早稲田大学内で上演される学生演劇を観ると、作品の内容はともかく、公演自体がとても立派だなぁと思います。装置、照明などのスタッフワークが充実していて、観客は満員に近いほど入っており、チケット収入を見込んだ演劇公演としてきちんと成立させていることが多いからです。
でも今作は「CoRich舞台芸術まつり!2009春」最終選考作品ですので、“学生演劇なので”と甘めに観ることはせず、他公演と同じ視点からクチコミを書かせていただきます。
コント風のオープニングを経て黒幕が開くと、巨大なプリン・アラモードといちごケーキで出来た豪華な舞台美術が現れました。こってり広がった乙女ワールドで、美味しいケーキ屋、優しい草食系男子の国、処女と童貞の妖精だけの編集部という3つのコミュニティーが、徐々に崩壊していく様子を描きます。
残念ながら、役者さんはセリフを一方的に吐き出すようにしゃべる方が多かったです。型にはまった動きでがむしゃらにつっ走られても、私にはあまり魅力が感じられませんでした。元気なのは素敵ですが、放出するだけでは退屈してしまいます。
男子が上半身裸になるシーンが多く、少々戸惑いましたが、皆さんしっかり鍛えてらっしゃるので不快感はゼロ。作品全体としては、もっとハチャメチャで弾けた演出があってもいいんじゃないかと思いました。
閉じる
偽善があばかれたり、暗黙のルールを破られたり、欲望のたがをはずされたりして、3つの世界が壊れていきます。そのプロセスに疑問はありませんでしたが、3つともを丁寧に描きすぎていたように思います。「気軽な優しさは本物か?」「“永遠”なんて成り立つのか?」といった重たいテーマが後から出てきましたが、深まることなく終わった印象でした。“ハゲおやじ”の頭から赤い水が吹き出るコントから始まり、エンディングもよく似た感じのコントだったのは、物足りない幕切れでした。
見どころは終盤でした。吐き気がしそうなほど甘ったるい、パステルカラーのメルヘンの世界が、黒い紙ふぶきで汚されていき、ケーキ屋の看板娘が朱色のカシスの泉に飛び込みます。ずぶ濡れになった女優さんの、飾らない表情がきれいでした。最後に劇場全体を白く染める照明も良かったですね。学内のアトリエで、動く照明がこんなに観られるとは思いませんでした。
制作・運営面について気になったことを少し書かせていただきます。学内のアトリエ公演であるから仕方ないことですが、暑すぎました・・・。私が学生演劇をやっていた頃は観客に団扇を配っていましたので、扇風機があるだけでもずっと恵まれていると思うべきなのですが、暑さには勝てず(涙)。お芝居の途中で朦朧としてしまいました。
私は夜の公演を観に行ったので、なにやら明かりのついているテントに行って「ここは犬と串さんでしょうか?」と聞かなくてはなりませんでした。また、受付を済ませた後も、劇場がどこにあるのかわからなくて(かなりの方向音痴なのです)、近くにいた関係者らしき人に「劇場はどちらですか?」と聞きました。
初めての人は右も左もわからないものです。“早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ”に行き慣れている人だけでなく、アトリエ初心者、演劇初心者のことを、もうちょっと考えていただけたら嬉しく思います。
銀紙に包まれたチョコレートにチケットの半券が貼り付けられており、開演前に「劇場内が暑くなったら溶けてしまうので、なるべくお早めにお召し上がりください」と言われました。私はチョコレートは大好きなんですが・・・芝居の前にはあまり口に入れたくなくて・・・ちょっと困りました(苦笑)。鞄の中で溶けたら本当に困るので、開演前にいただきました。幸運な観客には、銀紙の中に金のチケット・銀のチケットという特典が入っていたそうですが、できれば他の抽選方法にしていただきたかったですね。でもチョコレートは美味しかったです。ごちそうさまでした。