第46回関東高等学校演劇研究大会 公演情報 関東高等学校演劇協議会「第46回関東高等学校演劇研究大会」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    清泉女学院高等学校「モンタージュ~はじまりの記憶~」
    モンタージュはわりに高校演劇では取り上げられやすい芝居だ。
    ある日、2人の老女が会話をしている。片方の老女は昔の思い出を楽しげに語っていた。しかし、もう片方の老女は語られる思い出すべてを覚えていなかった。それどころか、何を思い出しても嘘のように思えてしまうと言って・・・。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    三人芝居。
    舞台の始まりは椅子に腰掛けた老女2人のシーンから。
    二人の老婆っぷりがいい。
    老女1は老女2に昔の記憶を話しかけるところから物語は始まるが、自分たちが住んでいた細い裏路地のパン屋の話は実におとめちっく。そのパン屋は狭い路地をカニ歩きでメロンパンを抱えながら入っていく。そんな歩き方をしないと狭い路地に入ることが出来ないからだ。メロンパンの入った箱を両手で持って顎で押さえながら入ると、パン屋は自分の周りにメロンパンを20個置いただけのちっさなパン屋だった。

    狭い路地でパンを売っているけれど誰も気がつかない。
    この話を老女1は老女2に「先に私が貴女に教えたのに他のみんなに自分が見つけたみたいな話をしたでしょ?どうして貴女はいつもそんななのよ。昔っから貴女はそうだったわね?」と、かつての少女だった頃の回想シーンに移る。

    その回想シーンではお互いの写真のこと、缶けりをして遊んだ記憶、少年と少女の淡い恋物語、お互いの家族のことなどを子供のようにお互いをいぢりながら描写していく。この二人の関係がいい。

    少年と少女の恋物語では老女2は少年を好きだったのに、少年の気持ちに正直に答えられなかった記憶が蘇る。老女2は自分の気持ちとは反対に少年に『老人になったらここで逢いましょう。』と約束してしまった自分がいた。「何故あのとき、少年を好きだって言えなかったのだろう。ずっと後悔してた。いつも片意地張って素直になれない。そんな自分が嫌で嫌で、嫌なことはすべて嘘にしてしまいたかった。すべてを嘘にしてしまったら、そうしたら、自分が何処にも居ないんじゃないか?って思ったの。」と老女1に告白する。

    そうして場面は最初のシーンに伏線を繋げ、お互いに老女たちは「貴女が必要なの。」とちっさい頃から友達でいた事に感謝する。そうして記憶を失ったこのように思えた老女2はかつて埋めた写真を掘り起こして、最初のお互いにお互いを楽しくいぢり合うシーンに戻る。

    今回は演出が見事だった。終盤のシーンでは美しい影絵をみてるかのよう。老女独特の持つ風景や世界観を上手に描写し、また、過去に遡っての少女たちのシーンが素敵だった。

    強いていうなら舞台があんなに広いのだから、老婆の立ち居地は中央が良いのだが、客席から観て右端に殆ど居たことが残念だった。彼女らの左に大きく空いた空間は更に広い空間となって客席から観てインパクトに欠けたように思う。

    それでもお互いを楽しくいぢり合う姿はほのぼのとした空気感を演出しながらも笑いどころもあり、セリフのセンスも良かった。

    演出と照明のタッグが素晴らしい。

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    2011/01/09 21:46

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