満足度★★★
音楽面では満足
舞台設定をオリジナルのセビリアからヴェネツィアに置き換えた演出で、大掛りな美術や色彩豊かな衣装等のヴィジュアル表現が印象的でした。
場所を置き換えてはいるものの、それ以外の要素は前衛的にしたりはしていないでオーソドックスに描いているので、物語をストレートに理解しやすかったです。
序曲が流れる中を、水面を思わせるテカテカの床の上にドン・ジョヴァンニとレポレッロを乗せたボートが現れて始まり、巨大な操り人形やチェスの駒が登場する美術は視覚的にインパクトはありましたが、歌詞の一部に関連している以上の意図を持たせているのだと思われるものの、その意図が良く分かりませんでした。
クライマックスの地獄落ちのシーンはセリを用いた文字通り落ちていく表現で、照明やスモークの効果と相まって印象的でした。
演出・演技が硬い雰囲気で、このオペラの喜劇的側面があまり出ていないように感じました。
演劇的観点からはあまり興味を引く表現はありませんでしたが、音楽的には歌手もオーケストラも充実していて楽しめました。タイトルロールを演じたマリウシュ・クヴィエチェンさんは余裕を感じさせる歌いっぷりで圧巻でした。ドンナ・アンナを演じたアガ・ミコライさんのドラマティックな歌唱も良かったです。