらと好きなことやってんじゃない、と思えてしまう。それというのも、ビッグブラザーがいるいると言うだけで、えっどこに?となってしまうから。

SFの舞台というのは、ある意味、SFスリラーとしてしか作れないのかな。それとも、
国立劇場や歌舞伎座のような、回り舞台やせり上がりでどどーんと未来や異世界を見せるしかないか。

レバア

レバア

西瓜糖

テアトルBONBON(東京都)

2018/04/18 (水) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/04/25 (水) 19:00

座席1階J列5番

価格4,500円

「レバア」この題名については、パンフレットでの寄稿文でも、肝臓の「レバー」だと思っている記載があったが、私も同様に思っていた。肝臓というのは何とも血生臭さを感じさせる、戦後すぐの人心は戦中をの回想をそうしたものと思い起こさせるものと捉えさせることに無理はないと思った。だから、まんざら変な題名ではないではないし、舞台を観ながら、そのタイトルにどうやって帰着させるのだろうと関心を持っていたのだけれど、、、

そうか、あの「レバア」のことだったのか、彼が目にした「レバア」とは。

舞台の感想を幾つか読ませていただくと、現代の政治状況や戦争観に引きつけて述べているものがあったけれど、私はあくまでもあの時代に寄り添って、各登場人物の心情を読み解いていくことをお勧めしたい。むしろ、現代の問題に置き換えることを拒否して言うようにさえ思えるからだ。
だからこそ、この脚本は凄いのだ、と思う。

娘と2人暮らしの1件家に、何人もの戦争被災者が寄り添っって住んでいる。
彼らは、相互に名前を知らないし、経歴・出自も知らない。主の「せんせい」(小説家)に言わせると、その方が後腐れがなく面倒がないと言う。
だから、彼らは名前がない。「じいさん」「ぼくちゃん」「黒紋付(芸者)」「奥さん」「焼き鳥屋」。
そこに、1人の復員兵が裸足で、盗まれた自分の靴がここにあるとして尋ねてくる。
彼はそのまま、その家に居ついてしまうのだが、その目的は?というお話。
復員兵は、諸々、周囲に影響を与え、次第に「天使」と呼ばれるようになる。

ネタバレBOX

登場人物たちは意識、無意識に関わらず秘密や影を持っている。
「せんせい」は、病弱の妻を放り出しての置屋通いで妻を亡くしている。
「奥さん」は山の手育ちらしいが、夫と子供を亡くして(「ぼくちゃん」を子供だと思い込んでいる)、アルコールに依存し、精神的に不安定だ。
「焼き鳥屋」は戦争で妻を亡くして、毎晩遺体を探している。彼には明かせない素性がある。
「じいさん」は耳がほとんど聞こえない、ということなのだが、実はその振りをすることから、自分の過去から身を守っている。
「ぼくちゃん」は吃音で知能薄弱だが、それも振りで自分の暗い欲望を隠すため。
「黒紋付」は、戦時中座敷に来る兵役徴収者に対して、積年の後悔があり、人知れず苦しんでいる。
では、「娘」と「復員兵」には、、、

暗澹とする現実を透かしながら、時に笑いを、時に戦争の傷跡を挟みつつ、舞台は淡々と進んでいく。そして、ラストでの「レバア」への帰結を持って、急転直下、ドラマは終わる。
復員兵が戦後に感じた違和感、「こんな銃後のために、自分は命を賭して戦地へ赴いたのではない」という思い。これは、彼の犯した犯罪や、最後に娘に話す娘の秘密への気持ちに通底する強い行動原理となっている。
では、娘の秘密とは?この道徳心の強い、父を軽蔑するほどの潔癖でまっすぐな性格。
復員兵が見たある彼女の仕草が、彼の戦時への悔恨を深め、彼の脚をこの家に向かわせ、娘にある行動を採らせるだけれど、それが余りにも悲しい。
そして家から、こっそりと去ろうとした復員兵に、「黒紋付」がかける「あなたは、私の生きる灯だから」(ちょっと違うかも)という言葉は、彼にどう響いたのだろう。

何が凄いのたって、秋之桜子の脚本は戦争体験もないのに、何でここまで戦後間もない人々の心情に深く思いを馳せることができたのだろうかということ。
パンフレットの冒頭で、祖母から半分以上は嘘の戦争話を吹き込まれた、と笑って書いているけれど、それだけでここまで書き込めないだろうに。恐るべし。

帰りに受付でパンフレットを発見。1500円とやや高めだったけれど、本作の余韻を味わいたくて購入しました。ただ、内容的には出演者のポートレートと紹介、稽古風景と、ほとんど内容がなかったなあ。
これでしたら、フライヤーで十分な気もしますし。やはり、作品の解題や、脚本作成のきっかけや作成過程、あるいは出演者の作品解釈など、より作品を深く理解できるための資料性を期待したいです。HPでは、各役者の動画コメントも観れるのだし。
同額だったから、台本を買った方が正解だったみたい。
最後の炎

最後の炎

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2018/04/14 (土) ~ 2018/04/28 (土)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/04/21 (土) 14:00

座席1階1列

こういう舞台を創出すことができるのが、文学座アトリエのよいところなんですよね。一本の木とゆっくりと回転する舞台。

ヨーロッパはいつからこんな喪失感を醸すようになったのだろう。

タバコの害について/たばこのがいについて

タバコの害について/たばこのがいについて

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2018/04/20 (金) ~ 2018/04/24 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/04/20 (金) 20:00

「行灯パブ ろびっち」の意味が解らなかった自身がはずかしいなあ。
ビールに、ウォッカおいしくいただきました。やはり、観劇の楽しみと言えば、日本の伝統としてはやはり飲食は重要だと思います。その点、粋に解禁いただけた夢幻社さんに感謝。音頃な価格というのも助かります。

さて舞台です。
オリジナル作品「たばこのがいについて」
食べ物の好き嫌いが激しい男と、タバコ嫌いな女。
男は、自身を束縛する女に辟易し、女は結婚の決断を下さない男に憎しみさえ抱いている。
ましてや、女はタバコ嫌いで、男はヘビースモーカーときている。
そこには殺意までが交錯しており、その殺意のトリガーは、まさにタバコ。
そう、タバコの害はそこにある。
殺意をそらしながら、お互いにの会話は進むのだが、結末は、、、
ピラニアの話の件は、かなりシュールで、獰猛なまでの食欲と、おとなしい性向は、男比喩で、それを飼っている女は男を飼いならそうとしている女の比喩なのかな。
三輪穂奈美さんは、役を演じる時と普段の装いとのギャップがすごいですよね。

次は、チェーホフの「タバコの害について」
以前、柄本明さんの同舞台を拝見して、その容姿はすごく印象に残っているのに、芝居の内容は一向に記憶に残っていない。はて、こんな内容だっけ、という感じで観劇。
いやあ、オリジナルもいかがわしさ満載でしたが、こちらはもっと満載。
演壇後ろのフライヤーを想起させる屏風と、わざわざ持ち出される妻を模したマネキン、最後に降り注ぐ言葉の雨。
「ああ、自殺生活」でも経験したけれど、益田喜晴さんがこちらに向かってくると怖いよーー。こちらに話しかけているようで、視線が全くどこかに行っているから、どう反応してよいのか、自己存在が失われるような不安を覚えるのですよ。

ただただ、不安を抱かせる1時間半でした。
でも、そこが中毒性を持つ夢幻社の魅力なんだよなあ。

いつも心に太陽を ストリッパー物語

いつも心に太陽を ストリッパー物語

たやのりょう一座

浅草木馬亭(東京都)

2018/04/18 (水) ~ 2018/04/25 (水)公演終了

満足度★★★★

よかったです!!!


リチャード三世

リチャード三世

芸術集団れんこんきすた

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2018/04/19 (木) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/04/19 (木) 19:00

座席1階1列


「リチャード三世」こんな構成、演出もあったのですね。
殺された者、恨みを持つ者の怨念によって、殺されるリチャード三世。
その怨念たちの回想によって綴られる物語、という展開には感心しきりです。
物語の進行も、ともすると終始、陰鬱に流れ一本調子になるところを(これも突きつめると、高い緊張感を保ててすごい舞台になるのですが)、適度にユーモアを混ぜ、緩急をつけてながらテンポよく展開する演出は、2時間半の舞台をけして飽きさせません。
役者さんの芝居も、その個性に合わせて過不足なく緊張感を持たせていますし、何と言っても、皆さん全体的にうまい。ツボを得ていると思います。

さてそこで注文です。
台詞の間違いや噛み、滞っている場面が多すぎです。進行のリズムが崩れるようなことはないのですが、どうしても観客としてはどうしても舞台への集中力を削がれます。
ちょっと、悪連鎖になっているような感じさえしました。

それと、前回の本作公演では、舞台が円形だったとのこと(前回公演の「観てきた」を読みました)。役者さんの席は舞台左右。
今回、役者さんの席が舞台後方になったことで、回想を眺める怨念の主たちの反応や表情が見やすくなったことは正解だったと思います。ただ一方、舞台を長方形にしたことで、役者の立ち位置がバランスよくなっているように推測しているのですが、舞台の周りを役者さんが回るときはちょっとぎくしゃくしませんか。(角を回るときにどうしても大きく方向転換をするので)。最前列の観客とすると、舞台正面の役者さんの導線の幅が狭く、役者さんが舞台下を前面に移動してきたとき、正面を回るのか否かが判りづらく、緊張を強いられます。(観客として足元が邪魔にならないか)

長方形の舞台はけして悪いとは思われないので、それであれば、舞台正面のスペースをもっとゆったりさせた方がよいと思います。今回であれば最前列1列をなくすというような。おそらく、役者さんも正面を回るときに、観客席を気にするでしょうし、(特に、女性は衣裳が宮廷調で大きいので)観客も安心して観ていられますので。

しかし、それでも面白かったですよ。ブラボーです。「リチャード三世」という作品が一層好きになりましたことに感謝します。

追記:また、熊坂理恵子さんを拝見しました。「白蟻の巣」「やとわれ仕事」そして先日「人形の家」本当に印象が変わるなあ。だから、アクターなんでしょうけれど。役の安定度が高い、と感心しきりでした。また、お会いしたいです。

ネタバレBOX

ラストの件がちょっと判りにくかったです。あの金髪は「ヨーク」であり「リチャード」ということは、あの傀儡というか死神というかの役は、分裂したリチャード三世の生霊みたいなものなのでしょうか。
ヴィテブスクの空飛ぶ恋人たち

ヴィテブスクの空飛ぶ恋人たち

劇団印象-indian elephant-

シアター711(東京都)

2018/04/18 (水) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/03/18 (日) 19:30

マルク・シャガールとその妻ベラの愛の物語。
説明文には「シャガール絵画に秘められた愛と狂気」とありますが、「絵画」どうこうについては特に語られているわけではありませんし、(彼の作品を象徴させるような演出は一部ありますが、それに解釈を加えているわけではありません)「狂気」と感じさせる描写もなかったように思われます(多少、芸儒家ですから常人とズレているということはありますが、けして狂気というほどのものではない)。

ある意味、他愛なく相手に恋をして、双方のめり込んでいくのだけれど、2人は
2つの世界大戦、ロシア革命、ナチスの台頭というヨーロッパを覆う大きな影に翻弄されていきます。そして、ユダヤ人迫害。
まあ、現代日常でも、ただでさえ芸術家の家庭で生活の安定が難しい中、出産に子育て、流浪の生活となれば、お互いの間でいろいろな軋轢が生じるのは当然なわけです。
だからむしろ、歴史に大きく翻弄されながらも、意思の疎通に障害を被っても、この2人がひたすらに相手を求めてやまないということは、ただただ美しい。

とにかく、役者さんがよい。
マルクを演じる村島智之さんは快活に飛び回り、天才然とも大人然ともしない純粋無垢なベラへの愛と絵画への執着を演じきります。
(ちなみに、村島さんはシャガール本人似らしく、家で調べたら本当、似てる。なお
フライヤーの写真より、本物はかなり男前です)
ベラを演じる山村茉梨乃さんは、自身の感情に正直に強く強くマルクを求める演技は、明朗さと情熱、時として辛苦の表現をもって、観客を痺れさせます。
小日向星一さんは、2人を取り巻く幾つもの役で、そつなく2人の苦悩も喜びも引き立たせています。
田代晶子さんのバイオリンは、簡潔な舞台装置に、幾つもの美しい花を飾り付けてくれます。

うん、マルクとベラは確かに空を飛んでいましたよ。

鈴木アツトさん司会のアフタートークは、シャガール自身にスポットをあてた内容で、シャガールに造詣の深いゲストを呼んで、毎回テーマ別に取り扱うという点で有意義だと思います。
アフタートークというと、演出やプロデュースの意図や目的、あるいは役者の解釈や演じ方などが語られるのはもちろん、楽屋裏話が出てくるのはまだよい方で、中には質問コーナーや取り留めのない雑談に終始して、何のためのアフタートークかと思わせるものも少なくない。そんな中、きちんと語るべきことが整理されて催されていることに好感を持ちました。

ネタバレBOX

ラストの、マルクから死んだベラへの「ごめんね」のセリフには、ちょっと総毛だちましたね。字義通りだけでなく、あらゆる解釈が可能な素朴で力強い言葉でした。

冒頭とラストは同時間軸なのですが、美術評論家の娘婿がマルクに電話をかけます。マルクの取る電話の受話器はアンティークなのに、娘婿の持っているのがスマートフォンなのは、観客席にいる私たちと舞台とを同時元に繋がらせる演出とのこと。なるほど。

春の花びら3回転!!

春の花びら3回転!!

チームまん○(まんまる)

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2018/04/11 (水) ~ 2018/04/15 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/04/13 (金) 14:00

他の方々のコメントにあるように、3話とも結構、まじめなテーマを扱っています。
下ネタを謳っている劇団ですが、下ネタとして過剰さはなく、むしろそれを強調して、話のバランスを崩すこともあるのではないかと、ちょっと心配。

例えば、1話目の「おめこ星」での、ラストのカップルでの会話。
男性が女性にお願いをするだけれど、ピー音で隠しながらも、意味は十分推測できます。でも、この件必要かなあ、とか。

3話目の「うんKO」は、ちょっと生理的にはダメでした。何とも話が粘着質で、消化器系や便の擬人化や、排泄の流れの演技はちょっとなあ。無理くりな感じがして。

私的には、一番ツボに入ったのは2話目の「自慢気」。いやあ、良い話だ。
年頃の男の子2人を持ち、自らの経験と照らし合わせると、説得力バツグン。
こちらの子供部屋の家具の擬人化は、もの凄くツボに嵌りました。
親子の話だけではなく、カップルの話も、よく判りますしね。

下ネタ期待には、ちょっとおとなし気味かな。

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