アキラの観てきた!クチコミ一覧

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寺洗

寺洗

サマカト

シアターブラッツ(東京都)

2009/04/16 (木) ~ 2009/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★

ああ、寺洗ってそういうことなのね
タイトルで示されているような、ちょとしたコトバ遊び的なものと、ズレが生じる会話の応酬。
不思議にヘンな間と、そのつなぎ。

単なるコメディとは言い切れないような、半歩だけ不条理感漂う、じんわりした笑い。

もっと強い柱というか、なんかそんなモノがあったら、よかったような気もするが、それだとこの劇団の持ち味と変わってしまうのだろう。たぶん。

ネタバレBOX

最初は、一見、ショートストーリーの羅列なのかと思いきや、なんとなくつながっていくエピソード。
それが、「おお」っとか思わず言ってしまうでもなく、鮮やかでもなく、それほど見事でもない様は、ある意味なんとも言えないリズムが漂う。
ま、こちらが勝手にショートストーリーの羅列かと思っただけで、普通にエピソードがつながるのは、やっぱり普通だけど。

特に大上段に構えるわけでもない、ちょっとした設定は、コメディというよりは、あらっ、不条理へ半歩うっかり踏み出しちゃいました的な印象。もちろん意識的にだけど。

例えば、冒頭の銀行強盗たちのやり取りは、よくあるお間抜けな強盗というの枠をやや外れているし、銀行内でのエピソードもどう考えても半歩不条理。
さらに何をやっているかわからない会社で、給料もなく働くOLにおいては不条理以外のなにものでもない。
そんな設定がそこここに散りばめてあるにもかかわらず、普通の日常として描かれる。
そして、徐々にウソをついた人たちのその本当の思いが表に出てくる、のだが、特に声高になるわけでもないところが、ここの持ち味なのだろう。
表出して、どうなんだっていうところは、大切なところだと思うが、そこがちょっと弱いけど。

うっかりすれば聞き逃してしまいそうなコトバの遊びや、噛み合わない会話など、瞬発力のある笑いではなく、気がついたときにだけ(あるいは人にだけ)じんわりと訪れる笑い。

なんとなく共通項がたくさんありそうな、「あひるなんちゃら」からの客演の関村さんがうまくなじんでいた。
つまり、「あひるなんちゃら」の雰囲気に和んでしまう私には、projectサマカトポロジーも○。

そういえば、20歳という設定で「えー」っとなったのだが、さらに「16歳」だったというオチ(?)は、かなり不条理。

あ、地名として出てくる「寺洗」は「tell a lie」ということらしい。
桜の園

桜の園

青年団若手自主企画『西村企画』

アトリエ春風舎(東京都)

2009/04/09 (木) ~ 2009/04/15 (水)公演終了

満足度★★★

桜の園は、花見客で一杯の夜の上野公園になっていた
「桜の園」がミュージカル、いや妙ージカルになる、というだけでかなり期待して観に行った。

で、どうも、なんというか、桜の園は、まるで上野の山あたりにあって、そこでは花見客が大騒ぎをしていたような印象なのだ。

いろいろ面白そうな企みはあったのだが、未整理のまま全部入れてみました、と感じてしまった。
ただし、本当に「桜の園」が上野の山のような乱痴気騒ぎなっているならば、それはそれで面白かったのかもしれないが、統制のとれていない単なる大騒ぎのようだったのだ。

母親役の石村みかさんの健闘が特に印象に残った。台詞も歌の量もかなり膨大なのにもかかわらず、台詞も歌も踊り(のようなもの)も、思い切りがいいのか、とても良かった。

また、色々な役を演じていた鈴木智香子さんも、健闘していた1人なのだが、前に観た髙山植物園『天の空一つに見える』での、とても丁寧な演技と比べてしまうと、その良さを引き出せていなかったように見えた。

結局、桜は、日本的には、大騒ぎの象徴なのかな。
エネルギーだけは伝わった。

ネタバレBOX

主要人物ではない、脇の登場人物たちは、その衣装や小道具(カツラやギターなど)によって、誰が演じても同じのようにした、つまり、記号化されていたのだが、それによって面白い何かが生まれることなく、単にガチャガチャした印象になってしまっていた。
その分、歌のところの、前に出るようなエネルギーが芝居との「差」として現れてこないため、メリハリに欠けてしまったようだ。

また、妙ージカルのキモとも言える、歌の部分、特に激しく叫び、歌うところは、文字通り、叫んでいるのだが、シャウトではなく、無理して声を張り上げていただけで、叫んで歌うというノドになっていない人のそういった声は、キンキン耳に響くだけで、歌詞が聞き取れないだけでなく、やや不快ですらあった。
台詞や普通に歌うときには、とてもいい雰囲気なだけに。

その「不快さ」が演出の意図ならば、効果があったと言えるのだが、意図としては伝わってこなかった。
単に声を張り上げただけでよかったのだろうか、本当に張り上げなくても、それと同じ効果が上がる方法はなかったのか、と思うからだ。

歌のメロディーが良かっただけに残念である。今も耳に残るメロディーがいくつかあるぐらいだし。

途中で、何人かの台詞が完全に重なって(同時に別の会話が行われていた)何を言っているのか、ほとんど聞き取れないところがあったのだが、並行して何かが起こっていることと、本筋とはあまり関係がないことで、そのような方法をとったのだろうか。
もし、そうであれば、思い切って、台詞自体をカットしてしまうか、台詞を短くしてしまったほうが良かったように思える。台詞があれば、観客としては少しでも何を話しているのかを聞き取りたいと思うからだ。それは、台詞を「音」として楽しんでもらう、という意味とも異なっていたし。

最初のコーラ一気飲みはかなり面白く、今回の舞台全体の面白さを期待させたのだけど・・・。
クッキング! Vol.01

クッキング! Vol.01

とくお組

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2009/04/11 (土) ~ 2009/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

ヒラメキ+スピード+センス=爆笑
お題をその場で演じるエチュードのような舞台だから、普通に、というかそれなりには面白いだろうな、と思っていたのだが、予想を超えて、かなり面白かった。久々に客席で爆笑してしまった。

お題に対して、微妙な玉を上げてしまっても、誰かがうまいレシーブを行うところに、出演者たちのそれぞれのセンスと瞬発力を感じた。
ひょろひょろと上がった玉を、うっかり誰もレシーブできずあわや大惨事に、となりそうな場面もあったが、結果的にはどれもいい感じにまとめていたのだ。

この手のものだと、変に「素」になったり、素の感じを装ったりしそうなものだが、それが一切なかったところには好感が持てた。

ネタバレBOX

あらかじめ、もしくはその場で観客から送られたお題を見て、瞬時(5秒後!)に、いろいろな組み合わせて演じる。

それは、単にお題を演じるだけではなく、6人だったり、1人から人数を増やしたりなど、人数や音楽などの制約をうまく組み合わせているので、単調にならず、ワクワク感が醸成され、面白さが一層高まった。

ブースでお題を選定し、うまいところでエンディングにさせる(照明等で)、とくおさんのセンスもいいのだろう。
うまいエンディングになるものと、ゴングに助けられた的なエンディングとなるものとがあるのがまた良かったりする。

ラストのお題では、舞台上で合意されたように思えた全体の方向とは違うところへ行ってしまったのは、ある台詞を言ってしまった人が、ちゃんと別の人の台詞を聞き取ってなかったことによるように見えた、が、面白かったのでよしとしよう。
アチャコ

アチャコ

ユニット・トラージ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/04 (土) ~ 2009/04/12 (日)公演終了

満足度★★★★

ベタでメタで、呆けたような笑い顔にされた
ホンネで言ってしまえば、北村想さんの名前とアゴラという場所だから行ったようなものだ。
だから、こちら側としては、かなり好意的な視線で見ていたことが功を奏したような気がする。

功を奏したといったところで、クククという苦笑いと、イヒヒという下品な笑いと、フハッという脱力笑いが微妙にブレンドされて、呆けたような、笑い顔ともなんともつかない顔をして最後まで観ていた、というぐらいのことなのだが。

最初に対決姿勢で身構えると何もかもが気に障り、イヤんなっちゃうかもしれないから、これから観に行く方は、すべてを受け入れる広い心持ちが必要ではないかと思う。

北村想さん、次も期待しちゃう。

ネタバレBOX

前半の「どうなるんだろう」という緊張感を見事に外す、エロ・シモネタと言葉遊び(ダジャレとも言う)の、テンポをズラしたというか、オフビートというか、そんな「あえて笑いを直接取りに行ってない」感がある演出には、ちょっとやられた。
ベタな感じの笑いも、「あえて」ベタな感じにしました、という印象だ。
それは諸刃の刃であり、ひとつ間違えば、「ただのベタな喜劇ですべってます」になる、ぎりぎりのラインだったと思う。
そこを転げ落ちないようにうまく支えられていたと思う(あっ、それは好意的な視線で見てからかもね)。

しかも、なんでもアリで、「これは演劇である」ということを随所に、というか頻繁に交えながら。
タイトルの「アチャコ」さえも、無理矢理、適当な理由を付けてなんとか収めようとする、ということをエピソードにするあたりには笑わされた。結局意味なんてないのだから。

なんでもアリと言いながら、そこはそれ、ムード歌謡風コーラス付きの歌や、珍妙なる踊りまでを入れ込み、寝ている子をそっと揺り起こすような勢いで、ずんずん進む。

それらの按配というか塩梅なんかがお見事だ。

これだけのトンデモをよくぞまとめて見せてくれたなと、また呆けた笑い顔になった。

・・・でもお客さん少なかった。
夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

アトリエ・ダンカン

東京グローブ座(東京都)

2009/04/03 (金) ~ 2009/04/15 (水)公演終了

満足度★★★★

やっぱり桟敷童子とは違うけど
十分に楽しめた2時間35分(休憩15分含む)。

原作のファンもいるだろうから、原作との関係など、なんとなく何を書いてもネタバレになりそうなので、あとはネタバレをどうぞ。

ネタバレBOX

アノ原作をどうやって舞台化するのか? と興味津々で劇場を訪れた。
で、原作のほぼ全部を見事に2時間35分(休憩15分含む)に収めていたのだ。

てっきりどこかのパートを膨らませるか、または、シーンを融合させて原作とは少々違う『夜は短し・・』を見せるものと勝手に思っていたら、4つのパートがすべて揃っていたのだ。

いろいろ絡んでくる、各エピソードもいい感じで残っているし。
特に原作ファンにはうれしい舞台だったのではないだろうか。

主人公の2人が、イマイチ魅力的に見えなかったのはちょっと残念だが、その分、装置を動かしたり、何役かをこなす桟敷童子のメンバーの熱演もあり、そのサポートと手際はホントにお見事!
もちろん、脚本・演出の良さもあるだろう。

そして、ベンガルさんが、ずるいぐらい(笑)の存在感を振りまいていたのが印象的。

ただ、今回、この原作に、この脚本・演出ならば、当然あるであろうスペクタクルなシーンがなかったのが一番悔やまれる(三階建て電車も意外と地味だったしなあ)。

春夏秋冬どのシーンも桟敷童子の公演ならば、何か大きく見せてくれただろうなと思ってしまった(箱がもう少し小さかったら、多少のスペクタクルを感じたかもしれないが。あるいはもっと前の席だったら・笑)。

最初と最後に歌のシーンはあるものの、生粋の桟敷童子マニア(笑)には少々ぬるく感じてしまう舞台かもしれない。
とは言うものの、いい感じに賑やかで面白かったけど。

で、これ観た人は結構な確率で『ホルモー』のほうのチケットも買っちゃうんだろうなあ。
さよならシアタートップス 最後の文化祭:短編オムニバス公演

さよならシアタートップス 最後の文化祭:短編オムニバス公演

THEATER/TOPS

新宿シアタートップス(東京都)

2009/03/18 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

ONEOR8 熱帯 泪目銀座
楽しい文化祭、お祭り気分が盛り上がる。
どの劇団も実にうまくまとめてあり、面白く、後味もとてもいい。
だけど劇場を出るときの階段を降りるあたりで、ちよっと寂しい。

ネタバレBOX

3つの劇団の演目に、「倒産」「離婚」という共通のキーワードがあったのは、「さよなら」からイメージされたものだったのかな。

泪目銀座に出演していた村田さん、この日(3/28)の公演の数時間前にアキレス腱を切ってしまったとのことで、松葉杖での出演は、とても大変そうだった。
アルカリ

アルカリ

壁ノ花団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/03/25 (水) ~ 2009/03/31 (火)公演終了

満足度★★★

解放されない者たちの闇は続く
想像通りに、重いし、暗いし
でも観るのが辛いわけではない。

何かから解放されない者(あるいは自らを解放しない者)たちの話。
だけど、もう一歩物語に踏み込むための(確実なる)糸口が見つからなかった。

役者はみんなうまくて、惹き付けるものがあるし、闇の深さや鞄が落とされる音がドキッとしたりして、効果的だったりするのだけれど。

で、この場合のアルカリって何?

ネタバレBOX

第二次世界大戦中、東欧にあったドイツの収容所にまつわる話かと思えば、いきなり会話の中にデュラエモン(またはドゥラエモン:たぶん青いネコのようなモノで、お腹にポケットが付いているキャラクター)の登場でちょっと足下が揺らぐ。

闇と散乱する鞄、残された(元)子どもたち、収容所の解放から半年気を失っていたという非現実的な女、そして二階に潜む男、そんな収容所から解放されたはずなのに、自らの呪縛によって、解放され(たく)ない者たちが、自分自身の呪縛に落ち込んでいく。
収容所の枠を借りてそんな人々を描きたかったのだろうか。

なんとなく、MONOの「床の下のほら吹き男」のほら吹き男(作・演出の水沼健さんが演じていた)が体現していたような、「くすぐり」みたいなものがある不気味さが、舞台全体に極大化したような印象を受けた。
床下ならぬ、二階に潜む男がいたからかも。

しかし、収容所にいた者が太っているのはOKなのかな。
御用牙

御用牙

RUP

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2009/03/20 (金) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

満足度★★★

ひねりの効いた話、そして熱演
だけど・・・何だろう? 
うーん、何かイマ一歩。よくできているのだけれど・・。

ネタバレBOX

御用牙と言えば、勝新の映画版が最初に思い浮かぶのだが、それとは違う、すっとした二枚目風の主人公、かみそり半蔵が舞台にいた。

ただ、半蔵は、奉行所からのはみ出し者という設定のはずだが、それが浮かび上がってこにない。

主人公はもちろん、どの役者も巧くて、ちょっと粋だったり、魅力的なキャラクターになりそうなのだが、主人公を含め、舞台にいる全員が終始、熱演すぎで、どうも全体的に一本調子の感じがしてしまう。リキみ過ぎ?

話をどんどん先に進めようとする力が強すぎるためなのか。

その話も、ひねりがかなり効いていて、よくぞこの時間内にうまくまとめたな、とは思うし、演出も独特の感じがあったのだが、そういうそのヒネリの部分をもっとメリハリ付けて見せてほしかったのだ。
例えば、主人公の半蔵の十手さばきでも刀さばきでも良かったのだ。
Circle Dance ~ロマンス~

Circle Dance ~ロマンス~

かもねぎショット

ザ・スズナリ(東京都)

2009/03/25 (水) ~ 2009/03/31 (火)公演終了

満足度★★★

この感じ好き
ダンスに挟まれたショートストーリーたちの95分。

少し笑えたり、ふーんとかへえとか(悪い意味じゃなくてね)思ったりするショートストーリーとダンスの案配がとてもいい。

ダンスをやっているからではないと思うが、背筋がピンと伸びた(文字通りだけの意味じゃなくて)全員の姿勢が好感度。

ネタバレBOX

コート姿のダンスは重いな、と感じていたが、ラストに氷解。
そういうことなのね。
でも、男女のペアで踊るダンスはしっとり感があったのだが、女性3人で踊るダンスは、やっぱり衣装が気になってしまう。もっと衣装を活かせた振り付けであればなあ、と。

後半の、いろいろな記憶が噴出するあたりと、全員で踊るところは良いなと思った。

散りばめられた全体の話にラストへの収束感が感じられれば、もっと良かったと思うのだが。
ユートピア?◆フェスティバル/トーキョー09春

ユートピア?◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2009/03/23 (月) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

演劇は終わらない
3人が共同して、どのように作・演出を行うのか興味津々だった。
まったくの空中分解に終わる可能性もあるからだ。

しかし、ちょっとした驚きとともにそれは成し遂げられていた、と言っていいように思う。
全編を覆うギクシャク感みたいなものも、互いの意思疎通の難しさを表しているように感じたからだろう。

字幕を追うのは辛かった。しかし、ひっとしたら、それには理由があるのでは? と思ったのだ。その理由はネタバレで。

ネタバレBOX

全編通して感じたたのは、人と人との意思疎通の難しさだ。

舞台では、言葉や文化が違うことによる意思疎通の難しさがあり、さらに言葉が同じであっても、意識が通わない意思疎通の難しさ、最後には時間による意思疎通の難しさが示される。
そして、極めつけは、字幕による観客との意思疎通の難しさである(言葉による意思疎通の難しさに含まれるものなのだが、舞台と観客という要素があるので)。

字幕の文字の多さ、台詞とのタイミングのズレ、字幕の文章の区切りの悪さ等々は、観客に仕掛けられたワナと、いうか「体験」なのではないか、と思ったのだ。

つまり、台詞の内容と字幕の文字数はあらかじめわかっているはずだし、当然観客が字幕を読む速度もわかるはずだから、そのあたりはなんとかできたのではないだろうか、ということなのだ。
だから、「あえて」(演出で)そうしたと思ったのだ。

メタの上にメタ、メタ、メタと付くような演劇だったのではないだろうか。

その上で、舞台では、言葉や文化が違う者たちが、どうにかして相手に伝えたいと思う気持ちや、過去の異物としての演劇やダンスを再生し、理解しようとする姿は、今まさに行われている舞台の内容を理解しようとする我々観客とダブっていくのだろう。

「ここはフランスだ」と舞台の上で言えば、そこはフランスとなる。それは、フランスであり、イランであり、季節も時間もアッと言う間に変わってくる。
そんな演劇の基本的なルールを丁寧に追っていき、作者が言い放ったイメージを受け取ろうとする観客がいる限り、演劇もダンスも終わることはないのだろうというのがラストを観た感想なのだ。

これは深読みすぎかな?
でもそう思ったんだよね。
コウカシタ◆フェスティバル/トーキョー09春

コウカシタ◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2009/03/14 (土) ~ 2009/03/20 (金)公演終了

満足度★★★

バネがあるしやなかさ
タイの人が出ているという前情報からの、完全なるバイアスがかかった見方なのだが、全体的に活き活き感というか、生命感の溢れる舞台に見えた。南国の都市のイメージっていうところなのかな。

前に観たイデビアンクルーの「排気口」が、日本旅館または料亭を舞台にした純和風なものだったので、それとの対比でよけいにそう感じたのかもしれない。
かと言って、トロピカルではなく、コウカシタの雑然たる様子なのだ。

ネタバレBOX

ダンスではない部分での、マッチージをするタイの女性の圧倒的な存在感には脱帽だ。凄い。

イデさんの双子のようなタイの男性の登場には笑った。
歌もあったし。

タイ語の台詞は、やっぱり何て言ってるのか知りたかったなあ。
95kgと97kgのあいだ◆フェスティバル/トーキョー

95kgと97kgのあいだ◆フェスティバル/トーキョー

さいたまゴールド・シアター

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2009/03/18 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

私には叫ぶような何かがあるのだろうか
展開も見せ方もさすが。
どきどき感があった。

あとはネタバレで

ネタバレBOX

てっきりゴールドシアター(年配の方)だけが出演するものと思っていたのだが、そうではなかった。
そうではなかったと知るタイミングが、桟敷席へ観客を誘導するタイミングとうまく合わせてあり、一瞬何が起こったのかわからず、ドキドキしてしまった。

ゴールドシアターの面々が登場するあたりは、「ワークショップ?」と思ってしまったのだが、その個人個人の表情を見ていると胸に迫るものがあった。

若者たちは、「オタク」とか「太った人」というように、一言で誰なのかが明らかになるような衣装や様子なのだが、ゴールドシアターのメンバーは、「そのままのその人」がそこに「いる」という対比も面白かった。

ラストに叫ぶ様子がとてもいい、本当に個人的なことを叫ぶ内容が特にこちらに響いた。

ただ、残念だったのは、中心となる若い男性のテンションが常に高く、一本調子に感じてしまったことと、そのサポートに回る若い女性が一歩前に出てくる理由がイマイチわからず、美人は特別扱いなのね、と思ってしまったことである。
春琴

春琴

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2009/03/05 (木) ~ 2009/03/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

陰翳の見事さに息をのむ
観る者のイメージを膨らませる、いろいろな仕掛け(棒一本でいろいろなものをイメージさせたり、原作のテキストを映像で見せるなどの演出)が次々と現れる。
しかし、それがテンポの良さと相まって散漫にならず、しっとりとした印象さえ受ける演出は見事だ。

思ったよりも少人数の出演者が、ひとつになって舞台を作り上げているという様子にも感動した。

また、この舞台を日本語がわからない方が演出しているというのにも驚いた。

ネタバレBOX

原作の『春琴』は、「私」のモノローグで語られていくのだが、舞台ではさらにラジオドラマの体裁をとり、ナレーターが出てくるという重層的な構成にも唸った。

ナレーターの存在は、ともすれば、ストーリーを追うことだけに繋がりそうなのだが、春琴と佐助の気持ちが痛いほど伝わってきた。

目を閉じて聞くと、本当にラジオドラマとしても成立するのではなかろうか。
Hey Girl!◆フェスティバル/トーキョー09春

Hey Girl!◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2009/03/10 (火) ~ 2009/03/14 (土)公演終了

満足度★★★★

美しくて、抑えていて、暴力的で、グロテスクで、轟音で、
目を見張るところが随所にあったが、私には合わなかった。
でも、凄かったのは確か。

ネタバレBOX

オープニングから「おおっ」となり、大人数の登場にも「おおっ」となり、「おおっ」となるところが多かったのだが、ノリなのか、リズムなのか、何かが合わなかった。

激しい呼吸のところや、やけに泣くシーンが多いところがどうも生理的にダメだったのかもしれない。
金柑少年◆フェスティバル/トーキョー09春

金柑少年◆フェスティバル/トーキョー09春

山海塾

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2009/03/07 (土) ~ 2009/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★

どこか初々しさを感じた
ポスターや写真でしか知らなかった『金柑少年』をついに体験できた。

リ・クリエーションされた、若手(と言っても10年選手だそうだが)中心の舞台は、いつもの張りつめるような緊迫感が感じられなかったものの、見応えはあった。
とは言っても、やはり天児さんや中核となるメンバーに出てほしかったのがホンネでもある。

すべてを削ぎ落としたような最近の舞台と比べて、装置や衣装、踊り(演出)の違い、さらに、表情がある、声を出すということにより、今回の舞台は、あえて言うと(「見当違いだ」「何を言うか!」の声があるかもしれないが)、最近の山海塾と大駱駝艦との中間に位置するイメージだ。つまり出発点にやや近い感じ。

いろいろな企てが繰り広げられる舞台は、舞台上の若手たちの姿とだぶり、「若さ」を感じた。

ネタバレBOX

生きたクジャクの登場には度肝を抜かれた。そのクジャクが見事に羽ばたき「舞踏」していたのには、さらに驚いた。
風街

風街

北九州芸術劇場

あうるすぽっと(東京都)

2009/03/06 (金) ~ 2009/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

生命(いのち)のきらめきが溢れる舞台
当然と言えば当然なのだが、話にも演出にも桟敷童子の印象が強い。
ただ、「まったく同じか?」と問われれば、もちろん同じではない(桟敷童子で同じものをやったのなら、もっと重くなったような気がする)。その違いが今回の舞台の味となったと思う。

幕開けから、一気にその世界に引き込まれ、スピーディな演出で物語にのめり込んだ。
そしてけなげさや一生懸命さに涙した。

いろいろなエピソードが実にうまい具合に重なり合い、物語に厚みを増していた。
そして、すべての出演者が素晴らしく、終演後は、全員に大きな拍手を送ったのだ。

誠実で丁寧、一生懸命さの溢れるいい舞台だった。

ネタバレBOX

街には、苦しい生活や公害の中でも、精一杯生きている人たちがいる。
それを療養所から見る、命の灯火が消えようとしている少女。
彼女の手から鏡の光が、街に「生きる人々」にキラキラと降り注ぐ。
彼女の「命」の輝きと、街の人の「命」の輝きが交差する美しいシーンだ。
彼女の想いは、確かに届いた。

街の人たちそれぞれには、親しい隣人との別れなどの中にも、新しい(自分との)出会い(目覚め)がある。そして、煤煙が降り注ぐ公害の街が良くなる予感(まだ実害が現れる前の時点で)もある。
それらは、未来への一歩を踏み出す生命の力強さを感じさせる。

そんなポジティヴなラストは、素直に気持ちが良かった。

さらに特筆すべきは、子ども役の人たちだ。ずるいな、と思うほど、見事だった。
『蝶子と吉治郎の家』~貧乏神旅立ち篇~

『蝶子と吉治郎の家』~貧乏神旅立ち篇~

極楽歌劇団

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2009/03/04 (水) ~ 2009/03/04 (水)公演終了

満足度★★★

テーマパークのイベントならば○。
道頓堀極樂商店街というテーマパークをホームとしている劇団ということだが、そこで観たのならば、かなり楽しめた軽い人情喜劇だったのではないかと思う。
北沢ホールは、使用上の制限で凝ったセットが組めないというハンデもあるし。

今回は、そのホームグラウンドで上演している2つの話を単純に繋げて1本にしたようで(主人公夫婦の説明が前半後半それぞれに長々出てきたり、前のエピソードは、後ろのエビソートとまったく関係なかったり等)、ストーリーの楽しさはあまり感じなかった。
とにかく誰にでもわかりやすくすることや、時間の制約があること等を前提とした脚本のようなので、その分、損をしているように感じた。

3月に道頓堀極樂商店街がなくなるということで、今後は、劇団単体でやっていくようだ。
そのときには、今のままでなく、出演者の熱意は伝わるので、他の劇場で上演するための面白い脚本を用意してほしいと思った。

今後に期待したい。

踊りは、蝶子役の人が良かったが、ゲストの方がさらにキレも輝きも一段とあった。さすがOSKだと思った。

ネタバレBOX

ゲストの方は、OSKの方ということだが、その方に宝塚のパロディを演じさせるというのは、良かったのだろうか、ちょっと気になった。

また、スピーカーを通した音が大きすぎて、役者によっては張り切りすぎたのか、声が大きくキンキンしていたのも気になった(エコーがかかっていたりしたので)。
ワンダーランド2400 ★グリーンフェスタ2009「Box in Box THEATER賞」受賞作品★

ワンダーランド2400 ★グリーンフェスタ2009「Box in Box THEATER賞」受賞作品★

マグズサムズ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2009/02/25 (水) ~ 2009/03/02 (月)公演終了

満足度★★★★

オーソドックスな人情コメディ
ネットカフェが舞台だが、かなりベタなドタバタ人情コメディ。
そう思って、力を抜いて観れば笑って楽しめる。
セリフで「ここは長屋か」というのがあったけど、まさにその通り。
人情溢れる長屋は、このネットカフェにあったということだ。

ストーリーの展開は読めるけど、ストーリーを追っていくというものでもなく、根本的な問題も解決されないのだが、特に問題なし。
個々のキャラクターも、とにかくわかりやすい。

ネタバレBOX

店長さん役の方は、ロレツがかなり怪しかったのだが、疲れなのか、演技なのかよくわからなかった。

いろんなパロディが所々に散らされていたのだが、それはどうなのかな、と思った。
見下ろしてごらん、夜の町を。

見下ろしてごらん、夜の町を。

劇団東京ヴォードヴィルショー

本多劇場(東京都)

2009/02/25 (水) ~ 2009/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

東京ヴォードヴィルショーは、やっぱりいいなあ
期待して行ったら期待通りに笑えて、楽しい舞台。
出演者それぞれの持ち味やキャラクターが活かされていて、安心して観られた。

歌も楽しいし、ギターだけでなく、アコーディオンを加えたところにはセンスを感じた。この音色が加わり、音に深みが出たと思う。

劇中歌のCDの販売もある。18曲入り1,000円は安い! と迷わず購入した。

観劇した日は、開幕前にもいろいろあったので、これから行く方は、少し早めに行かれたほうがよいかも。

ネタバレBOX

笑いの中で、浮かび上がるのは、ミュージシャン・カップルや主人公夫婦、レコード会社社長夫婦やアルバイトの恋人たちなど、パートナーとの、それぞれの話で、甘い笑いだけじゃない、悲哀のあるエピソード(特にレコード会社社長のエピソード)が散りばめられているところが、とても良いのだ。
そうした、ちょっとした脇の書き込みがあるから、単純なストーリーが楽しくなる。

佐藤B作さんの病気がらみのエピソードがあり、妻役のあめくみちこさんとの会話になるのだが、そのくだり「うーん、それはどうかな」と一瞬思ったのたが、結局「ま、良かったのだから、それはそれで、いいか」と思ったりした。
青ノ鳥

青ノ鳥

ミクニヤナイハラプロジェクト

NHKみんなの広場 ふれあいホール(東京都)

2009/02/21 (土) ~ 2009/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

ああ! なんと刺激的な「青の時間」!
高速回転のセリフと意味があったりなかったりの激しい動き、そして大音量だったり、叫んだり、ひそひそ声だったり、ライトが当たっていたり、薄暗かったり、前にいたり後ろにいたりする、緩急&大小&明暗が織りなす舞台は、刺激的で観る者を飽きさせない。

次々と現れ、予想を超えるイメージの攻撃に目も耳も釘付けになってしまった。

セリフは聞き逃さない、動きも見逃さないぞ、という意気込みで臨んだのだが、それでも残念なことに、ときどきはつかみそこねてしまった。
あまりにも同時にいろいろなことが行われているからだろう。そういうときは、部分でなく、全体をぐわっとつかめばいいのだろうが、なにしろそんな余裕はこちらにはなかった。

正直、また同じものを観たいと思った。

・・・よく考えたら(よく考えなくても)、放送があるのだ。それは好都合・・・しかし、それは「体験」ではなく「追体験」でしかないんだろうなぁ。
あの舞台から届く力は、ブラウン管だったり液晶だったりの中からも同じように届くのだろうか。

それでも、もう一度観られるのはありがたい。

ネタバレBOX

地球の生物をそれぞれ代表するような研究者たちの、それぞれの思いや思惑が交錯し、彼らのそれぞれの「何か」を見付けに「森の奥」でかけるのだが、彼らの(ある意味)「青い鳥」である「森の奥」は、実はもうないことに気がつく(「青ノ鳥」=「青い鳥」ではないのだろうけど)。

役者たちが汗を飛ばし、激しい動きは、彼ら自身が互いにどう向き合って(「向き合う」のではなく同じ方向を見たり)、あるいはコミュニケートしていくのかをもがいているように思えた。
それは、トレードオフだったり依存だったりの生物同士の関係にもあてはまるのかもしれない(人間というファクターを通してだが)。
「青の時間」がそれらの回答のヒントとなるのだろうか。

全員が森の奥へ行こうとするあたりは、やや「長い」と感じたが、そこだけは、他のシーンのように、映像や音楽の進入もあまりなく、じっくり聞かせたかった、見せたかったのだろう。

バックに現れる映像や字幕にどうしても目がいきがちで、実際に目の前で激しく動く役者たちのナマの姿を見落としてしまうのが、なにしろ残念であった。

今年6月の五人姉妹も楽しみ。

・・・ホントにどうでもいいことだが、鳥類担当の人は双眼鏡を前後逆さまに使っていたが、あれはわざとなのだろうか、ずっと気になってしょうがなかった。

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