なしかの観てきた!クチコミ一覧

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insider

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風琴工房

Half Moon Hall(東京都)

2016/07/21 (木) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

hedge続編だが本編に補完あり
・2013年のhedgeは観劇済み
・駅から劇場までの行程を、スマホ見ながら確認している姿はポケモンGOやってる人と思われるかもしれない
・遅刻しないほうがいい、トイレは男女共有、靴脱いで入場
・前作「hedge」のセットも良かったが、今回も劇場ホールの特色を生かした演出◎
・スーツ男子へ生着替えしてからの精悍な顔つきと態度
・音楽と映像のかっこよさ
・テレ東のWBSで特集されそうなビジネス演劇
・息抜きのような面白セリフもある硬軟入り乱れの上手さ
・ヘッジファンド→インサイダー取引、マチュリティパートナーズ、M&A、バイアウト、証券取引監視委員会、特別調査委、、、聞いたことはあるが口に出して言ったことはないセリフの多さにやや疲弊も感じたが次第に耳に馴染んでくる
・過去と現代場面の展開込みだが、金融業界の内情に疎くっても大丈夫だった
・裁判劇見ているようなセリフの応酬に引き込まれる
・いついかなる時でもお金は大事だね〜
・ようは今回も面白かった
・約100分

ネタバレBOX

加治さんの社会人としての幕引きには、やっぱそうなるしか方法はなかったのかなぁ…あの結末は辛かった。
BENT ベント

BENT ベント

パルコ・プロデュース

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/07/09 (土) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

苦渋の生き方と時代の運命
以前、PARCO劇場でスズカツ版を見たが、同性愛者を巡る環境もあの当時に比べるとかなり柔和になってると思うが時代背景はかなり違う(もしかしたら近づいているのかもしれない)が、今回の方がより重苦しくシンドく、迫害の中で愛する美学と残酷さに鬼気迫るものがあった。
照明は原田保さんか、納得の美しさ。

ネタバレBOX

収容後、右から左へ、左から右へと岩を運ぶ担当となったマックス。収監前の護送車で知り合ったホルストを作業場に呼び寄せ、単純作業に明け暮れる毎日。
彼らの前にはナチスの親衛隊、後ろには電流金網が包囲されてる中、立ち止まって話すことも出来ず、また自ら死ぬことも許されず。監視の目の届かない位置から、他愛のない会話から始まった好意。
直立不動で過ごす、つかの間の休憩からの愛情表現。未来を夢見て2人で生きる希望を持つも、そうならないのが非道な時代に生きる人々の運命というか。
つかの間の休憩時の会話の空模様に青空が見えたかと思えば、苦痛を伴うような時には2人の心情が表れているかのように、背景画も人が叫んでいるかのような、表情を含んだ風景に見えたり。

愛する人を目の前で見殺しにされたマックス、しかも2回も。静寂の中で、ホルストの収容所服を身にまとい、親衛隊のいる方向へ毅然とした表情で見つめる姿に、彼の決意の塊と運命がまた悲しくも思う。

主演の2人はもちろん良かったが、ほどほどに自分の性嗜好を楽しんでいるマックスの叔父フレディやゲイクラブ歌手のグレダ、最後のナチス将校?も冷徹っぷりも印象に残った。賛美するわけではないが、確かにあの軍服姿はサディスティックで格好いい。

人を愛する尊厳さに胸が苦しくなるような舞台だった。
オセロー

オセロー

華のん企画

あうるすぽっと(東京都)

2016/07/14 (木) ~ 2016/07/19 (火)公演終了

満足度★★★★

最終日観劇
運良く私用も片付き、時間が空いて観劇出来ることに。
こんな話だっけ?と思いつつ、うまく整理された戯曲セリフは数多いシェイクスピア舞台の中ではゆったりめに聞こえもしたが、上質で面白い。
クラップは少なめだった気が。
イアーゴの本音をココローが代弁、最後の高貴なオセローの愛の哀れさが際立つ。河内オセローの咆哮まで良かった。
ただイアーゴがオセロー(の年齢層)と並列と思うのだが、イアーゴが策士すぎる見た目なので、なんか解せぬ思いがつらつらと感じた。

殺人者J

殺人者J

TRASHMASTERS

駅前劇場(東京都)

2016/07/14 (木) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

breaking newsのような舞台
現代日本の社会事情が濃厚凝縮した話だった。今の日本で生活の糧をスムーズに得るのは、どこで仕事してどこで暮らすのが一番いいんだろう。硬直した思考から今回も考えまくり。

ともすれば仮想敵国が多い今の世界各国、緩やかにやってくる畏怖が植え付けられてる身の回りの時勢、その倫理感の語弊からくる衝突に遭遇しやすい昨今、それらの感覚を徹底的に打ちのめされるエンディングだった。
あの締め方、個人的には好み。

ネタバレBOX

終演後、中津留さんと劇団チョコレートケーキの作家古川さんとのアフタートークあり。
今回の戯曲は、海外で事業活躍している日本人が現地でテロ等に巻き込まれたら…(意訳)なことを書いていたそうだが、執筆中に、レストラン襲撃事件が発生し、現実とリンクするような展開が起きたため、大幅に改訂した模様。

アフタートークを聞いたから、というわけではないが、今作に限らず、今後も腹の底から「面白い!」と思えるような舞台がたくさん上演される日本の演劇界であってほしいかな。
「贋・四谷怪談」

「贋・四谷怪談」

椿組

花園神社(東京都)

2016/07/13 (水) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★★

上演2日目観劇。
移動中にゲリラ豪雨に遭遇し、傘は差してても無意味だったw。全ての手荷物、衣類に靴と全身びしょ濡れ状態で神社に到着し、拭いても乾ききれない状態で荷物を預かってもらう事もままならず、テンションダダ下がりの中、観劇する事に。

再演という事だが、初見。
一幕辺りまで雷雨など雨音が効果音にされたような観劇だったが、よく感電しないもんだな。書き下ろし?の劇中歌が岩の伊右衛門への愛と悲哀を際立たせる。
色悪ピカレスクな伊右衛門の華麗な殺陣からの自業自得な七転八倒ぶり。お岩様登場したあたりから次第に弱まる雨音、この手の演目につきもの歌舞伎調のセリフまわしというのか、独特の言い回しになりやすいが、松本お岩さんは緩急のついた女性特有の一声二眼な言い回し、怨霊姿の緊迫場面からは、歌舞伎座だったら「高麗屋!」と大向こうかけられているかもしれない。

話の改変は特にないので、四谷怪談をざっくりとしか知らない人には初怪談狂言としてもってこいの演目。半径10km圏内で暮らしているんではないかと思うよな登場人物たち、知り合いに高確率で出会う話(違う)。
演出上、火攻めは規制が厳しくなっちゃたのか最近はあまり見られないが、他の公演と比べるわけではないが、この水攻めもなかなかの迫力。夏の芝居祭り、面白かった。
約2時間45分、休憩約10分あり。

ネタバレBOX

怨霊化した後に、着付けが左前の姿になっていたのが徹底しててわかりやすかった。
観劇した日は生憎の梅雨空炸裂で、雨音にセリフが掻き消され聞き取りづらい箇所はあり、また幾人かは台詞の抑揚と聞きやすさにバラツキを感じたが、それは舞台経験としての差なのかな。

2列程の桟敷席に指定席、2階には幕見風席、花道もあって今回の設営も目を見張るが平場続きの舞台設計の為、桟敷席の臨場感は体験出来ても芝居を見るには座席の方が良いかも。
前方席は水攻めの演出効果によりタオル置いてあったが、ビニールシートを常備してた方が良い気がする。スカート姿は観劇不向き。荷物預かりがあったのかは不明。

また、個人的な意見。
毎回思うが、一般客としては終演後の乾杯云々の連絡より、上演時間や座席設定の状況を予め告知してほしいのだが。
野外で飲むビールは美味いが、日によっては寒暖の差がでる日もあると思う、個人嗜好で常温飲料を希望する客もいると思うのだが、そこらへんのニーズはわがままなのかな。
紙屋町さくらホテル

紙屋町さくらホテル

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2016/07/05 (火) ~ 2016/07/24 (日)公演終了

満足度★★★

初見
再再演らしいが、今回が初見。
井上氏とこまつ座を当時から支えてきた思われる年代の観客が多く見受けられた。
実在した櫻隊に絡め、歌を交え芝居を作るが、次第に戦争の責任や功罪などが浮かび上がってくる。ホテル関係者とその利用者がみな善人、というか真っ当な人々の中にあって、唯一ヒールな役割である針生がその中で馴染む過程も面白い。
割と単調な一幕より、二幕めからの某歌劇団の例えに笑って見ていられるも多少ドタバタ感が強めに出ていたような。
尻切れになってしまう合唱場面に、戦争と人にまつわる惨状は訴えるより伝えていくのが生きる者の務めなのではないかなと思ったり。

母と惑星について、および自転する女たちの記録

母と惑星について、および自転する女たちの記録

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2016/07/07 (木) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

現在のパルコ劇場では最後の観劇。
仕事終わりで観劇のため、移動には電車を利用しているが、観劇当日は電車の運転見合わせにより遅刻するハメに。
そのため、冒頭シーンを見逃すが、終わってみれば深イイ話で良い舞台でした。
背景幕や照明使いに蓬莱さんは脚本だけで、演出は別のかたとすぐにわかってしまうw。
舞台は長崎ということもあり、地方都市の一角で生きている、血縁が女だけの母子家庭。ややネグレクト気味な母でも、それなりに育つ三人姉妹、かつて新国立劇場で上演された「渋谷版まほろば」といった趣きにも感じ取れた。

8月には閉館になってしまうパルコ劇場に、退場時場内をぐるっと見渡したが良い劇場だったんだなぁ、と改めて感じた。欲を言えば終演後も劇場内の余韻にもう少し浸ってみたかった。
たくさんの面白い舞台をありがとうございました。

ネタバレBOX

3人の娘を自分がどこかに飛んでいかないようにしている「重し」と自覚している母。娘たちからは、好き放題に勝手に生きているように見える母。自分の店のバーを一人で経営し、生計を立ててはいるが、酒、パチンコ、麻雀と遊興から男までと、手広く過ごしながら自宅では老母の介護もしている。
現代パートと一家が暮らしていた当時の各々の回想場面が入れ子になっているが、どこもあんな風にされちゃぁ娘だってそう思うわな、と思わされるようことを母は平気にやっているが、その小さな積み重ねが彼女たちのトラウマになるとは母は思っていなかったんだろう。
思春期の成長した娘に対して、薄情な態度をとったかと思えば、「泣くな!」と叱責したり、当時高校生の長女には「好きな男のとこに行きまーす。明後日、出て行きまーす」と能天気に宣言し「だから明日からは、おばあちゃんと妹たちの面倒を見てね♡」と無茶ぶりするわ、連日酔っ払って帰宅し介抱させた挙句、父親が違うとこぼし、三女に対しては「好かん」発言。
自由奔放さ満ち溢れ、時折見せるきつい女、緩い女の顔など、こんな母親でも女の姿で接せられるところに男は惚れるんだろうか、などとぐるぐる考えたりし、愛しくも見えるが実際に遭遇するとこんな女性にはなれない!と多少のやっかみも生じ、反面教師的に彼女を見ていたが。あの3人の姉妹だったら自分はどこの立ち位置になるのかなぁ。当時の母親から受けた行為は精神的苦痛の日々というか、恩恵には感じないよなー、やっぱり時が経ってそれなりに自分たちの経験も加わり、言葉を重ねなくても母親の考えを受け入れられるようになるんだろう。あの母親は姉妹の姿を見ながら母親であっても女のパーセンテージが大きい生き方な人生だったんだなぁ、などと思いつつ、そんな母親の掌の上で彼女たちは育ったんだな。
思い出の歌謡曲の歌詞の一節から、その場へ連れて行ってくれる娘たちも彼女の娘であり、やっぱり情があって優しい。
桜 散ラズ…

桜 散ラズ…

劇団AUN

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2016/06/22 (水) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★

つながる
市村脚本の第三作め。
酒、鉄道、今度は桜。働き盛りの男性が見たら号泣したくなるポイントてんこ盛り、結果、二幕めからはハンカチ大活躍だった。
鋼太郎さんと明夫さんの場面の凄さよ。
とかく過去は美化しやすい、が不変的なニッポンの人々のお話。
休憩15分あり、約165分。

郵便屋さんちょっと2016

郵便屋さんちょっと2016

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2016/06/23 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

戯曲も読んでみたいが…
つか×扉座第2弾。つかこうへい七回忌にあたる為か、至る所でつか作品の舞台上演はあるが老舗劇団の安定性と戯曲のどこを改訂したかわからない時事ネタ絡めた現代版のつか版新作舞台だった。クライマックスに至るまで徹底したつかイズムに嬉し懐かしでついつい涙が出てしまった。
第1弾はチャイコフスキーで滾らせ、第2弾は一貫したタキシード姿の山中崇史SP。自分の座席からは冒頭の大音量SEに若手役者さんのセリフが聞き取れない部分はあったけど、すぐにそんなことも忘れてしまうセリフの連続と場面についニヤニヤしてしまう。
「郵便屋さん〜」は初見の為、どうやって幕引くんだろな?と思いつつ、辞令を手渡すシーンから盾持った機動隊との格闘に、見ていてカタルシスを味わうような懐かしさ。
ジョンと田所が2人並びセリフの掛け合いをする劇団同期姿にも胸熱。

つか正本や原作戯曲も読んでみたかったが、ロビー物販は扉座関連グッズのみ。版権の関係からかな?
いろいろな関係で多分映像化は難しいと思うので、興味ある人は見に行ったら良いさ〜。約130分。

ネタバレBOX

個人的な印象として、生前時は高橋春男氏や和田誠氏が描くような顔しか思い浮かばないんだが、巨人が好きでバカとブスが嫌いで前向きサディスティックでマゾ体質ぽいという印象をずっと抱いていたんだが、今回の舞台をみたら、出生や国籍とか、とかくそっちに言いたがるマスコミに悪態ついてそうな、つか舞台そのものでした。劇場を出れば選挙演説真っ最中、今後もこの手の演劇が上演出来る世の中であればいいな、と。
天一坊十六番

天一坊十六番

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/20 (月)公演終了

満足度★★★

「僕の使徒行録」というサブタイトル付き
もともとは青年座こけら落とし公演作「天一坊七十番」というタイトルだったらしい。作者の矢代氏が「再々、再々演されたらその年の数字を記そうと考え」その流れで今回が「十六番」となった模様。

その当時の戯曲をそのまま(多分)改訂せず、上演しているので「昭和」という下地を感じながら見ていたが、2016年の現代には、初演当時の劇中の「首相」や「て」の人の昭和の人物をすぐには想像できず、上演当時の世俗をイマイチ把握出来ていなかったため、そのセリフにいささか戸惑った。
ジャズのような生演奏に、コンドルズ風味のキレがあって賑わいあるの狂乱のような祝祭のようなオープニングダンス、コロスにあたるそのメンバーに山野さんがいることにもまたびっくり。
とはいえ、劇中劇に黒電話が出てきたり捩り鉢巻き姿の女性や70年代前後のヒッピー風にも見える衣装などで、なんか変な話で面白いなとは思ったが、最終的に小骨のような不条理感も残り、70年代の摩訶不思議古典劇を見た感じ。

終演後、公演プログラムを読んでサブタイトルがあったことを知る。それだけでネタバレになるとは思えないが、チケットにでもあらかじめ記載していた方が良かったのではないかな。

ネタバレBOX

現代パートで作家が講談や歌舞伎題材の「天一坊事件」をベースに戯曲を執筆してて、そのお話が『八代将軍吉宗の御落胤と称する天一坊がインコから教わったという「私たち人間は、あと一年足らずでみんな死ぬ」という啓示を説いて回り、江戸の民衆をも巻き込んで〜』と史実とは若干異なっている展開。が、やっているうちに現代の劇団員は、いつしか江戸の住人になったと思ったら、稽古途中の現代へと戻ったりと、慌ただしい。

現実世界の場面では、劇団員?が執筆中の作家に対し不平不満を漏らすも、作家はこの天一坊にはモデルとなる人物がいる、それはイワン・イワノヴィッチという日本で一番偉い人の御落胤、つまり「て」のつく名前の人の隠し子で、天一坊の台詞はほぼイワノヴィッチの言葉」だと言い切り、劇団員を驚かせる。

ここらへんから、天一坊とイワノヴィッチが一緒くたになり始めるけど次第に達観してくる天一坊の行動がキリストのようにも見えてくる不思議。戯曲書いた矢代氏がクリスチャンということもあり、キリストに重ね合わせたのかな、と、ほかの登場人物もペテロやマグダラのマリアやマルタにあてはめたら、そう思えてきた。
インコの予言以後、民衆に崇め奉られたのに、事情を知った大岡越前からキチガイ呼ばわりされて、憑き物が落ちたように元に戻るが、近しい人々には不平不満罵詈雑言を言いまくり、最後の晩餐よろしく狂乱の場から、忽然と居なくなり終わる。
幕切れは鮮やか。傍らで作家はウトウトとしながら眠りから覚める、頭上からインコ?鳥の羽が落ちてくる。最後まで姿を見せなかったイワノヴィッチに、全ては作家の頭の中で思い描いた単なる夢オチだったのだろうか。
登場人物が勢ぞろいし、歌舞伎場面よろしく見栄を切る姿はかっこよかた。

最近キリスト教にまつわる舞台を立て続けに見ていたので、多少の知識は持ってはいたが、初見だったらすぐには理解できなかったと思う。
終演後、公演パンフレットを読んで舞台の内容を補完したが、どこか小骨がひっかかているような詰まりもあって、せめて現代版の部分を平成の時代にしていれば、違った感想もあったかも。
コペンハーゲン

コペンハーゲン

シス・カンパニー

シアタートラム(東京都)

2016/06/04 (土) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★

学術ミステリー
ナチスドイツ占領下の時代、かつて師弟関係だった2人の男、住む国や立場が変化するも、生きながられてきたのは豊富な知識量と咄嗟の機転で難を逃れていたんだろうか。2人の会話を立会人のように聞いている妻。
専門的な用語で膨大なセリフに圧倒されるが「シュレーディンガーの猫」が用いられたように幾つかの仮定が示される。物理、原理、数学、宇宙、と科学者たちの多様な思考解釈から祖国、民族、倫理の葛藤など、この3人もどこかの仮定に救いを求めたかったのかも。
被爆国の人間だから、なぜそうなったのか、などと答えを知りたいわけではない。科学者としての真摯な探究心が国の思惑に左右された虚無のようなものを感じた。
コペンハーゲン繋がりからか、チラシ絵のヴェルヘルム・ハンマースホイの絵が示すように寂寥感ある舞台セット。そういえば、ハンマースホイの描く世界も妻や親しい個人を描いているくらいで、人物や風景は排除ものが多くあるし、タイトルで色々と想起させる部分があり、その辺りはこの舞台と似ているのかも。

それにしても、「NOISES OFF/ノイゼス オフ」の戯曲を書いた人と同一人物とはとても思えない。クールだな。

ネタバレBOX

登場人物の3人とも死者としての立場で語り出すが、1941年を基盤に時代を遡ったりと場面の変化はあるが、髪型や衣装、口調やセットが変わるとかなく、特にメリハリない見せ方だったので、これ若い頃の話?いつの時代?と少し戸惑った。
また、科学者2人の風貌などの立ち位置から見える関係性はわかるが、そこに妻マルグレーテが加わると、ボーアの後妻のように見え、そこだけ違和感があった。
あわれ彼女は娼婦

あわれ彼女は娼婦

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/26 (日)公演終了

満足度★★★

光と影と盆舞台の栗山演出
どっからどう見ても栗山印の舞台でした。
コクーン版のキャストより今回のキャストが好み。

2幕目からはほぼヴァスケス隠れ主役のような存在だったが、それにしてもこんなに非道な話だったけ?最後の場面はステージから離れていたので、さほど視覚の刺激さは低かったのでまだ良かったが。

ネタバレBOX

口は災いの元とはいえ、何もそこまでされんでも…って言いたくなる役柄の多いこと。多様な欲望まみれから「死して屍拾う者なし」の言葉を思い出すエンディング。

暗闇の中から憎悪の感情が見え隠れした横田ヴァスケスと、婚礼の祝祭の輪の中での浦井ジョバンニや、召使いポジオの主を失った悲しみが溢れてた佐藤さん、枢機卿登場シーンの中嶋さんのボスキャラぷりに緊張。
根底は兄妹のきょうだい愛からくる話だけど、序盤は男女の愛というより肉親の情が変化している愛のような可愛さに見えた。妊娠してから男女のカップルに見えるかな、と思ったが、そこだけは最後まで男女の恋仲に見えず。
 
赤と黒が映えた十字架のような照明使いが、人々を綺麗に映し出し見栄えがあった。
尺には尺を

尺には尺を

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2016/05/25 (水) ~ 2016/06/11 (土)公演終了

満足度★★★★

めでたしめでたし
ヴィン公爵が発揮する大岡裁き不条理喜劇、この作品の萬長さんは扇の要部分の位置付けでMVP級の活躍だと思う。

話と登場人物が若干無節操なご都合型の展開に思えたりもし、どこかしらまとまりの悪さは感じた。時事ネタに通じるようなことも絡めつつ、台詞の一文に「死には死を〜尺には尺を以て報いるのだ」と出てくるあたり、先日見た文学座の「なにいけ〜私たち」の聖書の場面を思い出したが、もともとメインの人物で修道女がでてくるし、キリストの教えに由来している作品だったのかと後に気づく。旧約も新約も聖書に馴染みないので、理解するのに時間がかかる残念脳。
詩的な台詞が飛び交う中、公爵の「類には〜」あたり「俺の物は俺の物、お前の物は俺の物」というジャイアンの名台詞も被って聞こえてきそうだった。どうもすみません。

観客を笑わせることが優先されそうな場面ではまだバカになりきれない真面目さが見える役者さんに、アンジェロとクローディオの配役は逆が良かったんではないかな、と思った。

ネタバレBOX

蜷川舞台常連俳優さんはもちろん手堅く良かったけど、多部さんやネクストの1期生に当たる若手役者さんたちの活躍ぶり、良かった。彼はここでも脱がされるのかw
多部さんは「サロメ」や「キレイ」の時に、アクの強い作品も出来る女優さんとは思っていたけど、シェイクスピアのような古典作品も出来るとは。蜷川演出の他のシェイクスピア舞台を見てみたかったが…。
最終的に大団円でまとめたが、カーテンコールでは蜷川幸雄氏の遺影が舞台上に登場し、ああ、本当にいないんだと喪失感を自覚、「蜷川幸雄」の存在の大きさが際立った舞台でもありました。
埒もなく汚れなく

埒もなく汚れなく

オフィスコットーネ

シアター711(東京都)

2016/06/01 (水) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

2作しか見ていないが
遺作となった「山の声」は2年前にコットーネ版で観劇済み。
2年前「山の声」
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=253155#divulge
金銭的な苦労はあったとはいえ、仕事と創作を同時に出来たのは大竹野さんの人徳ゆえのことなのだろう。
ただ「山の声」を全面的に出ていたので、その舞台を未見だと大竹野戯曲の雰囲気はやや掴めにくかったのでは、とも思った。
劇のためならちょっとだけ女房も泣かす浪花の夫婦の物語。

舞台自体は会話が主だったが、西尾さん演じる大竹野さんと、その妻 小寿枝さんの占部さんの大竹野夫婦、どちらもお上手なので話の展開に引き込まれた。柿丸さんのパラレルワールド的な役柄は幅広い意味で「柿丸プロ」という称号を与えたい。シリアス場面で一人で笑いの展開に持っていくのは流石でしたw。

難点を挙げるとすれば、冒頭からフルスロットルで関西弁セリフを発するので前方席だと少しやかましく聞こえ、また、宴会場の椅子みたいな座席に2時間以上座っているのも結構辛かった。
約130分。

ネタバレBOX

70年代の学生時代から6〜7年前のつい最近までが時代背景なので、彼らの活動歴と自分の観劇歴をつらつら考えたりして。お若い時にご結婚されたんだな、とびっくり。ま、いろんな考えと人生があるわな。

終盤の場面は「山の声」の劇中劇が一体化されたような大竹野さんの走馬燈を見ているようだった。
妻から時に出る叱咤は彼を理解した上での応援であり、表面的には出さないけど愛情表現でもあったんだろう。喪失した時間の中で自問自答する妻の姿は誰でも同じようなことを思うのでは。あの姿は彼女だけの特別な姿ではない。最後、その儚さに泣けた。

酒とタバコとパチンコと山、大竹野さんご自身の公演では舞台の終盤に歌謡曲だったか、陽気めな曲を流して幕を下ろしていたと記憶していたが、大竹野さんは主にどんな曲がお好みだったんだろうか。なんとなく70年代の邦楽がお好きなような気もするがその辺、少しだけ知りたかった気も。
何か いけないことを しましたでしょうか? と、いう私たちのハナシ。

何か いけないことを しましたでしょうか? と、いう私たちのハナシ。

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2016/06/03 (金) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

初日観劇
「イエスの方舟」がモチーフとあり、その当時は宗教のおじさんと女の人が集まって暮らしてワイドショーによく出ていたというぼんやりとした薄い記憶しかなかった。舞台の説明から内容的に少し重いことにも突っ込むのかな、と思っていたら少し印象が違ってた。
カトリックとも無縁な人生ということもあり、そっちの方も切り離して見てれば良かったのかな。

昭和の好景気に入る頃、東京オリンピックを控えた時代が舞台。
世間を騒がせるつもりは毛頭なかったのに、とあることで大衆の目に晒され袋叩きにあい、世間の目から逃れるように南九州の寂れた港町にやってきた女性たちの話。
盛り上がりそうでそうでもなく、前半の展開がやや淡々とのんびりしてたので、物語と信者の女性たちの世界に入り込めない食い違いの様な感覚もあり。個性的であるけどなんか地味だった。

それまですがっていた人は身体を崩し不在のまま。信じていたことがなし崩し的にひっくり返ったことの戸惑い、世の中や他者の考えがわからないまま、おっちゃんに畏敬と救いを求めながら、自分を信じることを貫く戦中戦後を生き抜こうとする女性達の疎外感と逞しさは感じた。
唱歌、童謡、歌謡曲と美声に聴き惚れる。文学座男優陣も声出演。
約125分。

ネタバレBOX

印象に残ったのは、春子さんと地元女性の小玉さんくらいかな。

姿は見せないおっちゃん先生の(声は中嶋しゅうさん)本妻だけど、果たしてこの言葉も適してなさそうな立場だけど、その春子さんは知らず知らずのうちに、みんなをひっぱる力強い性格に変わったんだろうなと思ったが、それに素直についていき働くことが生きる喜びに変わっていたんだろうなと感じたり。
地元女性の小玉さんの読んで聞いた上での聖書の内容ぶった切りに笑え、親切かつおおらかな人柄の良さ、感情を素直に発揮する姿は南九州の女性像そのもので似合ってた。
エンディングのゴスペル調で歌い踊る様は、和製「天使にラブソングを」みたいでカッコ良かったです。
勇気出してよ

勇気出してよ

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2016/05/20 (金) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

最終日観劇
町の小さな喫茶兼カフェスナックのような店舗で、宮崎が舞台とあって、かつて隣県に暮らしてきた者としては、多少の郷愁も生じ、宮崎の方言特有の牧歌的なやり取りにこそばゆさもあったりしながら見ていた。
県民性とも言える日向ボケ、と揶揄されそうな人達もいるけど、日本の日向(ひなた)宮崎の、そこで暮らす時間の流れがゆったり緩やか。劇的な変化が起こるわけではないが、ここに出てきた人物の各々の生き方と勇気の出し方は身近な誰かの姿を見ているような気にもなる。自分が男性でその目線で見れば、どこか鏡を見ているような気分になったかも。年齢的には大人なんだけど、大人は出てこない気がつけば中年に成ってる世代の人生模様。会話が途切れて「…」という間が空くが、そこらへんの描写もあるある、と物語の世界観に入り込め。
ほどほどの切なさと、じんわりした温もりと優しさを感じる舞台でした。約110分。

パーマ屋スミレ

パーマ屋スミレ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/05/17 (火) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★

アフタートークの日観劇
観劇済みの再演舞台はあまり見ないようにしているつもりだが、虹郎よりもムラジュン、その兄役が千葉さんが出演ならば再演でも見に行かねば、と思い立ちチケット確保。たまたま作家、劇場監督、出演者らによるアフタートークの日に観劇。初演の松重&石橋兄弟も良かったが、今回の千葉&ムラジュン兄弟もよろしかった。つーか、色気あり過ぎだよ、あの兄弟w
そして今回も物語自体が切なすぎて、泣きたいわけではないけど、その後の社会がわかるだけに気持ちの持って行き場に困った。
苦境の中で生きる鄭義信流の3人姉妹の物語であり人間賛歌。
同じネタふりを3回も見せられるのはクドくて好みではない。

KAKUSHINHAN POCKET HISTORY ヘンリー六世三部作

KAKUSHINHAN POCKET HISTORY ヘンリー六世三部作

Theatre Company カクシンハン/株式会社トゥービー

シアター風姿花伝(東京都)

2016/05/19 (木) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

まるで歌舞伎のような英国時代劇
各部約70分に凝縮し三部構成で役柄の様々でやり通す。前説からワクワクさせ、本編も肩肘張らずに楽しめ三部ともあっという間に終わってしまった。同時上演中のリチャードⅢ世に繋げる手法の〆方にについニヤリ。
今回も階段花道大活用、勢いある舞台でした。
それにしてもヘンリーの後に連日リチャードやって、あんなに体動かしてセリフ喋り捲っているのに、全員声が潰れていないのは凄い。

ネタバレBOX

ヘンリー見た後、リチャードを通して見たら、もっと舞台の印象は違っていたかもしれないが、順番通り見なくても面白かった。
王妃の公家のような京(みやこ)言葉の使い方が、国は違えど、いかにもそんな話し方しそうと思って笑えました。
悪名 The Badboys Return!

悪名 The Badboys Return!

ココロ・コーポレーション

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2016/05/09 (月) ~ 2016/05/29 (日)公演終了

満足度★★★★

義理と人情ならぬ任侠がまかりとる世話物舞台
短髪角刈頭と恰幅の良さを目にし、あれ?古ちん(古田新太氏)出てたっけ?と思ったのもつかの間「♪〜バッドボーイ〜♪」とステージから響く美声はあれ?ジュリー?とよく見たら沢田氏ご本人だった。自分の子供時代からの記憶のギャップに驚くも、そんなことはすぐに吹き飛ぶ悪漢退治と河内弁?関西弁のセリフを聞く心地よさ、出演者の余裕の殺陣を発揮しているベテラン芸でした。
70年代バンド曲調からバラード調、最終的に河内音頭と盛り沢山な昭和娯楽音楽劇。映画自体は未見だけど、舞台セットがシンプルな中、朝吉とお絹の言葉では言い表すことのできない表情のやりとり場面には、マキノさんのMOP時代の舞台を少しばかり彷彿。
脇を固める関西系出身の小劇場チームの男気とノリの良さを見ているのも楽しかった。和太鼓+ドラムとギターの挿入演奏もカッコよかった。
面白かったです。

ネタバレBOX

終戦後、帰還した朝吉が女房のお絹と再会する場面から始まるが、終戦後も戻ってこない朝吉を、お絹は朝吉が戦死したと思い、田舎で知り合った辰三と結婚していた。現状に納得した朝吉はお絹から離れる決心をする。辰三はお絹に金を借り賭場に入り浸り、その生活から抜け出たいと思ってはいるがそのうちヤクザと関わりを持つことになったり、かつて遊郭で一番だったお絹も生活に困窮するあまり現実逃避でヒロポンに手を出しちゃったり、と、どん底生活が続いている。巡り巡って、その情報を耳にした朝吉が彼らを救うべく身を呈して守り抜こうとするが…、という娯楽劇。
助けて助けられて退治して、善意を抜きにした義理人情の厚さに、最近の映画やドラマでは見られない任侠世界に、大衆演劇みたいなお芝居の世界を楽しみました。マダム達の熱狂の凄さにも感服。

あとは観劇中のスマホ点検とマナーモード鳴りっぱなしがなければもっとよかったんだがw。
アンコールの夜★ご来場ありがとうございました★

アンコールの夜★ご来場ありがとうございました★

KAKUTA

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/05/07 (土) ~ 2016/05/22 (日)公演終了

満足度★★★★

「男を読む。」最終日観劇
男性脳と女性脳の思考の違いが明確に出ていたような舞台。
リーディング力の上手さに聞き惚れ、疲れている時に見に行ったら、心地よい眠りを誘ってくれそう。
「井戸川さん〜」人間っていろんな一面を持ってるよね、って感じ。「天使〜」の東京の雑踏で起こった純愛模様がまさに男性思考だな、と思ったり。「昨日公園」はリーディングというより、舞台をまんま見ているようだった。ちょっと泣きそうになった。

挿入されるオリジナルストーリーは先に「女を読む。」を見ていたので、2人の結末はわかっているはずなのに、自然とその経緯を興味深く見ることに。関係を積み上げていくのは時間もかかるけど、それもまた楽しい。でもどこかでボタンのかけ違いが出てくると2人で直すより1人でやる方が簡単な場合もあるようで。気持ちの行ったり来たりが目に見えて分かれば苦労しないんだが、わからないのが人間というもの。
本を読むように、行間を見ていたようなオリジナルストーリーでした。

朗読順
桐野夏生「井戸川さんについて」
いしいしんじ「天使はジェット気流に乗って」
朱川湊人「昨日公園」

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