レバア 公演情報 西瓜糖「レバア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/04/25 (水) 19:00

    座席1階J列5番

    価格4,500円

    「レバア」この題名については、パンフレットでの寄稿文でも、肝臓の「レバー」だと思っている記載があったが、私も同様に思っていた。肝臓というのは何とも血生臭さを感じさせる、戦後すぐの人心は戦中をの回想をそうしたものと思い起こさせるものと捉えさせることに無理はないと思った。だから、まんざら変な題名ではないではないし、舞台を観ながら、そのタイトルにどうやって帰着させるのだろうと関心を持っていたのだけれど、、、

    そうか、あの「レバア」のことだったのか、彼が目にした「レバア」とは。

    舞台の感想を幾つか読ませていただくと、現代の政治状況や戦争観に引きつけて述べているものがあったけれど、私はあくまでもあの時代に寄り添って、各登場人物の心情を読み解いていくことをお勧めしたい。むしろ、現代の問題に置き換えることを拒否して言うようにさえ思えるからだ。
    だからこそ、この脚本は凄いのだ、と思う。

    娘と2人暮らしの1件家に、何人もの戦争被災者が寄り添っって住んでいる。
    彼らは、相互に名前を知らないし、経歴・出自も知らない。主の「せんせい」(小説家)に言わせると、その方が後腐れがなく面倒がないと言う。
    だから、彼らは名前がない。「じいさん」「ぼくちゃん」「黒紋付(芸者)」「奥さん」「焼き鳥屋」。
    そこに、1人の復員兵が裸足で、盗まれた自分の靴がここにあるとして尋ねてくる。
    彼はそのまま、その家に居ついてしまうのだが、その目的は?というお話。
    復員兵は、諸々、周囲に影響を与え、次第に「天使」と呼ばれるようになる。

    ネタバレBOX

    登場人物たちは意識、無意識に関わらず秘密や影を持っている。
    「せんせい」は、病弱の妻を放り出しての置屋通いで妻を亡くしている。
    「奥さん」は山の手育ちらしいが、夫と子供を亡くして(「ぼくちゃん」を子供だと思い込んでいる)、アルコールに依存し、精神的に不安定だ。
    「焼き鳥屋」は戦争で妻を亡くして、毎晩遺体を探している。彼には明かせない素性がある。
    「じいさん」は耳がほとんど聞こえない、ということなのだが、実はその振りをすることから、自分の過去から身を守っている。
    「ぼくちゃん」は吃音で知能薄弱だが、それも振りで自分の暗い欲望を隠すため。
    「黒紋付」は、戦時中座敷に来る兵役徴収者に対して、積年の後悔があり、人知れず苦しんでいる。
    では、「娘」と「復員兵」には、、、

    暗澹とする現実を透かしながら、時に笑いを、時に戦争の傷跡を挟みつつ、舞台は淡々と進んでいく。そして、ラストでの「レバア」への帰結を持って、急転直下、ドラマは終わる。
    復員兵が戦後に感じた違和感、「こんな銃後のために、自分は命を賭して戦地へ赴いたのではない」という思い。これは、彼の犯した犯罪や、最後に娘に話す娘の秘密への気持ちに通底する強い行動原理となっている。
    では、娘の秘密とは?この道徳心の強い、父を軽蔑するほどの潔癖でまっすぐな性格。
    復員兵が見たある彼女の仕草が、彼の戦時への悔恨を深め、彼の脚をこの家に向かわせ、娘にある行動を採らせるだけれど、それが余りにも悲しい。
    そして家から、こっそりと去ろうとした復員兵に、「黒紋付」がかける「あなたは、私の生きる灯だから」(ちょっと違うかも)という言葉は、彼にどう響いたのだろう。

    何が凄いのたって、秋之桜子の脚本は戦争体験もないのに、何でここまで戦後間もない人々の心情に深く思いを馳せることができたのだろうかということ。
    パンフレットの冒頭で、祖母から半分以上は嘘の戦争話を吹き込まれた、と笑って書いているけれど、それだけでここまで書き込めないだろうに。恐るべし。

    帰りに受付でパンフレットを発見。1500円とやや高めだったけれど、本作の余韻を味わいたくて購入しました。ただ、内容的には出演者のポートレートと紹介、稽古風景と、ほとんど内容がなかったなあ。
    これでしたら、フライヤーで十分な気もしますし。やはり、作品の解題や、脚本作成のきっかけや作成過程、あるいは出演者の作品解釈など、より作品を深く理解できるための資料性を期待したいです。HPでは、各役者の動画コメントも観れるのだし。
    同額だったから、台本を買った方が正解だったみたい。

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    2018/04/26 13:47

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