満足度★★★★★
神奈川県立大船高等学校・音楽劇「銀河鉄道幻想」
大会出場常連校。部員52名、顧問6名の演劇部。これだけで他校の弱小部と比較したら随分、有利に思えるが、それを払拭させるような演技だった。つまり他校をうんと引き離した完成度。レベルの高さだった。キャストら全員が揃いもそろって発声が完璧。欠点がない舞台だった。強いていうなら折角の生の音楽隊の演奏なのだから、BGMの導入はせず、生で完結して欲しかったのだが・・。無理か?
以下はネタばれBOXにて。
ネタバレBOX
物語は宮澤賢治が過ごした幼少からの数年間の家族との関わりあいや、学校でのいじめを通して「銀河鉄道」のカンパネルラに自分に投影して描写した劇中劇。これらの情景を舞台を二つに分けて同時進行させる。舞台右側は「銀河鉄道」、左は宮沢賢治の妹・トシの病床場面だった。
この演出の見事さったらない。右は童話の世界で左は現実の世界を同時に観られるのだから。
更に目を見張るのが舞台セットだ。両サイドに設置した回転舞台は暗転の度にぐるぐる回って観客を楽しませ、更にトシが死ぬシーンでは大きなホウズキの提灯が橙色の灯火のようにぼんやりと灯がともるのだ。その光景はまるで今から死者を誘導しながらあの世へ向かっていくかのようだった。
前半では笑い、後半では号泣した舞台だったが、これらを観客に説明するかのようなナビ役が大人になった宮澤賢治だ。
かつての彼が家族の集合写真に入らなかった家族の肖像、賢治の居ない肖像を悔やみ、やり直し写真に納まった賢治の追憶の物語。
確実にレベルアップした完璧な舞台だった。歌も素晴らしい!!
満足度★★★★
山梨県立甲府昭和高等学校「冒険授業」
とにもかくにも素晴らしい内容。ナンセンスコメディの描写もありながら、暗転後は悩める高校生の現実を描写する。その表現の仕方は斬新!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は高校生の教室の現風景から。
授業の内容は教師が「勉強は世界を旅するようなものだから楽しい。それは冒険みたいなもんだ。」と話す。観ているとそのナンセンスな話しっぷりは確かに面白い。
しかし物語りの真意は不登校になったともちゃんの脳内の、つまり夢の中の物語だと解ってくる。と、同時にともちゃんの親友のもとちゃんも、ともちゃんを心配するあまり不登校になっていた。
物語は彼女二人の担任と生徒らを絡めながらかつてのイマジナリーフレンド、脳内ツイッターと切なく、しかしコミカルに勧めていく。内容は盛りだくさんだ。そんな仮想現実の世界で悩みながらも現実を知り、本来の姿にもどっていくともちゃんともとちゃんの物語。
実に素晴らしい内容だった。
知るということはよく生きること。というのが心に響いた。
惜しむらくは箱が大きかった為にセリフが聞こえ辛い点があったこと。
満足度★★★★
清泉女学院高等学校「モンタージュ~はじまりの記憶~」
モンタージュはわりに高校演劇では取り上げられやすい芝居だ。
ある日、2人の老女が会話をしている。片方の老女は昔の思い出を楽しげに語っていた。しかし、もう片方の老女は語られる思い出すべてを覚えていなかった。それどころか、何を思い出しても嘘のように思えてしまうと言って・・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
三人芝居。
舞台の始まりは椅子に腰掛けた老女2人のシーンから。
二人の老婆っぷりがいい。
老女1は老女2に昔の記憶を話しかけるところから物語は始まるが、自分たちが住んでいた細い裏路地のパン屋の話は実におとめちっく。そのパン屋は狭い路地をカニ歩きでメロンパンを抱えながら入っていく。そんな歩き方をしないと狭い路地に入ることが出来ないからだ。メロンパンの入った箱を両手で持って顎で押さえながら入ると、パン屋は自分の周りにメロンパンを20個置いただけのちっさなパン屋だった。
狭い路地でパンを売っているけれど誰も気がつかない。
この話を老女1は老女2に「先に私が貴女に教えたのに他のみんなに自分が見つけたみたいな話をしたでしょ?どうして貴女はいつもそんななのよ。昔っから貴女はそうだったわね?」と、かつての少女だった頃の回想シーンに移る。
その回想シーンではお互いの写真のこと、缶けりをして遊んだ記憶、少年と少女の淡い恋物語、お互いの家族のことなどを子供のようにお互いをいぢりながら描写していく。この二人の関係がいい。
少年と少女の恋物語では老女2は少年を好きだったのに、少年の気持ちに正直に答えられなかった記憶が蘇る。老女2は自分の気持ちとは反対に少年に『老人になったらここで逢いましょう。』と約束してしまった自分がいた。「何故あのとき、少年を好きだって言えなかったのだろう。ずっと後悔してた。いつも片意地張って素直になれない。そんな自分が嫌で嫌で、嫌なことはすべて嘘にしてしまいたかった。すべてを嘘にしてしまったら、そうしたら、自分が何処にも居ないんじゃないか?って思ったの。」と老女1に告白する。
そうして場面は最初のシーンに伏線を繋げ、お互いに老女たちは「貴女が必要なの。」とちっさい頃から友達でいた事に感謝する。そうして記憶を失ったこのように思えた老女2はかつて埋めた写真を掘り起こして、最初のお互いにお互いを楽しくいぢり合うシーンに戻る。
今回は演出が見事だった。終盤のシーンでは美しい影絵をみてるかのよう。老女独特の持つ風景や世界観を上手に描写し、また、過去に遡っての少女たちのシーンが素敵だった。
強いていうなら舞台があんなに広いのだから、老婆の立ち居地は中央が良いのだが、客席から観て右端に殆ど居たことが残念だった。彼女らの左に大きく空いた空間は更に広い空間となって客席から観てインパクトに欠けたように思う。
それでもお互いを楽しくいぢり合う姿はほのぼのとした空気感を演出しながらも笑いどころもあり、セリフのセンスも良かった。
演出と照明のタッグが素晴らしい。
満足度★★★
山梨県立甲府南高等学校「はたらけ喫茶」
この高校も大会の常連校。いやに色っぽい喫茶店の店員が実に可愛くていい。高校生とは思えないほどの色気。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
3人のフリーターが溜まる喫茶店で元ヤンキーの店員から叱咤激励されながら徐々に一人前の大人になっていく過程を描く。全体的にアニメ的。どじっこメガネやジブリネタを盛りこみ、萌えネタが多い。
主人公フリーターは頑張っても報われない現実が嫌で目を背けゲームの世界に逃げてしまう。現実逃避だ。しかし、眼の前の店員の育った環境や不幸な生い立ちを知り、環境でグレルのではなく自分自身の弱さからグレルことを知る。
結局、」何事も自分自身の問題なんだと悟り、一転して初心に戻って教師を目指す物語に恋愛も盛り込む。
高校生らしい演劇だったが物語の筋はありきたりなもの。
満足度★★★★
東京都立羽村高等学校「青い春」
夏目漱石の「こころ」をモチーフに演劇部部室での普段の様子と恋愛を描いた物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ここでの演劇部の部員は6人。「こころ」は一人の女性を好きになってしまった三角関係を描いた物語だが、ここでは四角関係を描く。
時として人間というやつは良く解らない行動を起こすものだが、工藤愛は部員の佐野を好きなのに、クラスメイトの村松と付き合っている。これを知った桐島夢子はちょっと安心する。なぜなら工藤は佐野を好きだと思い込んでいたからだった。「それなら私は佐野君を好きになってもいいよね。愛、応援して。」と愛に協力を求める。
愛は自分の本当の気持ちを隠したまま、苦悩し、ついに村松と一方的に別れてしまう。その後、佐野から愛を告られるも夢子の心を察して断ってしまう愛の心の葛藤を描いたもの。更に今回は高遠光という女子がどうやら愛を愛してしまった描写も加味され、大人ならぐちゃぐちゃになりそうな展開をわりに爽やかに描いていた。
未熟でまだ大人になりきれない青春の青い恋愛を描いた物語だが、「こころ」もこういった「青い春」も相手を思うがゆえの自己犠牲的な愛だが、実は好きな人に好きと言えなくて他人に譲る愛は本物ではないと考えてるワタクシ。笑
それでもあの頃、そんな未熟で幻想的な恋もしたな、と懐かしく観ていた。恋に恋していた日々を描写したもの。と断言しちゃってもいい?笑
部室での練習風景や人間関係がリアルで素敵だった。
満足度★★★★
八千代松蔭高等学校「花まんま」
朱川湊人の「花まんま」はあまりにも有名のなで、どなたも筋は解っていると思うが、加藤家の小さな妹がある日突然、誰かの生まれ変わりだと言い出し、彦根にいる家族に会いに行く。死んだ繁田喜代美は小さな妹・加藤ふみこに乗り移って拒食症になった父親に「花まんま」を作って励ますという筋。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
早くに父親を亡くして育った妹と、彼女を優しく見つめる兄を描いた話題作だが、ここに登場する父・加藤恭平のキャラクターが絶妙。彼のコミカルさで会場から笑いを取る。更に繁田仁(父)の年老いてガリガリになった様子も涙を誘う。ワタクシも号泣してしまったが、会場でもすすり泣きが聞こえた。
愛娘が死んだ日に暢気にご飯を食べてた父親の後悔と懺悔の心から拒食症になった場面の描写はあまりにも悲しく、また「花まんま」で父親を何とか救おうとする娘の気持ちが痛々しく美しかった。
父と娘の絆を描きながら生きている人たちへの希望の物語。
満足度★★★★★
松戸馬橋高等学校「山姥」
昨年、 神隠し「八十八ものがたり」を観てすっかり荻野綾のファンになったワタクシは今日も彼女の演技を観ることができて嬉しかった。現在、2年生らしいから、来年も頑張って勝ち抜いて来て欲しいと切に願う。毎回の大会の常連校らしい骨太さ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
山の神によって子供を授かった山姥は当初、子供なんかめんどくせぇ。と思っていたが、育てているうちに情が移ってしまう。しかし、山の掟は「子供を春に生んで冬に死す」という1年も生きられない運命だった。そこで村に捨てれば子供は生きられる、という特例を利用して山姥は自分の子供を泣く泣く山に捨てに行くのだった。
拾ったムラオサは子供を大切に育て自分の仕事である水の門番の跡を継がせることにする。その間、山姥は夜な夜な息子・ヤマトの寝顔を見るために、毎日せっせと山から降ってきては登っていくのだった。そんなヤマトも成長するに従って人間特有のずるさを身につけていく。自分に不利なことが起こるたび、山姥を悪玉にすることで自分を有利にしていくヤマトに次第に失望してしまった山姥は、ついに郷に降りなくなってしまった。
しかし、ある日、ヤマトの都合で水門を開けるのを怠ったことにより、水門は決壊し村に大きな被害をもたらしてしまったのだった。
ヤマト一家を救うために自分の命を犠牲にした山姥の愛の物語。
荻野の歌、ゴリラのようなダンス、赤子と子供の二重描写、太鼓を軸にした楽隊、それらはこの童話に相応しい彩だった。山姥の死の瞬間に叫ぶいたちの絶叫は物悲しい絶望の雄叫びだった。ワタクシは思わず泣いて、その美しい世界感にどっぷりと浸ったのだった。
母親の犠牲愛を描いた物語。
満足度★★★★★
摩擦
小説「蝿の王」とは違った設定と登場人物。小説は無人島に漂流した子供達が巻き起こす物語だが、ここでの王国は会社のオフィスだ。そして登場人物は勿論、ビジネスマンたち。
序盤、氷室が在室するオフィスに黒いスーツを着た5人の豚が登場する。その情景はまるで「不思議の国のアリス」さながら大人の童話を彷彿とさせるお茶目な登場の仕方だ。豚たちはそれぞれ独自でスローな動きを見せながらも都会的なセンスを身にまとっている。彼らは氷室を嘲笑してるようにも見えるし逆に氷室という人間の一部のようにも思える。これらの部品はこの物語に影のように寄り添って登場するのだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
それぞれの課から配属された8人は服飾プロジェクトとして仕事を推進していくが、そのうち、なぜ自分達がこの課に配属されたのかを疑問に思う輩が現われる。この仕事を精一杯頑張らなければ会社の評価が悪くなる、と勝手に思い込んだ彼らは、いつしか自分自身を追いつめ、会社の地下室に寝泊りしながら、仕事にセイを出すも、その脅迫じみたストレスから弱くて仕事が出来ない輩を攻撃するようになる。
明らかにパワハラなのだが、こういった切羽詰った状況の中、冷静な判断を削ぎ取られ攻撃する輩がいかにも仕事ができるかのような印象になり、ポジションも確立されてしまう。世の中は強いものが有利なように空気は流れてしまう構図だ。
そうして主張の強い多弁な輩がデキル人材と観客にも思わせてしまうのだが、もうこの時点で彼らは会社の一つの駒どころか奴隷に成り下がっているのだが、「私は会社に人間関係を求めに来てるわけではないの。仕事をしに来てるの。」と正当なセリフも吐きながら他者を支配していくさまは実際の営業課と似ている。
しかし生き残りをかけた彼らの戦いの中で少しずつ人間関係が破滅へと動かされていくのだった。セクハラも飛び交う誹謗中傷の中、人間としての良心が崩れ無機質になっていく瞬間の構成は見事だった。
しかし、その大元である会社は会社更生法を受ける結果となり、この部門に配属された彼ら全員が人事から「会社に必要ない人材」とレッテルを貼られた体のいいリストラ組だったことが明らかになる。
結局薬局、自分は仕事がデキルと粋がってた輩も会社から見れば無能な人材だった。という滑稽なお話。まさに8人の王国はこの瞬間に崩れるが、その崩壊はあまりにも一瞬だった。
構成、一人ひとりのキャストらの動き、演技力、音楽導入、そうして何よりも演出が大絶賛な芝居だった。終演後、拍手は鳴り止まず、ワタクシもエラク感動してしまったが、どうやら、この劇団の演出方法はインプロとして全員で話し合いながら構築していく方法らしく、その巧みな動きは素晴らしいとしか言いようがない。
小劇団の方たちに観てもらいたい演出だった。素晴らしい!!
満足度★★★★★
追いつめられて
流石にキャストらの演技力が光る。JACROWはキャストの起用力が定評になっていると思うが、毎回の公演ごとに満足し満たされているのは事実だ。今回は建設会社の談合をめぐって一人の人間が破壊されていく過程を描く。
ネタバレBOX
主役は富島哲平。彼を演じた立浪仲一の演技力があったからこその演劇の醍醐味を感じる。哲平は正義感溢れる真っ直ぐな若者だった。千葉大を卒業し建設会社の営業に回される。どうやら彼は挫折を味わったことがなく、とんとん拍子に社会に飛び出した一人のようだった。人生の難問の結婚にも成功し妻との関係も良好のはずだった。
配属された営業部は公共事業の入札で仕事を取るような部門だったが、こういった建設業には当たり前のように蔓延る談合や汚職を目のあたりにした哲平は愕然とする。持って生まれた正義感を振りかざし、また、国立出身というサラブレッド感が同僚や上司の妬みを買い孤立していく。
そのうち「正義感だけでは世の中は渡れない。自分の気持ちに蓋をして生きるより仕方がない。」と意見する上司を尻目に哲平は「談合反対!」を押し出し入札の書類を市役所に提出しないという荒業をしてしまう。
この入札に参加しなかったことで、下請けの坂本工務店は潰れ哲平が想像だにしなかった事態が翌日から始る。執拗にパワハラを繰り返される哲平。妻に相談するも、妻は実家の事で頭が一杯で哲平を見ていないのであった。
更に事態は悪化し、妻の実家の資金繰りで会社を退職する訳にいかなくなった哲平を、会社は脅迫するかのように退職を迫る。哲平は徐々に、しかし確実に追いつめられて窮するどぶ鼠のようだった。逃げ道を見失った人間ほど弱いものはない。哲平は正気を失い冬に舞う蚊のように、その宿命は潰されたのだった。
死んだ哲平を巡って妻が告訴する場面も、請け負った弁護士が志賀を問い詰める場面も案外、滑稽だった。人は皆大切な誰かが死んでから騒ぐ。どうして生きてるうちに大事にしてやれなかったのかと思う。更に告訴された会社が証拠隠滅に画策する様子は現代社会の構図のような気がして、その描写は見事だった。更にパワハラを裁判まで持っていっても中々勝てない。というのも事実だし、よく勉強してるな、とも思う。
観て満足する舞台だと思う。相変わらず谷仲が終盤に登場するオチが絶妙。
満足度★★★
どちらもヲタネタ
動きのあるリーディングだったから、楽しめた。
これでまったくの読むだけだったら、脚本がよほど秀逸でなかったら、楽しめなかったと思う。つまりはそれなりの力量が試される公演かと・・。
ネタバレBOX
劇団エリザベスはドラクエネタで突っ走る。主人公のサエキは彼女にフラレ、その事実を受け入れられないまま、ゲームの世界をひた走る。いつしかどこまでがリアルでどこまでがゲームなのか境界はあいまいになって、そのうちアンパンマンならぬ、ウンコマンが登場し、自虐的になるも、ラーの鏡でその世界を破壊する筋。しかしサエキは自分自身も真っ裸になって破壊する!笑
中盤でクマノが演じたMIXI韓国バージョンがあまりにも絶妙でウケタ。
Mrs.fictionsではウルトラマンネタ。パラサイトの彼がウルトラマンヲタだった環境から、自身も同じようにヲタになった彼女は円谷プロに入社し、プラダとの提携によって、やたら高額なグッズを販売することになる。しかし、彼はそんなウルトラマンは本来のヒーローじゃないと幻滅してしまう。彼にとって彼女はウルトラマンを根こそぎ倒すゼットンだと暴言し、これをきっかけに二人は別れてしまうが、彼女の永遠の恋人はウルトラマンだった、というお話。
劇中、ウルトラマンの解説にあたる二人の不倫関係が面白い。ここでのウルトラマンはヒーローではなく不倫している汚れたおっさんだった。笑
両方ともネタがネタだけに万人ウケする芝居ではないが、ワタクシ的にはウルトラマンがツボ!
満足度★★★★
ものすっごく楽しかった。
黒田大輔がいい。もさっとした表情や驚いた表情がしごくいい。それに対する木引優子のぼんやりとしたふわっと感もいい。
全体的にコミカルな芝居だが、不思議でシュールな笑いも含めて過去数年の「新年工場見学会」の中では一番笑って、一番満たされた公演だったと思う。
ネタバレBOX
「黒田パン」ほど厭らしくてカッコ悪さが秀でたピーターパンもいないだろうと序盤から崩れながら笑った。本来のピーターパンは子供だけのワンダーランドで夢溢れる冒険ものだが、黒田パンは夢も希望もない苛められっこなのだった。そして大人のワンダーランドに巣食う暴走族が蔓延る島でもあったのだ。笑
そんなしょもないワンダーランドで遊ばれる黒田パンの飛び方は事務椅子の上に乗っかってブーーーン・・ブーーーン!!と観客に突っ込むような体で飛びながら、ってか動きながらヨタヨタと今にも失速しそうなナリなのだから、あまりにも哀れで可笑しくて、まるで、おぼっちゃま君を見ているようだった。
「ハイバイのヤンキーのニセモノ」も面白い。
父が失職して父の威厳を失った家族を描写したものだが、ここに登場するヤンキーたちの仲間に成り下がった父のヤンキーぶりが面白い。
ヤンキーらは興味を持てない実際の社会を可視できず、代わりに自分たちのフィクションの世界を作って実際の世界を上から塗りつぶすかのような不良文化を作り上げた。それは若者たちの共同の幻想でもあった。彼らはコンビニでたむろし、地べたに座って漠然とした天下統一や喧嘩上等の思想があったが、何の為に戦うのか中心部分は空洞だ。だからこそ若者は燃え熱狂するのかもしれないが。
父がこのフィクションの中に入り込んで「喧嘩上等」を掲げ雄叫びをあげるさまは、かつての全学連の「闘争」を見ているような感覚だった。不思議な青春の暗い奈落、若さを病み、未来を掴もうとするがゆえに今の現実を否定する。猪股にはそういった雰囲気を持った役者でもあると思う。笑
「ヤンキーのニセモノ」にはフィクションの中に、もう一つのフィクションがあり構成が面白いと思うと同時にキャストらの可笑しな仕草にも笑わされた。
とにかく楽しい。お勧め!
満足度★★★★
結婚したい女
「後がない」と勝手に思い込んでる、あらさーの女の心情を綴った物語。リーディングかと思いきや、そうではない。きちんとした芝居だった。
ネタバレBOX
銀行に勤務するあらさー女をターゲットにする詐欺師こと鈴木は、まほろば銀行のATMの前で銀行テラーの工藤を獲物とした。工藤にひっそりと近づきながら「シャリバールのアハマド殿下の妃に」と話を持ちかける。半信半疑ながらも工藤はそんな甘い話にまんまとひっかかってしまう。
冷静に考えれば解る話も今の工藤には鈴木の話が夢物語ではなく現実を帯びて聞こえるのだった。そんな中、工藤は真面目にイスラム教やイスラムの言葉、イスラムの情勢などを勉強しながら、すっかりその気になって鈴木の口車に乗って結婚費用を調達してしまう。
そんな折、以前、鈴木に詐欺られた同じくあらさー女が登場し750万もの金を鈴木に貢いだことをバラし工藤に忠告するも、工藤はもう元に戻れないほどの大金1000万円を鈴木に渡していたのだった。
工藤の抱えてる現況、不倫関係にある男との関係を描写しながら、誰かに寄り添っていないと生きていけない弱い女の心情を見事に表現していたと思う。工藤は最後の綱として鈴木に望みを託すも、当の鈴木は搾り取った粕のような工藤を見放して逃げてしまうという筋。
「おおきな豚はあとから来る」の説明を「本当に素晴らしい出来事は最後の最後に起こるんです。」と諭しながら話す鈴木の詐欺っぷりが絶妙な舞台だった。工藤自身も騙されていると知りながら、鈴木を繋いでおきたいという悲しいまでの縋りっぷりがあらさー女の迫るくる心情を見事に魅せていたと思う。藁をも掴むあらさー女の孤独との戦いのような芝居だった。
工藤が最後に歌う「月の砂漠」はらくだに乗った姫が悠久の砂漠をさ迷い歩く歌に聞こえてなんとも侘しいシーンだったが劇中に描写される夫婦の関係も妙に冷たく感じて、これなら二人で居ても孤独だろうな・・。と感じた次第。笑
満足度★★★★
いっぱい笑った!
公演は二部構成。第一部はまさにワタクシのツボど真ん中!
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
第一部は全体的に緩いパロディもので、化粧の濃すぎるドギツイ知世ちゃん人形は髪が自然に伸びてしまうという日本人形でとことん妖しく、しかし怖い。笑
一方で菊地かおり扮するマヤ吉が人間離れした絶妙な演技力で魅せた。舞台に登場した瞬間から一種独特のマッチョなボディながら、気持ち悪いほど似合わないヅラを被り、これまた更に気持ち悪いほどマッチしないワンピースを着ちゃってガニで歩く姿はなんとも想像を絶っし、殆ど猛獣が服を着てるようなもの。
しかしワタクシはこの人間離れした猛獣がとことん気に入って目で追って見ていると意外にも目の動きや表情で小細工しながら演じてるから、いやはや素晴らしい俳優なのでした。
涙が出るほど笑ってなんとも楽しいひと時だった。
第二部。
ここでのヒットは松之木天辺の「歌劇場2」だ。パンストを履いたミニスカOLが織り成すOL生活はまさにアニメの世界感。ご主人様は気持ちよく歌い踊っているのに、パンストはずりずりといつしかご主人様の意思とは反対に股からずり落ちて、まさに河童の水かきのような股!ワタクシは凝視しながら笑い転げるも、そんな楽しい舞台も終わりはあるもので、松之木天辺は男肩で風切って、去っていったのでした。
来年も必ず観たい。実に楽しい学芸会だった。ブラボー!!
満足度★★★
まだまだ未熟!
物語がしごく単純。しかも過去に何度ともなく上演されたような内容で描写も古い。ここまで書いてしまうと、んじゃ、いいとこないじゃん。と思われがちだが、女性陣の格闘シーンは男性達にひけをとらない素晴らしさ!この場面は圧倒された。しかし、それだけ。
ネタバレBOX
ストーリーは女性の住む櫻の国と男性ばかりの住む海源国のお話。両国は戦いに明け暮れていたが、櫻の国のコハクと海源国の大河が恋に落ちる。もうこの時点で、もしやこの舞台の物語は古いんじゃないだろうか?なんて察してしまった。
恋に落ちた二人は両者の戦いを阻止するべく翻弄するも、それが仇となって大河は櫻の国の戦士らに殺されてしまう。と、ヒロインのコハクはマイナス思考満点で死ぬことやその場から離れることしか考えていない。この時点でヒロインが立ち上がって何かしらの意思を持って行動したなら、この古臭いストーリーも新しい世界になっただろうに・・。と考えてしまう。
コハクが逃げた場所は「光の国」という富に恵まれ優雅に生きる美女の国だった。反対に「ナガクレ国」という貧しいけれど支えあって生きる民らの国。これらの国を見てコハクは少しずつ見えてなかった世の中の情景をみることになるのだが、導入として、いちいち映像で説明のように映し出される風景があまりにも幼稚。この映像シーンは舞台で表現できるだろうに・・とも思う。また舞台では今まで動いていたキャストらが静止するシーンも多く、これらの演出も無駄が多かった。
キャストらを生かしきれてないのも残念な気がしたし、「まつこ」のキャラクターをもっといじってコミカルに仕立てたほうがもっと楽しめたものを・・とも思った。
次回に期待したい。
満足度★★★
クラシカル感溢れる笑い
レイ・クーニーの作品の殆どが、ふとしたきっかけから正気を狂わせ、秘密を隠し通そうとしたあげく、ウソを、エスカレートさせてゆくドタバタ・スラップスティック・コメディだ。しかし、レイの笑劇ほど年齢に左右される笑いはないと個人的には思っている。要するに彼の本はある一定の年齢以上にはウケるけれど、それ以下の年齢にはウケないと考えている。
ネタバレBOX
相変わらずベタで解りやすい本だ。しかし笑いの本質は斬新さはなくレトロ感溢れるな悪戦苦闘劇だ。昭和初期の漫才みたいな笑いと言えばお分かりだろうか?実際に、その時代の漫才は観たことがないのだが。笑)
平凡で、気の弱い男ヘンリー・パーキンズはスーツケースを間違えて持ち帰ってしまったが、その中には信じられないくらいの大枚が入っていた。これをせしめようと企て、妻ジーンと一緒にアジアに逃げようとするも肝心のジーンは腰が引けてしまう。
そんな状況の中、友人は訪ねてくるは、警官は来るはで、ヘンリーは嘘の上に嘘を重ね、更に重なった嘘に上塗りをしてどんどんエスカレートしてしまう。これでもかと膨らんでしまった嘘は終盤に破裂して、結局薬局、ヘンリーは警官に大金を返し、真実を告白するのだが、こういった終盤にスタート地点に戻させる物語の構成はやはりレイ・クーニーらしい手法だ。
さて、問題のコメディだが、ワタクシはあまり笑えなかったことを告白しよう。笑いに対する感性が元々、個人差はあるものの、やはり彼の笑劇は言葉のセンスの上でも古い気がするのだ。昨今の小劇団らの上演するコメディは怒涛の勢いで斬新なセリフやシュールな言葉遊び、また現代的なコミカルさも兼ね備えたスピード感溢れる舞台が多い。流行り言葉も半年も過ぎれば、古い!なんて言われる時代だ。特にコメディは時間の流れが速いような気がするのだが・・。
満足度★★★★
面白い!
初見の劇団だったが3部作からなる物語の構成とそれぞれの一部の中にはめ込んだエピソードの表現がお見事。登場人物のやることなすことアニメ的なのはキャラクターの立ち上がりが既にコメディなのだ。笑
ネタバレBOX
2012年、香は大学1年生だ。勘違いな恋もするごくごく普通の女の子だったが、香はタオルを手放せない。緊張すると両手に溢れんばかりの異常な汗をかくという特異体質なのだった。
時は2007年、香が中学二年生だった冬に時間軸は戻り、香の通う塾での一幕になる。講師や同級生、高校生らも加わりジョンレノン似の目黒先生への「秘めた恋」ならぬ堂々と塾生がコクるという場面だが、次第に目黒先生の痴漢疑惑が浮上する。その際、香の母親がとった厚顔な態度・・傲然たる自信、満々とした自負、キッと首をもたげた軍鶏のような闘志・・ずいぶんたくさんの根深くてしぶといものが込められているらしい物言いに香は唖然とし、更に恥ずかしい思いもし、深く傷ついたのだった。
塾に押しかけてきた母親と香の対峙は、香が持つ思春期特有の恥という感情を逆なでし、また、大人になりかける前の語彙が乏しく未熟な香を自分の母親に傷つけられた格好になっていた。
やがて2009年正月、引きこもりになっていた中学3年生の香にちょっとした騒動が訪れる。ペットがいなくなったとブリーダーが騒ぎだし、それに乗った商売としてペット探偵なるものも現れる。この騒動で香は引きこもっていられない状況になり、また、このペット逃がし事件の犯人を香は母親がやったと嘘をついてしまう。2007年のあの時から母親に対し燻っていた負の感情が頭をもたげてしまった瞬間だった。大抵の母親が娘に対してなかば強引に事を仕切るのは万国共通だと思うが、母親の過剰な愛情や強引さは時として度が過ぎて迷惑をかけられることも多いのである。
香のかく異常な汗に異常なほど心配する母親。しかしそんな母親にも恋人が登場する。母と娘の関係とその家族らはこのまま突っ走るのかと思いきや、母親はこの少し先に死ぬ運命にあったのだ。母が死んでから香は激しく後悔する。当時、母親に濡れ衣をきせたままで逝かれてしまったのだ。その後悔を自分の中で消化する為に香は2012年から2007年に戻り、当時の香(過去の自分)に会って、母親に「ごめんね」と謝りたい一心で交錯させた物語だった。
場面場面のフザケタコメディやあざとい会話も中々楽しかった。芝居の内容とフライヤーがあまりにもかけ離れていて、損してるような気がする。もうちょっとフライヤーは考慮したほうが良さそう。芝居の内容は好みだった。
満足度★★★★★
なんすか、この可笑しさ!
何が面白いって、キャストらのトボケタ表情だ。こんな緩いコメディは観劇生活始って以来かもしれない。
ネタバレBOX
とにかく不思議というか、上から聞こえる外人バリのたどたどしい日本語の指令が降りるのも新しい試み。
主役は木村君。こいつが日給1000円で働いている人材派遣会社での人間関係や、ある日、呆けた老人が木村君の家に迷い込んで共同生活を始めた情景を描写する。
木村君は毎日ピエロになって子供達に風船などを配っていたが、彼の人生はただただ、それだけで、何の色付きもなかった。生きてることに不満も、また満足もしていなかった木村君はある日、特養老人ホームを飛び出してしまったおばあさんに会う。
彼女と木村君は仲良しになって、木村君は彼女を自宅に招きいれ、彼女の面倒を見ながら生活することになる。木村君は冷たく無機質だった家で、おばあさんが待っていてくれる、という生活はなんだか、ほっこりと温かな甘水で満たされるような気がして、木村君自身を豊にするのだった。
おばあさん役のキャストの表情がいい。この物語の素敵なところは木村君と一緒に暮らすおばあさんという設定が美しい童話となって、私達観劇者の気持ちまでも温かくさせる癒し効果もある。抜群だ。更にシュールで不思議なコミカルさも絶妙に加味され、これらは日本的な湿った世界感ではなく、そう、ぐりとぐら、あるいは、いわむらかずおの「14ひき」シリーズを彷彿させる爽快感だ。
観て良かったと、つくづく思う。
もし、少しでも時間があったなら、お勧めの作品だ。
満足度★★★★
いやはや面白い!
今回の物語はギリシア神話の中でも、最大の悲劇、肉親の愛憎劇なのだが、ゼウスの子がタルタロス。そのまた子がペロプス。神々の知力を試すために、タンタロスは子のペロプスを殺して料理し、神々に供したといわれており、ペロプスからアガメムノンに至るタンタロスの子孫がタンタリダイと呼ばれ、今回はこの子孫のお話だった。
ネタバレBOX
ギリシャ神話を話しだすともう面白すぎて止まらないという、我を忘れてしまう質なのだが(笑)、物語はアガメムノンが敵地に戦争を仕掛けに行っている留守を預かる妻の出来事から、トロイア戦争まで、また、この時代の預言者のポジションなどを含め、アガメムノンが妻に殺され、今度はその妻の子らが父の敵を討つために奔走するまでを実に巧みに表現していた。
戦争に勝つとのろしを上げて合図する情景やまた、敵地に行くまでの大海原を航海する様子をナビ役が説明を付け加えていく手法で解りやすかったと思う。
また舞台に登場人物の相関図が加筆されており、その点も親切だった。出来たら、簡単でいいからアルゴスの場所を示した地図もあったら更に壮大な夢物語の引き水を与えた結果にはなったと思う。
全体的に解りやすく物語りに溶け込め、しばしのギリシャ神話に酔いしれた。
満足度★★★
あれ?
初日だったからなのか、練れてなかったのかは解らないが、全体的に硬かったような気が。また、この日の日替わりでゲストは上野 友之(劇団競泳水着)だった。アフタートークではなく、劇中に乱入しちゃうものだから、劇が中断し殺がれてしまう欠点がある。観客にもよるが、ワタクシは中断されるのは好まないほうなので・・。
キャストらもアドリブ慣れしていないせいか、混乱した状況で、その混乱ぶりが流れの中で面白い方向に向いてくれるなら成功だったのだろうけれど、素で黙り込んでしまうキャストらも居て、トーク自体が成り立っていない。だから役者陣とゲストとの演技バトルには到底なってなかった。ちょっと残念だった。音響は素晴らしくグッド!
ネタバレBOX
物語は想像妊娠で入院してるチンピラが本当に悪魔を生んでしまう。出てきた悪魔はまるで劇団鹿殺しの「ベルゼブブ兄弟」みたいな悪魔。笑) そんでもって彼の母親ってのが小玉扮するセリーヌディオンヌ魔姫、つまり魔界の女王のわけだけれど、これまたぶったまげた衣装とメイクで目も血走っちゃってる。笑
悪魔は後に王となるが、露木という悪魔の僕らは魔笛を鳴らして登場するかのごとくインパクトありまくりで演技共々絶妙だった。元来、こういった大げさなありもしないばかげた設定が大好きなワタクシは序盤、乗りのりで観ていたわけだ。
悪魔たちはチンピラの赤井出に七つの大罪、つまり、強欲・傲慢・嫉妬・色欲・怠慢・憤怒・暴食を犯させなければならないという試練を持っていたので、赤井出にこれらを経験させるように仕組むのだが、意外にあっさりとクリアしてしまう場面の本は薄っぺらだった。
ええ~!?☆、そんなに簡単でいいの?って感じ。
序盤、赤井出夫婦の関係が冷めた関係かと思っていたら、終盤で夫の身代わりとなって妻が弾丸の盾となり死んでしまうも、夫が最後の一つの願い事を叶えてもらう場面では、時間を戻して妻を生き返らせる設定だった。なんだか聖夜に相応しい温かみのある場面だったように思う。
聖夜というとマッチ売りの少女をいつも思い浮かべてしまうワタクシは、悪魔が生まれる物語はマッチを擦った時の仄暗い夢の出来事だと想像したい。この芝居には実は物語が2つあって入院中のチンピラの現実と、チンピラが見る仮想現実の世界が同時進行で語られる。
この特徴はいわゆる舞台内舞台、入れ子構造を取り入れているところだが、終盤でこの構造を夢物語と称して終わらせるもチンピラには黒くて野太いへその緒が残っていたお茶目な終わり方はやはり面白い。
全体的にはちょっと硬く、本も今までと比較すると笑いの部分がダウンしたような気もする。まあ、好みの問題だけれど・・。これからの後半はもっと練れて良くなるだろうとは思う。
満足度★★★
なっちー、健在!
会場は男だらけ。しかもなんだか独特な臭い漂う。笑
前列から7列目までは女は入る余地もなく、そこはかとなく聖地を思わせる陣取りかた。戦国武将かっ、おのれは!苦笑!
彼らは体内から湧き出る夜光虫のような一種、独特の光を放ち、内なる光を貯めすぎて全体から怪しい光を発してるものだから、団体では青い炎となって上空まで立ち上っている妖炎をお気づきだろうか・・。
ネタバレBOX
物語は安部ナツミの夫である若手政治家が死んじゃったことから始る。ナツミは悲しみにくれる間もなく、弔い選挙の打診がくるが、これに乗り気になったのは、なんと死んじゃった夫だったのだ。
彼は幽霊になってナツミの元に現われるが、夫の姿はナツミ以外には見えないというからくりだから、もう、既にコメディなわけよね。しかもなっちーったら、幽霊にも話しかけるわ、生きてる人間にも話しかけるわで、とんちんかんなボケかましちゃってる。笑
しかーし、幽霊の夫がなっちーにあれやこれやと陰ながら、ってか、幽霊ながら力になって、とうとう総理大臣にまでなっちゃったサクセスストーリー。あまりのサクセスぶりに、ワタクシ、椅子に座ったまま仰け反って、物凄く仰け反って反転しそうだったけれど、舞台では暗転後、夫の願いが叶ったことで、夫は消えて居なくなり、なっちーの泣くヒロインぶりにワタクシももらい泣きしちゃったよ。
「かつての街にも学校にも親切で温かい思いやりが沢山あって、みんなが幸せに生きていた。」というセリフや、「見ててよゆうちゃん(夫)、最高の総理大臣を演じてみせるから」の終わり方は絶妙ですっきりした。
幕後、夜光虫らが一斉に手が千切れんばかりに拍手を贈っていた姿をなっちーは分かっているのだろうか?もしかしたら、叩き過ぎて血が滲んでいた輩もいたかもしれない。そんな彼らの気持ちを察して再々度、舞台に登場して欲しかったのだが・・。
個人的には保田圭の演技に拍手!パチパチ・・