満足度★★★
堀田善衛「若き日の詩人たちの肖像」を下敷きにした、戦争の時代の青年群像劇。戦争で引っ張り出されるのは男たちなのだが、その男たちに元気がない。踊り子やバーの若いママや下宿のおばさんといった女たちは元気だが、男たちはうらぶれたロマンティストばかり。生きる目的をつかめずに彷徨ったり、革命の夢、芸術の蜃気楼にしがみついたり。
1936年の2・26事件の夜に始まり、1944年の学徒出陣で終わる。娯楽を求めた浅草レビューやコントの笑いも、時代に背を向けたバーの演劇青年たちの怪気炎も、どこか虚しい。日本を出ていこうが「正義の国」はどこにもない。下り坂を転げ落ちていく暗い時代の雰囲気がよく出ていた。しかし芝居を見に来る大抵の観客にはそれは既にしられたこと。そういう常識を超える新しい発見がもう少し欲しい。
「still live」「もう終わった」「だちゃかん」と言ったセリフや、堀田善衛や加藤道夫からとったであろう詩的言い回しが結構耳に心地よかった。