みさの観てきた!クチコミ一覧

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第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

麻布大学付属 渕野辺高等学校「 おやしらず 」
脚本は既成のもの。ここの顧問も実力のある先生で大会常連校。

クリスマス要素たっぷりのハイテンションな劇でホント、楽しかったぁ~。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

とにかく楽しいの一言!ファントムが出てきた時点でワクワクドキドキ!
全体の作り込み、魅せ方、演出が上手い。流石!でもって登場キャラクターがファントム、ゲイリーウイッチ、オーストラリアトナカイ、南極トナカイ、ユーラシアトナカイ、アフリカトナカイ、サンタ、くるみ割り人形、クララ、なんつってファンタジー真っ盛りなわけよ。笑

これだけのクリスマスバージョンを季節はずれの今?なんて思うかも知れないけれど、彼らが勝ち上がってきたまでは季節はずれなんかじゃなかったっ!しか~し、季節は外れても楽しいものは、めちゃんこ楽しい!

真っ赤なお鼻のトナカイがトナカイインフルエンザになって真黒なお鼻のダークトナカイになった場面なんか、思わず拍手したかったもんね。でもってファントムとゲイリーウイッチは親子って設定なんだけれど、この二人の会話が絶妙。で、このまま突っ走るのだろうか?と思いきや、実はこのシーンは演劇部の練習シーンで、その中の一人の少女にスポットを当てる。

その少女こと奥山優の妹、実果は不登校で家にいた。父親は歯医者、母親は専業主婦。優はそんな家族で育ち両親に甘えながら育ったが、ある日、姉妹だと思い込んでいた実果は本当の妹ではないことを知る。そして自分も両親の実の子でないことを知ってしまう。二人は施設にいたのを両親に家族として迎い入れられたのだった。そしてその両親も、実は施設で育ったことから、本当の家族の形を知らない両親は施設での年中行事を家族としての行事として同じように実行していたのだった。

両親は自分たちが施設で育ったことから、同じ境遇の子供を育てようって決め、本当の家族のようにしていた。優がおばあちゃんと思っていたのは実は両親を育てた寮母だったのだ。この血のつながりのない家族が本当の家族としてお互いを受け入れ真実の家族になるさまを描いた物語だったが、ここに演劇部が奥山家の年中行事であるクリスマス会を華やかにしようとパーティーの企画を考えて実行するという芝居。

夢のある仕掛けを会場にはりめぐらし、楽しくてちょっぴり切なくてファンタジーな世界でした。ワタクシ、こういった演出は大好きです。ファントム役の新井のファントムっぷりぷりが秀逸で素晴らしかった!

クリスマスにこういった家族の物語って多いけれど、やっぱクリスマスには家族が良く似合う。

第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

大船高等学校・ ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』
ここの高校の顧問の野間哲先生が実力のある方で大会の常連校です。実に楽しみにしていたミュージカル♪

セットがひじょうに凝っています。道後温泉のセットなど、お金かかってんだろうなー。と思いっきり感じた。気合入ってます。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

明治の文豪夏目漱石が「坊ちゃん」を書き上げた11日間をミュージカルで描く。漱石は癇癪持ちで、家族とも上手くいかない、そんな自己嫌悪との日々を戦いながら「坊ちゃん」を執筆するわけだけれど、自ら書いた登場人物に励まされたり、気づかされながら、自己を見出していく様をびっくりするくらい完璧にミュージカルに仕立てていた。

悪妻と言われた鏡子の真相も解き明かされ、「坊ちゃん」のストーリー展開とともに漱石の人間的成長が明らかになる。夫婦愛や盟友・正岡子規との友情をも織り込み、完璧でまったく欠点のないミュージカルでした。お馴染みの猫が登場するのだけれど、この猫役のキャストがバレーを習ってるのか、キャッツのような動きで、実に美しいのです。高校生のキャッツ!素晴らしい!

そして、山嵐と正岡子規役のキャストがいい味出してました。人が人らしくあるための正義なんつって赤シャツをやり込めるシーンはスカッとした!(^0^)ものすっごいハイレベルな高校生たちで、プロ並み。こうした有名校にありがちに部員も多いようでミュージカルに欠かせない出演者の多いこと、多いこと!(^0^)

いつも完全ばかりを求めているから満たされない漱石に、正岡子規は言うんですね、「キャッチボールの基本は相手の胸をめがけて、しっかりと投げる。例え相手がひねくれた球を投げても文句言わずに拾う。」
人生の基本かもしれないね。(^0^)

こんなに完璧で素晴らしいミュージカルだったのに受賞出来ませんでした。やっぱ、ミュージカルは高校演劇に不向きだったんでしょか?
ワタクシは十二分に楽しんじゃった!飛んだ高さにも感動!(^0^)

第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

静岡市立商業高等学校「 はなまぼろし」
脚本は既成のもの。

ただ自分が思う事をしただけで、誰一人として悪かった訳じゃなく、みんな、それぞれひたむきに誰かを愛していただけなのです。それぞれの想いが交差する物語。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

その昔、貧しい村では間引きと言って子供を水子にさせた時代があった。その水子の霊が見える桜子と学生の恋の物語。

自分を無能だと卑下していた学生は学校から逃げ出して死のうと考えて死の旅に出る。その途中、満開の桜に魅入られ山に入った学生は美しい桜子に出会う。聞けば桜子は幼いころ、桜塚に捨てられていた女だったという。学生は何故か桜子の前では素直になれる自分がいて、自殺しようと考えていた事までも話してしまう。(究極の恋愛は同情から始まるって言うけれど、どうやら本当のようだ!)
そんな学生に桜子も恋心を抱くが、桜子にはいいなづけが居たことから、ほのかな恋心を抱いた学生も桜子を諦めてしまう。しかし桜子は学生の子を産みたいと考え、この村に言い伝えられている「好きな人の飲み残しの茶を飲むとややこが宿る」というのを信じて学生が帰郷した後に飲み干してしまう。

やがて、桜子はいいなづけの作蔵と結婚する前に子供が生まれてしまうが、作蔵は俺の子だと桜子を庇ってまでも結婚する。しかし、学生が元気になって村に訪れると、桜子の抱いていたややこは溶けて桜の花びらになってしまう。桜子は自分を淫らな女の血が流れてる、呪われた水子の定めだと言って崩れ落ちるが、やがてこの物語自体が現実の世界で、子供を水子にさせてしまった少女の妄想だと知る。

現実では少女が両親に付き添われて、「何も心配ないからね。何もなかったんだから・・・。」と理解させようとしているシーンが現れる。少女が愛に敗れ傷ついて慰められている場面で終わる。

本来なら、きっと頭上から舞い散る桜の花びらが幻想的で美しいはずだったのだと思う。籠の中に花びらを入れすぎたようで、舞台の上でゆっさゆっさ音を立てて花びら入りの籠を揺らしてるのに、はらはら・・・はら・・は・・・、しか落ちてこない。きっととんだ失敗にすごく悔んだろうと思うと言葉がない。

それでも物語は幻想的で美しく儚いのでした。役者の演技力は秀逸でした。



第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

竹園高等学校「 桜の香 」
脚本は既成のもの。

どの生徒も的確な立ち位置と大人顔負けの演技力でした。特にマーリン(盲導犬)役の百生成美は物語を解説するナビ役も引き受けて実に素晴らしかった!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

幕開け、鶯の里泣きの声から舞台は始まる。実に美しいシーンで導入音楽も素敵だった。この物語の繊細な部分を音楽、演出でしっとりと表現していたと思う。

ある中学教師は網膜剥離から完全に全盲になってしまい、絶望の底に落とされてしまった。先生自身、やけになったり怒鳴ったりと自らの精神を安定させることが出来ない。妻にも当たってしまい、そんな折れそうな心の先生を繋ぎとめようと、立ち直らせようと支える周りの人々。先生と同じように全盲になりながらも教壇に立つ教師が何度も電話をして支えるシーンや、糖尿病のために全盲になり両足は切断、手の指も何本かを残して切断、更に脳梗塞になっても教師を続けているという女性教師が「さしづめ日本のヘレンケラーかしら?それでも心が負けない限り元気なの」と明るく笑いながら語るシーンは圧巻でした。

そんななか、全盲先生(新井先生)も少しずつ変わっていく。そうして、また教壇に立ちたい。盲学校の教師ではなく普通中学校の教師になりたい、と思うようになる。「なぜ、普通中学校の教育に拘るのか?」という問いに「子供にとって日常に障害を持つ人と接することで他社を思いやる心が育つ」と答えるのだった。

やがて新井先生は普通中学校への移動が決まり戻ることが出来たのだった。「先生の夢は何ですか?」「いつか担任を持つことです。そうして亡くなる直前まで授業をしていたい。あのヘレンケラーのように・・。」
先生と生徒達が楽しく会話するシーンもそして終盤、妻と桜を香るシーンも美しい舞台でした。
第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

中央大学附属高等学校「急遽演目を変更いたしました」
脚本:臼井 遊 (高校1年生・生徒創作 )
優秀校入賞、第56回全国高等学校演劇研究大会に推薦される。

東京芸術劇場で都大会公演の時には公演直前に女子部員がマイクを持って説明していた。「申し訳ありませんが、本日、インフルエンザの為に部員が欠席して急きょ部員の4人だけで芝居を演じることになりましたので、急遽演目を変更しました。」とのことだったが、今回は「申し訳ありませんが、本日、センター試験の為に部員が欠席して急きょ部員の4人だけで芝居を演じることになりましたので、急遽演目を変更しました。」と言った!(笑)
随分、手の込んだ芝居じみた芝居だと感心したが、次回は何て説明するのだろうか?(苦笑!)

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


西暦3003年、核兵器の使用により地球は砂漠化、男性はモヒカン化していた。悪の帝国「苦利金団はその混乱に乗じて圧政を続け、人々は希望を失う。地球に降りた女戦士兼レンタルビデオ屋の久美子はすぐさま苦利金団を倒しに向かう・・。GS(ギャラクシーソルジャー)久美子物語。

ってな内容がパンフに載っていたけれど、実際は弟と姉の会話劇から始まる。あやしげ研究会のオフ会に出かけるという姉に弟が「なんでそんなオフ会に?」から始まるショートコントのような内容だった。この姉がGS久美子。要はレンタルビデオ屋のバイトをしている高校生の設定だが高校には行っていない。不登校だ。だから家でゴロゴロしながらベントラ精神世界からベントラ逃げ出した久美子。(笑)

この姉の話を弟が聞くという設定で芝居は流れていく。悪玉をオニに例えて「オニがやってくる」とか松ぼっくりのものまねとか箱の中に小人が入ってるとか、未来とか、エコロジーとか、怪しげな体験はやっぱベントラ精神世界だ。笑

で、最後の終わり方はどうだ?ってことなんだけれど、このショートコントのような緩いコントが少しずつ繋がって最後に箱の中に松ぼっくりが入ってた。という流れで序盤に撒いた伏線が繋がる。これはもう感覚の世界だから説明するよりも観てもらうほかない芝居。

五反田団の前田氏が「負けた!」と言っていた内容だけにきっと素晴らしいのだろうがワタクシはそこまで大絶賛するほどの好みではなかった。まあ、芝居とは感受性の問題だから・・。

第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★

専修大学松戸高等学校「 交番へ行こう 」
脚本は既成のもの。
とあるところにちょっぴり田舎くさい雰囲気の交番があった。そこに万引き少女とスーパーの店長が押し掛けてくる。交番が舞台の芝居。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

スーパーの店長は反省の色が見えないといって万引き女子高校生のひかるを近くの交番に連れてくる。熱血婦警の日下部は最初、丁寧に高校生に対応していたが、彼女の態度にだんだんキレてくる。一方でベテラン警官の手塚はひかるの万引きに対して少し寛大な様子を示す。

ひかるの父親の再婚話が浮上したことによって、父親とちょっとした言い争いをして、父親に殴られ、それでカッとなって家出してしまった事情がひかるにはあったのだったが、それを言い出せない。子供の純粋さというのは様々な気持ちを生み出す。それが家族や社会などに抗う気持ちだったりする。その思いや悩み、そして万引きという過ちを犯して交番へと連れてこられたのだったが、ここでのおまわりさんが実にいい味を出してる。地域に密着する交番で、登場する大人たちはみんな優しく温かいのだった。この大人たちの対応にひかるは少しずつ心を開放していく。ふれあう事で変われる人間の素晴らしさ、親の気持ち、希望を表現した舞台。

大げさなコメディ部分は実に笑えた。しかし本がありがちな内容で新鮮味に欠けた。


第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

村田女子高等学校「 とぅらとぅらとぅらとぅらとぅらとぅららー♪」
この作品は演劇部のみんなでエチュードを土台に作ったもの。でもって芝居のテーマはバカテンポ!テンションとパワーのある舞台でした。

優秀校入賞、第56回全国高等学校演劇研究大会に推薦される。


以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX


今がテーマ。つまり彼女らが部活を通じてどんな話題やどんな関係やどんな交友関係を構築しているか、殆どが部活での様子を描いたものだったがこれがすんごく楽しくてフレッシュ!いっぱい笑って元気を貰った作品。

演劇部では大会に向けてみんなでアイデアを出しているが、中々、良いネタが集まらない。ネタ作りの話をしているのに恐い話になっちゃったり好みの彼の話題になっちゃったりと、ものすごく話がそれてしまう。それてしまう話にみんなも乗っちゃってハイテンポでその話題にノリノリになってしまう。どこの高校生も似たようなものなのだろうけれど、ここでのそれた話題の会話が実にバカバカしくて楽しいのだ。ホント、バカテンポ!笑
そんなだから、笑う、笑う、笑っちゃう!(^0^)

台本が決まってない時間はワーワーと騒いで楽しもう!なんて暗黙の決まりがあるのか、これなら部活が楽しくて仕方がないだろうなー、なんて羨ましく思う。それでも受験とか就職とか目の前には馬が喜ぶ人参ではない大きな壁が立ち塞がってて、これらを乗り越えなければならない。人生には乗り越えなくちゃならない城壁がいくつもあるんだよねー。

そんなこともあってか、それぞれの部員たちは練習をサボって塾に行ったり自宅学習を選択したり、友人らと買い物に行っちゃったりと部室に集まる人数が少なくなっていく。そんな中、部長と後輩が部員たちに呼びかけるも、中々まとまらない。出席人数が減ってしまうと、じゃあ、みんなが来ないんだったら帰るね。なんて部員も出てくる。演劇って一人では出来ないのだ。ここでの演技も自然だ。

それでも彼女らはどうにか人間関係を上手くこなしながらも部活に注ぐ情熱をサラッと淡々と表現していく。そうして最後には7人の部員たちがまあるく時計回りに駆け回ってハイテンションに幕を閉じる。イマドキの高校生でイマドキの部活のありかたなのか、部活に参加するもしないも案外、自由だ。ゆえに今の高校生活をそのまんま上演したように見てとれる。だからか、私たち観客にも審査員の目にも現実的で楽しげで、それでいて将来に不安を抱える心や演劇に対する情熱が、すんなりと伝わってくる。素直で素敵な芝居だったと思う。高校生ならではの高校生しか作れない高校生活のこういった作品を観ることは大人になった私たちにはかけがえのない価値があるのだ。

この後、たまたま村田女子演劇部員と席が隣り合わせになり、話しかけてもらった。そして色々話したが、ここの生徒はどうやら大人が好きらしい。まったく物怖じしないでよく話す。ワタクシは村田女子高自体を存じ上げなかったが、きっと偏差値は高いのだろうなと彼女らをみて、そう感じる。で、自分たちの芝居が終わっても他校の芝居と比較しながらも審査結果が気になるらしい。ワタクシは「大丈夫だよ優秀校に選ばれるから。」と言ってるのに、その後の他校の芝居を見れば見るほど、不安になったらしく、こういった心情も高校野球児のソレと似ている。彼女らの今はこれらを含めて輝いているのだ。
次も頑張ってほしいと切実に思う。
第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

水海道第二高等学校「 トシドンの放課後」
優秀校に選ばれました。別室登校している平野歩の教室に不良っぽい森田あかねが同席することになる。これをきっかけに友情が芽生えていく人間劇。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

優秀で真面目な平野歩は学校という集団の中では合わない。緊張してお腹が痛くなったりストレスになったりしてしまう。教室に行くことが出来ない歩は別室登校して、一人で勉強していたのだった。そこに、彼の家でイチャツイテいたのを彼の父親にチクられたあかねは反省文を書くという理由で、この教室での謹慎を担任から命じられたのだった。

歩とあかねの対照的なナリと言葉。この二人の掛け合いが絶妙で秀逸だった。赤く染めた髪と乱れた服装のあかねは、当然のように校長先生はじめ母親からも不良という烙印を押されてしまう。大人の世界ってそういうものだ。なんだかんだいっても、見た目は大切なのだ。大人になってもこういった状況はかわらないんだよね~。

一方、まじめ過ぎて集団生活に馴染めない歩はあかねの反省文を書いてやったり手伝ったりしながら、友情が芽生えていく。しかし、長い間、別室登校していた歩は進級できなかったことから、自分自身を追い詰めてしまう。「「十年後の私は相変わらず一人ぼっちで部屋で読書をしてるんだ。ずっと一人で社会に馴染めず、お腹が痛くなって苦しんでるんだと思う。こんな私なんか死んじゃえばいいんだ。生きてたって苦しいだけなんだ。」と絶望の淵に立たされてうずくまる。・・・、もうこの場面は号泣でした。真面目でガラスの心を持った歩の様子は本当に苦しげで観ていて痛々しい。思春期の、受験や見えない未来や不安や雑多なストレスをかかえた時期の心理がこちらまで伝わってきて、その描写にヤラレル。とめどもなく溢れる涙。そしてそんな状況下、バカ丸出しで不良っぽいあかねは「トシどん」のお面を被って歩を励ます。ここでもヤラレル。泣く。

結局薬局、ヤラレッパナシ!この二人の生徒を蔭ながら支える女教師。
ああ、やっぱ胸にずん!ときて震える芝居は素晴らしい!
キャストのそれぞれのキャラクターの配置も秀逸でした。


第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

甲府第一高等学校「 Stand By Me 」
脚本: はやおとうじ・橋詰 博・坂本知弘( 生徒・顧問創作 )
オリジナル部員は2名。ずっと二人芝居ばかりやってきたとのこと。だから息もぴったり。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

昭和39年10月10日、日本中がオリンピックに沸いたこの日、橋詰弁護士は拘置所の接見室にいた。大企業をゆすったインチキ降霊術師を弁護することになったのだ。勝機のなさに途方に暮れる橋詰。その時、降霊術師の口から発せられた一言は「兄さんの仇はうったのか」だった。橋詰は尊敬する兄を戦争で亡くしていたのだった。「なぜそれを?」と詰め寄ると、降霊術師は橋詰の幼馴染だったことを知る。

序盤、二人の少年が舞台バックの風景の中から浮かび上がってくるように駆け出してくる。風景画は大きなキャンパスに描かれた馬場山とどこまでも続くコバルトブルーの空だ。そこから飛び出したように現れた二人の少年は白いタンクトップと半パン姿。まるでジブリの映画のように、コーンファームが良く似合う。少年らは馬場山にグラマンが落ち、そしてアメリカ兵が落下傘で落ちてきた姿を確認した後、こうして走って観に来たのだった。糸の切れた操り人形のように木に引っ掛かってつり下がったアメリカ兵を見たとたん、戦死した兄を思い出した一人の少年(弁護士)は米兵を直情的に憎み、殺したいと思う。そして近くに転がっていた石を掴んで投げる少年。それを止めるもう一人の少年(降霊術師)。投げられた石は止めに入った少年の左目に当たって失明してしまう。しかし、この間の記憶が曖昧になっていた少年(弁護士)は自分がアメリカ兵を殺したと思いこんで大人になり弁護士になる。もう一人の少年は親友の為に失明したことを隠し失踪してしまう。赤鬼と青鬼の物語みたいだ。

やがて大人になった彼らはこうして拘置所で再会したのだった。少年だったあの頃の犯した罪の記憶と、政府が関わる馬場山の隠された秘密、それらをリンクさせながら、笑いとサスペンスと降霊(ホラー)を上手く組み合わせていたと思う。何が素晴らしいって、やっぱ既成の脚本で演じるのではなく、脚本も演出も、バックの画も自分たちで制作したという、その心意気に共感した芝居だった。なんだかんだいって、今回の全ての作品の中で序盤での駆ける二人の少年は絵的にも美しい芸術品だった。
第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

韮山高等学校「 天国(うえ)を向いて歩こう 」
脚本は既成のもの。
演技はすんごくレベル高っ!(・・!)
大人顔負け。寝ずに来て良かった。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

死にたい五人が集まって心中する事から芝居は始まる。死にたいと言いながらも、どうやら死にたくないような人たち。死ぬ為に七輪を購入してきた男がその費用を5人での割り勘の申し出をすると、初音は払いたくない、と言い出す。どうせ死ぬんだから払わなくてもいいでしょ。との主張にガゼン立ち向かう町野。この二人の言い合いのセリフが絶妙!とにかく笑った!

死ぬ死ぬって言いながらも、初音は自殺後に、垂れ流さないようにと、トイレでうんこをしてくる。(注・舞台でのセリフがうんこ連発だったのでセリフを変えずあえてUP)しかし、空き家のアパートは電気が止められてて流れない。こんな状況じゃ、心中は出来ない。と言い張る初音。そんな折、町野は押入れから2億の現金を見つける。どうやら、今、騒がれてる強盗事件の犯人がここに隠したらしい。現金を目の前にして、考えが変わる町野。

初音と同様に、死なないと言い出した町野を確認したのをきっかけに、トイレに入って首吊り自殺をやらかす女子。やがて死なないと言い出した面々を次々と銃で殺してしまう一番大人しそうだったマナオ。こうして、彼以外、誰も居なくなった。

ダークコメディ。シリアスの場面とコメディの場面とのギャップが絶妙で、公演時間の全てを楽しんた舞台でした。最後にマナオが叫ぶ「俺だ!俺がやったんだ。俺が全員殺したんだー!!」とのシーンは今時を反映していてリアルでもあった。

全員のキャラクターの立ち居地が素晴らしく、演技も上手い。秀逸なキャストたちでした。
第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★

水海道第一高等学校「十番の行進曲」
脚本は既成のもの。全校の中で一番最初の出だし。だからあがってたんだねー。芝居の前半は演技が硬い。しかし中盤から流れるような演技に。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

演劇部で毎回、主役をはっている太一は親友の為に主役から降りる事を決意する。理由は一度も舞台に立ってない照明係である谷の母親が舞台を観に来る事から、その晴れ姿を一度でも母親に見せてやりたいと考えたからだった。現在の谷は母親と別居していた。両親が離婚したからだ。

しかし、顧問の教師は演劇の大会にむけて勝ちに行きたいと考え、主役は太一を抜擢する。やはり演技の上手いものがやるべきだと意見する。フテル太一。しかし、教師は最後の3分間の主役を谷にやらせることに。

高校生の演劇部での演技、仲間意識や、友情、それぞれの家庭の事情を表現しながらも、これからの未来に向けて「私達は歩き続ける。それぞれの道を。大切な時間を。」と言いながらスローでそれぞれが違った方向に歩きながら終わる。

こうした最後は他劇団の舞台でも数多く観てるが、やっぱ、ヤラレル。
ジーーん!!青春なんだよねー。


美しいヒポリタ

美しいヒポリタ

世田谷シルク

小劇場 楽園(東京都)

2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

3カラーが同時進行!
まず、殿方は入って右側の席に座るべし。するってえと(時代劇風)、美樹谷の開脚が存分に観られる!(^0^)
世田谷シルク の公演って必ずエロちっくな場面、つまりサービスが毎回あるよね?

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

場面はとある会社の事務所。この会社はアプリを企画開発しているらしい。この社内の人間関係や出来事とシェイクスピアの「夏の世の夢」を同時進行させながら、どうやらアプリの中のキャラクターたちも動かすという、実に愉快な芝居だった。
現実的な表現での社内の風景を、ビデオを早送りするみたいにコミカルに時間を操ってしまう場面はひじょうに面白い。また、アプリの中のキャラクターたちの動きもチェスを動かすように15度ずつ回転しながら、ちょこまかとした歩き方の演出も憎い。「アリババと四十人の盗賊」の「開けゴマ!」という号令と共に一斉に動き出す場面を思い出して、なんだかこの芝居がマジで、こけしに似たチェスたちが動いているようにも見えてしまう。

物語は社内恋愛の様子が殆どで、社長のお節介のお陰かなんなのか、自然なのか必然なのか、デキチャッテルカップルが居るなか、秋葉ことチーフに恋い焦がれる役の青木がいい。あんな風に他者に目もくれないで、好きすきビームを発射したら、そりゃあ誰でもなびくってもんでしょ!笑
チーフに「女は顔でしょ。お前のような顔は無理!」みたいな事を言われ罵られても挫けない青木のあの一生懸命さが、観ている側の胸を打つよね。そんなだから、なんだか青木役の前園あかり自体を好きになっちゃって、「ああ、いい女だなー。」なんて思ってしまう。実際の前園のことは知らないんだけどね。(^^)

一方で社長は社員と不倫して、社長の妻は出会い系サイトで知り合った男に身の上相談をする。しかし、社長の不倫相手は上杉という社員とまんまと結婚することになり、社長の妻はサイトの相手が男だと思っているのに実際は、ここの女子社員がバイトでサイトに登録していたという社会を風刺したような筋。笑

同時進行の「夏の夜の夢」はコミカルに表現しながらも、一番最初に見た者に恋をするという仕掛けを間違えた妖精パックのお陰で社長の妻は馬(ロバ)に恋をして、「ああ、私はあなたを愛してる!」ってコクりながらも、馬に乗って歩かせる。笑  まるで、「好きよ。だーいすき!」なんつってコクりながら男を操る妖精みたい。笑

芝居は大きな笑いも泣けるシーンもないけれど、とにかく、いちいち役者のやることが面白くて、クスっと笑えるシーンがいくつもあった。バカバカしくも愉快な舞台で、お笑いぐさは全て夢!



十二人の怒れる男たち

十二人の怒れる男たち

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2010/01/08 (金) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

濃厚で味わい深い
1954年にアメリカのテレビドラマとして書かれた作品。原作者のレジナルドローズ自身の陪審員としての実体験を元に描かれたお話。日本でも陪審員制度が施行されてから、間もないからとても考え深かった。こうして12人の考え一つで一人の少年の生死が決められるというのは陪審員自体も苦悩だと感じた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台としては初見。だから他の舞台と比較しようも無いのだけれど、実に満足した舞台だった。元々、こういった心理作戦みたいな物語は好みだ。だから、陪審員8号の松橋が発言するたびに、なんだかニヤついてしまってワクワクしちゃったのだった。

ことの筋は、スラムで育った少年が父親を殺した罪についての陪審。実のところ少年が父親を殺したという確信はなかったが、二人の目撃証言と、少年が育った環境、たまたまおもちゃ屋で少年が購入したナイフが父親の胸に刺さっていたという事実から、陪審員の12人のうち11人が有罪と主張する。しかしたった一人の陪審員が無罪を主張したことがきっかけとなって、「少年が殺したのを観た」と証言した二人の目撃者の信憑性を追求し話し合うことになる。

無罪を主張した陪審員8号は「簡単に一人の少年を死に追いやる事はできない。もし間違っていたらどうするんです?」と説得する。ここで8号は次々と辻褄が合わない事項を説明していくが、こうした場面でも実に幼稚にだだをコネながら有罪確定を念頭に好演してたのが10号の外山だ。彼を何度か他の舞台で観ているがこういった役が良く似合うキャラクターだ。笑
8号は周囲の愚弄にむかって一人で立ち向かっていく訳だが、コマは少しずつ変わっていく。8号の解説に共感した陪審員たちが一人、ふたりと「有罪」から「無罪」に変えていくのだった。

老人の証言とL電車の証言の矛盾を秒単位で示した8号の説明によって、無罪を主張する陪審員が増えて、有罪を主張する陪審員が減ってくると、8号に対して「そんな針の穴を突付く様に正確でなくても」と喚きながら理屈をこねる陪審員に対して8号は「そのくらい正確でなきゃいけない。一人の人間を電気椅子に送り込むのだから・・。」とセリフる。
事実というのは、その出所の人間の個性によって色が付く。といわれているが、本当にそうだと思う。

「判決によって得るものも失うものもない。だからこそ私情を交えるものではない。偏見を取り除くというのは実に困難で、偏見によって真実がぼやけてしまう。陪審は確信がなければ人を有罪とすることは出来ない。」と最後まで有罪を主張していた陪審員3号を説得し、これによって3号は無罪に変えるも、3号が自分の実の息子と、この事件の少年とを重ねあわせながらの心の葛藤は実に見事だったと思う。観客の何人かは、「いつまで一人で有罪を主張してんだよ!」なんつって感じたと思うが、こういった苦悩は理解できる。「被告はあなたの息子じゃない。他人の子です。生かしてやりなさい。」と放つ陪審員の言葉が重い。

一人一人のキャラクターは12人の個性が出ていて良かったと思う。世の中の雑多な人たちがここに集結したような感じだった。それにしても、なぜ、女性が居ないのだろうか?作者は女性を入れるのを忘れたのだろうか?
こんな芝居を観るとやっぱ、陪審員には選ばれたくないと切実に思う。もし自分が関わった事件で被告が死刑宣告を受けたなら、夜も眠れなくなるからだ。


BOX1 「キリン」

BOX1 「キリン」

カラバコ

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2010/01/09 (土) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★

elePHANTMoon 風
旗揚げ公演とのこと。だけれど旗揚げとは思えないしっかりした演技だったと思う。登場するそれぞれのキャラクターはまったく共感できない人たちだ。だけれどそれは、非日常でもなく、非現実的でもない、グレーの空気感が漂っていた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

大学のサークル室での出来事。ここでの登場人物は7人。序盤、一見、普通そうな大学生たちだったが、ある事件をきっかけに普通じゃない、つまり全員が闇を抱えた大学生に変貌していく。この時点でelePHANTMoon を思い出す。あの時の芝居だって、一人として共感できるキャラクターは居なかった。ここでも同じ。

宗像の恋人が宗像の目の前で不審な死に方をした経緯から、安田は伊刈に「もしかしたら宗像が殺したんじゃないか?」などと言ったばかりに、伊刈は宗像に告げ口をする。そんな安田を問い詰めるように宗像はドライバーで安田の横腹を刺してしまう。その刹那、どっと流血して気を失って安田は倒れてしまうが、そんな瀕死の安田を目の前にしても、同じサークルの仲間たちは動揺するどころか、表情一つ変えずに普通にしている。

筧はそんな状況の中、携帯電話で家族と冷静に話しながらも緊迫感は全く感じられない。鼻歌でも歌いそうな感じだ。安田の妹の晶子は死体のように転がってる兄を見て、「こんなのがあるから汚い」と、まるで家畜のように扱う。要するに全員が他人事なのだ。

交通事故で死んだとされている安部の恋人は宗像だったが、どうやらもう一人の彼の恋人はゲイの安田だったことが解り、宗像は安部の浮気相手だった安田を憎んでいたことも刺した理由の一つだった。一方、宗像を好きな伊刈は宗像の為に部費の50万を使いこんでしまう。だがそのうちの30万は宗像が安部に貢いでしまう。つまり、伊刈は宗像に貢ぎ、宗像は安部に貢ぐ。

筧は幼いころ事故で神経をやられて痛覚障害になっていた。だから人の痛みも他者から受ける痛みも感じない。そして晶子は幼いころ両親を一度に亡くして記憶喪失になっていた。だけれど母親が編んでくれたマフラーが形見と言って大事にしている傍ら、母親の指を切り落として大事そうに持ち歩いていた。

それぞれの抱えた闇を解明している、そんな緊迫した状況のなか、軽いノリの小林がノー天気に「安部をひいちゃったのは俺だよ。良くあることだから。」と告る。この告りかたも、なんだか春の日に桜でも見に行ったような緩い言い方なのだ。

そんな中、部外者の橋村だけが、探偵のようにまとめ役となってこういった状況に陥ったさまをナビ役で明快になぞ解きをしていくのだが、橋村のキャラがひじょうにいい。このキャラはファンタジーなら魔法使いや預言者が良く似合う。しかし、この橋村さえも、人が一人死んだってのにやけに冷静で何事もなかったように退室してしまうのだ。

どのキャラクターも排他的で責任回避型なのだ。重要な場面でもあまりそんな意識がないのか、深刻さが抜け落ちてる。ひと一人死んだからって、騒ぐことはない。良くあることだから・・・。なんて聞こえてきそうだ。

終盤の終わり方が、幕を突然降ろされたような幕引きだったけれど、この舞台を観たとき、恐い、と感じた。日常のどこかにこんな感じってあるんじゃないかってマジに思ったからだ。リアルじゃないけど、リアルに思えるこの情景はきっと泣き叫んで憎しみから人を殺す状況より、石につまずいたようにあれ?っと殺してしまう普通さが怖いのだ。


友情-Friendship-秋桜のバラード

友情-Friendship-秋桜のバラード

「友情-Friendship-秋桜のバラード」上演実行委員会

博品館劇場(東京都)

2010/01/05 (火) ~ 2010/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

とにかく泣かされた
観劇生活始まって以来の号泣でした。あんなに泣けたのは本当に久しぶりだったのではないかなー。鼻水まで出ちゃって鼻かみながら泣いてました。泣きすぎると頭と目が痛くなる。(苦笑!)
他人の子供にふりまわされる教師という仕事、辛いよな。と思う。生徒との我慢比べみたいなもんだよね。相手がそれを意識していない我慢比べ。時には独り相撲になって酷く疲れる。だけれど、いつどういう形になるかは解らないけれど努力は必ず実を結ぶと思う。だからここでの教師も誠意と熱意を忘れずに生徒達に接し続ける。その接し方にも涙する。

素晴らしい舞台でした。お勧め!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

コスモスの花が咲き乱れる北海道から、島崎あゆみは白血病治療のため転校してきた。転校生って別の惑星から来た孤独な生き物に見える時があるよね?当初のあゆみもそんな感じ。あゆみが最初に出会った級友の森山信一はちょっと荒くれ者でクラスでは厄介者だったがクラスメイトの中には子分のように使われてる輩も居たりする。母親が日本人で父親を韓国人にもつ信一はかつて差別された経験もあることから、喧嘩に強くならなきゃいけないという意識のもと、こうやって生きてきたのだった。

一方でみんなからネクラだという理由でハブられてる鈴木さちこは義父から性的虐待を執拗に受けてリストカットによる自殺未遂をした経緯を持つ。

14歳という感受性豊かな、だけれど大人になりきれない不安定な彼らは個人のそういった誰にも言えない秘密を解ろうともせずにどこかでせめぎ合い、どこかで摩擦を起こし、どこかに歪みを生じながら、他人と深く関わることを避けながら過ごしていた。

そんなある日、あゆみと口論になった信一は脅かすつもりであゆみにナイフを向けるも、ひるむことなく言い放つあゆみ、「刺せば。死ぬことなんて怖くない。どうせ私はあと1年か2年で死ぬんだから!」その言葉に動揺する信一とクラスメイト。聞けば、あゆみは白血病のために治療中で余命幾ばくもなかったのだと知る。

そんな中、同級生達は真剣に生きるとは何か、死ぬとは何か、自分たちはあゆみのために何をすればいいのか、そうしてどこに向かって転がって行けばいいのか・・・。こう悩むことで彼らは少しずつ大人になっていく。

一方で入院して学校に戻れなくなったあゆみの頭髪は薬の副作用で抜け落ちてしまう。みっともなくて恥ずかしい、と言いながら見舞いに来た友人達と会うのを拒むあゆみ。遅れて訪ねてきた信一はあゆみの頭を見て唖然とする。

いつでも傲慢で気楽なものだった彼らがあゆみのために考え出した結果は・・。

中学最後の夏休み、あゆみを励まそうと三浦三崎への旅行を計画したクラスメイトにこんな頭だから行きたくないと言い張るあゆみを説得して連れていく。参加はしたものの、あゆみは頭が気になり、打ち解ける事ができない。そんなあゆみを見た信一は、クラスメイトを集め床屋へ出かける。そうして全員がバッサリと髪を剃って丸坊主になって帰ってきたのだった。「これでみんな同じだよ。お前の髪が生えるまで俺達ずっとこのままでいような、って決めた。」この瞬間から本当の「友情」が生まれる。

いっしょ。いっしょ。みんないっしょ。(ダンスシーン)

その夜、信一と二人っきりになったあゆみは14歳の淡い恋を語る。そして流れ星に願いをかけるのだった。「生きたい」大人になるまで生きたいと…。

それでも中学生のあゆみは限られた命の重みに耐えられなくなる時がある。恐怖で胸が張り裂けそうだ。だが健気にも両親にはそんな思いは言えない。そして、先生にすがり付いて泣き叫ぶあゆみ。ただただ苦しみから発せられる切り裂くような叫びだ。断末魔のような・・・、「先生ー、わーーーー!!!っと叫びたいくらい恐い。」

やがて、あゆみは亡くなってしまうが思い出の中のあゆみはいつまでも楽しそうに笑っていた。はら・・・、と舞い落ちるコスモスの花びらが淋しくもあり楽しそうでもあった。


舞台のセットは勿論のこと、導入音楽、演出、マッチ売りの少女を聞かせるシーン、全てに欠点のない舞台でした。中学生役のキャストがひじょうに素晴らしい。大人役のキャストなんか目じゃないくらい素敵だ。全員が本当に髪を剃って体当たりの演技だった。その熱意にも泣けた。さちこが自分の過去を告白したシーンにも号泣した。事実を知ったクラスメイトは「さちこは悪くない。今までごめんね。私たちはさちこに何をしてあげられる?」
するとさちこは「何もしてくれなくていいよ。私の話を聞いてくれればそれでいい。そして、ずっと友達でいてくれたら、私は嬉しい。」

オープニングも終盤のダンスも素敵だった。今回の舞台は知らない誰かに熱い手でぎゅっと心臓を掴まれ、そしてその熱い手から温度が溶け出して満たされるような感覚があった。たぶん、この芝居は今年のこりっちアワード10に入るような気がする。それ程の舞台だった。

だから、観劇が好きで止められない。だけれどこの観劇中毒はいつもワタクシの心を幸せに満たしてくれるのだ。


【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

劇団宇宙キャンパス

吉祥寺シアター(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了

満足度★★★

むしろ
本編よりも前説のほうが面白かったかも。注意事項をわざわざ劇仕立てにして表現していたけれど、これがマジ楽しかった。

オープニングは最高でした。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

作家が高校生の頃、演劇部に入った経緯や過程、演劇部で起こった様々なことを表現した舞台。高校生の頃の芝居ってどうしてあんなに懐かしいんでしょうね?学園ものを観るといつも得体の知れない感動がある。言葉では上手く言い表せないけれど、とても貴重なあの頃、だけれど当事はそんなことぜんぜん思ってなくて早く大人になりたい、なんて考えてた。大人はいいよなー、自由で好きなことをやれて・・・。なんて強く思っていた。

物語の高校生たちもちょっとしたイジメや付和雷同な同級生、心ない噂が飛び交い、ちょっとずつ誰かが誰かを傷つけてしまう。また、連帯責任という不条理な事も経験し、だけれど的確な言葉でもって言い訳ができないし、言い出せない。もっと違う言葉を違うふうに言いたいのに、それが出来ない。一人の女子演劇部員が前向きに気丈にも「お芝居、嫌いにならないでね。」とのセリフが胸を打つ。

歯がゆさと誰もがそうだったあの頃を甘酸っぱく思い出しながら舞台を楽しんだけれど、ただ、その楽しんだ行為は自分の高校生の頃を思い出したからだ。本編はけっして大きなうねりも特別なファンタジーもない。ただただ、作者が経験した当事を適切に芝居にしたのだと感じる。だから、芝居としてはインパクトにちょっと欠ける。だって日常を芝居にするのだから、当然インパクトに欠けるよね?けれどそれが学園ものだ!って言われればそうなんだけれど・・・。

作者はあの頃から変わることの無い想いが一つくらいあったって良い筈なんだ。と宣言しながらこれまでの自分の生きてきた経過を肯定しながら納得し、また観客にも理解して欲しい。と訴えてるようだけれど、次回はそこからもっと先に踏み出して欲しいと思う。今回が序盤だとしたら、「宇宙キャンパス」という、なんだか壮大な劇団名の如く、壮大な物語を描いて欲しいものだ。

セットの作り、映像、エンディング、素晴らしいと思いました。
夢見る乙女じゃいられない

夢見る乙女じゃいられない

たすいち

王子小劇場(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

面白い!(^0^)
上手いなぁー、物語の紡ぎ方が上手い。物語は二重にも三重にも構造が折り重なってすんごく楽しめた。登場人物のキャラクターの立て方も上手い。ってか面白いっ。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

主役は売れない漫画家の工藤優女。工藤は出版社から連載の打ち切りを宣言される。ちょっと内気な工藤は自分が作った物語の中に逃げてしまう。

この物語が実に楽しい。ってか面白い。悪夢を食べるはずの獏が何故か人間の夢を食べて生きている。という設定。しかも、しかもだよ、妖怪はコレだけではない。妖怪枕返しやら、男性の生気を吸ってしまうムマとか、なんだか妖しい輩がわんさか!そこへ持ってきて、妖怪撲滅に人生を賭ける岩丸大志とかが登場するわけ。ワタクシ、実際、こいつも妖怪なんじゃね?と思ったくらい実に妖しいキャラ。

そんなだから獏と大志が戦うシーンなんかは、まさにべラ、べムの世界!(失笑!)この二人のキャラクターは実に見もので、まんま、早く人間になりたい!なんつって4本指で叫びそうな勢いで、バックの音楽にはいつわ真弓の「恋人よ」を流せばいいのにってマジで思った!(^0^)

で、物語の筋は人間に夢を叶えてやった獏がその夢を食べちゃうという不条理な内容を実に面白可笑しく表現しながらも、セリフの隠し味的に、「夢も漫画も全部、現実を頑張る為にある」とか「何かを犠牲にしないと何も手に入らない」とか青春真っ盛りみたいな、お前さっき青いりんご食ったばかりだろ?みたいなお茶目なセリフが出てくるわけよ。
そりゃあ、あなた。そこのあなた!萌えるっしょ?萌えて萌えてワタクシだって「生物平等ーー!!!」って叫びたかった!(^0^)

で、結局薬局、売れない漫画家は自ら作った物語の中から抜け出て現実に頑張ろうと決心して動き出す。コマは良い方に廻り始め、本丸にたどり着く夢も間近!

めでたしめでたし。実に楽しい構成で、観ていてワクワクドキドキ。素晴らしい芝居でした。次回も期待大!

SIMPLY BECAUSE IMITATION

SIMPLY BECAUSE IMITATION

FREE(S)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/01/05 (火) ~ 2010/01/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

笑って泣けた!
殆どがコメディ。登場キャストといい、ひじょうによく練られた作品だったと思う。終盤には主人公の人間性を試すような試練も待ち受けており、コメディから反転、一気に涙を誘うシーンもある。当日配ったパンフにキャストの写真と役者名が載っていたがこういった心遣いが嬉しい。後日、こうしてUPする時に本当に解り易い。今までの観劇で思うことだが、こうした詳細な心配りの出来る劇団は公演も素晴らしいものが多い。目が行きとどくということはそういうことなのかもしれない。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

草太は真子に結婚を申し込むが、真子に断られてしまう。2年も恋人として付き合ってきたのに納得出来ない草太は真子の家族に会いに行くが、やはり家族や友人も真子の結婚に反対する。反対されれば更に燃え上がるのが世の常だが、諦め切れない草太はひとまず家に帰って頭を冷やすことに。

ここまでの舞台はコミカルに展開し、登場人物のキャラクターにはそれぞれの毒があって楽しい。特にCHOが良い。真子の友人におカマが多かったのには不思議だったが、後にこの意味が解る。真子は男だったのだ。これが障害となり、真子が結婚できない理由でもあった。しかし兄嫁の「このまま過去を隠し通して女性として結婚しちゃえばいいじゃん!」みたいな軽い提案に、真子の家族も友人も同調して、真子もその気になってしまう。そうして結婚を承諾した真子だったが・・・。

一方で兄・草太の結婚に不審を感じた弟たちは興信所を使って真子の身元を調査すると、「生まれた時は真子は真(まこと)という男だった。性同一性障害の為、女性になるための手術を受け、現在は戸籍上も女としてある。」という調査結果が報告される。このことを知ってしまった草太は真子を問い詰める。真子は誠心誠意、草太に謝罪するも自分の過去を知られてしまった草太とはもう結婚できないと別れを告げる。

真子の過去を草太に説明する真子の兄・一男の「真子は元々、女の子だったんだ。ただ神様が入れ物を間違えただけ。本物の女の子になりたくて苦しんで辛い思いをいっぱいして、そうやって女の子になった。」とのセリフにヤラレル。そして、泣く。

ああ、そうだよなぁ・・、世の中、みんなそれなりに苦労して生きてるけれど、これほどの違和感を感じながら生きる人生ってどんなだろう?って真剣に考える。考えれば考えるほど自分の甘さに気がつく。
そして、なによりも真子のこの世に生を受けながらも自分だけではどーにもならない受け入れ難い生涯を苦労しながらも、それを微塵も見せず、全て糧として前向きに考えるパワーと自分なりにアクティブに、人生と仕事と恋人とを受け入れてきた生きざまに深く感動して震えた。

しかし、出来る事なら再度、結婚を申し込んだ草太を受け入れて欲しかった。男でも女でも好きならば、ずっとずっと死ぬまで仲良しで暮らせばいいじゃん!と思うのだ。意地をはって孤独で暮らすよりは、素直に好きな人と暮らした方が絶対幸せだと思うからだ。朝起きて家族と小さな言い合いをし、仕事に行き、仲間とばかな話で笑い合い、上司に叱られたり褒められたりして、溜息をつき、帰宅して家族と食事をし、友人とメールを交換して、眠りにつく。その全て、なにもかもが愛だと思う。家族を持って、それを守り育むというその生活に生きとし生けるものが脈々と繰り返してきた歴史的な「正義」を感じるからだ。
珍小芝居

珍小芝居

UDATSU

千本桜ホール(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/08 (金)公演終了

満足度★★

ぐだぐだで緩い
上記のタイトルの如く宴会芸そのもの。笑
子供が登場する「ちんこしばい」ではなく大人だけの下ネタあり~~の、ショートコント。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

まあ、そこそこ楽しめるかもしれないけれど、やっぱ、そこそこ。
アニメネタが多かった。マイクロボーイやキテレツなどのネタあり。
はたまた、プチシュークリームに練りカラシを入れて、混ぜて朗読劇で罰ゲームのように食べながら朗読するさまは、ネタとしては古い。

全体的にはあまり笑えなかった感が。もうちょっと笑わせて欲しい。
次回はもっとネタを吟味してちょーだい!笑
(2000円のバックイベントあり。ようは入場チケットがただになる。実際、バックされた観客がいて確立は14%!案外、高確率!)
新年工場見学会2010

新年工場見学会2010

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2010/01/02 (土) ~ 2010/01/04 (月)公演終了

満足度★★★★

この緩さが堪らない!(^0^)
これを観ないと1年が始まらない気がするから不思議。今年のホットワインは濃厚で美味しかったな~。。トイレであんなに待たされなかったら、もっと飲めたのにっ!(。。)
イベントの方は、今年も「ほんま、練習とかしたの?」ってな感じの催しもあったりして、総合的にだらだら感満載!(苦笑)
それでもハイバイの「金子たけのりの半生」は流石!
これだけでも一見の価値あり!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

俳優のニセモノ「黒田の一生」・五反田団

男3人がディズニーに行くことに。3人はカリブの海賊に入るのだが、赤堀(前田司郎)は他人の話を聞かない。一人自分の世界に入ちゃってる。笑
カリブの海賊ではまがい物ディズニーバリバリに海賊たちがこれまたまがい物っぽく登場するわけよ。カリブの海賊がめっさ貧弱!笑
で、自分の世界感に浸っちゃってる赤堀はエンゲキのまがい物の話になって、「エンゲキやりたいんならAV見ろよ。」ってな話に行きつく。(苦笑!)
さらに、ペ二ノや三浦のネタになって小劇団マニアには堪らない可笑しさ!
たぶん、一番楽しんでたのは前田司郎に他ならない。笑


「演技堂」のニセモノ「金子たけのりの半生」・ハイバイ
金子の恋バナから今日までの半生を綴った物語。これが実にいい。金子の演技力と表情で金子自身が本当にあんな風に生きてきたのだと実感させられる。好きな女性に中々告白出来なかったシーンや、やっとの思いで付き合ったものの、それから先に進む過程がどーやったらいいのか慎重に考え過ぎてるうちに他の男にあっさり横取りされてしまう。他人からみたら歯がゆい恋だけれど、あんな風に思いつめた時期って誰にでもあるのではなかろうか?たぶん、演劇を趣味にしてるようなユーザーは特に多い気がする。

その後、金子はパッとしないまま、岩井に拾われた設定になっていたけれど、いあいあ、なかなか、金子、良いです。体当たりの演技と、心理描写が相反して素晴らしいエンゲキでした。


他は音楽とこけしのおしゃべりと・・・。まあ、こっちはどーでもいいです。そんなレベル!(苦笑!)
1階で甘酒200円、豚汁300円、シューマイ1個50円で販売してたけれど、高いねんて。あかんて。売れてへんし。甘酒100円、豚汁200円、シューマイ3個で100円が相場やろ。薄利多売が商売の鉄則ですねんて!笑

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