それは秘密です。
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2020/01/23 (木) ~ 2020/01/30 (木)公演終了
満足度★★★
特定秘密保護法のことはすっかり記憶に薄かったですが、この舞台を観ていて、なんと秘密の多い政府になってしまったのか・・・・と、思いました。知りたくても知れない・・・知らなきゃいけないことがあるのに。
突然逮捕された売れないお笑い芸人を巡って、真実に近づくたびにうすら寒さを覚えてきま宇。
日々のんきに過ごしながら、闇が確実に広がっている気がしているこの頃にぴったりな演目だったと思います。
大島、新島、三宅島のトリオと公安のコンビがツボでした。
煙が目にしみる
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2018/05/03 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/08 (火)
桜満開の晴れた日、とある田舎町の斎場で出会った二人の男は、二人とも頭には三角の布、白装束といういでたち・・・どうやら二人は死んだらしい、二人は打ち解け、自分たちのお骨が焼きあがるまでの時間を今迄の人生を語りながら、和やかに過ごそうと思うが・・・・。
残された家族の悲喜こもごもが、賑やかに繰り広げられる。
加藤健一さんのちょっとボケてる老母が最高!飄々として、ちょっと毒もあって、可愛くて、笑顔がとても素敵です。
このおばあちゃんにだけは二人が見えちゃうし、声も聞こえてしまうのです。
いたことして活躍する場面は、抱腹絶倒!
どのキャストにも愛があります。
突然の死をなかなか受け入れられない彼らの気持、悲しみに亡き父の葬儀を思い出し、自分の中の後悔を思い出しました。
父もあんな風に自分の葬儀を見てたのかな、優しく頭を撫でてくれてたかもしれない・・・なんて思うとすごく慰められました。
人は死に向かって生きているのですが、どんな最期を迎えるか誰にもわからないし、自分でも選べない。だからこそ、生きている間にいっぱい愛して、いっぱい笑って、生命の時を堪能し、突然に死の時を迎えても笑って旅立てたらいいな・・・と、思いました。
笑って、泣いて、笑って、心が温かくなる素晴らしい舞台でした。
夏は地方を回るそうです。
ぜひに!とお勧めする舞台です。
ありがとうございました。
『真夏の夜の夢』『セレナーデ』
公益財団法人日本舞台芸術振興会
東京文化会館 大ホール(東京都)
2018/04/28 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/04/28 (土)
大好きなセレナーデです。
とても美しくて、そろっていたんですが、いまひとつ物足りなさを感じてしまいました。
何故なんだろう・・・と、思うのですが、やはり新国立劇場バレエ団で感じた静謐さ、音楽との調和の美しさがすごかったんだと思います。
真夏の夜の夢
とても楽しい演目で、衣装もかわいかったり、みどころがたくさんありあました。
フォーゲルくんのオーベロンは、とても美しかったし、威厳があり、やっぱりすごく素敵でした。
タイターニアの沖香菜子さんは可愛くて、あどけなく、ピュアな感じが、まだタイターニアには早いのかなぁ・・・オーベロンと釣り合う威厳、したたかさ、傲慢さが欲しかったです。
でもとっても可愛いので、眠りとか、くるみ割とかで観てみたいです。
パックの宮川新大くんは踊りはキレもスピード感もあってとてもよかったのですが、ジャンプの着地でドン!と大きな音が出るのは駄目ですね、パックは音を立てないで降りないと、妖精なんですから・・・。高くジャンプしてもとても柔らかな着地をするダンサーさんがたくさんいるので、是非その技を習得してほしいです!
楽しい舞台を、ありがとうございました
最後の炎
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2018/04/14 (土) ~ 2018/04/28 (土)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/04/26 (木)
小さな町で起きた出来事・・・酔っ払い運転の車をテロの犯人と思い込み執拗に追いかけた婦人警官が、少年を撥ね殺した。
少年はその時、一人の男と向かい合っていた。男は少年のボールを拾ったのだ。
少年の母は、痴呆症の夫の母の面倒に明け暮れていた。
少年の祖母は、何度も少年の死を忘れ、日に何度もどこに行ったのかと探す。
少年の父は、少年の学校の先生と浮気をしていた。
そして、小学校の先生は婦人警官の友人だった。
婦人警官に追いかけれられていた男は、恋人の男をも避けて暮らすようになった。
一人の少年の死が、これだけの人の心に影を落とし、影響を与えた。誰もが悲しいのに、その悲しみの形はそれぞれで、受け止めきれず、心はすれ違い、苦しみ、もがく・・・・。
客席の真ん中に作られた白い回転舞台と一本の木が立つだけの舞台で、それぞれのそんな心がぶちまけられていく。
疲弊していく心、逃げても、救われない心たち・・・。
隣の人の体温が感じられず、どんどん孤独になっていく魂たち。
たえず誰かが自分の心の声を発し、言葉を発し、ト書きのような行動説明の発しているので、自分に彼らの心がいしつぶてのようにぶつかってくる・・・そんな感じでした。大きな悲しみの渦の中にいるようでした。
そんな中で、やっぱり私は母親に心を寄せます。
同じ悲しみを共有できるはずの夫とも心がすれ違い、夫の母親の介護に明け暮れ、心がどんどん磨り減っていくのです。鬼頭典子さんの母・スザンヌはいつまでも心に残りそうです。
素晴らしい舞台をありがとうございました。
百年の秘密
キューブ
本多劇場(東京都)
2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/24 (火)
ナイロンの舞台のオープニング?プロローグ?大好きです。
今回は特に面白かった。映像(プロジェクション・マッピングとか言うですか?)を使い、物語への期待を膨らませていくケラさんのセンスは抜群!
たまに真似したようなのに出会うけども、次元が違うのですよ。
さて、物語は庭の大きな樫の木に見守られた一つの家族の歴史・・・樫の木だけが知っている家族の秘密。
この家の娘ティルダ(犬山イヌコ)と親友のコナ(峰村リエ)を中心に、彼女たちの成長と人生、家族の歩みを、彼女たちがこの世を去るまで観せてくれました。
親子関係、夫婦関係、兄妹の関係、それぞれの行動が生き方が、影響を与え合って、その家族の歴史が作られていく・・・。
ナイロンの女優さんたちが大好きです。
イヌコさん、峰岸さんの二人はとても魅力的でした。
松永玲子さんのティナのお母さんが印象に残ります。夫の言うなりの人生、悲しい母親・・・老いた彼女の足を引きずって歩く姿はせつなかったです。そして、もう一役のコナの娘の老年期の落ち着いた笑顔はすごく素敵でした。
村岡希美さんの意地悪な同級生も大好き。
子ども時代の意地悪さそのままに大人になった彼女が、とてもインパクトがありました。
メイドのメアリーの長田奈麻さんの語りが心地良くて、優しくて、彼女の家族に対する愛情をとても感じました。
みのすけさんのチャドが、すごく好きなキャラです。
面白すぎ!でも、哀愁があるんですよね。
影を作るのがとてもうまい人!
とにかく面白かった!
ありがとうございました
1984
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/04/12 (木) ~ 2018/05/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/04/20 (金)
1948年に書かれたこの物語が、今この時代にリンクする恐ろしさ。
思考することも行動することも全て監視され、制御されている。それに反したものは、消されていく・・・・。
全てのデーターが消され、人々の記憶からも消されていく、初めからそこにはいなかったことになる。
一人の男の思考の中にいるのか、それとも彼の住む世界に私がいるのか・・・繰り返される場面、台詞に不安になってくるし、恐ろしさが募ってくる。斜めの床に座っているような気分、ずり落ちそうになるのを必死にこらえているような落ち着かなさ。
今の私たちもネットを使うたびに監視されてるかもしれないし、テレビの報道は実際に印象操作ばかりしている。与えられる情報が真実とは言えないと、このところすごく感じています。
私たちに真実を知る機会は本当にあるのだろうか。
井上芳雄くんの体当たりの演技はすさまじかったし、追い詰められた人間はまさにああなると思う。
神農直隆さんの声が大好きなんですが、あの声でどんどん洗脳されていく・・・・・あせる追い詰め方が尋常じゃないんです。
大好きな声なのに、ものすごく怖かった。
ぞっとしたのは何気ない食事のシーンの繰り返し、リアルな演出も怖かったです。
最前列の席は、かなりハードでありました。
小川絵梨子さんの鋭い視点、見せ方の上手さ、客の追い込み方の上手さ、さすがでした。
肝が冷えた私です。
素晴らしく怖い舞台を、ありがとうございました。
ヘッダ・ガブラー
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2018/04/07 (土) ~ 2018/04/30 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/04/18 (水)
寺島しのぶさんが美しかった!仕草、歩き方が、とても綺麗で優雅!素晴らしかったです。髪形もこのチラシよりも断然素敵でした。
このヘッダという女性は、高名なガブラー将軍の娘でかなり甘やかされ、ちやほやされ、傲慢で、自己中心的・・・・とてもお友達にはなりたくないタイプ・・・父亡き後は将来有望な学者イェルデン・テスマン(小日向文世)と結婚します。だけどおっとりとして、育ての親思いの彼は、ヘッダの望みはかなえてくれようと努力はしてるけど、ヘッダとは違った意味でマイペースで、ヘッダは彼にイライラし、早くも結婚生活に退屈してます。ちくちくと旦那に嫌味を言ったり、露骨に彼の家族を避ける素振り・・・でも、そんなヘッダにまったく気がつかない小日向旦那が、なんとも飄々としてるし、悪意の無いヘッダの神経逆撫でぶりにこんな旦那も嫌かも・・・とあせる
どうしようもない無頼者だった元恋人のエイレルト(池田成志)が、他の女性のおかげで立ち直り、なおかつ成功する!となった時に、めらめらと燃える嫉妬心・・・激しい女性だ~。
エイレルトの恋人(水野美紀)の誠実そうで、誠実がゆえの無神経ぶりもヘッダをいらだたせる・・・・この役、水野さんのイメージじゃなくて、彼女だけこの舞台の上では色味が違うように思えたのです。ちょっと、私は彼女が出てくると醒めちゃってあせる
ただ、こういう女性の方が、ヘッダより強い女性かもというのは感じました。
段田安則さんのいやらしい役も久しぶりで、やっぱ上手いや!こういう役も似合いますね。
佐藤直子さんのテスマンの育ての親のおば様が、とても可愛らしかったです。ヘッダの高慢ぶりと夫へ似愛情の無さが、おば様の人間味あふれた様子に際立ちます。
そして、印象に残るのが、おば様から派遣された家政婦のベルデの福井裕子さんです。夫婦の会話、登場人物たちの個性がぶつかり合うシーンのそこここに彼女は存在します。確かに彼女はこの家にいる・・・そんな存在感が素晴らしかったです。
舞台中央の居間の上に飾られたガブラー将軍の肖像画、彼女の存在のより所だったのかもしれない、彼女が将軍の娘から彼女自身になれなかったのが悲劇だったのかも・・・・なんて、思いました
砦
トム・プロジェクト
シアターX(東京都)
2018/04/10 (火) ~ 2018/04/15 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/04/11 (水)
実在の人物室原知幸さんの下筌ダム建設計画の反対運動を、描いた舞台です。約13年に渡って、反対運動に資材を投じ、砦まで作り、最後の最後まで闘った人物です。
村井邦夫さん演じる室原知幸は、信念を持ち、知的で、人をひきつける魅力的な人物でした。
その彼を支えた奥さんを藤田弓子さんが演じました。
彼を信じ、献身的につくしました。
彼亡き後にはダム建設が始まり、家を立ち退かなければならなくなる寂しさは計り知れないものがありました。
原口健太郎さん、浅井伸治さん、滝沢花野さんの三人が、八面六臂の大活躍で、室原陣営の人たちやそれに反対する人たちを演じました。彼らの後ろに大勢の人たちがいる・・・それがよく伝わってきました。
ダムを作らないと川が氾濫し、多くの被害が出る。
だけどそのためには多くの人たちが、今迄培ってきた生活の場を奪われてしまう。
どちらも辛い立場です。
決定を下さなければいけない役所も辛いかもしれません。
今の便利な世の中には、先人の辛い選択が色々あったと思います。それを踏まえて少しでもいい世の中にしていかなければ、申し訳ないなと思いました。
素晴らしい舞台を、ありがとうございました
In This House
conSept
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2018/04/04 (水) ~ 2018/04/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/04/10 (火)
大晦日の夜、若い男女の車が故障して助けを求めた寂れた農場には、年老いた夫婦がいた。彼らはもうここには住んでおらず、久しぶりの訪れたという・・・電話もなく、一晩彼らはここで過ごすことになった。
どこか憂いを含んだ老夫婦、はしゃぎながらもなんとなく気持の行き違いを感じる若い二人・・・共に過ごすこの夜は彼らの人生の分かれ道・・・・。
時代が変わっても、世代が違っても愛する気持は変わりなくて、すれ違う気持も変わりなくて、完璧などどこにも無くて、だからこそ人は寄り添っていくんだとそんな優しくて、哀しくて、温かいファンタジーでした。
老夫婦を岸祐二さんと入絵加奈子さんが演じ、若いカップルを法月康平くんと綿引さやかさんが演じました。
岸さんの老いた夫の後悔満ちた表情、深い歌声がとても心に響いて、彼が胸に抱いたままの悲しみが伝わってきました。
あの時こうすれば良かった、そうすればもっと違う結末になっていたかも・・・と、思いながらも、ああするしかなかった自分がいたことを受け入れ、妻とも分かり合えることが出来、きっと二人はようやく娘の元に行けたんではないかと思いました。
生演奏もとても素敵でした。
私の中の永遠のアンジョルラスの岸さんですが、本当にいい役者さんになったなぁと思います。バルジャン、ジャベールもまたいつか演じる日が来ると思ってます。でも、これくらいのキャパの劇場で、こういう素朴でしみる舞台をまたやってほしいと思います。
心温まる素敵な舞台を、ありがとうございました
砂塵のニケ
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2018/03/23 (金) ~ 2018/03/31 (土)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/03/27 (火)
会社経営者の娘に生まれ、将来はその経営に携わることを決定付けられている彼女の夢は美術修技術者。
父のいない彼女に絶対的な影響力を持つ母親に逆らいながらも逆らえ切れないジレンマ・・・そんなときに出会った一枚の絵は彼女をパリへといざない、勝利の女神のニケへ、そしてニケのいたギリシャのサモトラキ島へと導いていく・・・・そして、幼い頃の記憶から消された父親へとたどり着く。
母と娘の関係は、いろいろありますよね。
母親は反面教師であり、水先案内人でもあります。娘は愛しい小さな分身だったのですが、いつの間にか自分を追い越していくまぶしい存在でもあります。彼女を手放し、一人前の人間であると認めた時の寂しさと嬉しさはなんとも言えない気持です。
若い感性を瑞々しく演じた那須凛さんが、娘と重なります。
おかれた環境はまったく違いますが、自分の力で人生を切り開こうとする前向きな姿勢に心配と声援を客席からおくってました。
舞台の上には、愛がたくさんありました。
それぞれの愛が、とても温かくて、それでいて切なくて・・・ひとり、ひとりの生きてきた道が、抱いてきた愛が、時間を超えて、また受け継がれていくのです。
美術の修復もそんな仕事かもしれないと思いました。
そう言えば、主人公の理沙は父とわかっても「お父さん」とは呼ばなかったなぁ。もうこの世にいなくても、いつかそう呼べる日が来るといいなと・・・ちょっとしんみりしました。
若い感性とベテランの深さが素晴らしい舞台でした。
ありがとうございました。
夏への扉
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2018/03/14 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/03/20 (火)
3・11の大震災の時にチケットを持っていたのですが、観に行けなかった作品です。
ロボット開発に携わっていたダニエル(畑中智行)は、婚約者と共同経営者に裏切られ、窮地に立たされた。そんな彼は大事な猫のピート(筒井俊作)とともにコールドスリープし、未来の世界に目覚めることを選んだ・・・・そこで、大事な人と会うために。
猫のピートの筒井俊作さんがとても良かったし、アクセントになっていた。
舞台自体は、なんだか物足りないものを感じた。
舞台の短い時間に収めてしまうには、ある意味壮大なる物語だったような気がする。そして、29歳(ちょっと定かでない)の彼が、11歳の少女と未来を約束するに至る心境がいま一つ伝わってこなかった。ただ、ドタバタと時間が過ぎた気がする。
このところ、キャラメルボックスでは若い役者さんを使うことが多いが、まだまだ技術的にこなれていない感が否めない。
台詞の発声、役の感情がいま一つ伝わってこない。
キャメルには、いい役者さんがたくさんいる。
彼らをもっと使ってほしいと持った。あの役が彼女だったら、彼だったら・・・・と、思わずにはいられない場面が多々あった。
まあ、なんだかんだと言っておりますが、若い役者さんたちもいつまでもそこにとどまってるわけではないので、今後に期待したいです。
3・11の大震災の時にチケットを持っていたのですが、観に行けなかった作品です。
ロボット開発に携わっていたダニエル(畑中智行)は、婚約者と共同経営者に裏切られ、窮地に立たされた。そんな彼は大事な猫のピート(筒井俊作)とともにコールドスリープし、未来の世界に目覚めることを選んだ・・・・そこで、大事な人と会うために。
猫のピートの筒井俊作さんがとても良かったし、アクセントになっていた。
舞台自体は、なんだか物足りないものを感じた。
舞台の短い時間に収めてしまうには、ある意味壮大なる物語だったような気がする。そして、29歳(ちょっと定かでない)の彼が、11歳の少女と未来を約束するに至る心境がいま一つ伝わってこなかった。ただ、ドタバタと時間が過ぎた気がする。
このところ、キャラメルボックスでは若い役者さんを使うことが多いが、まだまだ技術的にこなれていない感が否めない。
台詞の発声、役の感情がいま一つ伝わってこない。
キャメルには、いい役者さんがたくさんいる。
彼らをもっと使ってほしいと持った。あの役が彼女だったら、彼だったら・・・・と、思わずにはいられない場面が多々あった。
まあ、なんだかんだと言っておりますが、若い役者さんたちもいつまでもそこにとどまってるわけではないので、今後に期待したいです。
3・11の大震災の時にチケットを持っていたのですが、観に行けなかった作品です。
ロボット開発に携わっていたダニエル(畑中智行)は、婚約者と共同経営者に裏切られ、窮地に立たされた。そんな彼は大事な猫のピート(筒井俊作)とともにコールドスリープし、未来の世界に目覚めることを選んだ・・・・そこで、大事な人と会うために。
猫のピートの筒井俊作さんがとても良かったし、アクセントになっていた。
舞台自体は、なんだか物足りないものを感じた。
舞台の短い時間に収めてしまうには、ある意味壮大なる物語だったような気がする。そして、29歳(ちょっと定かでない)の彼が、11歳の少女と未来を約束するに至る心境がいま一つ伝わってこなかった。ただ、ドタバタと時間が過ぎた気がする。
このところ、キャラメルボックスでは若い役者さんを使うことが多いが、まだまだ技術的にこなれていない感が否めない。
台詞の発声、役の感情がいま一つ伝わってこない。
キャメルには、いい役者さんがたくさんいる。
彼らをもっと使ってほしいと持った。あの役が彼女だったら、彼だったら・・・・と、思わずにはいられない場面が多々あった。
まあ、なんだかんだと言っておりますが、若い役者さんたちもいつまでもそこにとどまってるわけではないので、今後に期待したいです。
海賊
NBAバレエ団
東京文化会館 大ホール(東京都)
2018/03/17 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/17 (土)
大好きで応援していた宝満直也くんが、新国立劇場バレエ団からこちらに移籍しました。
その初めての作品で、彼は悪役のボスパシャ・ザイードを演じ、振付助手も担当しました。
この新製作の海賊では、パシャ・ザイ-ドもたっぷりとダンスがあり、すご嬉しかったです。
演技力もあり、キレキレダンスの彼は、とてもかっこいい悪役でした。なので、逃げ出したいギュルナーレ(佐藤圭さん)はここにいてもいいじゃないのぉと、思って観てました(笑)
振付はどこを担当されたかは知らないですが、男性ダンサーさんの踊る場面がたくさんあって、大満足でした。迫力があり、盛り上がりました。
宝満くん、新国立劇場バレエ団を辞めたのはバレエ団にとって大きな損失だと思います。彼ほどの才能を生かしきれなかったのは、残念としか言いようが無いです。でも、彼が選んだ新天地で、彼の持ち味をたっぷりと生かし、これから世界に通用する振付師、ダンサーになっていただきたいと思います。応援します!
奴隷アリが、なんと!新国立劇場バレエ団のプリンシパルの奥村康祐くんでした。すごいことですよ!
我らの王子が奴隷あせるしかし、ダンスシーンたっぷりで、そのクオリティの高さを、しっかりと見せ付けてくれました。
品のよさと輝きは隠せないので、どこかの王国の王子が幼い頃に誘拐されて、奴隷になったのね・・・・と、お友達と話してました。
しかし、まさか奥村くんのアリを観れるなんて!至福でありました。
申し訳ないほどにこの二人しか観ていなかった私ですが、新しいものを作り出したバレエ団のエネルギーに拍手です。
ちょっと欲を言えば、主役二人の女性ダンサーさんの衣装がとても似ていて、わかりにくい感じでした。
もっと変化があったほうが、良かった気がします。
赤道の下のマクベス
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/03/06 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/16 (金)
作・演出 鄭 義信さんです。
舞台両端に並ぶ独房、奥には大きな厳重な扉、下手手前に簡単な水道、中央の広場には縁台が置かれ、そして正面奥の高いところには絞首刑台がある・・・・囚人たちを見下ろすように。
ここはシンガポールのチャンギ刑務所、ここにいるのはBC級戦犯たちで、捕虜収容所監視員をしていた者たちだ。その中には、朝鮮人の若者も3人いた。
暑い太陽が降りそそぐ日も、雨の降る日も彼らは日中は広場に出され、ビスケットとスープの日に二度の食事で、刑の執行する日を待たされていた。
父親に反抗し、日本の軍隊に志願した若者(池内博之)は役者になりたかった。マクベスを片手に、陽気で、粗雑な振る舞いをするが、みんなのムードメーカーだ。でも、死を意識しながらの毎日にぎりぎりの精神状態にいるのが、苦しいほどに伝わってくる。
彼が陽気に振舞えば、振舞うほど、悲しくて、切なくて・・・・。
一番の年長で、辛い行軍の中、人を殺めてしまった男(平田満)は、いつも穏やかな笑顔で、苦しむ若者たちを慈愛に満ちた目で見ている。だけど、彼が経験した飢餓に苦しんだ戦争体験は凄惨で、非情だった。人間の限界を見てしまった彼の死を既に受け入れている気持ち・・・・普通に暮らして、温かな父親だった人が最後に行き着いた場所が、ここだったなんて。
平田さんの温かさ、深さに若者たちがどんなに癒されたか・・と地獄の中の救いのような気がした。
厳しい軍曹(だったかな?)、ただ静かに死を待ち、皆から憎しみの言葉を浴びせられたも顔色一つ変えず、背筋を伸ばしている男(浅野雅博)は、何を思っていたのだろうか・・・酷い体罰を部下にしたり、命令を下したり・・・一切の言い訳はしなかったけれども、彼もまた命令を受けていた一人には違いない。部下の妻への手紙を代書した時に彼が自分の妻への気持をこめたことが、彼もまた一人の人間であり、愛する気持ちを持っていたことに胸が詰まる。
浅野さんの軍曹からは繊細に心の動きが伝わってくる、彼の持つ矜持、責任の重さ・・・最期までそれを貫いたのだ。死への旅だちは、とても静かだった。
まだ少年のあどけなさが残る一番若い朝鮮人の若者(尾上寛之)は、看守からもいじめられ、母を想い、涙の止まらない日々を送っている。病気に苦しむ捕虜さえも労働に送らなければいけなかったこと、同じ年くらいの若者たちを見殺しにするようなことになってしまったこと・・・・彼が背負うには酷すぎる、重すぎる。
こんな子どもにもこんな酷いことをさせるのが戦争なんだと、あらためて心に刻む。
故郷に新妻を残し、無学の彼(木津誠之)はただ誠実に自分の人生を生きた。捕虜とも気安い仲だったであろうが、上官の命令は絶対だった。それがどんなに相手を傷つけたか知るよしもない。
彼の主張こそが、あの時生きていた日本人の気持だった気がする。彼に何が出きただろう、一番下っ端の彼が捕虜を呼びに行き、拷問される捕虜をただ見ていることしか出来なかった。それが正しいことではないけども、彼にいったい何が出来たというのだろうか・・・。死刑に値することなのだろうか。
死刑宣告をされたが放免され、また捕らえられ、そしてまた無罪になる朝鮮人の若者(丸山直人)は、希望と絶望の間を行き来する。これもまた相当辛い・・・怒りをどこにぶつければいいのか、彼の悔しさ、憤りは、自分を気絶するまで殴り、親友を自殺へと追いやった山形(浅野雅博)に向けられ爆発する・・・でも、なんてむなしいんだろう、本当に彼が怒るべき相手は別にいる。不条理の極みを見ているような気がした。誰も彼もが不条理の中にいるんだけども・・・。
本当に死刑に値する人たちは生き延び、彼らのような人がBC級戦犯として死刑になる。
朝鮮人だった若者たちは好き好んで、日本人として戦争に関わってはいない。そうしなければ、その当時、家族たちも生きられなかったからだ。決して、祖国を裏切ったわけではないのに、彼らは生き残ったとしても辛い人生が待っていたそうだ。
一般の日本人にしても赤紙が来たら、拒否することなど出来なかった。
戦争とは、何と酷いことなんだろうか。
限られた時間、閉塞された空間で、彼らは残り時間を懸命に生きた。命の輝きは最期まであったし、最期にはしっかりと自分と向き合っていた。
涙はとめどなく流れ、私は心の中で手を合わせた。
渾身の舞台・・・作り手皆がこの物語を咀嚼し、滋養とし、融合し、見事にその世界を作り上げた。
鄭 義信さんの作品は、見事な役者さんたちによって、観客へと届けられた。
私は戦争を体験していないが、私の伯父はフィリッピンのルソン島で戦死した。まだ20歳そこそこだったから、陸軍の歩兵であっただろう。実家に残されたはがきには、当時小学生だった弟(私の父)に両親を大切に・・と、後を託した言葉が並んでいたのを思い出す。
雪国で生まれ育ち、暑さの中で死んだのか・・・・と、そのはがきを読んだときに無性に悲しくなった。
ラストシーンは悲しいほどに美しかった。
素晴らしい舞台でした。
再演を望む舞台です。
ありがとうございました。
渇愛
名取事務所
小劇場B1(東京都)
2018/03/09 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/13 (火)
取事務所の作品は、いつもセンセーショナルで、刺激的で、芝居好きの私のつぼを付きます。
今回は韓国の作家キム・ミンジョンさんの作品です。
アジアの演劇にも興味があるんですが、なかなか観ることが出来ません。韓国、インドネシア、台湾の演出家の舞台を4回ほど観たことがありますが、同じアジア人なのにまったく違う感性を感じてました。
今回は作は韓国人ですが、演出、役者は日本人です。
寺十五さんの演出は、韓国の粘っこさ、重たさをとてもよく表現していたと思います。寺さんの演出は何本か観ましたが、日本人の中にあるあきらめ感というか、すがすがしいほどの寂寥感を感じたのですが、今回は重くて、執拗で身動き取れませんでした。
寺さんは役者さんとしても大好きです。
闇が支配するような舞台、過去の出来事が思い出の断片のように浮かび上がり消えていく、その断片を繋ぎ合わせ、登場人物たちの愛の断片を拾っていく・・・・・。なんと辛く、禍々しい愛なんだ。
ムーダン(巫女みたいなもの)の母と二人で育ち、ムーダンになることを母により運命付けられていたソヨン(森尾舞)が、若い画家ジェソプ(渡辺聡)と恋に落ち、母の反対を押し切り結婚する。貧しさのため初めての子どもを堕胎し、その傷を抱えたまま高校生となった一人息子ヒョンと今は美術教師となったジェソプとぎりぎりな精神状態のなかでも平穏な日を送っていた。ある日、ヒョンスが家庭に恵まれない友達ジンギ(西山聖了)を家に連れてきた。その日から、ソヨンが壊れていく・・・・。
壊れていくという言葉が適当なのかはわからないが、彼女が求めても、求めても得られなかった愛とジンギの求めても求められなかった愛が惹かれあったのだ・・・・。
亡くした子への罪悪感がジンギへの愛を駆り立てたのか、夫に求めた愛が物足りない結果だったのか・・・それは理解できなかったけども、彼女が母親の呪縛から逃れられなかったのはとても共感できました。声だけの母親の青山眉子さんが素晴らしい!!!
彼女の声にソヨンの逃れられない呪縛を強く感じました・・・。母親というのは良きにつけ,悪しきにつけ絶対的な存在であるのです・・・・。
登場人物の数だけ愛がそこにあるのに、皆自分の愛を主張して、お互いの愛をはねつけている・・・・大きな悲劇がそこにありました。
渇くほどに愛を欲し、愛を欲するがゆえに渇く・・・・そんな気がしました。
素晴らしい舞台でした。
ありがとうございました。
オペラ「ホフマン物語」/ジャック・オッフェンバック
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2018/02/28 (水) ~ 2018/03/10 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/06 (火)
バレエの「ホフマン物語」も楽しみましたが、こちらも楽しかったです。
オペラでは、ホフマンの友人に化けた芸術の女神ミューズが語り部としているので、バレエよりもリンドルフの存在があんまり不気味に感じなかったです。
このミューズは、ホフマンを見守っているようで、彼が女性を愛するよりも芸術を愛するように仕向けているようでした。彼女がホフマンを愛して、嫉妬しているようにも感じました。
ホフマンのディミトリー・コルチャックさんが、イケメン、いい声、色気ありで、すごく素敵!!うっとりしちゃいましたよ。
「ウェルテル」を見逃したことを、後悔・・・。
オランピアの安井陽子さんのコケティッシュで、美しいソプラノはすごく楽しかったです。大好き!
アントニアの砂川涼子さんの澄んだソプラノもとても美しかったです。
色気たっぷりな横山恵子さんも素敵でした。
そして、大好きな新国立劇場合唱団の皆さんも大活躍で、すごく楽しかったです。
オペラはたまにしか行かないのですが、ただただ楽しめるこの演目はお気に入りです。
ダンサーさんの中に小寺利光くんと森新吾くんがいました。
すごくひさしぶりでした。
とても素晴らしい舞台でした。
ありがとうございました。
埋没
TRASHMASTERS
座・高円寺1(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/02 (金)
作・演出 中津留章二さんです。
高知県土佐郡大川村のお話。
人口の減少と高齢化で議員確保が難しくなり、村民による直接民主制である町村総会を行おうかということで話題になり、新聞記者もやって来た。
村は林業と農業を営みにしていたが、1970年代に近隣の水不足のため村の大半がダムのそこに沈むことになった。
ダムを作れば、水の不足は補えるが、森林伐採により、大雨などで水質は落ちる・・・・村には損はあっても利益は無いのだ。
ダム建設の攻防の続く大川村とダム建設がなされた現在の大川村が、舞台の上にある。年月の流れが、大川村を大きく変えた。
この時間の流れに私も生きていた。
私の故郷は、立派な国道が作られ、高速道路も通り、新幹線も出来た・・・・その過程で故郷の景色は様変わりし、生活形態は大きく変わり、私の家族も変わった。小さないざこざを抱えながらも温かく、賑やかに過ごした子ども時代はもうなく、今は誰もいない家になってしまったのです。そのどうしようもない寂しさを、この舞台を観て思い出し、大川村で過ごす人たちをとても羨ましく思いました。帰ることに決めた明水にホッとし、彼女たちを受け入れる村人たちの温かさに胸が熱くなりました。
役者さんは、親と子の二役を演じます。
その切り替えが上手くて、さすが!です。
様々な葛藤、諍い、現実を受け入れることの覚悟・・・いろんな人々の思いが時代を作っていくことを思い、自分は今どこにいるんだろうかと思います。
新聞記者の存在が、ある意味現在を象徴的に見せていたと思います。彼の言ういわゆる正論、当事者に押し付けてくる正義のようなもの、それは中央に住む人たちの論理・・・・そこに暮らす人たちの本当の思いや生活は伝わらない。でも、報道を見た私たちは、これをまた何も考えずに受け取リ、語ってしまう。まだここに出てくる記者は真面目でしたが、昨今のマスコミは、どうでしょうか?危ういです。
中津留さんの舞台に、今回も色々考えさせられました。
ありがとうございました。
ドレッサー
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2018/02/23 (金) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/03/01 (木)
第二次世界大戦真っ最中のロンドン、若者が戦地へ赴き、句集におびえる毎日・・・とあるシェイクスピア劇場では年老いた座長がわずかな劇団員をやりくりして、毎晩幕を開けていた。
しかし、年老いた彼はそんな毎日にすっかり神経をやられていた。そんな座長を支えるドレッサー(付き人)のノーマンだが、その日も「リア王」の舞台裏で、何とか座長を舞台に上げようと孤軍奮闘をしていた。
老役者は舞台裏ではすっかり自信をなくし、ドレッサーの上手いあしらいで何とか舞台に上がる・・舞台上では立派に台詞を言い、演技するがまた舞台裏に戻ると・・・・また。
客席からは彼の舞台を舞台裏から観ていると言うことで、実際もこんな風に舞台から下がったら、素の顔に戻ったり、次の出番を控えてたりするんだなぁ・・・と面白いです。
カトケンさんの声にシィエクスピアの台詞が似合います。
ゆったりとした動き、トップを極めた人の傲慢さがあるんですが、愛さずにはいられないオーラを持っていました。
彼に仕えるドレッサーの加納幸和さんが、テンポ良く、カトケンさんをあしらっていくのがとても愉快でした。
でも、彼の遺書にはドレッサーの名前が無かったのです。
わざと書かなかったのか、書き忘れたのか。
ドレッサーは老役者にとっては、楽屋にあって当然の者で、自分を絶対裏切らない者で、妻よりも自分に近い者だったはずなのに・・私に考えてもわかりません。ドレッサーもとてもショックを受けました。言葉がいらないほどの、近い、近い存在だったのかもしれないと思いました。それでも、可哀想でした。彼の生活のよりどころでもあったし、きっと心の支えでもあったでしょうし、彼の取り乱す様子に胸が痛みました。
足の悪いが老役者が認めている役者が石橋徹郎さんでした。
最近、個性的な役が多かったので、普通にかっこよくて安心?
二人のやり取りに笑いながらもせつなくて、カトケンさんはこういうの上手いなぁ。
芝居の世界にどっぷりと漬かって楽しみました。
ありがとうございました。
岸 リトラル
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2018/02/20 (火) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/09 (金)
このリーディングを聴いて、私の頭では絶対に1回では受け止めきれないだろうな・・と思い、2枚チケットを取りました。正解!
一度目は息子の心理を追い、彼に起こる出来事、登場人物たちに起こった出来事、おかれていた状況に衝撃を受け、圧倒され、打ちひしがれました。
二度目は少し冷静に物語を観ました。そして、一人、一人の心に耳を傾けることが出来き、涙があふれて来ました。
たぶん役者さんたちも回を重ねるごとに、この物語への深みを増していっているのだと思います。
複数回行くと、劇場にも重ねた舞台の熱や空気の匂いが残って濃くなっているのを感じます。
物語は生まれた時に母が亡くなり、悲しみのあまりに旅に出てしまった父・・・・父に遭うことの無かった息子は情事の最中に父の死を知らされる。父の遺体を引き取り、母のそばに埋葬したいと考えたが、母の兄弟たちに猛反対を受ける。母の死を死なせたのは父だと言うのだ。体が弱く、医者に止められたのに無理に子供を産ませたと。
息子は父を遠く離れた彼のふるさとに葬ろうと考え、彼の死体を背負い旅に出た。遠い中東の国へ(レバノンと思われます)。
しかし、その地は紛争のため多くの人が死に、もう遺体を埋める場所が無かった。歌う女としかるべき場所を探しに旅に出る息子・・・・荒れ果てたその地で、出会う人々は荒廃し、若者たちは苦しみを抱えていた。心に深い傷を抱いた若者たちと海を目指す息子・・・・彼らがそこで手にするものは・・・・・。
息子ウィルフリード(亀田佳明)の寂しい子ども時代に彼を慰め力づけた空想の騎士(大谷亮介)の存在、次々と起こる非日常な出来事を創作のように感じる彼の感覚の撮影クルーの存在、そして、遺体であるはずの父との会話で、ウィルフリードの心の空虚や混乱を目で見ることができました。
遺品の鞄の中から出てきた出されなかった自分宛の手紙は彼の時間の空白と父の心の空白と重なり、受け取れなかった愛、伝えられなかった愛の深さに苦しくなり、彼が父を背負う意味を見ました。
亀田ウィルフリードの孤独と繊細さ、岡本パパの孤独と不器用な生き方と愛の深さ、生きているうちに会えたら、どんなに良かったか・・・と涙しました。
岡本さんがラスト、若者たちの父親代わりに彼らの苦痛に癒しを与える場面は、本当に深くて暖かな父親の愛情があふれていて、こちらも癒されました。
役者さんは主役二人を除いて、皆さん複数の役を演じました。
それぞれに難しい役でしたが、素晴らしかったです。
中でも大谷亮介さんの騎士の邪気の無い目は、彼の夢の中の存在そのものでした。
佐川和正さんの演じわけはお見事で、その場、その場にインパクトがあり、それでいて、その場に見事になじむ・・・素晴らしい!!!ハキムの傲慢さの中にある哀しさ、彼の話には身の毛がよだちました。サベの笑顔に隠された悲しい過去を語る場面では、涙が止まりませんでした。
大人たちが起こす争いの代償は、未来の大人となる子どもたちが背負わなければ行けない・・・と、痛感する物語でした。
でも、結構ユーモアに富んだ会話があり、会場に笑いもおきます。だからこそ、この物語の重みが伝わるのかも・・とも思いました。
とてもすごい、素晴らしい舞台でした。
ありがとうございました。
作・ワジディ・ムワワド
翻訳・藤井慎太郎
演出・上村聡史
出演・岡村健一 、亀田佳明、大谷亮介、中嶋朋子、小柳友
佐川和正、鈴木勝大、栗田桃子
真実
文学座
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/02/24 (土) ~ 2018/03/05 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/24 (土)
Wキャストでした。
渡辺徹さんは10月の「鼻」で拝見したので、今回は鍛冶直人さんの出演の日を選びました。
下の四人、鍛冶直人さん、浅海彩子さん、細貝光司さん、渋谷はるかさんです。
演出は鵜山仁さんです。
フランスのフロリアン・ゼレール作の喜劇です。
とてもこじゃれた雰囲気で、どこかレトロないい味があるのですが、2011年が初演の割と新しい作品です。
フランス風味のユーモアたっぷりの楽しい舞台でした
舞台セットも赤と白に配分良く塗り分けられていて(真っ赤な嘘と真実の白?)スタイリッシュな感じもするんですが、生活感も感じられて面白いです。
ミッシェル(鍛冶直人)は親友ポール(磯貝光司)の妻アリス(渋谷はるか)と不倫関係にある。仕事の合間にホテルで逢瀬を重ねるが、週末に二人は旅行に出ることにミッシェルは妻ロランス(浅海彩子)に出張と嘘をついて出かけることにする。
しかし、会議をすっぽかして、ホテルにいたミシェル・・・・そのことがどうやらロランスにばれている様子・・・・嘘に嘘を重ね、どうにか旅行までたどり着くが、そこではアリスの夫にも嘘をつかなければならなくなる・・・嘘が嘘を呼び、にっちもさっちもになった時にある真実が告げられる・・・・ロランスの恋人がポール・・・そして、ミシェルの嘘はとうにばれていた。
混乱するミシェル・・・誰の嘘が真実なのか、その真実も嘘ではないのか。
笑いました~。
ミシェルの鍛冶さんがとても良かったです。
平気で嘘をつくんだけども、その嘘には多分ちょっぴりの真実もあったりして、友達を裏切りながらも彼が大好きだったり、浮気相手も奥さんも好きだったり・・・・何なのこの男!なんだけども一番情けない男だったかもなところが、憎めない(笑)
スタイルが良くて、押し出しもいいしで、この役がピッタリでした。
彼の奥さんのロランスの浅海彩子さんの何考えてるんだろう?な雰囲気もいいです。そして、ラストのあの表情・・・真実は彼女の中にある?!
浮気相手のアリスの渋谷はるかさんのロランスとは正反対な、コケティッシュな可愛さもいいし、ポールの細貝光司さんのとらえどころのなさも良かったです。
とてもセンスのいい面白い舞台だったので、再演希望です。
ありがとうございました
2月文楽公演
国立劇場
国立劇場 小劇場(東京都)
2018/02/10 (土) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/02/23 (金)
女殺油地獄」
徳庵堤の段、河内屋内の段、豊島屋油店の段、同 逮夜の段
有名なお話なのであらすじ省略ですが、ここまで人間の弱さ、業の深さを描いた近松門左衛門は天才です。
歌舞伎は観ないので、人間が演じるとどうなのかはわからないのですが、人形たちが演じる凄惨な場面は本当にゾッとします。
血しぶきが飛ぶわけでもないのに、人形、義太夫、三味線が一体となって、そこに取り込まれていくようでした。
玉男さんの与兵衛は、荒々しく、残酷な男でした。
自分さえ良ければ、人を踏みにじってもいい、殺してもいいと言う身勝手さを強く感じ、憎憎しかったです。今回は人間の弱さよりも残酷さが怖かったです。
和生さんのお吉の善良さが、この男の非道な振る舞いをより残酷に感じさせました。
今回は最後の逮捕されるところまで観れたので、心の中で一段落つけて劇場を後にできました。
やっぱりここまで観ないと、落ち着きません。
迫力満点の舞台を、ありがとうございました。