各団体の採点
観客をいかにして楽しませるのかが練り上げた作品でした。
小玉さん、加藤さんさんなどいつにも増してパワーアップしたホチキスの俳優が芝居をぐいぐいと引っ張っていました。
それにも増して、パワー全開で主役を演じていた渡邊安理(演劇集団キャラメルボックス)が目を引きました。
今はなき火曜サスペンス劇場のお約束をパロディにしながら、主題は別のストーリーが展開していく構成は良かったと思います。でも、その構成に縛られてしまったために、ドラマが薄くなってしまった感もあったのでは?
小玉さんと、客演の村上さんがいい意味で飛び道具になっていて、よかったです。
舞台はテレビドラマの撮影場所となるはずだった温泉旅館。脚本が盗作だとわかり撮影は中止、企画自体もおじゃんに。旅館の女将は街をあげての大イベントを継続させるべく、半日で新しい台本を書きあげると豪語します。ところがライバル旅館の女将が次々と邪魔をする上に、困った宿泊客の対応にも追われて・・・。
中央の和室とその奥の廊下、和室と客席との間の舞台面側の通路、上手の階段から2階の小さな部屋など、小さいながらも風通しよく区分けした空間全体が気持ちいいほどうまく使われていました。照明、音響も意図のはっきりとした効果があり、話の展開に集中しつつ、くったくなく笑える娯楽演劇でした。某テレビ番組のパロディーとしての面白さも洗練されていて、オリジナルのストーリーも枝葉まできちんと書き込まれているところに技を感じました。役者さんの堂々たるケレン味にも好感を持ちました。
作・演出の米山和仁さんが前説をされ、地震が起きた際の諸注意とともに、観客が安心して楽しい時間を過ごせるよう導いてくださいました。そういう心の準備ができたのが、私にとってはとても良かったです。公演意図と作品の内容がともなっていて、高い成果も出せている公演だと思います。
最高のエンターテインメントを追求する劇団。その姿勢が気持ちいい。火曜サスペンス劇場を意識した娯楽巨編だが、劇団員が楽しみながらやっていることがわかる。それがこちらに伝わってきてこちらまで楽しくなる。難しいことは考えず、単純に楽しめばいいという作りが潔い。
役者陣がそれぞれ個性的で、将来が楽しみ。
初日ゆえのバタバタ感があったのが残念。それでも十分面白かったが、ホチキスの面白さはこんなものではないはずと思ったのも事実。