タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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Without you No life

Without you No life

ラチェットレンチF

シアター風姿花伝(東京都)

2015/05/27 (水) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白い!!
「ラチェットレンチお得意の、過去と現在の入り乱れる息もつかせぬハイスピード・カットバック・サスペンス。  シリアス成分多めでお送り致します」の説明通り、最後まで飽きさせることなく観(魅)せてくれた。
サスペンスであるから緊張感ある場面展開はもちろんであるが、時々入るコミカルな演出が妙にマッチし、公演全体を通じて圧迫感ではなく娯楽性という媚薬を嗅がされたようだ。
ちなみに劇中にも...。

ネタバレBOX

謎解きの糸口になるのが、犯人がつけている香水。

さて、物語概要は解説に記されているが、警察機構、マスコミの報道姿勢を事件の背景として描き、そこに隠された問題を抉り出す。この物語(娯楽)性と問題(批判)性をうまく融合させた手腕はすばらしい。どちらか一方でも、単にストーリーを追うだけになり、問題の主張ばかりしても面白みに欠けるし、印象がうすい。その点、ストーリーにものめり込めるし、その主張は一面鋭く、かつ人間らしさも含んでおり温かい。

サスペンス&ミステリーの要素が濃い分、舞台から目が離せない。脚本が見事であると同時に、そのストーリーがカット・バックであっても理解しやすい工夫がしてある。多くの場面が設定され、その転換をスムーズにするためキャストの立ち位置や照明によって状況と雰囲気を変える。そしてあまり暗転を利用しないことから、観る集中力が保てたのも嬉しい。

キャストの演技は、昨年(2014年)「落伍者。」(池袋演劇祭優秀賞)を観ており、その力量は知っていた。やはり個々のキャストの力もさることながら、そのバランスのとれた芝居…安定感がこの公演の魅力であろう。

次回公演も期待し、そして楽しみにしております。
 
セーラー服とブルーシート

セーラー服とブルーシート

TOKYOハンバーグ

ワーサルシアター(東京都)

2015/05/27 (水) ~ 2015/06/01 (月)公演終了

満足度★★★★★

メッセージ性が…(ゲネプロ拝見)
とても強い公演である。
セーラー服とブルーシー(青い海)と...のような副題のようでもあった。もちろん女子高内で起こる或る出来事をめぐる話が中心であることには変わりない。一方、その高校や住んでいる環境は、海岸開発が進み、昔のように泳げる海ではなくなった。人も環境も何らかの契機があれば変化していく。それは否応なしにである。

*ネタバレ注意

ネタバレBOX

舞台セットはシンプルで、劇場入り口側にひな壇客席、そしてほぼ素舞台で左右にスタッキングチェアが5脚ずつと舞台中央に1つ。奥壁面に縦に赤い紐(?)も数本と鎖が下がっている。その広く確保した空間での劇は、演出担当の大西弘記 氏の丁寧な演出スタイルが見てとれる。
出だしは、女子高生や教師が一列に、同方向へ行進するような単調な歩み。そのうち、一人二人と左右の椅子に座りだす。その生徒・教師が交錯する様はこれからの出来事の進展を暗示するかのようだ。その単調であるが、それゆえに見える普遍的な人間の心理。この公演ではその深淵が浮かび上がる。

さて、物語は女子高の部活のコーチによるセクハラ...性犯罪に端を発した出来事。そのコーチを放火で殺害した女生徒達と学校側(教頭、顧問、副顧問、殺害されたコーチの甥...理事長の息子で将来の理事長)による真実を明らかにするというサスペンス&ミステリーのような内容は観応えがあった。
その否応なしの状況に立たされた時の錬られた会話...「殺人を犯してならないのは何故」「戦争殺人は許されるのか」という個人と国家の行為の比較論議...その理屈・論理のすり替え、そして生徒と教師の立場の逆転が面白い。そして主張したい世界観は青い海のようにきれいになっていくのだろうか。

一瞬、女子生徒の主張が通り、学校側も事件真相を明らかにしない(警察は事故死の方向)。しかし、最終的には、”良心の呵責にたえきれず”のようになり、ブルーシートに隠され連行される。
場面の中で、女子生徒が自殺を図るシーンがあり、それをイメージする血管(血)と閉塞感が奥壁の赤い紐や鎖に現れているような気もした。

この2団体のコラボは初めてだというが、出演しているB.LET’Sの永島広美さん、土田有希さんは、2014年7月新宿サンモールスタジオでの「愛、あるいは哀、それは相」に出演していたので、演技的には馴染みがあるだろう。
いずれにしても、この合同企画はそれぞれの持ち味が出ており、成功したと思う。

実に観応えのある公演(ゲネプロ)であった。
セーラー服とブルーシート

セーラー服とブルーシート

B.LET’S

ワーサルシアター(東京都)

2015/05/27 (水) ~ 2015/06/01 (月)公演終了

満足度★★★★★

メッセージ性が… (ゲネプロ拝見)
とても強い公演である。
セーラー服とブルーシー(青い海)と...のような副題のようでもあった。もちろん女子高内で起こる或る出来事をめぐる話が中心であることには変わりない。一方、その高校や住んでいる環境は、海岸開発が進み、昔のように泳げる海ではなくなった。人も環境も何らかの契機があれば変化していく。それは否応なしにである。

*ネタバレ注意

ネタバレBOX

舞台セットはシンプルで、劇場入り口側にひな壇客席、そしてほぼ素舞台で左右にスタッキングチェアが5脚ずつと舞台中央に1つ。奥壁面に縦に赤い紐(?)も数本と鎖が下がっている。その広く確保した空間での濃密な会話劇は、脚本担当の滝本祥生 氏らしい。そして、それは今まで観た公演よりも、さらにテーマを鮮鋭にした。その点において問題提起はシャープになったが、逆に観客自ら考える、その委ねる幅のようなものが狭くなったようにも思う。

さて、物語は女子高の部活のコーチによるセクハラ...性犯罪に端を発した出来事。そのコーチを放火で殺害した女生徒達と学校側(教頭、顧問、副顧問、殺害されたコーチの甥...理事長の息子で将来の理事長)による真実を明らかにするというサスペンス&ミステリーのような内容は観応えがあった。
その否応なしの状況に立たされた時の錬られた会話...「殺人を犯してならないのは何故」「戦争殺人は許されるのか」という個人と国家の行為の比較論議...その理屈・論理のすり替え、そして生徒と教師の立場の逆転が面白い。そして主張したい世界観は青い海のようにきれいになっていくのだろうか。

一瞬、女子生徒の主張が通り、学校側も事件真相を明らかにしない(警察は事故死の方向)。しかし、最終的には、”良心の呵責にたえきれず”のようになり、ブルーシートに隠され連行される。
場面の中で、女子生徒が自殺を図るシーンがあり、それをイメージする血管(血)と閉塞感が奥壁の赤い紐や鎖に現れているような気もした。

この2団体のコラボは初めてだというが、出演しているB.LET’Sの永島広美さん、土田有希さんは、2014年7月新宿サンモールスタジオでの「愛、あるいは哀、それは相」に出演していたので、演技的には馴染みがあるだろう。
いずれにしても、この合同企画はそれぞれの持ち味が出ており、成功したと思う。

実に観応えのある公演(ゲネプロ)であった。
『Idiot~ドストエフスキー白痴より~』『コーカサスの白墨の輪』

『Idiot~ドストエフスキー白痴より~』『コーカサスの白墨の輪』

TOKYO NOVYI・ART

シアターX(東京都)

2015/05/18 (月) ~ 2015/05/19 (火)公演終了

満足度★★★★

コーカサスの白墨の輪
原作ブレヒト...戦争の絶えないコーサカスを舞台に、誇り高くも心根優しい人々が大胆に生き抜く寓話劇。
戦時中の1944年、アメリカ亡命時代の最後の作品に、詩人ブレヒトが希望を託して描いた作品である。その希望を観たく劇場へ...

ネタバレBOX

独特の演出手法のように感じた。上手の和楽器の三奏者(ストーリーテラー、擬音・擬声も担当)の調べに乗り、”良心という誘惑”に導かれた結果、苦難の道を歩むことになる主人公グルシェ...その不条理を悲喜劇にした芝居は観応えがあった。

領主が反乱軍に殺され、領主の子供が置き去りにされた。宮殿使用人・女グルシェは赤ん坊を見殺しにできず抱いて逃げる。そう、善への誘惑に勝てず、領主の赤ん坊を背負い込んでしまう。そして苦難の旅を続ける。やがて内乱が終わり、領主夫人が子供を連れ戻しにやってくる。産みの親と育ての親が対立したとき...
一方、同じ時期に、飲んだくれの下級官吏が裁判官にさせられ、イカサマ判決を下し、貧しい者にも正しき裁きをする彼、アクダツは人々に束の間の奇跡の時代をもたらした。

この二つの話が交差し、子供をめぐって開かれた裁判の行方は...本当に子供のことを思った母親は、育てた苦労が報われた。
そして、心に残る場面 「この子供は領主の子と言えば、苦労なく育つが...」という問いに 「そうすれば、この子は黄金で人の頬を叩くかもしれない」と。
そんな心魂揺さぶる名台詞が素晴らしい。

次回公演にも期待しております。
『Idiot~ドストエフスキー白痴より~』『コーカサスの白墨の輪』

『Idiot~ドストエフスキー白痴より~』『コーカサスの白墨の輪』

TOKYO NOVYI・ART

シアターX(東京都)

2015/05/18 (月) ~ 2015/05/19 (火)公演終了

満足度★★★

白痴
東京ノーヴイ・レパートリーシアター公演「白痴」は、前から観たいと思っていた。原作はドストエフスキー...その描く内容は、善良で美しい心根を持った人間がその純粋であるがゆえに、周りの人々との関係で矛盾が浮き彫りになる。その過程を3時間30分(途中休憩含)で観せたが...

ネタバレBOX

脚本・演出はもちろん舞台美術(衣装・小物など)も良かったが、それに相応しい演技が伴っていなかったようだ。
ワークショップ(途中休憩時の観客の発言、自分も同感)のようで、感情移入が出来なかった。その演技は、大げさで白々しく感じられる。その意味ではキャストは生(活)きていないようだ。

スイスで てんかん の治療をしていたムィシュキン公爵が、数年ぶりにロシアに戻ってきた。その道中で知り合ったロゴージン、彼の運命の女性ナスターシャ、そして公爵に思いを寄せるアグラーヤ、4人の複雑な関係は以外な結末へと進む。
その内容は、現代社会における合理主義に対し、もう少し人間主体という視点で物事を考えられないか。いつの時代にも問われる普遍、そして実存する対象を優しく見守る目を持ちたいと思う。そんな人間本質を鋭く問う芝居と期待したが...。もう少し演劇の力を観せてほしかった。

翻訳本を読み、その皮肉と悲哀がどう描かれるのか楽しみにしていただけに残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
GK最強リーグ戦2015

GK最強リーグ戦2015

演劇制作体V-NET

TACCS1179(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

この企画を強く支持する(B×Cチーム観劇)
ジャンケンによりCチームが先行上演。上演時間1時間、キャスト数もほぼ同人数で行うガチンコ勝負。今回の共通テーマは”駅”という。各チ-ムの印象(上演順)であるが、Cチームはオーソドックスな手堅い内容、Bチームは特異な状況下から捩子(痛み)上がってくる痛哀しい内容であった。

このバトルは、2年ごとに開催されるそうであるが、参加者(脚本・演出・役者をはじめ公演に携わる方々)の成長・飛躍に役立つのではないか(上から目線で申し訳ございません)。そういう意味で、高いレベルの芝居になっており、切磋琢磨していることが伝わる。この種の取り組みは(小)演劇界を大いに盛り上げると信じており、継続開催してほしいと切に願う。

ネタバレBOX

Cチームの「駅」は、瀬戸内のしまなみ海道・道の駅(売店)」である。
瀬戸内海の海洋環境の保全と開発というありそうなシチュエーション。その問題と地元に残った人たちと出て行った男の過去と現在(立場)、それに恋愛模様を交えたハートフルストーリー。

Bチームは「地方の駅舎」であり、そこに咲いている白いバラが鍵となっている。
戦中・戦後という悲惨な時期と田舎町という閉鎖的な状況を舞台に、そこで暮らす人々の深淵に迫るハードサイコストーリー。ラストの怒涛のような展開は見事であった。

個人の思いは、Cチームの「しまなみ海道」が気になった(第二の故郷が広島県尾道市のため)が、芝居は、Bチームの方がインパクトがあり印象的であった。
劇場版 サヨナラワーク

劇場版 サヨナラワーク

ネリム

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/05/24 (日)公演終了

満足度★★★

登場人物はお一人様ですか
本公演は、2015年4月に池袋スタジオネリムにて上演された劇団エリザベスの「サヨナラワーク」をシアターグリーンで再演したもの。

女性だけのシェアハウスで起こる不思議な出来事。公演説明からサスペンスのような雰囲気も感じられたが...

ネタバレBOX

実際は、少女が成長していく過程と自分自身の在りようについて、他者等との関わりを通して描く心理劇のようである。

さて、舞台セットはシンプルで、まず上手に横長ソファー、下手はキッチン・ダイニング、そして中央に中二階程度の階段があり、その昇った先に玄関ドアがある。全体的に淡色でふわふわした感じである。そぅ、何か不安定であり、ストーリーを暗示するようである。

主人公(成美)はストーカー行為による恐怖から男性不信になり、友人(真弓)の勧めでその友人が管理しているシェアハウスに入居する。そこには猫耳カチューシャ(?)の物怖じしない女性、カワイイ系洋服の内気な少女、着崩した着物姿の上から目線の女性、そして管理人の友人が住んでいる。
数日後、シェアハウスの向かいのコンビニにイケメンがおり、皆が好意を持ち、いつの間にか一人ずつ消える。同じ時期に殺人事件のニュースが...。

脚本(話)に捻りを入れ過ぎた、もしくは演出(説明)不足か、はたまた自分の理解不足か。いずれにしてもスッキリしない結末であった。
主人公の心内彷徨という一人称で、登場した人物・動物(猫)は過去を投影した自身か。または、主人公と友人が合わせ鏡になっており、相互投影したものか。そして殺人犯に似ているイケメンの事件関係は...。その脚本と演出については、明快に納得できたのだろうか、演劇をあまり観ない客にもスッキリ説明できていたのだろうか。

少女から女性へ持て余しながら成長していく過程、そして過去自分と向き合ったという設定のようである。登場人物は、飼っていた猫、少女時代の自分、醒めた目の俯瞰している自分が登場しているが、それならば友人は? 二人称にしてもう一人の自分はどう表現(映)したのか。スッキリしないのは観客である自分だけであろうか?

さて、タイトル「サヨナラワーク」の”さよなら”は、劇中の「自分」「仕事」「勉強」または「作品」か、それとも...ぜひ、もう一回観てスッキリさせねば。

次回公演も楽しみにしております。
Linked to 〜四舎八房より〜

Linked to 〜四舎八房より〜

劇団e-schein

テアトルBONBON(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/17 (日)公演終了

満足度★★★

緊迫感がない
少年が収監された特別少年院が舞台であるが、その描く内容は一種の勧善懲悪ものである。ストーリーはわかり易く結末も想定でき、少年たちの絆が紡がれていく過程が熱い。
公演で気になったことが...

ネタバレBOX

演出に関して、暗転が多く場面転換に工夫が必要だと思う。当日パンフのキャスト紹介を見ると、初舞台という記載が多く、その演技力を保たせる、もしくは綻びが目立たない(表現が相応しくないかも、失礼)ようにするためだろうか。いずれにしても観るための集中力が必要であった。初舞台とはいえ、若いキャストが一生懸命演じていることから、もう少し長いシーンを経験させてもよかったと思う。
人物描写(生い立ちなど)と人間関係にもう少し説明があると、感情移入がしやすい。例えば、主人公”あんちゃん”の人物像が”善人”のようで、とても特別少年院に入所するとは思えない(親殺しに至った状況説明が不足)。また主人公と刑務官の確執は、単に気に食わないというだけの仕打ちだろうか。状況と人物描写が表層的で深みが感じられない。もう少しストーリーに厚みと捻りがあればと思う。
また、公演全体を通じて、特別少年院という雰囲気を表していない。入所者が皆長髪で、タバコも簡単に入手できる、という細かなことも含め、緊迫・緊張感がない。
自分は、この特別少年院内における少年たちの絆、または刑務官たちとの確執という個人レベルの物語設定も面白いとは思うが、医務官の人体実験が垣間見えることから、(体制)組織への挑戦があっても...そんな思いを巡らせた。
本公演は続編(キャストも同じ)が予定されている。
次回公演に期待しております。
BARに灯ともるころ

BARに灯ともるころ

ZIPANGU Stage

萬劇場(東京都)

2015/05/20 (水) ~ 2015/05/24 (日)公演終了

満足度★★★

面白いが…
バー(イタリア語では「バール」と発音するらしい)を舞台としたハートフルコメディ。ストーリーは明快で分かり易い。本公演は、登場人物のキャラクターは立ち上がってくるが、社会ドラマ、人間ドラマとして心魂を震わすという内容ではなく、芝居という“娯楽”に特化したようだ。悪くはないが、筋立てとしては少しご都合的なところがあり、一工夫しても…。

ネタバレBOX

舞台セットは、上手にテーブル席、その奥にスツールが置かれ、下手がカウンターになっており、中央奥が店の出入り口になっている。その作りはBAR(昼間は喫茶店)の雰囲気を十分に出していた。

この店内を舞台に常連客同士の再婚話、それぞれの子供たちが再婚に反対し困っている。一方、このBAR経営者の娘の元夫が数年ぶりに舞い戻り...実は闇金からの借金でヤクザに追われているという。この再婚話を進展させるため子供たちへの説得、そして元夫が金策のため復縁を迫る、という二つの話が絡むコメディ。
誤解とすれ違いで観せる演出は、単に仕草と台詞の表面を撫でたよう。その納得性がないとその演出に深みが観えない。キャストの熱演が良く、テンポも気持ちよかっただけに、もう少しストーリー展開の妙とそれを導く演出に工夫があれば...ちょっと残念な気がします。

多少厳しい感想であるが、もともと観せる力があると思う。例えば、主人公のキャラクターは際立っており、魅力ある人物になっている。逆(相対的)に他の登場人物(キャラクター)は見劣りがし、主人公の個人演技の面白さに観客が誘導されたようだ。公演としてのバランス...その持っているであろう光る魅力に影を落としたようだ。

ちなみに、社会的には反社会的勢力(その代表は暴力団関係)との対決姿勢を打ち出しているが、本公演の警察官は...。芝居だから堅いことは抜きでしょうか。

次回公演を楽しみにしております。
トウキョウの家族

トウキョウの家族

Theatre劇団子

駅前劇場(東京都)

2015/05/20 (水) ~ 2015/05/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

復活公演の成功、おめでとうございます
一言でいえば、面白い!
劇団復活公演...当日パンフの主宰 石山英憲 氏の「ご挨拶」の文が良い。本当に大変な思いで公演しているという切実感が溢れる。そして家族の形態...それは血のつながりだけではないようだ。
舞台はトウキョウ、それも伊豆大島の旅館の家族が対象であるが、その副線には...。

ネタバレBOX

旅館の家族の絆と並行して本劇団の復活を準える、それこそ副線ではなく、複線という二つの視点で楽しめる。
旅館には、惚けた母親と長女が暮らしており、二女は行方不明、三女は関西に嫁いだという設定である。既に父親は他界し、長女が母親の面倒をみながら旅館を切り盛りしている。
一方、偶然インターネットで見つけたこの家族の昔の写真が気になり、尋ね(旅行客とし)てきた劇団主宰者(劇団も家族であるという)が絡むハートフルコメディ。絆を紡ぐどころか、絡まったまま身動きがとれなくなった家族。糸を解き家族愛を再生できるか、島内の人々を巻き込んだ笑いと感動の渦は面白かった。
演出・演技は、三姉妹の立場(長女:しっかり者で我慢を強いられ、二女:好き勝手だが愛しい存在、三女:甘えっ子であるが、気遣いもする)のキャラクターをしっかり立たせ、役者は見事に体現していた。
他方、主宰は脚本が書けず、劇団女優が追いかけてくるというドタバタ。この大きな再生・復活劇を仕組んだ張本人は、惚けを装った母親というオチである。
二つのストーリーが交差しスパークした時、夜空に大輪の花(火)が咲いた...そのような見事な公演であった。

次回公演も楽しみにしている、という期待も込めて、★5とさせていただきます。
傘と花火

傘と花火

teamキーチェーン

d-倉庫(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/05/25 (月)公演終了

満足度★★★★

母と息子たち...その想い
プロローグとエピローグがあり、ありそうなシチュエーションだが、現実的ではないストーリーが展開する。芝居はフィクションの積み重ねであるが、描きたいまたは伝えたい想いは十分に表現していたと思う。時空間移動や脳内探訪するような奇抜さはなく、演出も中途半端なコメディ、シリアスでもない。本当に描きたい”母と息子たち”の想いを搾り出していくような、そう正攻法(?)のような公演である。

脚本・演出のAzuki 氏と話をさせていただいたが、自分の思いをしっかり表現したかったと...。この真摯な取り組みが、劇団を応援したくなる。
細かい点はいくつかあるが、芝居という大きな枠組みで考えた時、氏の中で形成した主張は表現できていたと思われる。

ネタバレBOX

まず舞台セットが見事に組まれており、観せる努力はさすがである。上手・手前にはベンチ、奥には向かいの家、中央が細道(私道か)、下手は主舞台となる秋月家の居間といったところ。そして二階は子供たちの部屋がある。

秋月家は両親と息子2人の4人家族である。どこにでもありそうな家族構成である。二人の息子は性格の違いはあるが、仲は良い。父親は会社勤め、母親は夜の仕事をしている。波乱があるとすれば、長男が5日間ほど家出したこと、父親がリストラさせたこと。それが原因で離婚したことが描かれる。また母親の再婚(入籍なし)があるが、それ以外は日常の坦々とした生活である。
じつは長男は生まれつきの心臓疾患があり、二十歳までに移植しないと危険であるということ。母親は夜の仕事で手術費用を貯め、自殺して自分の心臓を提供するという結末である。
本当は家族の想いとなるところであるが、早々に父親と離婚してしまった。

細かいことだが、少し気になったところが...
まず、自殺後のことを考えれば、父親の存在は大きいはずであるが、家族の再生の努力が見えない。
また、主筋ではないが、近所の千里という子の家族についても描かれるが、その話と秋月家は直接絡まない。思わせ振りの感じもした。

やはり、母親と息子たちに絞った想い、愛情を表現したかったということであろう。主張したい点を鮮明にする...その力が観客の心を揺さぶる。
ラストシーン...雨の中、縁側で線香花火をする兄弟。その煙の向こうに優しい眼差しの母親の姿。実に余韻を感じさせる演出であり、見事であった。

次回公演も楽しみにしております。
「ままごとの次第。」

「ままごとの次第。」

インプロカンパニーPlatform

小劇場 楽園(東京都)

2015/05/12 (火) ~ 2015/05/16 (土)公演終了

満足度★★★★

機転の連続
2014年にも観劇しているが、今回も観客とともに作り上げていくというインプロの醍醐味、面白さを十分現した公演であった。観客も自分達が物語の設定に参加しているという意識があり、その場の役者が機転を利かせなければならないという、時限状況を承知している。それゆえ、ある程度ストーリーが展開できれば満足するところであるが、本公演はその欲求を超えたレベルにあったと思う。
ただし、前年の公演と比較するとラストのシャープさは劣っていた。

ネタバレBOX

初日ソワレで拝見した。登場人物は祖父母、両親(父親)、娘、愛犬と隣人のお兄さん(本来役者ではなく、音楽担当)とストーリーテラーの6名+1匹。このストーリーテラーが状況に応じて、母親、隣人お兄さんの友人を演じる。個々の役者の力量が試される観(魅)せる演技ができるか...それが公演の成功の鍵になっている。
そのストーリーの構成力と役者の機転ある演技は面白く、観応えがあった。しかし、公演全体を通じて”ままごと”であったというラストシーンはインパクトに欠けた。その狙った意外さは、もっとストレートに伝わらないと面白さが半減する。ラストの重要なシーンだけに残念に思った。
ちなみに、前年に観た時は、俯瞰した立場の父親(インプロとして観客から指名された父親ではない)が、帰宅してくるという動作があった。しかし、今回は客席にずっと座ったままで、ラストに立ち上がり舞台上に登場するだけ。その意外性(劇中劇)を印象付ける動作があまりに単純・単調であった。

次回公演も楽しみにしております。
総員死ニ方用意

総員死ニ方用意

タッタタ探検組合

ザ・ポケット(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

覚めた目
戦争という状況を直接「戦艦大和」に乗り組む(描く)のではなく、追航する練習特務艦「喜島」という距離を置いた視点から観せる。それもコミカルに描くことで、現したい本質を鋭く抉るのではなく、敢えて鈍らすことで観客に問いかけるようだ。笑いの下にある確固たる主張...見事な公演である。

ネタバレBOX

ラストシーンは山中博士の滅私奉公というよりは私利私欲(自分が発明した兵器の確認)という様相である。しかし、それを否定しきれない戦時中という特殊状況下の人間心理が怖い。少なくとも乗員は戦争という異常下における死生観、それが集団心理として共有せざるを得ないというアイロニーあるタイトル。
戦争末期という異常情勢、海軍軍人という立場、戦友(大和乗組員)が死地に赴く緊迫した局面、そのような中で、悲劇の連鎖を断ち切る英断をするラストシーンは見事。
演出のこだわりについて、男性キャスト(女性も1名)は坊主頭にするなど、外見から驚かされた。そしてキャスト個々の演技は確かであり、全体として調和力を感じる。

現在、真剣に取り組まなければならない喫緊の問題...それだけに時節に合った内容であり、その慧眼には驚かされる。それを芝居という見た目の娯楽性とその底流にあるテーマ、骨太な主張を上手く融合させた秀逸な公演であった。

次回公演も楽しみにしております。
もうすぐ、お家に帰ります。

もうすぐ、お家に帰ります。

劇団前方公演墳

小劇場B1(東京都)

2015/05/13 (水) ~ 2015/05/17 (日)公演終了

満足度★★★★

チラシと事件を結びつけると悲しい
第一印象は軽快で面白いが、その底流には重たいテーマが流れており観応えがあった。チラシの説明は興味を惹きつける内容、写真は殺風景な中に少女の憂い優しい表情...その意味で制作の思惑は見事に当たった。
また、舞台は豪奢な居間をしっかり作り上げ、その現場を俯瞰するような感じであった。そこで繰り広げられるコメディもしくはシリアス(トラジディではない)シーン...しかし、その事件はまぎれもなく事実(描かれた内容はフィクション)であり、自分の記憶に鮮明に残っている。

ネタバレBOX

ペルー日本大使館人質事件をモチーフにしたヒューマンドラマといったところ。本劇団の公演は何回か観させて頂いているが、コメディタッチにすることで本質を直截的に描くのではなく、婉曲であるが本質に迫るという劇風のようだ。決して底が浅いわけではなく考えさせる。芝居という娯楽の中にもしっかり主張してくる強かさがあり好感が持てる。またキャスト配役の妙が良い。自分の中では、日本(男性キャストのみ)、武装集団(リーダ-以外はすべて女性)という当時の経済力(ペルー国内の「村町」の「貧富」も含め)をイメージさせ、さらにその女性キャストが年端もゆかない子供の姿に重なる。そして、感動的なラストシーンを演出するため、大使館員と武装集団の心的交流の場面が微笑ましい。

若干の苦言であるが、演出がくどいと思う場面もいくつかある。例えば、ピアノ演奏の競いなどは1回にするなど、重複場面はカットしてもよい。その面白さは十分伝わるし、一層スムーズな展開が期待できると思う。キャストの演技は安定しており、しっかり観(魅)せてくれた。

次回公演も楽しみにしております。

追記
公演前日、上田奈々さんが稽古休憩中のため劇場外におり、忙しいにも関わらず話をさせていただいた。本当にありがとうございました。
真夜中の時間割 約束にまつわる真実亡き問題提起

真夜中の時間割 約束にまつわる真実亡き問題提起

削除

RAFT(東京都)

2015/05/14 (木) ~ 2015/05/18 (月)公演終了

満足度★★★★

珠玉な公演(理系拝見)
RAFTという小劇場...しかも最前列で観劇した。壁ドンならぬテーブルドン、椅子ドンという力強いパフォーマンスが随所に入る。
描く内容はありそうなシュチエーションで、その局面・部分を切り取った脚本・演出は秀逸であった。また基本は対話劇であり、キャストの演技力で良し悪しが分かれるところであるが、見事に表現していた。その意味ではバランスのとれた公演であり面白かった。

ネタバレBOX

HR「真夜中の時間割」
教室という小世界...そこはかつての祖国であるが、 忌まわしい思い出もある。幻のユートピアが見つかるのか。

数学「生存確率変動」
マルチ商法に携わるOL2人は、閉ざされた倉庫で今日もセールストークについて議論を交わす。そのすり替え論議は実を結ぶのか。


理科「虚像と実像の不等式」
父の不倫相手と対峙した結果、自分の不始末が明らかになる逆転劇...その歪んだ実像を正視できるか。

さて、公演は冒頭記したパフォーマンスの印象が強い。脚本・演出・演技のバランスが取れているだけに、強調したパフォーマンスなしの濃密な会話で観せる芝居もできただろう(否定的ではないが)。逆にパフォーマンスで魅せるのであれば、「芸術系」「体育系」のような動作を伴う教科にしても面白い。いずれにしても「文系」「理系」の両方を観たくなるような珠玉作品(ホームルーム含め)だと思うし、教科のシリーズ化をしても面白いだろう。

次回公演を楽しみにしております。

パレードを待ちながら

パレードを待ちながら

劇団新和座

シアターシャイン(東京都)

2015/05/08 (金) ~ 2015/05/10 (日)公演終了

満足度★★★

緊迫感を待ちながら
時節にあったテーマであり大きな関心を持って観たところである。その視点と舞台は、女性の目を通して第二次世界大戦末期におけるカナダ国内の様子を描くもの。戦場・戦禍を直截的に描くのではなく、銃後における戦争の愚かしさと平和の大切さ、その希求を体現すると思ったが...。

演技は、千穐楽ということも影響しているのだろうか。声がかすれているキャスト、滑舌に難があったキャストなど、疲れが出ていたようだ。辛うじて声が通っていたのはマルタ(長谷川奈美さん)ぐらいか。

この公演での印象は...

ネタバレBOX

テーマの重みが芝居に現しきれていない感じがした。それはカナダという国情を考慮したとしても、その戦時中という緊迫感が表現できていない。女性の非常時における訓練などは、例えば、民間会社における夫の地位をそのまま社宅における奥様方の立場を形成した世間話のようだ。いくら非常時を説いても、自分の夫が出兵できない代わりの活動としても、”戦時中”の重みは伝わらない。また、飛行訓練を双眼鏡で見る様子は、航空ショーを観て燥いでいるようだ。
また、欲を言えば舞台セット、美術なども雰囲気のある仕立てがほしかった。

戦時中という状況を度外視すれば、女性の目から見た夫婦間の表現は面白い。出兵中の夫に会えない寂しさを、段々と夫の顔・体形を忘れていく、などの台詞はリアルであり寒心した。また舞台転換などは違和感がなかった。それだけに...。

公演全体について、そのテーマ、女性視点で捉えた戦争、そしてカナダという国情設定、その着眼は良かったが、それを芝居で表現しきれなかったことが残念である。

以下は、当日パンフに、座長・古川康史 氏、 舞台演出家・武藤賀洋 氏の格調高い文章に敬意を表しつつ......

自分は、映画、音楽、もちろん演劇も文化(活動)だと思っている。その活動は平和が脅かされるようになった時、最初に制限・統制されると思う。そういう意味では、時節に適ったこの公演に期待していたのだが。

次回公演を楽しみにしております。
Palm-タナゴコロ-

Palm-タナゴコロ-

うわの空・藤志郎一座

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/05/03 (日) ~ 2015/05/05 (火)公演終了

満足度★★

掌にできず...
紀伊國屋ホールでの音楽要素を取り入れた完全新作は、Palmの意味することが出来なかったようだ。 脚本もさることながら、演出に厳しいものがあった。遊び心が余りにも多くて、観る集中力が保てない。まさしく、”うわの空”状態になってしまう。

ネタバレBOX

Palm‐タナゴコロ...タイトルはその副題の意味まで表しているが、芝居ではその描きたい本質部分に迫れていない。

地球上にある国は、昼世界、夜世界に二分されており、それぞれの長短が説明されるが、やはり昼世界を望むようである。そもそも二分する契機は、昼世界の前女王の月に帰る際の願い事...それがいつも太陽が輝き続けるというもの。沈まぬ太陽は、他の国を照らさないという、理不尽な結果になっている。そのため、昼世界の現女王を月にかえすべく、夜の国から剣士(少女...現女王の娘)がやって来る。
それぞれの国に昼夜が...その陽の沈む場面がラストシーンになるが、それまでのストーリー展開・演出によって感情移入出来ず、感動もなかった。

掌に収めるが、その対であるタナゴコロ(差し出す)ことも重要である。そんな教訓的なことは感じさせないが、逆の意味で緩く(ギャグの多さ、殺陣の稚拙)なりすぎていた。宇宙または地球規模の神秘的寓話が垣間見れただけに...残念であった。

次回公演を期待しております。
~宝や旅館~「げんせんじゃ~!」2015ver.

~宝や旅館~「げんせんじゃ~!」2015ver.

劇団たいしゅう小説家

萬劇場(東京都)

2015/05/02 (土) ~ 2015/05/06 (水)公演終了

満足度★★★

独特な世界観…
舞台は北関東にある温泉街、老舗旅館「宝や」である。この旅館の従業員の休憩室兼事務所がセットとして組まれているが、それは見事であった。また、登場するキャスト以外の案内スタッフも濃紺に赤く染め抜いた模様の広角袖の印半纏…そこには「戸締り用心」と白抜きした文字が浮かび、会場全体を旅館に見立てようと雰囲気作りに努めていた。

物語は、その旅館が不況のあおりを受けて客足が途絶え経営難に陥っていた。これを打開すべくある行動を画策するが…。

キャストにイケメンが揃っていることもあり、女性客が多かったようだ。話が佳境に入った場面では場内のあちらこちらですすり泣きが聞こえる。一方遊びの場面も多く、そのギャップが大きい。

緩いようにも感じたが、1時間45分の公演を観せてしまう独特な世界観があった。

(ネタバレBOX 5.7追記)

ネタバレBOX

経営危機を乗り越えるべくある秘策を考えていた...それは温泉街の最大イベントのパフォーマンス大会で優勝し、それを目玉として集客しようというもの。その出し物が”戦隊もの”である。そのため東京からアクションスターを招聘するということであったが、同姓同名の大部屋アクションスター(自称)の「フジオカ ヒロシ」であった。このいい加減な設定は笑いネタであるが、少しくどい。
一方、唯一の女性キャスト(未浜杏梨さん)は、旅館で働く兄妹であるが、実は耳が聞えないため、話もできない。この妹の健気な仕草と優しい心が観客の胸を打つ。この感動的なシーンと先のアクションの笑いネタが錯綜するため、本当に観せる、そして魅せるシーンの余韻が台無しになる。

笑いネタは楽しませるサービスであることは感じつつも、もっと物語の本筋を大切にしたら素晴らしい芝居になったと思う。
ラストは戦隊ものらしく、色鮮やかな衣装を着て踊るパフォーマンスであるが、ここでも遊びが多すぎたと思う。やはり演出のバランス感覚が必要であろう。
ちなみに優勝は出来ず、予定調和にはならないが、子供に受けたようで予約電話が入る。しかし、経営難と言いつつも、新たに従業員を採用するとは...。

公演全体を通じて温かい雰囲気、そして観客を楽しませようとするサービス精神が感じられ、最後まで観させる独特な世界観を持っていた(一方、緩い展開でもあるが)。

次回公演も楽しみにしております。

ホームルームは終わらない

ホームルームは終わらない

すくらんぶるえっぐ(活動終了)

ザ・ポケット(東京都)

2015/04/29 (水) ~ 2015/05/04 (月)公演終了

満足度★★★

もう少し…
ホームルームという定場面を繰り返し、その中で登場人物が成長・変化していく…定時制高校であるが、ある種の青春ドラマだと思う。その登場人物は、色々な事情を抱えた生徒であること、そのキャラクターも分かりやすい。それに比べてストーリーにインパクトが感じられない。
しかし、その底流にある主張は気になった。

ネタバレBOX

公演は、生徒のキャラクターの立ち上げに力が入り、ストーリーの印象が弱くなったと思う。また、職員室の光景はタイトルのホームルームに直接つながらない。

全日制の高校から転入してきた生徒(前の高校では生徒会長)が、その会長立候補時のマニフェストが何であったのか。どうして実現できなかったのか、その結果、孤立し退学に追い込まれたのか。その事情なりが説明されると、職員室での緊張感のない先生達の描き方と対比できて面白かったと思う。
この物語…学級委員(長)の立候補者は、若い男女の一騎打ちになったが、女子生徒の公約は、新しい自動販売機の設置、男子生徒の公約の場面で暗転し、結果だけがわかる。女子生徒の公約が支持され選出されるが、男子生徒のは何であったのか。

全日制時の公約や今回の学級委員立候補時の公約は、他の生徒の支持が得られないようなものか。そこに独り善がり、身勝手な…そんなアイロニが垣間見えれば良かった。

全体的に緩く、また遊びも多かったと思う。楽しませようとの思いは感じるが、芝居の本筋で観せてほしかった。

次回公演に期待しております。
未来を知る男

未来を知る男

かーんず企画

シアターブラッツ(東京都)

2015/05/02 (土) ~ 2015/05/06 (水)公演終了

満足度★★★★

考えた…
内容を知る男(自分)…まだ公演中のため詳しくは書けないが、確かにSFコメディ風であり、その内容はシュールで観応えがあった。上演時間75分であるが、よくまとめたと思う。

(ネタバレBOX 5.7追記)

ネタバレBOX

約400年先の未来から現代へ時間旅行している未来人が巻き起こすシュールな物語である。この現代へ来る途中、今から20年後の未来で途中下車したような設定。舞台設定は高校の卒業間際、職員室にいる教師と在校生それに既に卒業した浪人生が今後の進路について語っている。この時に記念に撮った写真がキーになる。
未来人は、その卒業の記念に撮った写真を見つけ、未来の生徒たちに会ってきたという。生徒たちにすれば、20年後の自分はどうなっているのか興味がわくところ。小出しにしながら、生徒の関心を得る未来人...そこには未来に関係した悪意が潜む。

未来は、既に承認(優性交配のようなもの)された世界で、そこには努力もなければ夢という未来志向の感情がない。
未来にあるのは時間旅行によって人心を惑わす、いたぶる、という稚拙な行動を楽しむというもの。

高校生の受験が終わり、これから進学、就職等で前途洋洋に...その夢を持つという感情を妬ましく思う気持ちが怖い。自分の近未来を知ることの興味と恐怖がよく現されていた。

なお、未来ではバナナが菌汚染され、消滅しているという設定である。このバナナ...機械的に再現しているようだが、実際の味は知らない。ここに未来人の過去に対する興味がわく。実際食すると未来が変わるため、絶対食さないよう未来旅行添乗員(案内人)は説明するが...結局食べてしまう。
初日には、どうして未来が変わるかという説明がなかった。この点が疑問に残り、終演後キャストと話をした際、台詞を飛ばしたとのこと。

途中、時間軸のズレということから、怪人が...面白かったが、野球人生から交通整理の話に結びつけるだけ。もう少し話の展開に工夫できたのでは...このシーンに違和感を覚えた。

次回公演を楽しみにしております。

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