害虫 公演情報 劇団普通「害虫」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/05/22 (火) 19:30

    「帰郷」「換身」「害虫」と観ていくと、石黒さんの作風は、日常的な繰り返しを、時間経過や場面転換に拘ることなく、それぞれその場での登場人物の意識や心情の差異で見せていくのが好きなんだなあ、と感じます。

    今回の舞台は、5人兄弟姉妹の関係を一応頭に入れて観ることをお勧めします。
    ちょっと整理しておくと、変なことに気づきます。(石黒さんは、全く頓着していない部分かもしれませんが)

    ネタバレBOX

    長女・・・1人目の夫との子
    長男・・・2人目の夫の連れ子
    次女・・・2人目の夫との子
    三女・・・3人目の夫との子
    次男・・・付き合っていた(る?)男性との子
    が同居しています。
    整理が必要というのは、
    本来の年齢順では、こうなっているはずですが、パンフレットでは長男と次女の順が逆になっています。
    長男は2番目の夫の連れ子ですから、特殊な事情がない限り、次女より年長で、次女にとっては兄にあたることになります。
    パンフレットを読み、舞台のセリフを聞いていると、錯覚に陥ります。
    次女が長男の姉と思い込んでしまう、錯覚です。

    また、長男は母親と血縁がありませんから、長女、三女、次男とも血縁はありません。唯一血縁があるのは、次女ということになります。

    さて、次男は母親と婚姻関係のない男の子として生まれています。この兄弟姉妹の中で、長男と次男は最も遠い関係とも言えましょう。

    兄弟姉妹で社会人として働いているのは長女だけのようです。(ただし、金曜の朝にゆっくりと食事の支度ができることを考えると、長男や次女と同じ境遇なのかもしれません)
    長男はフリーターか、大学ないし専門学生(バイトをしている)。
    次女も同様のことが言えます(夜、割烹で働いている)。
    次男は、給食が出ていることから中学生か小学生のようです。
        給食の内容や、高尾山に関する空想話からすると小学生のような気もします     が、一方、空想話では担任の先生ではなく、複数の科目の先生が出てくること    から中学生も否定はできません。
    三女は、次女と次男の間ですから、高校生と考えるのが妥当でしょう。

    ところで、母親は存命ですが、滅多に家に帰って来ないようです。
    普段、どこで寝泊まりをしているのかはわかりません。
    また、3人いた夫の生死も判りません。
    母には今恋人らしき男性がいるようですが、それが次男の父親なのか、別の男性かも判りません。

    整理します。
    この家には、ほとんど子供たち(兄弟姉妹)だけが済んでいます。それも血縁が皆一緒ではありません。私生児もいます。その上、5名は年齢もかなり近いのです。
    ある意味、ここは楽園です。兄弟仲が悪いということはありませんし、お互いを許し合う風土があります。母親への思慕はあるようですが、それに耽溺することはありません。

    しかし、
    唯一の長男の血縁である次女は、過去にケーキを食べられた恨みから(これも長男が犯人と限ったわけではない)、自らがやっておきながら、長男が冷蔵庫の中身やご飯を食べたと叱責します。
    三女は、次女の思惑を知ってか知らずか、面白がりながら、それに便乗するように長男に食べ物を盗まれたと嘘をつき、長男を疑惑の目で見ます。
    長女は、三女や次男の空腹にも、彼らの身勝手に怒り、それを放置します。
    皆は、次男の分のカレーを残してあげません。
    母親は、カレーを作って欲しいという次女の望みを聞き入れません。

    そうです。この家庭では、冷蔵庫が全てを食べてしまうのです。
    繰り返します。この家は、兄弟姉妹にとって楽園です。ですから、物語の何年か後、皆が社会人になったようですが、まだ兄弟姉妹は同居しています。
    母親も家にいるようになったみたいです。

    冷蔵庫には、害虫が湧いていたのかもしれません。

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    2018/05/23 09:05

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