みさの観てきた!クチコミ一覧

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モグラ町1丁目7番地

モグラ町1丁目7番地

龍昇企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/11/03 (水)公演終了

満足度★★★★★

ハマル!
同じ舞台を2度観するのはワタクシの観劇至上、なんと3度目だ。こうして数が言えるほど本当にごくごく稀な事なのだが、この舞台は実にハマル。ハマッテハマッテやられてしまったのだ。完璧に!
更に本日のキャストが吐くセリフはばっちり聞こえた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

本人たち五人兄弟が自己評価するには、俺たちはクズだという。そんなクズな、いい年コイタ大人達を舞台といえど、観るのはきっと癒されるのかもしれない。それは自分はまだまだイケル。大丈夫だという安心感にも似た心もちが得られるからだ。

五人兄弟の父の後妻として嫁いできた智子さんは敦子という現在20歳の娘が居るが、彼女はこの若さで五人兄弟の幼馴染の善男(57歳)と離婚している。後に智子は「敦子は善男さんの子だから・・。」としれっと言う。つまりは敦子は自分の実の父親と結婚していたという理屈だ。苦笑!

結局薬局、ここに登場する大人たちは全員がクズなのかもしれない。笑
そんな大人達がこれまた、しれっと生きている事に仰け反るほどびっくり仰天してしまうのだが、どいつもこいつも面倒な事には関わりあいたくない。兄弟の金を当てにして呆けたと勘違いした義母・智子さんの介護で揉める。笑

とにかく観ていて癒されるのだ。
作家の前川さんにはまだまだシリーズ化して欲しいと思う。
今後、このアホ兄弟がどんな風になるのかも興味津々だ。そうして観客と共に役者も年をとっていく光景はとても素敵な気がするのだ。

『狼少年 ニ 星屑 ヲ』

『狼少年 ニ 星屑 ヲ』

おぼんろ

スペースTRE(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★★

大人に捧げる悲しい童話
この物語は観客の想像力に委ねる、といった嗜好。それは物語の殆どがセットが簡素な語り口によるものだからだ。しかしながら、キャストらの衣装、演技力、その他の強引なまでの引っ張りによって、観客の想像の中にしっかりと根付く。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

孤児の少年ら三人は孤児院で育ち、孤独と暴力と空腹に耐えながら大きくなった。彼らはそんな幼少期の中、「ぼくらが25になる年の、収穫祭の晩海のむこうから、舟がむかえにくるのだって。」という幸せになれる為の呪文を何度となく呟きながら、過ごしていたのだった。

愛情にも食べ物にも飢えていた彼らはそれぞれ少しずつの秘密の悪巧みをしながら生き延びていた。拓馬は狂った老婆から宝石を盗もうとし、諒一は人を殺し、倫平は盗賊をする。そんな三人三様の生き様だったが、彼らは遥かかなたの夢を見ている頃が一番幸せだったのだ。

そんなある日、諒一はキンキラキンのお星さまめがけて村を飛び出し海を渡ったものの、キンキラキンのラブなんてものは何処にもなかった。そんなことも知らない拓馬は諒一の跡に継ぐべく現在の不幸から逃げ出そうと考え親友を裏切ってしまう。

しかし親友の倫平は拓馬が負った傷に効くという薬草を求めて村に帰ったところに拓馬の発言によって無実の罪をきせられた倫平は村中の人々から石を投げられて血まみれになってしまうのだった。

星屑をポケットに詰め込んで幸せに暮らしてるはずの諒一は結局、村に帰って人殺しをしてしまう。その光景を見た倫平は「夢を抱いている拓馬にだけは知られたくない。」と思いやり、拓馬を庇い、その拓馬に裏切られる倫平。

三人の数奇なまでの運命をあるときは人形劇で、あるときは観客の想像力で、あるときはキャストらの演技力で魅せた芝居だった。

人は皆、しあわせになりたいと願う。しかしその幸せは足元に必ずあって、普通に生きるその時々が、幸せなのだと思う。いくらかの不幸があるからこそ、いくらかの幸せを感じることが出来るのだ。

ならば、私たちは現状を受け入れながら、少しの夢を持って生きるのが幸せなのかもしれない。だとしたら・・・夢は叶わない方が幸せなのだろうか・・。

そんな事を考えながら歩く道々で考えた。

キラキラ光る~夜空の星よ~♪
音楽導入もGOOD、時間軸の交錯もGOODな芝居。
はい、すたーと。

はい、すたーと。

THE♥フォービーズ

Geki地下Liberty(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★

バックステージもの
前半はかなり笑わせてもらった。後半からははっきり申し上げて笑える箇所はない。
だから、出来たら、あのまま民宿での出来事を描写する形の方が良かったと思う。コメディなのだから、あまりこねくりまわさなくても面白ければそれでいいのだと思う。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

まず、勝山と岡田のタッグがいい。二人のそこはかとない「壊れかけたレヂオ~♪」でも歌いたくなるような雰囲気が良い。更にどんだけ濃いんだよ!と言いたくなる様な人間離れしたメイクもいい。「君たち唐十郎劇団からやってきたのかい?」みたいな・・。笑

全体的に関西系のノリ。観客も関西人が多いらしく関西弁が飛び交う。そんな妖しくも不思議な世界の中、男は元劇団員で今は民宿経営者。女はそこの従業員という設定。民宿は自殺で有名な東尋坊の近くに建ってることから、ここに宿泊する客は自殺願望が強いらしい。

そんな状況の中、客は「今から自殺します!」と顔に書いてあるような輩が訪れる。それらの客はとにかくオモロイ!笑

ここまではかなり愉快で笑える。

しかし、ここから物語は一変してしまう。つまりこの民宿芝居をしていた劇団の悩みや劇団が構成されるまでのストーリーやバックステージのさまを描写する形に変貌するのだが、この辺りから笑い事ではなくなる情景に変わってしまう。内輪もめの様子や劇団員の悩みなどに視点が置かれてしまうので、笑えないのだ。滑稽さを露呈するならそれが笑いの引き金にもなるのに、リアルさだけが露呈される。結果、笑えない。

コメディなら観客を笑わせてナンボの世界なのだから、自分たちが楽しんじゃダメだよね。ちなみにいぐちしおりのおっさんはウケナカッタ。

次回はとことん笑わせて欲しいな~(^0^)
モグラ町1丁目7番地

モグラ町1丁目7番地

龍昇企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/11/03 (水)公演終了

満足度★★★★

脱力系コメディ
モグラ町シリーズは、今回で3作目とのこと。しかも最終編とのこと。特にこのシリーズは続きでもなく、寅さんみたいに全ての物語が完結ものだから、初演を観ていなくてもなんてことはないが、出来れば観たかったと悔やむ。

モグラ町に暮らす中年期のダメっぷりが可笑しい五人兄弟の物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

長男・昇司(56歳)はゴム製品を扱う会社に勤めている。趣味は痴漢。次男・将司(54歳)は無職。パチスロ狂で趣味は素振り。一番ダメっぽい男。三男・勝也(52歳)は元郵便局員だったが現在はチンピラのような仕事をしている。趣味はテレクラ、盗撮、追っかけ。四男・文太(44歳)区役所勤務。童貞。趣味は懸賞投稿。五男・鉄也(35歳)元汁男優。既婚、婿養子に入る。

これらの5人兄弟の大いなるダメッぷりが観客の笑いを誘うがどいつもこいつも五男を省いて独身ということ。更に全員がちょっとしたことで大騒ぎをし、肝心なことにはまったくまともな対応ができない。訪問販売で詐欺られるわ、騙されるわ、五男の結婚式に呼ばれないから、カミサンの顔は知らないわ、父親の葬式はしないわ、骨壷を幼馴染の庭に埋めとくわ、でやってることははちゃめちゃ。

でもって、全員が風呂に入るシーンでは男優全員が裸族になって恥も外聞もなく脱ぎまくって、ついでに殆どが加齢してるもんだから、筋肉が弛みきった裸をお披露目するわ!で、苦笑いというよりも失笑状態だった!

惜しむらくは長男・昇司と次男・将司が駅のベンチでしゃべるシーンがあったが、この場面での将司のセリフが聞き取りにくい。演出家の前川さんに聞いたら「あえてぼそぼそと話すようにした。普段の話し方の情景が出るように。」との事だったが、肝心の愉快なセリフが聞き取れないというのは観客にとって凄いストレスになるのだ。

普段っぽい演出と完全無欠のセリフとどっちを取る?みたいな究極な選択になるかも知れないが、やはり肝心のセリフが聞きにくかったら作家として致命的な気がする。やはり、そこはプロとしてセリフははっきりしゃべらせその情景もきっちり見せるのがプロってもんでしょ?と思う。
だって殆どの劇団がちゃんとと見せてるからだ。

それ以外はひじょうに楽しめた舞台だった。ダメ人間を見るとホッとするのはワタクシだけだろうか・・?笑

Draw The Curtain

Draw The Curtain

演劇ユニットP-5

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/10/28 (木) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★★

めっちゃおもろいやんか。
山奥にひっそりとたたずむ宿泊施設『山小屋 風車』にやってきた宿泊客のさまを描写するホラーコメディー。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤『山小屋 風車』の主人が亡くなり営業が出来なくなったという理由からこの宿泊施設を解体する作業員らが登場する。かれらはどこからともなく現れた山小屋の元女将・桐生から思い出話を聞くうちに、なんだか解体し辛い状況になっていく。桐生はのっけからなんだか幽霊みたいで果てしなく妖しい雰囲気だ。

そんな山小屋の「幽霊が出る!」との情報を集めた超常現象研究者の片倉は「タダで温泉宿に宿泊するツアー」なるものを企画し、タダ客を泊まらせて様子を見ようと企む。タダより高いものはない、とか、訳ありタダ物件とか世の中には「タダ」が蔓延している状況だが、「タダ」と聞いただけで載ってくる客は必ず居るもので、3組の客が案の定宿泊しにくる。

5つの部屋には必ず絵画が掛けられており、後にこの5枚の絵画が物語のキーワードとなるが、これを描いて亡くなった主人が妻に宛てた遺言だったことが解明される。つまり妻は既に亡くなっているのにこの世に未練があり中々成仏出来ない状況を憂いての主人の贈り物だったのだ。

この物語の愉快な場面は3組の宿泊客であるキャラクターが吐くセリフの数々だ。同時にいつも幽霊は皆と一緒に憑いて回っているのに、それに気が付かない彼らは桐生を人間扱いしている鈍感さにも観ていてほくそ笑んでしまう。

特に火野(いそっぷ)x名取(石上卓也)のタッグは絶妙だった。二人のストーカー談義が終盤には繋がっていくさまも見事だった。立ってるだけでも面白い!というのはこんなキャラクターだろうと思う。

桐生が土井の手に触れてできた痣も巧みな演出で、5つのキー(火、水、木、金、土)もお見事!だった。強いて言うならもっと観客を怖がらせても面白かったかも。笑

前作から今作まで間が空いたが次回も充分に期待できる劇団だと思う。
起て、飢えたる者よ

起て、飢えたる者よ

劇団チョコレートケーキ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/10/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

革命ごっこ
1970年代初頭、革命と言う名のもと、闘い続けた若者たちがいた。彼らは左派同盟と赤色革命軍共同部隊として統一し『連合戦線』と名称を改める。

その残党5人が軽井沢の別荘を占拠したてこもった10日間の出来事を追う。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

当初、理想的な新しい世界を求めて戦っていたはずの彼らはいつのまにか、警察及び警察官を権力そのものとみなして、襲撃し集団で凶暴化していったのだった。その中で彼等は、反革命とみなした同志を自己批判させ、総括(反省)させ、総括が足りないものには総括援助というリンチを決行し、死に至らしめて同志を少しずつ失っていったのだった。

やがてその残党5人(坂上、坂内、吉田、江藤兄弟)は軽井沢の別荘に管理人・西牟田康子を人質にたてこもり革命しようとした。しかし、もうこの頃には行き場を失った彼らは仲間割れによって次々と同志の総括援助を繰り返し自ら破滅するしかなかったさまを描く。

ここでの注目はなんといっても管理人の西牟田の存在だ。序盤、連合戦線に占領され怯えきっていた彼女はオルグと呼ばれる洗脳に少しずつ染まっていく。最終的に、逃走しようとした坂内に自己批判を要求し説教する場面の西牟田はまるでかつての指導者で主犯格の永山がのり移ったように見えた。それからというもの彼らは西牟田を永山と呼び総帥のように奉る。西牟田には革命家をその気にさせる才能に長けていたのだった。

そんななか、西牟田を中心に彼らは一体感、連帯感の醸成に効果を発揮し革命家として高揚させ感激させ情動的にさせて、その場の誰もが西牟田の指示や命令に反射するように従うようになってしまう。隔離された環境のなか、気分を共有することで意思は完璧に出来上がってしまう事例だ。

一方で坂内を総括援助によって殺してしまった彼らのなかには、かつての学習や討論や訓練や仲間を見殺しにしてきた経緯に疑問を抱くものが出てくる。しかし一度闘争に動き出してしまった集団は引くにひけない集団心理をも描写する。

仲間内で疑心暗鬼になる中、自分を優位にしようと画策する者も現われるがリーダーの坂上は今までの全てを自己批判し総括しようと江藤兄弟を逃がす決意をし、逃がす。しかし、既に洗脳されてしまった西牟田康子はそんな坂上を反革命と罵り、射殺してしまう。権力と戦う前に総括で仲間を殺してしまい、たった一人になった西牟田は一人の革命戦士となって警官に戦いを挑むのだった。

革命と言う名の大義名分によって人生を翻弄された一人の女の物語といっても過言ではないと思う。革命の先にある幻影を康子はただのまやかしとは思っていなかったろうし、何かを信じていた筈だ。今まで男に頼って生きて来た康子の最後の自らの意思による足掻きは革命戦死だった。

キャストらの演技力を思い知らされ満足した公演だった。最近の「劇団チョコレートケーキ」の実力は群を抜いてるような気がする。頂点を極めると不安になるらしいが、前作をも上回る出来だと個人的に思う。

緊張しっぱなしの観劇だったが観終わった後の満足感はやはり☆5つだと思う。仄暗い照明も絶大なる効果を現したと思う
いつかの森へ

いつかの森へ

海市工房

「劇」小劇場(東京都)

2010/10/27 (水) ~ 2010/11/04 (木)公演終了

満足度★★★★★

しくしくと泣かされる
毎回のことだが、海市工房の芝居はしっとりと優しいながらも人間の奥にしまい込んだ誰にも触れさせたくない感受性をつんつんと尖った破片で突かれるような感覚になる。人は何のために生まれてきたのか、どこに向かって歩いていくのか、人と繋がりあうとはどういうことなのか、時にはいつかの森に逃げ込んでしまいたくもなる・・。そんな迷ってしまった私を誰か迎えに来てくれるでしょうか?そういった心理を追求した作品だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

三人の兄弟の母親・加代子は幼児誘拐殺人容疑がかかったが、証拠不十分のために釈放された限りなく黒に近い女だった。その娘・珠恵と次女の麻子、長男の圭太郎を残したまま、家を出て行った加代子は孤独な中、ついに亡くなった。ある日、死亡通知でそのことを知らされた圭太郎は母の記憶を紐解きながら、同時に珠恵と麻子にとっても苦い過去が炙り出される。

現在、父親の跡を次いで美容院を経営する珠恵はそんな母親の過去に翻弄されながらも母が殺したかもしれない子の兄・松島修一との不倫にも悩む。

一方で麻子も訳あり不倫をしながらも珠恵の子として育てられた自分の子・花と不倫相手の男との三人の家族を作ろうともがく。自分は誰にも繋がってないという不安から家族を欲しがる麻子だった。

もう一方で娘を亡くしたクリーニング屋の妻は娘は生きてるものと思い込み未だに狂ったままだ。美容院の大家は放火を繰り返し時々呆ける。

ここに登場する人たち全てがぐるぐると同じところを回っているだけの迷える子羊だ。珠恵を愛してしまった修一も自分の家族を捨てて珠恵の元へ来るという。これを阻止する珠恵。「僕たちの人生は何だったんでしょうね、何のために生まれてきたのでしょう?」と苦悩しながらも訴える修一。物語は珠恵を軸に傷ついたそれぞれの人たちの弱みに染み入るように優しく接する人間の本質を描く。

時には秘密の森に逃げ込んでこの世で起こっている混沌を浄化させるように描きながらも人間の怖さとやさしさを表現した海市の世界はやはり泣ける秀作だった。

特に珠恵と次女の麻子を対比させる性格設定、圭太郎の静かなる芯の強さ、花の悩める女子高校生の設定も絶妙だった。キャラクターの立ち上がりも確かな地盤があり登場人物の幅広い年齢も老若男女が受け入れられる要素かと思う。

2WEEK コンタクト~まだ使えると思ふ~

2WEEK コンタクト~まだ使えると思ふ~

山田ジャパン

サンモールスタジオ(東京都)

2010/10/23 (土) ~ 2010/11/01 (月)公演終了

満足度★★★★

笑い事では済まされない情景も描く
物語は鳥子が過ごした、たった2週間の出来事を描いた作品だったが、ゆかりを演じるいとうあさこの登場で物語りはいっきにコメディに。笑)
セットの作りこみが巧みで上手い。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

鳥子が参加した同窓会の途中でしげるにお持ち帰りされラブホに入った鳥子はまんざらでもなかったが、当のしげるは鳥子の身体目的ではなく、彼女が暮らす広い家目当てだったのだ。

しげるは仲間と一緒に車を盗んで売り飛ばす商売をしていたが、ある日、出口(しげるらの頭)のセルシオとは知らずに盗んで売り飛ばしてしまった。これをネタに出口に脅され200万円を2週間以内に上納しなくてはならなくなったしげるらは、一軒の家で風俗営業をして粗利を稼ぐ事を思いつく。

この家の主の鳥子を何とか説得して、風俗を始めたものの、隣の墨田の妻・ゆかりが乱入してきた場面から大きくうねりだす。自分も風俗をさせろという。この瞬間からこの営業を仕切りだしたゆかりの源氏名はその名も「お銀」!いやはや、ぴったりの源氏名で呆れたほど。笑

3人の女たちは当初、躊躇していたものの、いざ客が女を選ぶことに及ぶと女たちは心理的に競争意識が働いて、男に選ばれなかった事に悔しがる。笑
その状況が可笑しいやら楽しいやらで、愉快千万なのだが、途中で200万に達する稼ぎがないことに彼らは気付くと川ちゃんの彼女も風俗嬢にさせて利ザヤを稼ぐ場面では決して笑えない。

この展開は男が自分の彼女のヒモに成り下がった瞬間であまり良い気持ちはしなかったが、鳥子の言い分もなんとなく理解出来るものの、考えさせられる場面だ。

要するにここに関わった全ての人間がずるずると集団という大きな流れに流されて自分を見失った人たちの物語だ。

山田ジャパンは2度目の観劇だが、1度目の「ソリティアが・・」のほうがロマンがあった。まあ、好みの問題かと・・。
百年の絆―孫文と梅屋庄吉

百年の絆―孫文と梅屋庄吉

東京ギンガ堂

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/10/16 (土) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★

東洋の王道
中国革命に賭けた孫文と、孫文との盟約に生きた日本映画界の風雲児、日活の創始者、梅屋庄吉の物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

『君は兵を挙げよ。我は財をもって支援す。』1895年(明治28年)、孫文(27歳)と梅屋庄吉(25歳)が香港で出会い、孫文の志に共鳴し支持した庄吉が言った言葉だが、今の日本政府がアメリカの軍隊に放った言葉かと勘違いしたくらい、今でも通じる言葉だ。

以来30年、2人の友情は、いかなる状況下でも変わることはなく、また庄吉を陰になり日なたになり支えたトクさんのキャラクターが絶大だった。中国革命と日中の2人を取り巻くさまざまな状況を解りやすく丁寧に綴った舞台だったが、個人的には無理に音楽劇にする必要はなく、ストレートプレイでも充分に勝負できる公演だったと思う。

孫文役をやられた張春祥の演技力は流石に秀逸だったし、他のキャストらのポジションやキャラクターの立ち上がりも絶妙だった。たぶん、過去に観た「東京ギンガ堂」の公演の中では一番感銘し、一番納得のいった芝居だったと思う。物語の筋や登場人物たちの人間関係なども実に良く描写しており、なぜ庄吉がこれほどまでに中国革命に拘ったかのかも理解出来た。

病んだ国を治し中国国民の自由と解放の為に革命を起こした孫文はやがて癌に侵されその命を絶ったが「新しい世界」を求めて戦った男たちの歴史はいつの世も崇高で気高い。
『日本の進むべき道は「西洋の覇道」ではなく「東洋の王道」となってほしい。』と庄吉に残した孫文だったが、今の中国と日本の関係を想像できただろうか。

THE COBE[ザ・コーブ]

THE COBE[ザ・コーブ]

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2010/10/20 (水) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★

フライヤーの牛とタイトルと今回の芝居といったいどーいう関係があるんだよ!
説明でも、牛に関してのゴタクが並べられ、だから芝居も当然の事ながら牛が丸々一頭登場するかの勢いかと思ったぜ。昨今では車一台を舞台に上げちゃってる劇団もあるのになのにだ!登場したのはアルマジロの糞みたいなミートボール!


以下はねたばれBOXにて。。

ネタバレBOX

しかも、このミートボールでさえも「劇団口口」旗揚げ公演「ボーイ・ミートボール・ガール」ってばかじゃね?それでもパクリ舞台が面白くて愉快なら許せるけれど、まったくもってつまんない。本自体もやる気があるんだかないんだか、客を舐めてるのか脚本家の才能が舐められてるのか、「ナメンナヨ!」状態の舞台だった。

でもって舞台稽古でもしているような描写で、それはまるで「箱は借り切ってしまったものの脚本が間に合いませんでした。」みたいな内情が露呈されたような作品で、作品として完成されていない。

今回のチャリT企画の公演に言葉をかけるとしたら「真面目にやれよ。」これだけ!




地域演劇の人々

地域演劇の人々

弘前劇場

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/10/22 (金) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★

「夜のプラタナス」の再演みたいな描写
劇中、劇中劇として「夜のプラタナス」を演じるシーンが公演時間の半分以上あるものだから、「夜のプラタナス」を観た観客はちょっと不満の残る公演だったのではないだろうか?


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「夜のプラタナス」の舞台を作る側を描写した今回の芝居は、制作スタッフや役者、舞台に関わる人たちを主軸に置き、弘前劇場の、普段のお稽古の様子がそのまま演劇となっている構成の作品だったが、今回の公演時間の半分以上を「夜のプラタナス」の舞台を描写していた。姉妹のキャストは当時のままで、懐かしいと言えば懐かしいのだが、「俳優で現在はエッセイストである53歳の男」役のキャスト、あのカッコよくて渋い紳士は居ない。

だから観ているこちらとしては中途半端な再演を観てるような感覚だった。実際、退場してしまった観客もいらして・・、ワタクシは、じっと我慢して観ていたものの、知り合いは終わった後「再演でしたね。」なんて言う始末だった。

個人的に「夜のプラタナス」は大好きな舞台の一つだが、再演ならきちんと再演として完璧な舞台を観たいし、そうでないなら全く新しい舞台を観たいのだ。今回は中途半端な気がして、いったいどうしちゃったの?と消化不良な感覚だけが残った舞台だった。

しあわせな世界

しあわせな世界

カラスカ

TACCS1179(東京都)

2010/10/21 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★

兄妹
今作品はコメディな部分はあったものの笑い殺されそうになるくらいのコミカルさはほんのちょっと。その分、終盤に観客を泣かせることに終始したらしい本。友情と兄と妹と家族の物語。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

両親を事故で亡くした富雄と麻由美の幼い兄妹。二人は親戚に引き取られる形でその町にやってきた。しかし親戚の西本家でも同じ事故の犠牲となって理枝の母が亡くなっていたのだった。母の事故の原因となった富雄と麻由美の両親を恨む理枝。だからその子供たちの富雄と麻由美も許せなかったのだった。

しかし、富雄と麻由美にはガキ大将やにんじんと言われる温かい人達との友情が芽生えていく。そんな皆に囲まれて二人は紆余曲折しながらも大人になるまでを綴った物語。

小学生から中学生までの彼らの青春はまるでアニメちっくでワタクシが一番ウケたのは風見鶏(久高)の仕草だ。毎回と言っていいほど久高にはヤラレル。なんつーか、やっぱキモイほどに面白いのだ。

水に戯れる夏休みの子供みたいに彼らはいつも賑やかに過ごしていたが、麻由美が高校生になったころに施設に勤めることを希望するようになる。それは寂しい思いをしている子供たちを少しでも幸せにしてやりたい。という気持ちからだった。大人になってその夢が叶い自身も幸せそうにしていた麻由美だったが、ある日、自動車事故によってその命が絶たれてしまう。

絶望に打ちのめされる富雄。時が止まったかのように呆然自失となった富雄を友人たちが麻由美を引き合いに出して励ますシーンはやはり泣ける場面だ。

今は亡き麻由美が彗星に願いをかけた言葉「お兄ちゃんが幸せになりますように・・。」兄弟愛を前面に出したベタな物語だが、まっすぐ伸びた直球勝負はやはり心が打たれるのだ。

物語は正直言って雑だ。ストーリーの全てがコメディなら、笑わせてくれればそれでOKなのだが、こういった芝居の場合、やはりもうちょっとじっくり練りあげて欲しいと思う。キャストらの演技力にも課題が残り、少し惜しい気もしたが、コメディと感動でのMIX劇だった為に、少し辛口になってしまう。
パジャマと毒薬~忘れられないパジャマ

パジャマと毒薬~忘れられないパジャマ

カリフォルニアバカンス

小劇場 楽園(東京都)

2010/10/20 (水) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★

好みの問題
どんな劇団でもどの観客からも受け入れられるというのは、そうそうないのだろうけれど・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

朝川雄二27歳は家事しない、ゲーム三昧のニート。 恋人・ 菜穂子のカネで生活してるダルさ満点のヒモ男だ。しかしある段ボールに入った男物のパジャマと薬瓶、 そして一冊の本を見つける。それらは菜穂子の元彼の作家・宇喜田のものだと解ってしまう。

元彼と聞いた雄二は菜穂子に二股をかけてたのかと疑うわ、嫉妬するわでダメダメ男特有の「それほど好きでもない女だが他の男に取られると思うと惜しくなる」的な心理状況の中、それぞれの見栄の張りあいを交錯させながらの、アニメなコメディ。

終わってみればどうってことないコメディなのだが、(まあ、元々コメディなんだからどうってことはない。笑)ここの劇団の笑いがどうやらワタクシの感性には合わないんだ。ってことがやっと解った。
だって、それほど面白いと思わないんだよね。申し訳ないけれど。

しかし感覚が合う人には面白いのかもしれない。
どちらかというとスピード感はないが緩くてナンセンスなコメディ。
グロリア

グロリア

ハイリンド×サスペンデッズ

「劇」小劇場(東京都)

2010/10/14 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

大絶賛!
すんばらしい舞台だった。出演キャストは7人なのに、観終わったときに感じるのは「ええっ?!、こんなに少なかったの?」とびっくりする。つまり、場面場面の状況でのキャストらの演技があまりにも絶妙なので、その風景がしっかりと脳裏に焼きついているからだ。本当に素晴らしい!
特に枝元萌の女学生、隆志の妹、ナンシー、シゲ子、看護師役ではコメディな部分も展開し、類を見ない演技力だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

病院に詰めている片山の祖母が生死を彷徨ってる状況下、片山の現在の仕事の情勢と元妻の沙織との今後の話し合いを描写する。片山は自分が立ち上げた「人材派遣会社」の仕事も破産寸前なのでイライラしている。一方で実家が裕福なためボランティアに勤しむ元妻。そんな折、祖母トキ子の「追跡!軍国乙女トキ子の青春」という記録をふとしたきっかけから読んだ片山は当時の1944年の出来事へとリンクする。

そこはトキ子の当時の家族との風景、トキ子ら女子が「風船爆弾」を作っていた光景へと観客を誘う。特にトキ子の弟・勝良や母・シゲ子と間借りしていた杉浦との関係の綿密な演出が素敵だった。物資はないが人間の情が確立していた時代だ。友だちが居ない弱虫・勝良が可愛がっていたチャーボーとの友情な場面の表現、チャーボーを潰した後に泣きながらチキン入りのカレーを御代わりをしながら食する勝良のシーンは泣き笑いの場面だ。

やがて、トキ子の父と兄が戦死した通知、その後の日本軍が飛ばした風船爆弾がオレゴン州の山中で1人の女性と5人の少年少女を殺した経緯をも描写し、現在と1944年の時間軸を交錯させながら魅せる暗転の仕方も絶妙だった。
従来の戦争ものの物語の多くは暗く陰湿さが露呈してしまうが、これを避けて、なるべくカラッと明るくした描写も素敵だった。

そうしてトキ子の書いた物語を読んだ前と後の片山の表情も見ものだと思う。1944年のトキ子を演じた多根周作の衣装は片山のスーツのままだったが、トキ子に見えてしまうカマ風味な演技力はやはり秀逸なのだろうとつくづく思う。

素晴らしい公演を観ました。
しっとりと流れる空気感と時折見せるコミカルな展開が好みだった舞台。
スフィンクスと諭吉〜消えちゃった100歳〜

スフィンクスと諭吉〜消えちゃった100歳〜

劇団 東京フェスティバル

シアター711(東京都)

2010/10/19 (火) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★

公務員の緩さを露呈する
特に公務員や職員に対して恨みはないが、公務員と聞くと楽な仕事をして金貰ってるという代名詞みたいなものだから、たまにこうやって叩いてやるのが市民の義務みたいに感じちゃってるワタクシなのだが、ここでの物語りも、楽して何の問題もなく緩やかに過ごし、明日に伸ばせる仕事は明日にやり、特に目だった仕事もせず粛々と時間を過ごし、たまに残業代がほしい時は、食堂でくっちゃべって無駄に時間を過ごしながら時間まで居て、こうやってのらりくらりと定年まで居られたら公務員としての醍醐味じゃね?なんて考えてる市役所の市民課戸籍係のお話。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

そんな暇で退屈で死にそうな市民課戸籍係のもっぱらの話題は昇進だ。昇進する為には資格試験に合格せねばならない。だから仕事中に勉強するためには暇な部署に左遷されることが一番効果的だ。なんつって市民課戸籍係の主任と係長は暇な部署の左遷に夢見る。そんな無能な彼らと混じって仕事をする臨時職員の女は仕事が出来て有能だった。正規職員もこの臨時職員を尊敬しちゃってる様子だが、それでも彼女を見習おうとはしない。だって公務員だもの!笑

そんな無能な市民課戸籍係に大臣が視察にやってくることになったものだから、正規職員は大慌て。全員が臨時職員の女におんぶに抱っこ状態!笑)大臣の視察目的は「消えた100歳問題」に対する取り組みをチェックするためだ、というから、市民課戸籍係は自信満々で迎えるはずだったが、生きていれば175歳になる男性の戸籍が発見される。

この戸籍を消去する方法を模索しながらも課長はこの消去作業を当の法務大臣にさせることを提案する。そんな折、今度は課長の汚職も発覚してしまう。

しかし、この課長の汚職を暴露したのは臨時職員の女だった。彼女は市民課戸籍係に臨時職員として採用される前から、自分の戸籍を改ざんし課長が袖の下として貰った1000万円を横取りするという手の込んだ詐欺だったが、戸籍係の仕事を全て臨時職員に任せていたため、他の職員はまったく気がつかなかった、という間抜けっぷり。


まあ、公務員ってこんな感じなんだろうな、というのを見事に突いた舞台だった。キャストらの演技力のお陰だと思うが、リアルに公務員に見える服装や雰囲気があまりにもはまり役でお見事だった。華麗なごとく1000万円を横取りされた課長は汚職金だった為に警察にも届けられず、放心状態だったが、観ている側が何故かすっきりしてしまうのは水戸黄門が「この紋所が見えぬか!」というシーンと重なる。笑

終盤、外人の声だけ出演があったが福沢諭吉なのだろうか?この展開がいまいち解らなかったが、どなたか解る人は教えて欲しい。
8:2(ハチニー)の男

8:2(ハチニー)の男

東京パチプロデュース

劇場MOMO(東京都)

2010/10/19 (火) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度★★★★

ジキルとハイド
キャラクターの立ち上がりが個性的で絶妙。一言で面白い。こういった物語は「腹黒い」自分の部分を尖ったつま先で、ツンツン突くような感覚があり、ハイドが登場し他人を罵る場面は何故かすっきりしてしまう、という面白さ!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「良い人だ」と言われ続けて数十年間。他人のお願いを断りきれず「良い人」のレッテルを貼られたまま、「悪い人」にはなれなかったドクターことハチニー男、「善8:悪2」の仮面を被ったまま、「もっと他人に良い人と思われたい」一心から、普段溜め込んだストレスが夜の街を徘徊する「善2:悪8」のもう一人の自分を作り出してしまったから、さあ大変!

いったい本当の自分はどっちだ?!なお話。

8割善人、だけど2割は腹黒い8:2の男が、2:8の男になった時、元カノや患者らや看護士などに普段のうっぷんを晴らすかのように嫌がらせや暴言を吐く乱暴ものと化してしまう。
この時、8:2の男と2:8の男の外見が全く違うものだから、誰も気付かないが、当の本人は凶暴な男のほうは自分の友人なんて隣人たちに思わせる。

一方で人々の当てにならない噂の中で8:2の男が「意外に腹黒い奴!」と罵られ、2:8の男が「乱暴ものかと思っていたが正直で意外に優しいとこあるじゃん!」なんて状況になってしまう。他人の目を気にするあまり、中身のない男に見られてしまったドクターのお話。

物語はベタで解りやすく細かいことを気にせず気楽に観られる。二ハチ役の竹内健史のキャラクターが抜群に面白い。勿論、演技力も。誰でも自分という仮面を被って自分を演じてるわけだけれど、演技するのに疲れたら夜の街を徘徊してハイドになるといいかも!笑
国家婚活支援法

国家婚活支援法

ジャイアント・キリング

しもきた空間リバティ(東京都)

2010/10/15 (金) ~ 2010/10/17 (日)公演終了

満足度★★★★

設定が面白い
船上集団お見合いってことで背水の陣じゃあないけれど、逃げるに逃げられず・・、笑)

この設定も愉快だったし、男子も女子も自分を棚に上げて相手への要求ばかりが強いお見合いだった。

以下はネタばれBOXにて。。



ネタバレBOX

突如自衛隊に突入される屋形船。国家結婚活動支援法が施行された今、何が何でもここで、相手を見つけなければいけないという。男子も女子も軽い気持ちで参加したものの、無理矢理に結婚させられるとなると、どうしたって相手を不満に思う。

しかし、会場からペアにならずに退場することは許されない。もしペアになれなかった場合は脱落者としての刻印を押され多摩に島流しにされるという。笑
そこで次の機会が訪れるまで国家によって管理され、多摩から出られなくなるという。犯罪者扱い!

もうこうなったら、恐ろしいのはペアになれないことではなく、多摩なんじゃないの?なんて妄想がよぎる。笑
しかーし、世の中ってのは上手く出来てるもので窮地に追われた彼らは波乱万丈ありながらも4組のペアが出来上がっちゃうのだから、顎が外れるくらいあんぐりと驚愕してしまった。

めんどくさい女や、マザコンや主夫願望男、キャリアウーマンなどのキャラクターの立ち上げが愉快で観ていて楽しかった。
結局薬局、一番男を上げたのは自衛官のデブマッチョ男のシシド。彼の吐くセリフがいちいち説得力があって魅力的なのだった。

どちらにせよ、この不景気のさなか、公務員はめちゃめちゃモテるのであります。

坂口安吾 白痴

坂口安吾 白痴

726

OFF OFFシアター(東京都)

2010/10/14 (木) ~ 2010/10/19 (火)公演終了

満足度★★★★★

幻想的な舞台
とにかく美しく繊細な舞台だと思う。白痴・サヨのキャラクターの立ち上がりが絶妙でサヨが登場した瞬間はまるで銀の女狐がゆっくりと天上から舞い降りてきたような妖しさだった。これを演じた結がまたぴったりのはまり役だと思う。
舞台のセットはシンプルだったが中央にブランコを吊るし、傾斜された床の下にはもう一つの繋がった世界を見せるように仕組まれていて素晴らしかった。坂口安吾の作品を忠実に描写した舞台だったと思う。しかしその表現の仕方は幻想的であまりにも美しかった。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

その家には人間と豚と犬と鶏と家鴨が住んでいたが、住む建物も各々の食物も殆ど変っていやしない。物置のようなひん曲った家の伊沢の借りている一室は母屋から分離した小屋で、ここは昔この家の肺病の息子がねていた小屋だ。

伊沢は大学を卒業すると新聞記者になり、つづいて文化映画の演出家になった男だったから場末の小工場とアパートにとりかこまれた商店街の生態が低俗なものだとは想像もしていなかった。けれども最大の人物は伊沢の隣人であった。

気違いは三十前後で、母親があり、二十五、六の女房があった。母親は強度のヒステリーで、気違いの女房は白痴であった。白痴の女房は娘のような品の良さで、眼の細々と、瓜実顔の古風の人形か能面のような美しい顔立ちだった。

戦時中の動乱の時代に伊沢の情熱は死んでいたがある晩、遅く帰宅すると積み重ねた蒲団の横に白痴の女がかくれていた。伊沢は多分母親から叱られて思い余って逃げこんで来たのだろうと思ったから一夜泊めてやった。これがきっかけで伊沢の心には奇妙な勇気が湧いてきた。その実体は生活上の感情喪失に対する好奇心と刺戟との魅力に惹かれただけのものであったが、同時に白痴の女の一夜を保護するという眼前の義務の為だと自分自身に言いきかした。

しかし女は叱られて逃げ場に窮してそれだけの理由によって来たのではない。伊沢の愛情を目算に入れていたのであった。この事態で、白痴の心の素直さや幼い子供の無心さと変るところがないのを知ることになったのだった。

伊沢は哀れな白痴の女の保護感に囚われた。女はまるで最も薄い一枚のガラスのように喜怒哀楽の微風にすら反響し、放心と怯えの皺の間へ人の意志を受け入れ通過させているだけだ。この女はまるで俺のために造られた悲しい人形のようではないか。伊沢はこの女と抱き合い、暗い曠野を飄々と風に吹かれて歩いている、無限の旅路を目に描いた。

彼は毎朝出勤し、その留守宅の押入の中に一人の白痴が残されて彼の帰りを待っている。しかし彼は一歩外へ出るとこの白痴のことは忘れてしまう。彼は自分の本質が低俗な世間なみにすぎないことを咒い憤るのみだった。白痴の女はただ待ちもうけている肉体であるにすぎず、伊沢の手が女の肉体の一部にふれるというだけで、在るものはただ無自覚な肉慾のみ。それはあらゆる時間に目覚め、虫の如き倦まざる反応の蠢動を起す肉体であるにすぎない。

ある日、井沢と白痴はふとんを被って押入の中で、爆撃が終わるのを待っていた。このとき彼は見た。白痴の顔を。それはただ本能的な死への恐怖と死への苦悶があるだけで、心の影の片鱗もない苦悶の相の見るに堪えぬ醜悪さだった。

もし白痴の女が焼け死んだら・・・、土から作られた人形が土にかえるだけではないか。もしこの街に焼夷弾のふりそそぐ夜がきたら・・・俺は女を殺しはしない。俺は卑劣で、低俗な男だ。俺にはそれだけの度胸はない。だが、戦争がたぶん女を殺すだろう。その戦争の冷酷な手を女の頭上へ向けるためのちょっとした手掛りだけをつかめばいいのだ。そして伊沢は空襲をきわめて冷静に待ち構えていた。

いよいよ空襲のとき、彼がこの場所を逃げだすためには、あたりの人々がみんな立去った後でなければならないのだ。さもなければ、白痴の姿を見られてしまう。
 
米機の爆音、高射砲、落下音、爆発の音響、跫音、屋根を打つ弾片。しかし気が付くと彼は白痴の女を抱くように蒲団をかぶって走りでていた。それから一分間ぐらいのことが全然夢中で分らなかった。

伊沢は女と肩を組み、蒲団をかぶり、「死ぬ時は、こうして、二人一緒だよ。怖れるな。そして、俺から離れるな。分ったね」女はごくんと頷いた。その頷きは稚拙であったが、伊沢は感動のために狂いそうになるのであった。

女は眠いといった。そうして女は微かであるが今まで聞き覚えのない鼾声をたてていた。それは豚の鳴声に似ていた。まったくこの女自体が豚そのものだと伊沢は思った。そして彼は子供の頃の小さな記憶の断片をふと思いだしていた。一人の餓鬼大将の命令で十何人かの子供たちが仔豚を追いまわしていた。追いつめて、餓鬼大将はジャックナイフでいくらかの豚の尻肉を切りとった。豚は痛そうな顔もせず、特別の鳴声もたてなかった。尻の肉を切りとられたことも知らないように、ただ逃げまわっているだけだった。

女の眠りこけているうちに女を置いて立去りたいとも思ったが、それすらも面倒くさくなっていた。女に対して微塵の愛情もなかったし、未練もなかったが、捨てるだけの張合いもなかった。生きるための、明日の希望がないからだった。


闇市や賭場、淫売が横行し、商店街の生態はひどく荒みきっていた最中の伊沢の心の内を描写したものだったが、ともすれば汚いどん底の情景を幻想的で美しい演出に変えていた。人間の本心を求めて理想を追う伊沢が導き出した結論は「蔑まされようと愛されようと関係なくただ、生きている」白痴の心に重心を置いた作品だった。

次回もこの劇団の作品は観たいと心から思う。
口笛を吹けば嵐

口笛を吹けば嵐

ピーチャム・カンパニー

イワト劇場(東京都)

2010/10/14 (木) ~ 2010/10/20 (水)公演終了

満足度★★★★★

これぞエンゲキ!
レトロな映画館で映画が始るようにジリリリリーーーと鳴るベルの音。舞台と客席の合間のカーテン。エンゲキが始るよ~♪エンゲキが始まるよ~~♪と歌うキャストら。これらの演出はお見事!という以外の言葉を思いつかないほどの絶好の始まり。舞台の合間に歌を交えて暗転させるのも◎

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

まず、普段のイワトでの客席を全て取っ払って観客は道路を向くような格好で座る。この効果は後にシャッターを開放することで、外の道行く人々と雑踏を飲み込んで今回の舞台と合致させてしまうところは流石!だから見知らぬ人々が立ち止まり、あるいは自転車をこぎながら流れる風景は臨場感があって実に見事なのだった。

リーダーのケンが逮捕されてからの、窃盗グループの成り行きや、ケンの旧友である手配師のもとで演劇研究所などと詐欺られ、人材派遣され労働を課される新川など、若者を軸に底辺で渦巻く人間模様を描写する。

労働、暴力、脱走、様々な思いを胸に秘めた若者たちは、ある日刑務所から出てきたケンに希望を託する。しかしそんなケンもちょっとした争いからナイフで刺されてしまう。

労働者らが集る飲み屋でのカラオケのさまも披露しながら、「乾杯」は人生を祝福する最大の賛辞の歌だと思う。そんな歌をバックにケンは自由を求めてボヘミアンのような世界を目指し、獄中で出会ったイグナシオの言葉、「口笛を吹く兄弟」を求めて世界中を口笛吹いて兄弟を捜し歩くことを決意するも死んでしまう。

それでも残った残党は「OSARAGIカンパニー」を掲げ、劇団を作ってブラジルに巡業すると言う終わり方。最後はこんな楽しい演劇を世界中の人に観て貰わなきゃ!という夢と希望で締めくくる。3時間と言う公演で観てる観客も体力勝負だったが、それに見合ったノスタルジックでレトロな芝居だったと思う。「蒲田行進曲」を思わせるような世界感!

面白いと思う。
十五周年漂流記

十五周年漂流記

自己批判ショー

アトリエ春風舎(東京都)

2010/10/15 (金) ~ 2010/10/17 (日)公演終了

満足度★★

緩くてダルダル
この劇団は初見だったので、どんな感じなのかなー、と興味深々だったけれど、なるほど、緩すぎ!笑
こういった芝居は寝っころがって、みかんでも食べながら観るに等しい舞台。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「NODA・MAP」ならぬ、ミュージカルコント『KOGA・MAP 2010』、まさに古河市、総和町、三和町が合併して古河市が舞台の市長選挙にまつわるお話と、ソレに伴いだるま職人のだるま作りが忙しくなるという設定。

ミュージカルというけれど、これじゃあ、ミュージカルに失礼じゃね?という歌いっぷり。笑)  古河の町並みの映像を流しながらのユルダル芝居で、なぜこの劇団に春風舎がレンタルさせたかが謎。そんなだから、オムニバスコント集『CONTE EXPO’2010』も同じような空気感だった。

小劇団観劇マニアから観るともの足りないエンゲキ。

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