Takashi Kitamuraの観てきた!クチコミ一覧

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芸人と兵隊

芸人と兵隊

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2019/02/13 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★

漫才落語家などの戦地慰問団「笑わし隊」を描いた。作・演出は今年の読売演劇大賞の優秀作品賞を受賞した注目のコンビ。前半はあっさりした展開で物足りなく感じたが、後半になって大きなヤマがあり、何度も目頭が熱くなった。できれば、もっと笑えると一層良かった。
芸人たち登場人物にくっついているだけで、時代への批判精神がなければ、今日的な意義はない。かと言って、言葉だけの戦争批判はいまさら空疎であり、観客の心を動かさない。その難しい壁をよくクリアして、彼らもまた時代に押しつぶされた存在であることをしめした。笑いのある悲劇を通して戦争の残酷さ、惨さ、非人間性を切々と感じさせる舞台だった。
柴田理恵のパーっ場を明るくする存在感、村井國夫の抑制の末に真情が溢れてくる演技がよかった。戦死した弟弟子の事を語る高橋洋介の高座の場面も良かった。

CHIMERICA チャイメリカ

CHIMERICA チャイメリカ

世田谷パブリックシアター×パソナグループ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2019/02/06 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★

ラストはたいへん素晴しく、感動した。そこまでの過程が短い場面を行ったり来たり(全部で38場ある。転換、セットが大変贅沢な芝居)で、少々まだるっこしく感じたが、最後に救われた。3時間10分(15分休憩)

新国立劇場演劇研修所「るつぼ」

新国立劇場演劇研修所「るつぼ」

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2019/02/08 (金) ~ 2019/02/13 (水)公演終了

満足度★★★★★

赤狩りの嵐の中で、実際にあった魔女狩り事件を書いた古典的名作。後半の裁判のシーンから非常に緊迫感があった。「魔女などいない」というジョンの証言が通るのか、大衆を煽る少女アビゲイルの証言が通るのか。二転三転していく。
真実の証言をしながらもどうにもならないとわかったとき、アビゲイル側にくしていくメアリーなど、様々な人間のありようを浮かび上がらせていく。保身に入る人、両親に苦しむ牧師、そして主人公ジョン。奪ってもう前ない人間の尊厳が浮かび上がる。
若い俳優たちの熱演で、非常に迫力ある舞台だった。たとえ無名でまだキャリアは浅くとも、この舞台においてはみな、唯一無二の存在だった。3時間20分(15分休憩)

イーハトーボの劇列車

イーハトーボの劇列車

こまつ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2019/02/05 (火) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

いろいろに考えさせられ、発見がありました。「宮澤賢治の評伝劇」なのですが、単純な評伝とはいえない仕掛けが満載で、一言で言えば宮沢賢治批判の芝居ということもできます。農民たちの演じる劇中劇になっており、賢治の思い描いたユートピアが、農民の現実から遊離したお坊ちゃんの夢想に過ぎないではないかという批判です。これは驚きでした。もしかしたら井上ひさしは、賢治の話より、重労働と出稼ぎと借金にあえぐ農民の苦しみを訴えたかったのではないでしょうか。

なんといっても、主人公宮沢賢治があくまで受け身の存在で、賢治の父や、監視役の賢治批判の方が、質量ともに圧倒的です。漫才で言えば賢治はボケ役で、ツッコミを受けてうまく返せないボケ役。
それでもなお賢治の残しだ詩や童話が私たちを惹きつけるのはなぜか。考えさせられます。

俳優たちはみなはまり役で、見事な出来でした。まず松田龍平がシャイなボケ役の賢治にぴったり。そこに実直な生活者の立場から批判を突きつける山西淳が強烈です。賢治に呆れつつ、憎めない友人役の土屋佑壱も場を大いに盛り上げました。ナイロン100℃の村岡希美も、何気ない仕草で観客を引きつけ、とぼけた味で素晴らしかった。これだけのキャストが揃う舞台も滅多にありません。
長塚圭史の演出も素晴らしい。昔の小学校のような木製椅子と畳だけで場面を次々転換させる舞台作りも見事でした。

ネタバレBOX

休憩15分込みで3時間30分。ただ、非常にセリフの密度が高く、それをテンポ良く演じているので、長さを全く感じませんでした。
拝啓、衆議院議長様

拝啓、衆議院議長様

Pカンパニー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2019/02/06 (水) ~ 2019/02/11 (月)公演終了

満足度★★★★

相模原障害者施設殺傷事件を題材にした芝居。「意思疎通もできない障害者は安楽死させるべき」という犯人の思想にも障害者介護の現実の一面に根がある。形だけの障害者の生きる権利と、それを全否定した犯人の思想という対立を、死刑制度の問題と絡めて、より高い次元にどう止揚させるかを問いかける舞台だった。
障害者施設職員の悩ましい本音、犯人の抱いていたコンプレックスなども掘り下げたところに発見があったし、作品が提示した目指すべき社会のイメージに私は感動した。ただ、様々な議論と理屈が十分登場人物の肉体になりきらなかった恨みはある。それは役者の問題だけではないような気がした。そのなかで荻野貴継の被告役の不気味さが一番印象的だった。(2時間10分、休憩10分含む)

雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた

雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた

流山児★事務所

座・高円寺1(東京都)

2019/02/01 (金) ~ 2019/02/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

清水邦夫が82年に書いた戯曲。
戦争の傷を抱えていきる人々と、戦後の左翼運動で挫折した若者たち へ捧げるオマージュだった。

青春の愚行と情熱のシンボルともいうべき、「ロミオとジュリエット」を、戦争とたたかいに身を投じて夢破れ、寂しく老い た女たちが演じる。見事な換骨奪胎による戦争と戦後の男たちへのエレジーだった。

舞台には本当に30人もの女優があらわれ、圧巻。その最初の勢揃いの場面は、女子校の同窓会さながらの心地よい騒がしさであった。ロミオの登場が二転三転する展開が見事で、とくにかつての男役スター役の伊藤弘子と、その妹(実は…)役の、坂井香奈美が良かった。歌と音楽も劇とピタリあって、一層感動を深めた。

久々に見た骨太にして猥雑、リアルにしてイデアルな芝居だった。

桜のその薗

桜のその薗

はえぎわ

ザ・スズナリ(東京都)

2019/01/31 (木) ~ 2019/02/06 (水)公演終了

満足度★★★★

大変おもしろかった。久しぶりに思い切り笑えました。女優志望の若い女、40歳の後輩の女、先輩の男が現れ、その先輩後輩の劇団がかつて解散しており、当時の同志たちの今を垣間見ていくというストーリー。ほぼ3つのストーリーが同時並行で進むが、きれいに整理され、オンオフも巧みで混乱せず見られた。
後輩女が、怪我した娘を介抱しようとして「この女、若い!」と嫉妬で介抱を何度もやめたり、打ち合わせ通りにかけない脚本家が、必死に「うちあわせより、こっちのほうがいいんだ」と強弁したりなど、劇団あるある、人生あるあるという要素がいっぱいある。その日常性から物語は軽々と舞台ならではの自由な世界へ飛翔する。突然、矢が胸に刺さったり、血を吐いたり、思いっきり水を人に吹きかけたり。不条理とも言える奇抜な動きが滑稽で大いに笑えた。この日常性と奇想天外な飛躍のコンビネーションが見事だった。
踊り子ありさんは、見たことあるなと思ったら、去年早稲田の「14歳の地図」でやさぐれた教師役だった。大変存在感のある気になる俳優である。

夜が摑む

夜が摑む

オフィスコットーネ

シアター711(東京都)

2019/02/02 (土) ~ 2019/02/12 (火)公演終了

満足度★★★

団地住民たちの奇妙に歪んだエゴばおりなすグロテスクな芝居です。現代の密室とも言える団地の不条理劇とも言えます。
ピアノを弾く女の子を持つ主要家族ヤマモトの部屋が舞台。そこにドアを大小7,8個もつけて、その部屋の中央のテーブルの上に、4階住人のコスギがずっといる。つまり、そこが彼の部屋、という演出・美術は巧みでした。巨大団地の閉塞感、プライバシーのなさがビジュアル化されていました。
ピアノのメロディーの美しいのに、なにか苛立たせるようなリズム。眠れぬ夜の妄想を、小学生用科学セットのクラゲ飼育に例えるイメージ、才気を感じます。当時、シーモンキーがはやったこと、一緒に見た妻と後で盛り上がりました。
役者は皆テンション高く、芸達者。「山の声」の山田百次、「逢いにいくの、雨だけど」の異儀田夏葉、「誰も知らない国」の有薗芳記さん。それぞれ別人のようでした。

ネタバレBOX

ただ開演に少し遅れてしまったせいか、このグロテスクな歪んだ世界に結局ついていけませんでした。客席は結構笑っていたのですが。
グロテスクな歪みばかりが描かれて、等身大の人間として観客と舞台の間をつなぐ共感共有できるものが乏しかった気がします。
モーツァルト/歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕

モーツァルト/歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕

東京芸術劇場

東京芸術劇場 コンサートホール(東京都)

2019/01/26 (土) ~ 2019/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★

オペラの日本語公演はむかしはけっこうあったらしいが、いまはほとんどない。そこにいくと、全編日本語の今回の公演は貴重。「原語でないと」という原語至上主義のオペラ通の話をよく聞くが、日本語でも十分楽しめるということが分かった。もちろん、セリフや歌詞の意味がすぐ分かるわけで、素直に楽しめる。いい公演だった。
ドン・ジョバンニ(ヴィタリ・ユシュマノフ)の悪びれないいたずら坊主ぶりがよく出ていた。みなに糾弾されて、神の裁きにあうのは仕方がないともいえるし、ちょっとかわいそうともいえる。バリトンのレポレッロ(三戸大久)も、コミカルな役どころを、軽すぎず、重すぎず、メリハリ付けて演じていてよかった。声も最高。ソプラノも高音がよく出ていて、ほれぼれした。
アリアも六重唱も非常に聞きごたえ抜群。舞台はオペラ用でない会場で、うまくオーケストラピットや、張り出し舞台、二階バルコニーも作っていた。

ネタバレBOX

舞台正面中央上にあった、「く」の字を一つはそのまま、もう一つは左右反転させて重ねたような赤いマークは女陰のしるしだろうか?なぜそこにあるのかわからなかった。
音響についていえば、会場の残響が、だいぶん長く感じた。それだけ、エコーがかかって、音の厚みを増すわけだが、ちょっと長すぎないか? 他も似たようなものなのか、私はあまりコンサートに行かないのでわからないが、少なくとも新国立劇場のオペラハウスはもっと残響は少ないと思う。
森山開次演出・振り付けのダンサーもよかったのだが、やはりオペラなので、歌の良しあしがカギ。観終わって、ダンスはあまり覚えていない。
授業

授業

アンフィニの会

サラヴァ東京(東京都)

2019/01/25 (金) ~ 2019/01/27 (日)公演終了

満足度★★★

有名な不条理劇を初めて舞台で見ました。1時間のコンパクトな舞台。教授の自宅に女子学生がやってきて、授業が始まる。最初は数学の個人授業で、次は比較言語学の授業。教授と女子学生が互いに話が通じずに、次第にどちらもフラストレーションを高めていく。そのいらいらがよく伝わってきた。二人のデフォルメされた異常さと対比的に、女中役の女優が、面倒ごとをいやいや仕切る自然体でよかった。
会場は初めてでしたが、50人ほどの通常はライブハウスの会場。ドリンクを飲みながらのくつろいだ観劇でよかった。

ネタバレBOX

演技上は、教授が次第に錯乱し、ついに女子学生を殺してしまう展開は説得力があった。ただ、腹にナイフの一突きでは人は死なないので、そこはもっとリアルに演じてほしかった。最後に、殺された女学生の棺桶のふたを閉じるコンコンという金づちの音が響く。そこで、最初に響いていたのもこの音だったのかとわかる。同じことが飽きもなく繰り返される円環構造が見事だった。
ミノタウロスの悪夢

ミノタウロスの悪夢

虎金劇倶楽部

ザ・スズナリ(東京都)

2019/01/04 (金) ~ 2019/01/08 (火)公演終了

満足度★★★

カフカの「城」を思い起こさせる不条理劇。「変身」の要素もちょっとある。作者の初期の作品ということですが、「何を書いてよいかわからず、苦し紛れに書いていた」というチラシの言葉の意味がよくわかりました。

暗くなるまで待って

暗くなるまで待って

日本テレビ

サンシャイン劇場(東京都)

2019/01/25 (金) ~ 2019/02/03 (日)公演終了

満足度★★★★

日常の憂さを忘れて、手に汗握るサスペンスの2時間を体験できる極上エンターテインメント。人生や社会への新しい発見は乏しいが、そんなものはくそ食らえ。観客を舞台にひきこんでなんぼという、美的価値と非日常の体験価値という点では群を抜いた舞台だった。

盲目の妻を演じる凰稀かなめは芯の強さを、極悪人の加藤和彦は底知れない怖さを、悪党だけど実は善人の高橋光臣は板挟みの切なさを、よく出していた。題名通り、暗闇がカギになるだけに、様々な光を使い分けた照明も出色だった。

「ハムレット」 「草枕」

「ハムレット」 「草枕」

声の優れた俳優によるドラマリーディング

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2019/01/30 (水) ~ 2019/02/11 (月)公演終了

満足度★★★★

「ハムレット」人気声優(らしい)によるリーディング公演。どんなものかと思ったが、意外な掘り出し物だった。そもそもシェークスピアの芝居は「聴く」ものと言えるので、この公演形態にあっている。

演出の深作氏の上演台本で、90分にコンパクトにまとめているので、スピーディーな展開で、飽きなかった。ハムレットの狂気芝居のおかげで、オフィーリアやポローニアスが次々巻き込まれ、悲劇が拡大増幅していく劇の骨格の怖さがよく分かった。その分、逡巡、優柔不断という側面は後景にひいたけれど、その方が見やすい。

声優陣の演技もなかなかのもの。ハムレットの岸尾だいすけは、変な自信過剰で、わかってないくせに上から目線で、周りのことを考えないティーンエイジャーのようなハムレットだった。パンフをみると、それが演出の狙いとのこと。悩めるインテリとは違うハムレットでよかった。オフィーリア(佐藤聡美)など女優陣もよかった。

どうぶつ会議

どうぶつ会議

こまつ座

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2019/01/24 (木) ~ 2019/02/03 (日)公演終了

満足度★★★★

動物役の俳優は皆、それらしい扮装で登場し、ライオンキングのような雰囲気がある。(あれほど凝ってはいないが)。開幕、まず、5頭の動物が客席に現れて、観客が劇場に閉じ込められた人質であることが告げられる。このように、観客参加型の芝居。知り合いの座長さんに始まる前に、「童心に帰って歌ってください」と言われたが、本当にそうなった。動物たちの歌と観客の参加でつくる、反戦反公害の童話コメディー。

小学生くらいの幼い子と見たらサイコー。すぐ理屈やリアリティーで考えると、たのしめないかもしれない。

ネタバレBOX

ギターやパーカッションの生演奏で、音楽の比重が高く、それがこのシンプルな物語にはあっていていい。曲はひさしの歌詞に今回新たに作曲されたもの。
ライオン、象、猿、キリン、シマウマ、ヒョウ?その他アフリカに集まった動物たちは、ハチ作戦、イナゴ作戦、ネコ作戦(これらはケストナーの原作にはない、ひさし得意の愛らしくも馬鹿馬鹿しい珍作戦)で、人間に戦争と環境破壊をやめさせようとするが、あえなく失敗、最後は、原作と同じく、世界中の子供たちと協力して、動物と子供の団結で大人を改心させる。観客はみんな子供役を果たすわけだが、擦り切れた童心で大声で歌うのはけっこう大変だった。
萩咲く頃に

萩咲く頃に

トム・プロジェクト

シアターX(東京都)

2019/01/16 (水) ~ 2019/01/17 (木)公演終了

満足度★★★

大和田獏が舞台に出てくると、笑いがぐっと増えました。その飄々とした存在感が光る舞台でした。音無美紀子の泣きも良かった。「セールスマンの死」の父子関係と通ずるところがあります。あちらは最後は悲劇ですが。

もうひとつ、いい学校いい会社いい人生という出世主義人生観が、震災によって崩れたことも重要なテーマでした。「上に行ったら何があるの?」という息子の素朴な問いが、父親にもわかるには、震災とさらに数年が必要だったという話。社会的には底辺にいる若い夫婦が、花屋を始める希望に、世間的成功とは違うささやかな幸せのアリカが示されていました。

ネタバレBOX

大和田獏が善人だけに、この父親の無理解と家父長的な押しつけで、息子がグレたという話の内容と、実際の舞台の存在がちぐはぐしたのが残念。でも、最後は父子が和解し、家族の絆を取り戻す場面には目頭が熱くなりました。
素劇 あゝ東京行進曲

素劇 あゝ東京行進曲

劇団1980

俳優座劇場(東京都)

2019/01/15 (火) ~ 2019/01/20 (日)公演終了

満足度★★★

初めて「素劇」を見ました。最初はナレーションやエトキ的場面が多い気がしましたが、次第に面白さが分かってきて、最後はしみじみしました。流行歌手として一世を風靡した佐藤千夜子が、自分を見失い、最後は貧しさの中で孤独死する。絵に書いたような転落劇に引き込まれました。
役者も、皆歌がうまくてびっくり。マイク無しでよく声を胸から響かせていた。とくに若い千夜子役がよかった。
白いロープを月山や、十字架や、あるいは波頭にと、様々に見立てるのも面白かった。一見の価値ある舞台でした。
37年以上再演を重ねてきた舞台だそうです。古い演劇人に聞きましたが、演目は違いますが、「風の子」の学校公演などで当時はこのシンプルな演出が一世を風靡したそうです。最初にこれが演じられた時の衝撃は大きかったでしょう。

ミュージカル「YOSHIKO」

ミュージカル「YOSHIKO」

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

紀伊國屋ホール(東京都)

2019/01/10 (木) ~ 2019/01/16 (水)公演終了

満足度★★★


亡きいずみたくの劇団の新作ミュージカル。公演時間は2時間25分(休憩15分含む)。岡田嘉子の生涯を、舞台上方にスクリーンが時々降りてきて映像も使い、弁士も使って、手際よく見せていく。最初の実らぬ恋から、夫になる俳優・竹内良一との駆け落ち、既婚の演出家杉本良吉とのW不倫、ふたりの樺太のソ連国境の越境。杉本と出会う前の前半は、杉本側の出来事も挟んでいく。自分の感情を抑えられない岡田、インテリ臭い杉本と、主演の二人がよく雰囲気を出していた。

多くの波乱があるが、一番たっぷり描いているのは越境である。「ソビエト・夢の国」「さようなら、日本」という歌もある。当時の左翼演劇人にとってソ連への憧れは強かっただろう。しかし、その実態はスターリンの恐怖政治だった。そのギャップをもちろん作者も演者もよくわかっている。しかし、舞台上ではふたりの恋と越境はあくまでも美しく描かれる。そこのズレが最後まで気になった。セリフも歌詞も美しく、暗い事実をロマンチックに描けるということを考えさせられた。「事実と真実は違う」とはこのことではないだろうが。

ただ「闇の始まりはいつも光の中 誰だ欺瞞を求めるのは 本当のことが怖いのか」という2幕冒頭の歌の歌詞は、そのズレをしっかりと見つめていて、印象に残った。戦争に向かう時代に、人々が反対しなかったことについて「平和を望みながら何も手を下さない 平和を愛しながらそれは心の中だけ」という歌も、今の日本人に突き刺さると思う。

主演の水野貴以はもちろんだが、脇を固める関谷春子(夫・竹内の妹で、岡田嘉子の付き人役)、大川永(杉本の妻役、Wキャスト)の歌のうまさが光った。いずみたく作詞作曲の「星空のロマンス」と、エンディングのバラード「悔いなき命を」はいい歌だった。また聞きたい。

客席は長いファンが多そうだ。岡田嘉子が俳優の夫といっしょにつくった人気劇団のダンス場面(道頓堀行進曲)はにぎやかでのりがよく、手拍子で客席も参加すればもっと盛り上がったと思う。

ネタバレBOX

竹内の妹が嘉子の付き人になり、杉本良吉との不倫も陰で支え、エピローグで嘉子が越境した後の悲劇と平穏な晩年を語る。でも不倫を夫側の親族が応援するというのは違和感がある。事実もそうだったのだろうか?これも気になった点である。
トロンプ・ルイユ

トロンプ・ルイユ

パラドックス定数

シアター風姿花伝(東京都)

2019/01/09 (水) ~ 2019/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★

役者が馬と人間をシームレスに演じる工夫が光りました。「ノーガッツ、ノーグローリー」とか、「勝ってばかりでは身がもたない、負けてばかりでは命がない」など、馬に託した処世訓の数々に、じんわりと人生のあり方を考えさせられます。硬派の作者には珍しいコメディーでしたが、男だけが汗臭くぶつかり合う義理人情の世界というのは、変わらぬ野木ワールドでした。

ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812

ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812

東宝/ニッポン放送/ミックスゾーン

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2019/01/05 (土) ~ 2019/01/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「戦争と平和」って、考えてみれば、青年男女の恋愛模様の波乱を描いた青春ドラマだよな、と改めて気づかされました。
舞台の中に客席をつくるあまり例のない工夫が、舞台を多面化社会化し、奥行き深くする効果があっていい。観客が舞台の構成要素になるのは、主客合一の理想に近づくものだった。
追記:あまり意識しなかったが、全編歌のミュージカル。セリフは一箇所だけ(らしい)。2時間40分。2023年2月の「アンナ・カレーニナ」は3時間45分(20分休憩込み)だったから、か〜なりコンパクト。ブロードウェイでは2時間半だったらしい。

罪と罰

罪と罰

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2019/01/09 (水) ~ 2019/02/01 (金)公演終了

満足度★★★★

よかった。舞台美術、音楽も作品世界をよく視覚化、聴覚化(?)した。
三浦春馬のセリフが聞き取りにくいというかんそうを、9日に見た友人からも聞いたが、11日夜観劇の私は、そんなことなかった。前の方の座席だったせいかもしれないが。
でも、三浦春馬はラスコーリニコフの焦燥と怯えをよく演じていてよかった。小説を読めば20時間はかかるものを、3時間半でエッセンスを伝えるのに、これ以上贅沢を言ったらバチが当たる

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