第一次審査(ネット審査)結果発表!
地域別エントリー状況
審査のポイント
審査員がそれぞれに10作品を推薦し、1作品につき1票ずつ合計10票を投じました。票の入った作品について議論を重ね、10作品を決定しました。
応募条件が変わったことを受け、応募作品が再演される可能性を考慮に入れた審査となりました。
鈴木 | 「グランプリ受賞作の再演を支援する」という新コンセプトを踏まえ、応募書類ではまず「本公演の意気込み」、続いて「将来のビジョン」を重点的に読ませていただきました。審査のポイントは「文章力」。それぞれの問題意識や作風、企画の特長を、抽象的な理念に留まらず、自らの言葉で表現できているカンパニーに惹かれました。また、こりっち上に登録されている動画、過去公演のデータ等も参照しました。 今年は東京以外の地域からの参戦が多く、その内容も、作品のジャンル、テイストを問わず、自分たちの活動のあり方を自覚的に問い直す姿勢を感じられる、充実したものばかりでした。惜しくも選には漏れましたが、下鴨車窓の自作をさまざまな出会い(演出家、地域の観客)に晒そうという態度、同様に、ヒット作をさらに確かなレパートリーに育て関東中心の演劇状況に揺さぶりをかけようというiaku、極東退屈道場の取り組み、また、万能グローブガラパゴスダイナモスの前向きな「成長期」アピール、笑いの内閣のアクティブな活動ぶりも強く印象に残りました。 |
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高野 | 提出された文章類と団体の公演実績、受賞歴等を重視しました。再演される可能性があるので、応募作品の内容、目的、独自性、上演への意気込みに、より注目することになりました。既に再演を重ねている応募作品をどうとらえるかは、審査員によって差が出ました(私は推しました)。次の公演を考慮する必要がなくなったので、シンプルな思考でギュっと凝縮した審査ができたように思います。CoRich舞台芸術!のアーカイブとしての価値は年々増しています。上手に使ってくれている団体に好感を持っています。 |
手塚 | CoRich舞台芸術まつり!2013春に多数の応募ありがとうございました。今回は東京以外からの応募も多く、この演劇祭が日本全体に広がっていることを大変うれしく思います。私は、過去何作品かのCoRich舞台芸術!上での評判、CoRich舞台芸術!の利用状況、そして企画書のビジョン等を総合判断して審査をさせてもらっています。毎回「あと一歩!」だった作品を発表していますが、10団体目を決めるときに、今回ほど白熱した議論になったことは過去なかったということをお伝えしておきます。 さて、最終選考の10団体が決定しましたが、残りの団体にも楽しみな作品が多数あります。是非、各劇団の熱い企画書をご覧いただいて、そちらの劇団へも応援いただければ幸いです。 |
中井 | 団体名と作品タイトル、キャッチコピーを重視しました。パッと目を引くこと、キャッチーであることは重要だと思います。あとは、異なるジャンルとコラボしていたり、「ここでしか観られないもの」がありそうな作品を選びました。普段、なかなか知る事のできない皆さんの演劇への情熱を知る事ができて、とても参考になりました。 |
藤原 | 世の中の価値観を(たとえわずかでも)揺るがして変えていく可能性を持った存在であること。小手先ではない勘や嗅覚を持っていること。そして(ベテランか若手かに関わらず)今このタイミングでのノミネートを通して成長や飛躍が予感できるカンパニーであること。最終的に選ばれた10団体はバラエティに富んでいて、多様な思想と嗜好性を反映するラインナップになったと受け止めています(残念ながら選に洩れた中にも興味をそそられたカンパニーは幾つかありました)。個人的には2年目ということで肩の力を抜いて臨んでいる部分もありますが、審査を通して「選ぶ」ことの責任については、もしかすると昨年以上にひしひしと感じているかもしれません。これから最終審査までの数ヶ月、またもや残酷かつ真剣なやりとりになるのでしょうね。でも、とても楽しみです。 |
それでは10作品の発表です!
※公演初日順。
アマヤドリ(東京都)
ひょっとこ乱舞大爆破公演『うれしい悲鳴』に続いての選出です。3つの応募文章は中身の濃さも強度も圧倒的で、太い芯を軸にして地に根をおろすような、どっしりとした安定感がありました。それでいて軽やかに外に向かって広がっていく、大らかで柔軟なイメージも浮かびました。孤独な魂が、孤独のままつながる演劇を私も欲しています。昨年は神奈川、福岡、札幌、京都ツアーを敢行し、作・演出の広田淳一さんは劇団外での創作も活発に行っています。アマヤドリがこの1年で獲得した何かを見せていただきたいです。そして、CoRich舞台芸術!の機能を使い尽くしてくださってありがとうございます!
(高野しのぶ)
(高野しのぶ)
悪い芝居(京都府)
劇団名もタイトルもいいし、「どうせ観るなら『悪い芝居』を観よう」「一生このまま、闇の中でいいじゃないか。」というキャッチコピーもいいですね。私は大衆的なものが好きだし、メジャーであることも大切だと思います。でも同時に、グロテスクだったり、暗かったり、誰にでも受け入れられるとは限らない要素が入ってることも、重要だと思っています。自分との親和性も感じます。
(中井美穂)
(中井美穂)
のこされ劇場≡(福岡県)
北九州・枝光本町商店街アイアンシアターを拠点とするのこされ劇場≡。各地から多くの人々が訪れて刺激や興奮を得ている、との噂のせいか、審査の席上でも圧倒的な票を集めて早々にノミネートが決定した。本作『枝光本町商店街』は町を舞台にした回遊型演劇。演劇が持つ力と可能性に対する静かな自信、手応え、そして町の人々と生きている時間の積み重なりを応募の文章から感じます。地域活性化アートの文脈からも熱視線を浴びているこの作品を、あらためて「舞台芸術」の土俵で審査することで、新たな批評の言葉が生まれることにも期待したい。
(藤原ちから)
(藤原ちから)
劇団チョコレートケーキ(東京都)
チョコレートケーキ、少年少女向けのファンタジーでもやりそうな劇団名ですが、近年やっている作品は骨太の本格派ドラマです。ここ数年、公演のたびに作品の質が上がり、CoRich舞台芸術アワード!で一昨年3位、昨年1位とこりっちメンバーから高い評価を受けている団体です。今回の作品はまさにその第1位になった作品の再演。こんなに短期間で再演が決まったのも観客の強い支持があったればでしょう。アワードで1位になった作品をこんなに早く再演で観られるというのは楽しみでなりません。
(手塚宏二)
(手塚宏二)
Ort-d.d(東京都)
太宰治、三島由紀夫などの近代文学や児童文学の名作を題材に、緻密かつ知的な演技、空間構成の演劇を立ち上げるOrt-d.d。にしすがも創造舎のアソシエイト・アーティストでもあるベテランカンパニーが、初めての民間劇場での公演で、若手劇団が集う「CoRich舞台芸術まつり」に参戦! それもこれほどまでに骨太な戯曲を手に。その気概に打たれました。やみくもに「いま・ここ」を消費するのではない、歴史/演劇史を参照しながら自らの立つ場所を探る「現代劇」を、ここに集う若者たちに、しかと見せてやってください。
(鈴木理映子)
(鈴木理映子)
犬と串(東京都)
早稲田大学演劇研究会出身、日本の演劇界のエリート中のエリート集団です。今から4年前、まだ早稲田の学生のまま最終10団体に残り、CoRich舞台芸術まつり!に旋風を巻き起こしてくれました。その劇団が昨年早稲田を巣立ち、真のプロとなってこのまつりに帰ってきました。今回は劇団創設5周年&第10回記念公演をシアター風姿花伝10周年プロジェクトのひとつとして上演するという記念すべき公演だと聞いています。ひとまわりもふたまわりも成長した犬と串を楽しみにしています。
(手塚宏二)
(手塚宏二)
ブルーノプロデュース(東京都)
他者の記憶を扱った「ドキュメンタリーシリーズ」を経て、独自のスタイルを獲得しつつあるブルーノプロデュース。坂あがりスカラシップへの選出など、劇団としての基礎体力もここ1年で飛躍的に上昇している。今作は初の古典演出(原作『ハムレット』)を吉祥寺シアターで、というチャレンジングな公演。再び「物語」と向き合うことになるのでしょう。現代を生きるハムレットやフォーティンブラスの姿を、そしてなにより、失敗を怖れない、勇気ある舞台を見せてほしいです。
(藤原ちから)
(藤原ちから)
木ノ下歌舞伎(京都府)
歌舞伎を現代に空間化しようとする木ノ下歌舞伎の試みは、ただ単なる現代的解釈の披露や翻案とは一線を画すものだと思います。古典芸能への深い造詣を武器に、さまざまな視点と手法を用いて歌舞伎の再構築を試みる、その意欲と行動力、若い世代への波及力には、大きな夢を感じます。今回の上演作品は能楽をもとにした新作舞踊。中世、昭和、平成、それぞれ時代の音楽劇への試みがどのようにクロスするのか。新たなレパートリーの誕生を心待ちにしています。
(鈴木理映子)
(鈴木理映子)
バジリコFバジオ(東京都)
「人形劇×人間劇」というコンセプトに惹かれました。キモかわいい人形も私好み! 劇団活動を10年も続けてこられたのは、劇団員も観客も、独特のスタイルに飽きていないということ。その魅力を知りたいと思いました。私は人の熱量を感じたいから演劇を観に行くので、熱を持たない人形が入ることでどうなるのかも楽しみです。
(中井美穂)
(中井美穂)
ピンク地底人(京都府)
京都の地下でひそかに生きるピンク地底人たちが、2度目の応募をしてくれました。東京侵略活動も2度目で、福岡も射程距離に入り、地上征服計画は着々と進んでいるようです。私は地底人の演劇も、地底人を見るのも初めて。過去の侵略工作公演の「観てきた!」クチコミによると、独特の表現をされているようなので(地底人だから当然だけど)、刺激的な初体験になるに違いないと期待しています。イキウメの『散歩する侵略者』を上演したのは「侵略者」つながり?
(高野しのぶ)
(高野しのぶ)
以上の10作品です! 次の最終審査では、審査員が実際に公演を観にいきます。
「あと一歩!」だった作品
最後まで候補に残っていた、大変惜しかった5作品です。
“審査員注目の作品”として公表させていただきます。※初日順
「65歳からの風営法」 | 笑の内閣(京都府) |
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「(艸'∀゚*)lilΣ( @Д@∥;)i|l(゚∀゚三゚∀゚三゚∀゚)。+.。゚p(≧□×。)q)))゚。+。゚。+。」 | 宗教劇団ピャー! !(東京都) |
「建築家M」 | 下鴨車窓(京都府) |
「星降る夜になったら」 | 万能グローブ ガラパゴスダイナモス(福岡県) |
「『正解は、喜劇』」 | 8割世界(東京都) |
※発表時、木ノ下歌舞伎の団体所在地を誤って「東京都」と表記し、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。お詫びして訂正いたします。(2013年2月25日)