満足度★★★★
学術ミステリー
ナチスドイツ占領下の時代、かつて師弟関係だった2人の男、住む国や立場が変化するも、生きながられてきたのは豊富な知識量と咄嗟の機転で難を逃れていたんだろうか。2人の会話を立会人のように聞いている妻。
専門的な用語で膨大なセリフに圧倒されるが「シュレーディンガーの猫」が用いられたように幾つかの仮定が示される。物理、原理、数学、宇宙、と科学者たちの多様な思考解釈から祖国、民族、倫理の葛藤など、この3人もどこかの仮定に救いを求めたかったのかも。
被爆国の人間だから、なぜそうなったのか、などと答えを知りたいわけではない。科学者としての真摯な探究心が国の思惑に左右された虚無のようなものを感じた。
コペンハーゲン繋がりからか、チラシ絵のヴェルヘルム・ハンマースホイの絵が示すように寂寥感ある舞台セット。そういえば、ハンマースホイの描く世界も妻や親しい個人を描いているくらいで、人物や風景は排除ものが多くあるし、タイトルで色々と想起させる部分があり、その辺りはこの舞台と似ているのかも。
それにしても、「NOISES OFF/ノイゼス オフ」の戯曲を書いた人と同一人物とはとても思えない。クールだな。