土反の観てきた!クチコミ一覧

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ダンスの器

ダンスの器

NPO法人らふと

RAFT(東京都)

2012/05/07 (月) ~ 2012/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

chairoi PURiN鑑賞
イギリス童話『ジャックと豆の木』をベースにして、ダンスや台詞のみならず、歌や楽器演奏、様々な小道具や映像を盛り込み、ダンス公演と銘打っていますが、演劇的要素の強い作品でした。一見児童劇のような雰囲気の中に時折シリアスなメッセージが込められていて、ただ楽しいだけではないのが良かったです。

ごみ袋に入った量の空き缶やテレビゲームの画面が映し出されているテレビが置かれている巨人の部屋に突如大勢の人が押し掛けて来て、芥川龍之介の『薮の中』のように一人一人の証言と称したダンスやパフォーマンスが続く構成でした。主人公のジャック役は誰も演じず、後半に人形で出てくるのみで、ジャックに殺された巨人側の視点からシニカルに物語が描かれていました。
実際に食べたり飲んだりするシーンが多く、所々で食べる行為は他の生き物の命を奪うことであることを意識させ、印象に残りました。
それぞれのシーンは面白いのですが、終盤がドラマ的盛り上がりに欠けていたのが残念でした。

空き缶や紙幣を模した紙片などを撒き散らしたり、フライパンで実際に肉を焼いたり、フラスコやアルコールランプを用いて理科の実験をしたりと、小道具の使い方が面白かったです。
特にスロットマシンを用いて家族が揃わない様子を描いたシーンは馬鹿馬鹿しさの中に悲哀が感じられて素晴らしかったです。

おかえりなさいII

おかえりなさいII

うさぎストライプ

アトリエ春風舎(東京都)

2012/05/04 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★

負荷を掛けられた身体
飛行機事故で死んでしまうことになる人達のそれぞれのノスタルジックな前日談が変わった演技スタイルで描かれ、大切な人との繋がりのかけがえのなさを感じさせる作品でした。

それぞれが同時に台詞を言うカオスな冒頭の後、モノローグあるいはダイアローグの形でそれぞれの日常的な光景が優しく描かれ、途中で音楽が流れて次第にテンションが高まり、絶叫するように台詞を話すというシークエンスが繰り返され、終盤に飛行機が事故を起こす少し前の機内の様子が静かに描かれ、最後にまた冒頭のシーンに戻りそれぞれの台詞が途中に出てきたものだと分かる展開と同時に、床一面に広げられた衣服や鞄が次第に片付けられて行く構成でした。

相対性理論の曲が流れる中、台詞とは関係のないダンスや運動のような動きや力仕事、ゲームをし続けて身体に過度な負荷を掛けた状態で台詞を発させることによって、演技ではなかなか出せない切迫感を表現していました。
最近この手法を良く見掛けますが、物語の内容に即した動きの反復・増幅を用いるときは素晴らしい効果をあげることもありますが、今回のようにそのシーンに直接関係のない動きを用いるのは手法だけが浮いて見えました。そのために、役者がとても大変そうにしている割には、あまりギリギリ感が伝わって来なかったのが残念でした。
所々の台詞や、機内のシーンは素晴らしかったのですが、全体的には先鋭的な作品が好きな観客にアピールするような要素を使い過ぎているのが悪目立ちしていて鼻に突きました。

白シャツとカーキのボトムスに統一した衣装や人工的なパースをつけて配置された裸電球等、シンプルなビジュアルが洗練されていて良かったです。

ロミオとジュリエット

ロミオとジュリエット

カンパニーデラシネラ

東京都現代美術館  パブリック・プラザ(東京都)

2012/05/06 (日) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

アクシデントを乗り越えて
昨年、世田谷ものづくり学校で上演した作品の再演で、天候や機材のアクシデントによるバタバタ感がありましたが、それが逆にパフォーマーと観客の距離感を縮め、一体感のある良い雰囲気になっていました。

屋外で上演の予定だったのですが、開場直前に雲行きが怪しくなり、開場した途端に雨が降り出し、急遽館内での上演に変更となり、道具の移動や音響のセッティングで開演が遅れる中、小野寺さんがユーモラスなトークで場を繋ぎ、音響の一部が出ないながらも無事開演しました。

初演時と出演者が2人代わりましたが、基本的には同じ演出でした(初演時の感想→http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=119121)。アクシデントの影響でいつものような精度の高さが感じられない部分もありましたが、とても楽しめました。

ジュリエットが眠り薬を飲んだところで、外に移動してくださいとのアナウンスがあり、残りのシーンは屋外のサンクンガーデンで演じられました。おそらく上演しながら出番のない間に外の様子を確認していて、外で出来ると判断して急遽変更したのだと思いますが、その手際の良さが素晴らしかったです。
広い空間と湿度を含んだ冷たい風がちょうど墓場のシーンに合っていて、素敵でした。

上演中にトラブルで動かなかった機械仕掛けの美術も終演したときには復旧して最初の部屋に動いている状態で展示されていて、メインディッシュの後のデザートのようで粋でした。

No.346 勅使川原三郎 ヴォックス・クラマンティス ヤーン=エイク・トゥルヴェ

No.346 勅使川原三郎 ヴォックス・クラマンティス ヤーン=エイク・トゥルヴェ

KARAS

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2012/05/05 (土) ~ 2012/05/05 (土)公演終了

満足度★★★★

懺悔の歌とダンス
ラ・フォル・ジュルネ恒例の、生演奏と勅使川原三郎さんのダンスのコラボレーション公演で、今回は無伴奏合唱による宗教曲でした。1回だけの公演でしたが、しっかり構成された照明の演出もあり、充実した内容でした。

民謡的な軽やかさのある『晩祷、首誦聖詠』から始まり、男声のみによる中世風の厳かな『沈黙の光』を経て、『カノン・ポヤカネン』からの抜粋が続けて演奏され、前半は勅使川原さんと佐東利穂子さんのデュオおよびソロが続き、途中で5人のダンサーが静かに現れ、終盤は4人のダンサーがセンターで痙攣するような動きを繰り返す中、勅使川原さんと佐東さんが激しく踊る構成でした。
具体的なストーリーはありませんが、ストイックに踊る姿が自らの罪を嘆き、神に懺悔し祈るかのように見え、深く胸を打ちました。

足を床から離さず滑るように移動する動きが、静かな曲調に合っていました。滑らかな腕の軌跡が美しかったです。

ヤーン=エイク・トゥルヴェさんが指揮するヴォックス・クラマンティスの澄んだ響きが美しく、特に声部によっては1分間以上同じ音を伸ばしているだけのこともあるような単純な構造で劇的な展開がない『カノン・ポヤカネン』を高い集中力で演奏していて素晴らしかったです。

ダンサーだけでなく合唱団にも影の効果を考えた照明が当てられていて神々しい雰囲気が醸し出されていました。

カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

カフカの猿~フランツ・カフカ「ある学会報告」より~

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2012/05/02 (水) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★

驚異的な身体表現
人間に進化した猿がある学会で自分のことを語るという、寓意的な短編小説を一人芝居に仕立てた作品で、キャサリン・ハンターさんの優れた身体表現が際立っていました。

上に「非常口」のランプが輝く、上手のドアから入場し、客に拍手を要求するように何度もお辞儀をするところから始まって原作通りに展開し、「自由」ではなく「出口」を求める姿を通じて、人間も同じではないのかと考えさせる物語でした。
観客が作品中の学会の出席者に見立てられていたので、客席に入ってきて客いじりをするのも違和感がなく、自然な流れで笑いを誘っていました。

人間になった猿を人間が演じるという込み入った設定ですが、姿勢や表情や仕草が絶妙で説得力がありました。腕の使い方が素晴らしかったです。また、カーテンコールの際の雰囲気が演技中と全然異なっていて驚きました。

ユーモラスで且つ得体の知れない怖さもある演技が素晴らしく、存分に堪能しましたが、演技の印象ばかりが強くて作品全体としてもう少し押しが強くても良いと思いました。

地下鉄

地下鉄

Q

atelier SENTIO(東京都)

2012/05/03 (木) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★

不安を抱える若者
何かしら将来に不安を持つ、ぱっとしない人達の悶々とする姿が少々実験的な演出で描かれ、不思議な雰囲気の漂う作品でした。

地下鉄で遭遇したということ以外には繋がりのない人達のそれぞれのエピソードが観客に話しかけるようなモノローグで語られ、途中で単語の解説や役者の紹介等の異なるトーンのシーンが挿入される構成で、性的なネタが多い割にはあまりエロスや下品さを感じさせず淡々としていたのが印象的でした。

日常会話のようにだらだらと続く文体、リフレイン的に何度もあらわれるシーン、言葉と乖離しながら反復される身体に負荷を掛ける動き、演じている役柄ではなく本人について言及するメタ構造といった、先鋭的な手法が多く用いられていて興味深かったのですが、他の劇団による先行例を思い出してしまい、それらを越える独自の魅力は感じられませんでした。
人間関係における距離感の掴めなさを表現するためにわざとそうしているのだとは思いますが、劇場の空間に対して声が大き過ぎて聞き取りにくい場面が多く、耳が疲れました。

数百個の裸電球を壁に沿って上下に波打ちながら一列に並べた美術が素敵でした。照明は全体を通して暗めで、場面転換の際も独特の雰囲気があって良かったです。

自慢の息子

自慢の息子

サンプル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/04/20 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

奇妙な神話的世界
自分の部屋に王国を作った男、その母親、その国に移住して来た兄妹、隣の家に住むシングルマザーの女、そしてその国を出入りするガイドであり配達人である男といった、どこか奇妙な人物達が織りなす物語で、社会と上手く折り合いを付けられず孤立する人の姿が、ギリシャ神話のような悲劇性と、グダグダで俗な日常性が混ぜこぜになって描かれていました。

頭上にロープが渡され床には大きな布が敷かれた舞台空間が、ロープに布を掛けたり、人が布の中にくるまったりすることによって空間の距離感やスケール感が変化していく演出が印象的でした。ある乗り物のミニチュアを使った演出が新鮮で印象に残りました。映像の使い方も独特で面白かったです。
登場人物達が人形のように動く最後のシーンが痛々しさを感じさせながらもとても美しく、印象に残りました。変態的で馬鹿馬鹿しくて笑える部分もたくさんありましたが、ただ可笑しいだけではなく、その裏にえも言われぬ恐ろしさも感じられました。

PLAY PARK2012

PLAY PARK2012

PLAY PARK 事務局

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2012/04/20 (金) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★

ダンス&変わり種(28 日ソワレ)
ダンス系のグループ3つに、ネオかぶきを称する男性のみの劇団と不謹慎系漫談という変わった組み合わせのプログラムで、3時間を越える長丁場でしたが、個性豊かで楽しめました。

ホナガヨウコ企画×d.v.d『リアル感電!!/2012年版(また会いたいし、笑いたい)』
ドラムの演奏によって映像をリアルタイムにコントロールするユニット、d.v.dとのコラボレーション作品で、ヴィジュアルも内容もとてもカラフルでキュートでした。ムーブメントの組み立て方やダンサーの技術は甘さを感じる箇所もありましたが全体的な雰囲気が良く、2010年初演のフルヴァージョンを観に行けなかったのが悔やまれました。
ゲストのお笑い芸人(?)、マンボウやしろさんは周りに遅れを取った動きが目立っていて残念でした。

花組芝居『海神別荘』
海の神と、彼の元に嫁ぐことになった女性を描いた、いかにも泉鏡花らしい幻想的な物語でした。紋付袴姿の全員がほぼ出ずっぱりで、様々な役を演じるスタイルが興味深かったです。
古めかしい台詞にタンゴやサルサ等のラテン音楽を合わせるのは面白かったのですが、多用し過ぎていてメリハリがなくて単調に感じました。

珍しいキノコ舞踊団『キノコース』
2月に上演した『ホントの時間』のダイジェスト版で、冒頭で再演だと分かった瞬間から既に以前の感動が蘇って、引き込まれっぱなしでした。
初演時に客席を沸かせたラストのEW&Fの2曲を敢えて外したことによってショートヴァージョンとしての統一感が出ていたと思います。

鳥肌実『玉砕演説』
右翼的メッセージがプリントされた衣装を着た鳥肌さんが日の丸をバックに、政治家や左翼系団体、某宗教団体等をテレビやラジオでは放送出来ないようなネタでおちょくる内容で、途中までは次第に面白くなっていましたが、中盤からは失速気味に感じました。

小野寺修二×森山開次『共犯』
小野寺さんは出演せずに演出・振付に専念していて、森山さんと森川弘和さんのデュオでした。殺人事件の容疑者の取り調べを描いた作品で、最後の部分がよく分かりませんでしたが、小野寺さんならではの時間や空間が変容するような動きや、沢山の役の瞬時の入れ替わりが鮮やかでした。
森山さん、森川さんとも動きにキレとバネがあり、素晴らしかったです。

ドン・ジョヴァンニ

ドン・ジョヴァンニ

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2012/04/19 (木) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★

音楽面では満足
舞台設定をオリジナルのセビリアからヴェネツィアに置き換えた演出で、大掛りな美術や色彩豊かな衣装等のヴィジュアル表現が印象的でした。

場所を置き換えてはいるものの、それ以外の要素は前衛的にしたりはしていないでオーソドックスに描いているので、物語をストレートに理解しやすかったです。
序曲が流れる中を、水面を思わせるテカテカの床の上にドン・ジョヴァンニとレポレッロを乗せたボートが現れて始まり、巨大な操り人形やチェスの駒が登場する美術は視覚的にインパクトはありましたが、歌詞の一部に関連している以上の意図を持たせているのだと思われるものの、その意図が良く分かりませんでした。
クライマックスの地獄落ちのシーンはセリを用いた文字通り落ちていく表現で、照明やスモークの効果と相まって印象的でした。
演出・演技が硬い雰囲気で、このオペラの喜劇的側面があまり出ていないように感じました。

演劇的観点からはあまり興味を引く表現はありませんでしたが、音楽的には歌手もオーケストラも充実していて楽しめました。タイトルロールを演じたマリウシュ・クヴィエチェンさんは余裕を感じさせる歌いっぷりで圧巻でした。ドンナ・アンナを演じたアガ・ミコライさんのドラマティックな歌唱も良かったです。

『ダフニスとクロエ』  振付:ジャン=クロード・ガロッタ

『ダフニスとクロエ』  振付:ジャン=クロード・ガロッタ

アンスティチュ・フランセ東京

スパイラルホール(東京都)

2012/04/25 (水) ~ 2012/04/26 (木)公演終了

満足度★★★

瑞々しいダンス
ジャン=クロード・ガロッタさんの初期の代表作の久々の再演でしたが、3人の出演者の内の1人が急病で出演せず、上演時間を10分短縮した2人ヴァージョンでされました。

ピアノの音が流れる中、若々しい躍動的なダンスがスピーディーに展開し、ダフニスとクロエの恋愛感情が爽やかに描かれていました。バレエ的な動きが少しラフさを混ぜながら使われていて、バレエより感情表現がナチュラルに伝わって来ました。エロティックな表現があるものの、嫌らしさを感じさせず、健康的な雰囲気がありました。
ダンサーのキレの良い動きや魅力的な表情に恋人がふざけ合っている雰囲気が出ていて良かったです。

大半はこの作品の為のオリジナルのピアノ曲が使われているのですが、途中ラヴェルのバレエ音楽『ダフニスとクロエ』が流れる部分があり、壮大なオーケストラの響きが作品の雰囲気に対して大袈裟に感じました。ストイックにピアノだけでも良かったと思います。

ガロッタさんのアフタートークが予告されていたのですが、新作の準備に忙しくて来日出来なかったとのことで、トーク目当てで2日目を選んだのに、ガロッタさんの話が聞けず、本来のヴァージョンも観られずで、残念でした。

ウィンナー・ガラ

ウィンナー・ガラ

公益財団法人日本舞台芸術振興会

東京文化会館 大ホール(東京都)

2012/04/24 (火) ~ 2012/04/25 (水)公演終了

満足度★★★★

充実したガラ公演
元・パリオペラ座バレエ団エトワールのマニュエル・ルグリさんが芸術監督を務めるバレエ団の初来日公演で、客演を呼ばずにメンバーのみの出演ながらも、3時間半以上のヴォリュームがあり、充実していました。

『バッハ組曲第3番』(ジョン・ノイマイヤー振付)
赤系の衣装を来た5組の男女ペアによる作品で、水平に支えるリフトや「アリア」での極端にゆっくりな動きが象徴的で美しかったです。

『アンナ・カレーニナ』よりパ・ド・ドゥ(ボリス・エイフマン振付)
妻の不倫を疑う場面のパ・ド・ドゥで、ダークな雰囲気の中で繰り出される攻撃的な鋭い動きが印象的でした。

『マリー・アントワネット』より(パトリック・ド・バナ振付)
運命と名付けられた登場人物が現れ、アントワネットがギロチンで命を落とす物語で、運命を踊ったキリル・クルラーエフさんがダイナミックで良かったです。

『スキュー-ウィフ』(ポール・ライトフット、ソル・レオン振付)
ロッシーニの軽快な曲に乗せて4人がコミカルに踊る作品でした。ひきつったような不自然な姿勢やブルブル震える動きが楽しかったです。

『グロウ-ストップ』(ヨルマ・エロ振付)
モーツァルトの明るい曲とフィリップ・グラスの暗い曲の二部構成で、次々にフォーメーションが変わって行く様子が魅力的でした。

『イン・ザ・ナイト』(ジェローム・ロビンズ振付)
生演奏によるショパンの調べに乗せて、3組のペアがロマンティックに踊る作品で、しっとりした幸福感に満ちていて素晴らしかったです。どの組も良かったのですが、特にルグリさんとニーナ・ポラコワさんのペアが魅力的でした。

『精密の不安定なスリル』(ウィリアム・フォーサイス振付)
シューベルトの「グレート」終楽章に振り付けた作品で、フォーサイスさんにしては動きも構成もオーソドックスながら、ノンストップでハイスピードに踊りまくっていて単純に楽しめました。

『ルードヴィヒ2世-白鳥の王』(パトリック・ド・バナ振付)
プログラムの解説を読んでいないので勝手な解釈ですが、ルードヴィヒ2世が正気を失っていく様子を描いた作品と捉えました。精神世界を象徴する全身白タイツの女性と皇后の立場が入れ替わっていく描写が素晴らしく、久々にバレエで背筋がゾクゾクしました。ルグリさんの動きがとてもセクシーで格好良かったです。

『ライモンダ』よりグラン・パ(マリウス・プティパ/ルドルフ・ヌレエフ)
今回の公演で唯一の定番のクラシックバレエ作品で、セットがないので少々寂しい感じはあったものの、衣装や群舞のゴージャス感が楽しかったです。ライモンダ役を踊ったオルガ・エシナさんの動きが硬質な美しさを感じさせて素敵でした。

PLAY PARK2012

PLAY PARK2012

PLAY PARK 事務局

CBGKシブゲキ!!(東京都)

2012/04/20 (金) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★

様々な身体表現(23日ソワレ)
演劇2組とダンス3組が出演するプログラムで、ダンスは当然のことながら、演劇も身体表現が特徴的でした。

柿喰う客
永島敬三さんによる一人芝居で、スタンドマイクを前にして、恋する女子高生の奇妙な物語がリズミカルで緩急の対比が鮮やかな口調で語られ、コンテンポラリー落語といった趣きでした。音響や照明の演出を用いずに、一人の声と動きだけで20分間を持続させていて素晴らしかったです。

アマヤドリ
ひょっとこ乱舞から劇団名を変えてからの初の公演で、人の出会いの不思議さを爽やかに描いていました。6人の役者で台詞を回して1人のモノローグを語るような文体や、ダンスでも日常動作でもない動きが印象的したが、本公演の時のクオリティーに比べると物足りなさがありました。

きたまり
セーラー服を来た客席から観客を掻き分けて登場し、リズムに合わせて激しく踊ったり、無音の中で静かに踊ったり、途中で台詞もあったりとユーモラスな作品でした。昼に柿喰う客の『絶頂マクベス』に出演して夜はこの公演というバイタリティーが凄いです。

Baobab
4人の女性モデルを男性カメラマンが撮影しているというシチュエーションから始まり、ビートの効いた音楽に乗せて踊る作品で、アフリカ系のダンスを思わせる腰の落とし方とステップが印象的でした。荒削りな感じはありましたが、独特のセンスが魅力的でした。

ISOPPと愉快な仲間たち
自らヒューマンビートボックスをしながら踊って始まり、一発ギャグ的なコント、物真似芸とバラエティ豊かなパフォーマンスでした。しっかりとしたダンスやヒューマンビートボックスのスキルがあるのに、方向性がはっきりせず、器用貧乏な印象があり勿体なく思いました。

フェスティバルと銘打うっている割には雰囲気が地味で、盛り上がりに欠けるように思いました。

DANCE to the Future 2012

DANCE to the Future 2012

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2012/04/21 (土) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

平山素子×新国バレエ
平山素子さんが新国立劇場バレエ団のメンバーの為に作った新作と旧作、そして過去に平山さん自身が踊ったデュオ作品の3本が上演され、それぞれ異なるテイストがあり楽しめました。

『Ag+G』
タイトルの通り、銀と重力をテーマに振り付けた作品で、物語性はなく、身体の様々な可能性を感じさせる内容でした。背後の黒い壁の一部が開口になっていて、明るい奥が見える以外は何もない暗い空間の中をソロから5組の男女ペアまで様々なフォーメーションで踊り、多彩なムーブメントが魅力的でした。動きのスピード感や静止時のポーズが揃っていないのが残念でした。
恐竜のような背ビレが付いた衣装が微妙に感じましたが、フードを被って逆光で見えるシルエットは面白かったです。

『Butterfly』
男女デュオの作品で、特に物語はないものの、モノクロの色彩の中でストイックに踊り続ける姿がとても美しく、恋愛の切なさが感じられました。盛り上がる場面で静止やゆっくりとした歩みを用い、敢えて動きを抑えていたのが印象的でした。テクニック的にかなり高度なことをしているのを派手に見せつけるのではなく、静かな雰囲気を壊さずに展開させていたのが素晴らしかったです。
今後、新国バレエ以外のダンサーにも踊ってもらいたい傑作でした。

『兵士の物語』
小道具や装置を用いた、道化芝居的なユーモアとアイロニーを感じさせる作品でした。マイム的な動きが多く、終盤のユニゾンや悪魔のソロとの対比が印象的でした。ストラヴィンスキーのドライな響きと振付のテイストが上手くが調和していたと思います。最後の暗転の後に奏者の席に3人の道化役のダンサーが座っている演出が素晴らしかったです。全体的ちょっとレトロな雰囲気なのにる、終盤にデジタルな雰囲気の派手な照明の演出があり、違和感を覚えました。

チェーホフ短編集 「賭け」 【沢山のご来場ありがとうございました!】

チェーホフ短編集 「賭け」 【沢山のご来場ありがとうございました!】

華のん企画

あうるすぽっと(東京都)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

巧みな構成
チェーホフの短編小説6本を互いに関連するように構成した作品で、シリアスな雰囲気からドタバタまで様々な場面があり、6人の役者それぞれに見せ場がある、巧みに作られていました。

15年の幽閉生活に耐えることが出来れば200万ルーブルを与えるという賭けを提案した頭取と、その賭けに乗った法律家の物語をベースに、シニカルでコミカルなエピソードが劇中劇的に展開し、時系列を遡っていく構成にサスペンス性も感じられて興味深かったです。
『賭け』以外の5編の物語がそれぞれ『賭け』と関連を持たせているのは勿論のこと、5編の間でも共通のモチーフが使われているのも楽しく、終盤にそれまでに出てきた台詞がコラージュされて現れるのも面白かったてす。

中央にテーブルが置かれた1段上がったステージの上で基本的には演じられ、出番がないときも隅に座っている演出が劇中劇的な感じを高めていました。ステージを跨ぐ様に架けられた大きなプロセニアム・アーチも効果的でした。
途中で出てくる台詞に則した選曲をしているかと思っていたのですが、そうではない曲が使われていたのが残念に思いました。

脚本、演出、演技とも高いレベルだと思いましたが、まとまりが良すぎて優等生的な雰囲気を感じました。贅沢な望みですが、もっと強烈な個性を感じさせて欲しかったです。

白痴

白痴

ユニークポイント

atelier SENTIO(東京都)

2012/04/15 (日) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

重層的な表現
坂口安吾の代表作を、台詞のやりとりで展開する一般的な演劇のフォーマットではなく、複数のレイヤーが互いに干渉することなく展開する、実験的な形式で舞台化した作品でした。

真っ白な空間の中、小説の文章が表示される4つのモニター、現代の格好で朗読する女性、着物を纏って呻きながら動く女性、全身白い格好で道化的に戯れる男女といった異なるレイヤーがお互いにあまり関連しないで展開する構成ですが、テクストは少しカットされている以外は前衛的演出に良くあるような断片化や他のテクストの挿入などもなく原作通りに進むので、押し付けがましい難解さは感じませんでした。

ビデオカメラを用いて役者のアップを映したり、役者が劇場の外に出て行って劇場のすぐ横を走る電車を映したりするのが、小説の中の要素と結び付いていて、単なる思い付きではない説得力がありました。
原作の持つコミカルな雰囲気やエロティシズムが具現化されていて、ある意味では分かりやすい演出でした。

ちょっとレトロさを感じさせるおもちゃを用いて、朗読されている場面をユーモラスに再現するのをライブ映像で投影するのはスタイリッシュで面白かったのですが、それらのおもちゃと原作との繋がりが希薄に感じられたのが勿体なく思いました。
真っ白な空間に色彩豊かな着物やキャンドルが映えていて美しかったです。

この劇団は毎回異なる作風の作品を作っていて、いずれも楽しめるものになっていて興味深く、個人的には今回の実験的な作風は好みなのですが、前作(リアルな会話劇でした)に比べて惹き付ける強度に欠けていると思いました。

騙り。

騙り。

ティーファクトリー

座・高円寺1(東京都)

2012/04/18 (水) ~ 2012/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

父と息子の神話
オイディプスの物語をモチーフに父と息子の関係が、ライブ映像や独特な色彩感の照明を用いたスタイリッシュな演出で描かれていて、仄暗い晦渋さが不思議と心地良かったです。

父の息子に対する性的な妄想も入り交じった屈折した思いが詩的な台詞で紡がれ、極端に難しい単語や言い回しを使っているわけではないのですが、ストレートに腑に落ちない浮遊感がありました。よく分からないながらにも惹き付けられる魅力がありました。
主役である父のモノローグ的な台詞が大半で、普通に話すだけでなく、マイクを使ったり、録音を使ったり、文章を字幕で流したりと様々な表れ方をするのが印象的でした。かなりの分量の台詞を、狂気に侵されたように語り続ける手塚とおるさんが素晴らしかったです。シシュポスのエピソードを思わせる終盤のシーンに独特な質感がありました。

少し高く上げられた舞台中央の両袖に稼働式の大きなスクリーン状の壁があるだけのシンプルなセットでしたが、オレンジを基調とした照明や、青や緑のスポットライトが空間の雰囲気を変えていて、美しかったです。壁の後ろでスポットライトを受けて浮かび上がる役者の姿が幻想的でした。西洋の宗教曲と日本の雅楽という不思議な取り合わせの選曲も作品に上手く合っていたと思います。宇野亜喜良さんらしいダークさがあるメイクアップと衣装も良かったです。

平成中村座 四月大歌舞伎

平成中村座 四月大歌舞伎

松竹

隅田公園内 仮設会場(東京都)

2012/04/02 (月) ~ 2012/04/26 (木)公演終了

満足度★★★★

笑いとケレン味たっぷりの法界坊
破戒僧の法界坊が悪行を繰り広げる物語が、串田和美さんの演出で笑いに満ちたものとなっていました。

ナレーションでの登場人物紹介から始まり、コミカルな動きや、役者以上に目立つ黒衣、オペラみたいな歌唱といった、親しみやすい演出がたくさん施されていて、ストーリーがわからなくても演技だけで十分楽しめる作りになっていました。

勘三郎さんと笹野高史さんがはっちゃけていて、最終幕以外はまるでコントのようでした。勘三郎さんは顔の白粉や、女型のゆっくりとした台詞回し等の歌舞伎のお決まり事、更には自分が病み上がりであることもネタにしていて笑えました。
勘三郎さんに執拗にいじられても堪えて真面目に演じている橋之助さんや七之助さんの様子がおかしかったです。

最終幕は打って変わってケレンの効いた豪快な立ち回りで、歌舞伎の様式美を劇的に表現していて素晴らしかったです。舞台奥の扉を開け放して、この作品の舞台となっている隅田川の土手を見渡す中(席によってはスカイツリーも見えるそうです)、開口部と舞台上に圧倒的な量の桜吹雪が舞い散り、10人程によって水平に持ち上げられた書き割りのパネルの上で見得を切る勘三郎さんが圧巻でした。

ミュージカル「コーヒープリンス1号店」

ミュージカル「コーヒープリンス1号店」

ネルケプランニング

青山劇場(東京都)

2012/04/13 (金) ~ 2012/04/21 (土)公演終了

満足度★★★

ウェルメイドなラブコメ
ひょんなことから男性としてコーヒーショップで働くことになった女性と、その店の店長を務めることになった大企業の御曹司が、色々あった後に結ばれるという王道的なラブストーリーが、手堅い演出のミュージカルとして描かれていて、素直に楽しめる作品でした。

序盤の韓国ネタのギャグは滑り気味でしたが、次第に客席の空気も温まって、笑わせる場面も泣かせる場面も流れが良かったです。終盤の畳み掛ける展開もドラマチックでした。最後のシーンは取って付けたような違和感があり、その前で終わって良いと思いました。

大半の役者の歌唱力が高くて安心して聞けました。特に終盤の中尾ミエさんと尾藤イサオさんの歌が圧巻でした。高畑充希さんの少年っぽい演技と情熱的な歌が魅力的でした。

美術や照明、バンドの生演奏等のスタッフワークも充実していて、場面転換もスムーズで安定感がありました。衣装や曲調が一昔前の雰囲気だったのも、漫画的なストーリーに合っていたと思います。

物語も演出もエンターテインメントに徹していて、クオリティーも高くて良かったのですが、もっと生の舞台ならではの手法や構成を用いて欲しかったです。
ゲイであることを笑いのネタにする場面が多かったのが気になりました。

絹の手ざわり ~縁(えにし)~

絹の手ざわり ~縁(えにし)~

劇団絵生(えき)

三越劇場(東京都)

2012/04/11 (水) ~ 2012/04/17 (火)公演終了

満足度★★

耐え忍ぶ女の強さ
普段ならまず観ないタイプの作品ですが、友人が出演しているので観に行きました。
大正時代から終戦にかけての呉服屋を舞台に、古い価値観が支配的な時代の中を力強く生きて行く女達の姿が描かれていました。

幼い頃の病気が原因で子供を生めない体になってしまった若女将が、旦那が他の女性との間に設けた子供を実の子供と世間に偽って養う苦悩が描かれた第一幕と、戦争によって生活が困窮し息子も遠方で戦死してしまう苦難の中を嫁・姑が心を合わせて暮らして行く様子を描いた第二幕からなる話で、笑いは控え目で重いトーンが支配的でした。

ゆっくりとしたテンポで分かりやすく物語が展開するので、まどろっこしさを感じました。各シーン毎にセットを変えるために長い暗転が頻繁にあり、流れが滞っているように感じました。客の年齢層がかなり高めだったので、このくらいのスローペースの方が良いのかも知れませんが、もう少しテンポ良く展開して欲しかったです。
登場人物がショックを受ける時にピアノの不協和音が響く等、音楽がベタ過ぎるのも逆に冗談みたいに見えて醒めてしまいました。

頼りない若旦那を演じた篠塚勝さんの年代毎の演じ分けが良かったです。岡田茉莉子さんが演じる姑と、かとうかず子さんが演じる嫁は前時代的な女性像で描かれていて、あまり魅力を感じませんでした。

カルテット! 4/25浦安公演

カルテット! 4/25浦安公演

アトリエ・ダンカン

東京グローブ座(東京都)

2012/04/12 (木) ~ 2012/04/21 (土)公演終了

満足度★★★

2人1役
崩壊しかけていた家族が音楽を通して再生していく様を描いた作品で、ストーリーとしてはベタなホームドラマで新味はありませんでしたが、演劇ならではの手法を用いた演出が興味深かったです。

父、母、姉、弟の4人がそれぞれピアノ、チェロ、フルート、ヴァイオリンを弾く設定なのですが、変に弾き真似をしたりはしないで、演奏家が舞台上に登場して実際に演奏し、役者は演奏家の横に佇んでいたり、物語に即した歌詞で歌ったりする趣向が効果的で面白かったです。
家の中、屋外、店の中、音楽ホール等、様々な場所が出て来るのを敢えてそれと分かるような具体的な表現をせずに、椅子とワゴンの配置だけで示していたのもスマートで良かったです。
それだけに、クライマックスの場面で突然具体的な物と映像が出てきたのには違和感があり、残念に感じました(流れ的には感動する場面なのに客席から笑い声が上がっていました)。

音楽は楽器編成を変えて多少のカットをした以外は大幅な改編をしていないアレンジで、原曲を尊重していて良かったです。器楽曲に歌詞をつけて歌うのは、音域や音程の跳躍等が役者には負担が大き過ぎたみたいで、危なっかしい場面が所々にあったのが勿体なかったです。

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