バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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「ここにある真空」

「ここにある真空」

浮世企画

駅前劇場(東京都)

2015/03/12 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

満足度★★★

ダラダラした印象は否めず/約120分
 説明書きからも知れる通り、大変な事が相次ぐ劇なのに、総じてダラダラとして平坦な印象。
 説明にもある“ワケあり男”と主役の女医がやり合うシーンでさえ、どこか緊迫感を欠いていて、ドラマティックな感じがあまりしない。。。

 劇がいまいち締まらない一因として挙げられるのは、劇中人物が誰彼問わず冗舌すぎるということ。
 例えば、或る人物と食事をした昔話を女医に向かって語り聞かせる初老の男性患者。
 食事相手の人物像は本作にとって重要だが、この患者、それ以外にも、入った店の汚さや料理の味についてまで滔々と語るのである。

 店構えや料理の味は話の本線と関係ないっ!!

 これはあくまで一例にすぎず、残念ながら本作にはこのような駄弁が随所に見受けられる。

 作・演出の今城さんは会話を書くのが好きなのだろうが、駄弁が過ぎると作品が締まりを欠くので、思い切って“削ぎ落とす”という選択をもっとしたほうが良いのではないだろうか?

 まぁ、駄弁も笑いを生みさえすれば駄弁とは感じまいが、私の観た回に限って言えば、駄弁は大して笑いを誘えていなかった。

 あと、相次ぐ“事件”はどれも描き方に雑味があり、劇を盛り上げるための“材料”として“消化”されているような印象を受けた。
 もっと描き方が丁寧ならば、こんなことは感じなかったはず。

 …と、キツいことを述べてきたが、上述の「ダラダラ」は「ほのぼの」と言い換えられるのかもしれず、心が温かくなる劇ではありました。

ネタバレBOX

ネタバレでも苦言は続く!!

女医の娘のキャラクターに連続性は持たせられなかったのか?

私には、話の成り行きに沿うよう、作者都合でコロコロとキャラが変えられているように思えてならず、違和感を禁じ得なかった。

 この娘は援交という“事件”を起こすが、“普通の子”から“悪い子”に変じるのが唐突すぎて、観ていて当惑。。。

「事件の描き方に雑味がある」とは、まさにこういうことを言っている。
はたらくおやつ

はたらくおやつ

野鳩

OFF OFFシアター(東京都)

2015/03/04 (水) ~ 2015/03/08 (日)公演終了

満足度★★★

しまおまほ、まさかの降板。なのに謝罪が不十分。/約85分
 降板理由は体調不良。しまおさんは身重でもあり大事を取って出演を見合わせるのはやむを得ないが、劇団の態度には疑問を感じた。
 返金要求を恐れたのか、開場前、客が小屋前で列を成している段階では張り紙によってしか降板が伝えられず、降板が口頭で告げられたのは開場後の劇場内にて。
 しかも、「ご了承ください」にポイントが置かれ、謝意があまり伝わってこなかった。

 内容はまずまず。
 舞台にはしまおさんのイラストが描かれた紙製の可愛い小道具が並び、“ほのぼのオフィスコメディ”の体裁を取りながらも、ストーリーの根幹はなかなかにブラックで、ホカロンでヤケドを負わされたような後味が残った。
 原作者が漫画家だから故意にそうしたのか、ページをめくって漫画を読み進めるかのごとき一様なテンポで話は進み、演劇らしい緩急や躍動感はゼロ。
 この淡々とした展開にもどかしさを覚えたが、やがてこれは“味”として感じられるように。。。

 登場人物一人一人に分かりやすいキャラづけがなされているのも漫画的だと感じた。

ネタバレBOX

 佐伯さち子さん演じる、内気で控えめなOLが主人公。
 好きでなくなった男との間に子供ができたと判りながら、それを相手の男にも同僚にも言い出せずにひとり悩むいじらしいOL役に大人しそうな佐伯さんはピッタリでした。
走るおじさん

走るおじさん

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2015/03/05 (木) ~ 2015/03/09 (月)公演終了

満足度★★★

凝った構成が裏目に出ていた印象/約70分
 8人の登場人物は3グループに分けられ、個々のグループのやり取りを順繰りに見せる形で劇は進行。
 グループ相互のカラミがあまりないのは意図的なものだろうが、そのために全人物が揃い踏みせず、爆発的な盛り上がりのないまま劇は終了。
 最大の見せ場というべき終盤も、同じ広場にいる設定の3グループが部分的にしか交わらないのでやり取りが活発化しない。
 劇団の作風からしてわざと不発に終わらせたのかもしれないが、普通に考えるなら、あそこは盛り上げるべき場面だろう。

 グループ同士を全面的には交わらせないストイックな構成が裏目に出ていた印象は否めない。

 ために、オモシロが散発的なものにとどまり、全体としての見応えに乏しい劇になってしまっている。

 おじさんが走る理由がイマイチなのも面白さを殺いでいた。

ネタバレBOX

「走ると時間がゆっくり流れる気がする」
 これが、おじさんが走ることに目覚めた理由。
 走る理由がもっと上手く設定されていれば、劇はより面白くなったと思えてならない。

 上述の「最大の見せ場」というのは、働きもせず短距離走の練習に打ち込むおじさんをその娘が殴りに行くシーン。
 殴打場面は直接的には描かれず、2人を取り巻く人々が“実況的会話”によって様子を伝えるのみ。
 ここは全キャストを勢揃いさせ、揉み合う2人を他の者が止めようとしてひと騒ぎになるドタバタ的シーンにしたほうが会場は沸いたのでは?

 さらに言うなら、おじさんが走り始めた動機に娘への愛が絡んでいたと最後に判る展開にしても良かったか?
 本作はあひるなんちゃらにしては笑いが薄い分、ホロリとさせて幕を下ろすのもアリだったと思う。
 事実、あひるなんちゃらにはちょっぴり感動を誘って終わる話が過去にもあったはず。
大失敗。

大失敗。

モモンガ・コンプレックス

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/03/04 (水) ~ 2015/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★

初見のダンスカンパニー。熱演感を感じさせない、滑稽味に富んだダンスの数々を堪能。/約70分
初見のダンスカンパニー。熱演感をにじませず、ポーカーフェイスを基調にしれっと涼やかに踊るのがユーモラスで楽しかった。

全体としては、ダンスをメインに据えたエンターテイメントショーといった趣で、ダンス以外に色んなものを盛り込めそう。
事実、コント仕立ての演目があったり、替え歌があったりとバラエティーに富んでいたが、替え歌のクオリティーはもっともっと高められるはず。

ネタバレBOX

三人の踊り手が、命を吹き込まれた人形(?)とその介助者二人に扮して繰り広げるマイム的演目がマイベスト。

ロカビリー風の曲に合わせて一同が軽快にツイストを踊るくだりではこちらの心まで踊り出した。
ぶた草の庭

ぶた草の庭

MONO

ザ・スズナリ(東京都)

2015/02/21 (土) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★

フィクションとは思えないリアリティに釣り込まれた。/約110分
 笑いを織り込みながらも、描かれていることは極めて重く、まるで日本の某地で起きている事柄のグロテスクな写し絵の如し。他人事とはとても思えず、否応なしに劇世界に引きずり込まれた。
 話が進むにつれ笑いが薄れていくのは、扱われている事柄の洒落にならなさを図らずも表しているかのようで、なんだかゾワゾワさせられました。

ネタバレBOX

 ある施設に隔離されて集団生活を送る横川病患者の物語。
 この横川病という重い伝染病は架空の病であろうが、国も関わる巨大施設が感染源とされていること等から、患者たちがあの大事故の被害者を暗示しているのは明白。
 国からのケアがどんどん杜撰になっていくあたりは最悪の事態を予見しているかのようで、背筋が寒くなった。
 結束して国を訴えたりしないよう、患者たちが各地の施設にバラバラに収容されているという設定もじつにリアル。
 

へんしん(仮)

へんしん(仮)

ENBUゼミナール

シアター風姿花伝(東京都)

2015/02/27 (金) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★★

盛り込み過ぎ/約95分
 ENBUゼミ生の発表公演という性格を考えるなら、むしろコンテンツ数を減らして内容をスリム化し、コンテンツ一つ一つを丁寧に演じさせる事に注力したほうが良かったのではないだろうか?
 コンテンツ数が多いせいで一つあたりの稽古時間が短くなったのか、結果としてグダグダ感、ダラダラ感の目立つ公演となってしまった。
 一部のダンスシーンはとりわけひどく、雑な踊りに目も当てられず。
 いくら稽古してもダメならば、もっと容易なダンスに変えるなり、シーンを丸ごと削るなりしたほうが良かったと思う。
 とは言いながら、7人のキャストが赤ちゃんに、老人に、死者に、さらには人間以外の色んな生き物に「変身」して繰り広げるアクトの数々は楽しく、笑うことたびたび。
 かっちりしたストーリーがなく、何でも入れ込めるという本作の特性を生かし、快快によるオリジナル版にはなかった落語のシーンさえあって、まるでバラエティショーのごとき愉快な公演を堪能した。
 演じ手の下村萌さんが自作したという落語は、変身というテーマを織り込みながら巧みにこしらえられている上、下村さんは落研出身でもあるのか、江戸弁も板についていて、面白くて歯切れのいい語りを満喫。
 下村さんは動きにもキレがあって、さらに華もあり、将来を期待させる。

 しかし、快快版、ENBU版を問わず、『へんしん(仮)』という作品はなぜこうも魅力的なのか?
 それは、舞台上で起こる様々な「変身」が、作・演出の北川さんの柄の大きな世界観に支えられており、単なるコスプレやモノマネにとどまらない豊かさを感じさせるからだろう。
 その壮大な世界観を手短に表現するなら、“万物のルーツは同じ”だということ。

 あの世では一つだったものが、この世に送り込まれるにあたって分断され、人間、猿、ゴキブリ、蝶など様々な形を取ってはいるが、それらは根っこのところでつながっている。

 そのような世界観が根底にあるために、『へんしん(仮)』の面々は自分が人間以外の何かでありえた可能性に目を開き、別の存在へと変わってみせる。それは便宜上「変身」と表現されるが、より正確に言うならば、己の中に潜勢態として眠っている猿なり蝶なりゴキブリなりを目覚めさせ、解放する行為だと言っていいだろう。
 なぜ猿や蝶やゴキブリが人間に潜んでいるのかと言えば、先に述べた通り、“万物のルーツは同じ”だからであり、ヒトも猿も蝶もゴキブリも元々は一つだったからに他ならない。

 かほどまでに“大きな何か”を感じさせるがゆえに、客は『へんしん(仮)』という劇にブラックホールに呑み込まれる小惑星さながらに吸い込まれてしまうのだ。

 何かオカルトじみた事を書いているようだが、果たしてそうだろうか?

 人が轢き殺された犬や猫、いや、それどころか、自ら叩き潰したゴキブリにさえ憐れみを感じるのは、猫やゴキブリに自分が含まれているとどこかで感じ、強い同情を覚えるからではないのだろうか??

 やはり万物はもともと一つだったのである。

ネタバレBOX

 快快版では山崎皓司さんが一人で演った、猿に変身してのパフォーマンスは、ENBU版では男性キャスト2名が担当。
 女性客に抱きつくなどの客いじりは快快版より過激になっていて、皆さんの本気の嫌がりっぷりには、失礼ながらたびたび吹いてしまった。
南へ

南へ

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/02/10 (火) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★

Bチームを観劇。暇人演劇として見応え薄。/約110分
 Aチームを観劇後、何日か置いてBチームを観劇。
 分かりづらく感じた作品への理解が初見時よりも深まったのは、観劇が二度目だったことに加え、ある女を富田真喜さんが演じたことも要因だろう。
 主要人物の一人であるその若い女を、声が通ってセリフの立つ富田さんが演じたことにより、その女を含む日本人の船客たちがなぜ母国を離れて南島へ向かうのか、その理由が初見時よりもよりよく呑み込めた。

 ただ、理解はいくらか深まっても、本作が面白いかと問われたならば、答えは否。
 多くの時間が割かれている詩談義は実を結ばないまま終わってしまうし、詩を語る連中をはじめとする“暇人を描いた劇”としても見応えに乏しい。
 退屈な船旅をやり過ごすため色んな人物がバカなことを始めるのだが、バカバカしさが極まっていないため、コミカルなのに笑えない気持ち悪い時間がたびたび発生するのだ。

 砂漠監視隊シリーズという、宮沢章夫が手掛けた暇人演劇の大傑作を知る身としては、同じ暇人を描きながらあのシリーズほどには笑えない本作に物足りなさを感じた。

ネタバレBOX

 私が笑いを誘われたのは、多賀麻美さん演じる密航者の女の子が踊り出すシーンのみ。
 あの踊りには役者の持つ天真爛漫な人となりが役を超えて滲み出ていて、微笑ましい気持ちで眺めているうち、気がつけば声を出して笑っていた。

 逆に、ササキが炭酸飲料を一気飲みするシーンは、笑いを欲しているのが明白なのにまるで笑えず。
 本作の作・演出家は日常を細やか且つリアルに描く作風で知られているが、なぜギャグはこうも大味なのか?
 ササキに扮した役者は飲料を“延々”飲み続けて笑いを取りにいくが、子供しか笑わないようなこの手の力業ギャグが、この作・演出家の作品には少なくない。
『忠臣蔵・OL編』ではあるOLが社食のラーメンに“延々”香辛料をかけ続けて笑いを取ろうとし、『暗愚小傳』では一同が“延々”笛を吹き続けてウケを狙う。

 共通しているのは“一つことを長々続けて笑いを取ろう”という安直な意図。
 今後の作品にはもっとひねりの効いたギャグを期待。
独りぼっちのブルース・レッドフィールド

独りぼっちのブルース・レッドフィールド

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2015/02/22 (日) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

恒例の開演前パフォーマンスも力作!/約110分
 胸にズシンとくる重厚なストーリーを迫力のアクションシーンと無数のギャグで彩った、見応え十二分な一作。

 ドラマを引っ張るのが渡辺徹なら、笑いはCR岡本物語がリード。
 コメディアンとしての破壊力は作を追うごとに増していて、フルスロットルの体当たり演技で会場を沸かせる独壇場的シーンでは、徹さん目当ての一見客とおぼしき年輩の女性がたも思わず吹いておられました。
 口ほどにもないヘナチョコ男を演じさせたら、岡本さんの右に出る者はいませんな(笑)。

 もちろん、この劇団の慣例(?)に従い、今作でも無生物キャラが大活躍。
 今作登場の「アレ」は、これまでにフッキーが生み出した無生物キャラの中でも屈指の好キャラと言ってよく、その物の用途に絡めた「巧い」ジョークの数々と無生物らしからぬふてぶてしいキャラクターには大いに笑わせていただきました。

満足!!

ネタバレBOX

 ラストシーンとなった、一人娘との幸せなひと幕は、晩年のブルースの脳裏に浮かんだ空しきイリュージョン。
 それを思うと切なくなった。
いつかエンドロールで

いつかエンドロールで

20歳の国

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/02/18 (水) ~ 2015/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★

友情よ永遠なれ!/約70分
幼なじみの男女5人の青春模様を10年くらい(?)のスパンで描く。

彼らの間の恋情と友情が複雑にあざなわれて出来上がった物語は、誰もが「ある、ある!」と思えるような青春の機微に満ち、また、さりげなくも真実を突いている“青春の箴言”的な名ゼリフが随所にあって、強い共感を持って鑑賞できた。
最近の20歳の国作品としては珍しく、恋愛よりも友情にフォーカスが当てられていて、友情譚としての出来の良さには瞠目!
ラス前のワンシーンには思わずホロリ。。。
男だけの友情でも女だけの友情でもなく、内部で色恋沙汰もある男女混成仲良しグループの友情を扱った本作のような作品って、演劇に限らず、これまであまりなかったんじゃないだろうか?
そういう意味でも、観る価値大の一作。

時制がコロコロ入れ替わるので少々頭が混乱したけど、堪能しました。

ネタバレBOX

地方の高校生だった幼なじみの5人組が東京の大学に進み、社会に踏み出すまでを描く。

誰かさんと誰かさんが付き合ったり、それを知って嫉妬する誰かがいたり、グループ内で色々ありながらも、無理なく自然に友情を維持してゆく5人の姿がじつに清々しい。

ただ、この友人関係がいつまで続くのかと考えたら、ちょっぴり切ない気分に。。。
この関係がゆくゆく途絶える可能性を作品自体が示唆してもいて、でもそのことが本作に奥行きを与えていたようにも思う。
青春期を終えた方なら分かると思うが、グループ内の誰かが結婚したりすると、いつも一緒にいた青春時代がまるで嘘だったかのように、一同が集まる機会はどんどん減っていくのだ。

この5人組にしても、まずはモモコが結婚し、次いでシゲオとアヤナがまさかのグループ内結婚!
5人が揃う機会は今後どんどん減ってゆくに違いないが、それだけに、新郎新婦ら4人との友情を言祝ぐかのような、シゲオ&アヤナカップルへと捧げられたヘイスケのウェディングスピーチには感動!
ピンスポを浴びたヘイスケが一人で語るこのスピーチシーンはラス前に置かれているが、個人的には、このシーンで幕切れにしたほうが劇が締まると思った。
南へ

南へ

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/02/10 (火) ~ 2015/03/01 (日)公演終了

満足度★★

Aチームを観劇。説明不足が過ぎる。/約110分
 観る人それぞれに様々な感慨を引き起こす作品なのではないか?
 初演から四半世紀を経て再々演されるこの劇について作・演出家はそう言うが、これは裏を返すならば、どう受け止めるかを客にほぼ丸投げしているということ。
 実際、母国からとある南島へ移住するため船旅の途上にある富裕な日本人達がどんな動機でどんな島へ渡るのか、当人達はほとんど語らず、それを我々は推察するほかない。

 これは不親切に過ぎるのではないだろうか?

 冗漫な詩談義に多くの時間を割くくらいなら、その時間を使い、南島へ渡る理由を各人にもっと語って欲しかった。

 初演時はバブル期の真っ只中にあり、本作は異常な好況がさらに進んだ近未来を描いている。
 当時の日本への強い怨嗟を込めて書いたと作・演出家が言うだけあって、好況を背景に思い上がっている日本人が悪意たっぷりに描かれているが、新天地へ向かう彼らはどういうわけか一様に倦怠感を漂わせ、何かに苛立っている様子。新天地への期待感はあまり窺えない。
 その理由も私にはつかみかねた。

 多賀麻美さん演じる底抜けに陽気な女の子がたいそう魅力的でした。

ネタバレBOX

 外国人やハーフの船員がいるにもかかわらず、船内は日本語以外使用禁止。
 船客の中には外国人への嫌悪感を口にしてはばからない貴婦人もいて、船客達が日本を去る理由の一つが、バブル景気が日本へと呼び込んだ無数の外国人労働者への嫌悪感であることが窺い知れる。
 彼らは移住先の南島に日本人だけの楽園を作ろうとしているのかもしれない。

 作・演出家は本作を今このタイミングで再演することに意義を感じているようだが、本作に現代性を見出すとするならば、船客の多くが“思い上がった富裕層”であるという点だろう。

 彼らは外国人への、とりわけ、かつて征服を試みたアジア諸国の人々への強い差別意識を抱いているが、格差社会化が進む今、この差別意識が外国人でなく、同じ日本国籍を持つ“貧民”へと向かったら……

 そう考えたらゾッとしたが、ひょっとするとこの想像はもはや現実になっているのかもしれない。

さくらさくらさくら~うちの長屋(バカども)を紹介します~

さくらさくらさくら~うちの長屋(バカども)を紹介します~

劇団皇帝ケチャップ

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2015/02/12 (木) ~ 2015/02/15 (日)公演終了

満足度★★★★

長屋住まいの発明家父娘(おやこ)が様々な騒ぎを巻き起こす楽しい時代劇/約80分
 長屋暮らしの発明家父娘(おやこ)がトンデモな発明の数々で江戸の町に大小様々なハプニングを引き起こす愉快なコメディ。
 父娘が作る発明品がロボットや充電器など当時はありえないものだったり、娘が今風のオシャレなメガネを掛けてたり、「ニート」「ラムレーズン」といった横文字が普通に登場したり、時代性を無視した内容に最初は戸惑わされるけど、慣れてくるとそれもだんだん楽しくなってくる。
 何よりいいのは、発明家父娘が奇特なことを生業としながらも普段は普通の町人であり、ひとクセふたクセありながらも気はいい仲間達とバカを言い合いながら落語さながらの楽しい日々を送っているところ。
 人情味に満ちた江戸弁でなされる戯れ言の応酬にはほっこりさせられました(^▽^)/

 役者では発明家父娘の父・源四郎を演じた周大樹さんが印象的。
 小気味よい江戸弁が劇に軽快なリズムとあったかいムードをもたらし、それに乗って共演者も楽しそうに演技していて、劇の基調音を作っていた感じ。
 役者があまりに楽しそうだと不真面目に見えて客は不快になったりするものだが、本作ではそうはならず、楽しげな役者陣につられて客の私も幸せな気分に。

 幸せな心地になれたのは魅力的な女優陣によるところも大きく、晴れやかな着物姿で快活に振る舞う皆さんに一男性客たる私はたくさんの元気をもらいました♪

ネタバレBOX

 アイスクリーム屋の美人女将(下川アリサ)に冬でもアイスが売れるようアイデアを求められた源四郎が冬を夏にする機械を発明し、江戸を大混乱に陥れる物語がメインストーリー。
 娘の発明品が生み出す騒ぎがこの混乱に拍車をかけて、じつに楽しい劇でした。
雲の脂

雲の脂

ホエイ

アトリエ春風舎(東京都)

2015/02/07 (土) ~ 2015/02/16 (月)公演終了

満足度★★★★

薄気味悪さが後を引くブラックな神社コメディ/約100分
女性神主とその姪が牛耳っている海辺の神社で薄気味悪い出来事がつぎつぎ起こるブラックコメディ。
会場ではたびたび笑いが起きていたが、ユーモアはかえっておぞましさを強調し、怖いもの見たさで最後まで飽かず鑑賞。
心の中は不快感MAXなのに、それでも前のめりで見入ってしまう魔性の舞台でした。

この薄気味悪さは後を引く。。。

ネタバレBOX

おぞましさに拍車をかけていたのが、二人の男性登場人物。
うじうじとして弱っちいくせ腹に一物抱えてそうな神主の甥。
部下にフルスロットルで当たり散らす高圧的な出入り業者。
二人が喋り出すだけで神経を爪の先で引っかかれるような不快感に苛まれ、往生しました。

でも、本作がここまで薄気味悪い作品に仕上がったのは二人の存在の賜物。

こんな人物を生み出した山田百次さんの演出力には脱帽です。。。

分けても出入りの廃品回収業者。部下に当たる時とはまた違った、神主やその姪と喋る時の落ち着き払った口ぶりも恐ろしく、好感度ゼロなのにたいそう引きつけられた。

相次ぐ奇現象がただの天災なのか、この悪徳業者と癒着した悪徳神社への天罰なのか、悪徳業者が引き起こした人災なのか、最後の最後まで判らずじまいなのが何より怖かったです。
暗く暖かな日々

暗く暖かな日々

小松台東

OFF OFFシアター(東京都)

2015/02/03 (火) ~ 2015/02/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

今作も言うまでもなく宮崎弁演劇です。/約100分
 いつもは小品の趣がある小松台東作品。
 が、今回はいつもよりスケールが大きい印象を受けた。
 これまでの多くの作品と同じく家族を扱い、上演時間もこの劇団としては平均的な約100分、小屋も小さめなOFF・OFFシアター。家族という小集団を描き、尺もほどほど、会場も狭いのに、デッカい印象を受けたのは、今作が内藤家の未来、ここでは途絶えずこの先も続くであろう一家の歴史を予感させる内容を持っているからに他なるまい。
 余韻を残すような終わり方は一家の「この先」を否応なしに想起させ、じんわりじわじわと感動が込み上げた。

 タイトルに「暗く」とある通り、色んな事が重なって内藤家の面々の胸の内はきっとどんよりしているに違いない。
 それでも舞台上に騒々しい時間が流れて彼らが時には白い歯を見せ、客席にも笑顔が咲くのは、色んな人々が内藤家に出入りして茶の間に明るさを持ち込み、家を活気づけるからだろう。
 なんだかんだありながらも内藤家がお家断絶を免れそうに思えるのは、この「内藤家を取り巻く人々」が離散しそうな一家を温かく包み込み、そうとは知らずに束ねているからに他ならない。

 この意味で本作は、チラシにもある通り、まさに「絆の物語」と言えよう。
 このあったかい「絆の物語」に涙したお客さんもおられようが、私は泣くまでには至らず、その代わり大いに笑った。
 とりわけ内藤家の家長・晴夫の部下役の永山智啓、晴夫の友人役の瓜生和成の交わすスッとぼけたやり取りには爆笑!
 そして、浅野千鶴さん演じる娘があたかも素で笑っているかに見えるいくつかのシーンには微笑を誘われました。

ネタバレBOX

 舞台となるのは、母親が入院中のある家庭。
 そこへ別居していた父親が妻の入院を聞きつけてふらりと現れ、「またここに住む!」と言い出して波乱を起こす。
 娘の朋美はその酒癖の悪さで母を悩ませていた父を疎み、「帰って!」とおかんむり。
朋美の兄・克則も温かくは迎えてくれず、父はイライラ。
 そこで父・晴夫は友人の稲本、会社の部下・関根に援軍を頼んで引っ越しを強行!
 そんな折も折、妻が帰らぬ人となって、内藤家はますます暗鬱なムードに…。

 こうしてあらすじだけを書き連ねるととても暗い話のようだが、稲本や関根をはじめとする一家を取り巻く面々がすこぶる明るく、劇は笑いを誘いながら進行。
 それに、お母さんは亡くなっても、息子の克則にはなし崩し的に家に住みついているカノジョがいて、さらには、稲本が朋美と同級生だったことも発覚!
 劇は克則とカノジョの、そして朋美と稲本の結婚を匂わせつつさらに進み、内藤一族が今後も栄えていくことを暗示しながらどこか前向きな印象を残して終わる。

 日本が国策として推し進めた核家族化はさらに進んで単身世帯の氾濫を招き、日本はまさしく無縁社会となりつつあるが、協調性に乏しく人付き合いを疎みがちな私でも、こういう劇を見せられると今よりは大家族が多く、色んな縁に支えられていた少年時代が懐かしくなってくる。
 

 核家族化、ひいては単身世帯化は人口一人あたりの出費を増加させ、日本の経済発展を促進したかもしれないが、同時に少子化も推し進め、結果的には経済を冷え込ませている。
 目先の利益だけを追い求めると痛い目に遭うという好例だ。
喜劇 ガン告知

喜劇 ガン告知

劇団ズーズーC

秋葉原ズーズーC劇場(東京都)

2015/02/07 (土) ~ 2015/02/22 (日)公演終了

満足度★★★★

見せ場で演歌を流すのはやめたほうが良いと思う/約100分
ホンがとてもよく出来ていた。
こりっちでも読めるあらすじはあくまで概略でしかなく、実際観ると話はもっと細かく展開して状況は二転三転、否、五転六転ぐらいして、しかも、とてもロジカルに話が紡がれている。

話がどんどん転がって台本レベルではとても面白いのに、どこか爆発力に欠けるのは、喜劇役者として図抜けている座長・オメオリケイジさんと互角にわたり合える喜劇役者が共演者の中にいないこともおそらく一因。
そういう人がオメオリさんとドライブ感あふれる掛け合いを繰り広げればアンサンブルの笑いが生まれ、もっと見応えが増していたかもしれない。

しかし、そこまでの共演者は残念ながらおらず、劇はほぼオメオリさんの独壇場。
オメオリさん演じる爺さんとたびたび衝突する強盗役の男優が喜劇役者としてもっと達者であったならば…と悔やまれる。

それから、音響も残念。
ここぞという見せ場に、決まって大音量で演歌を流すのはどうなのか?
日本語の曲が大音量で流れてくるとセリフが聞き取りづらくなるし、ましてそれが演歌となれば泥臭い印象がつき、若い客が逃げてしまう。
中年の私にさえ、演歌はかなりキツかった。

でも、自前の小屋で劇団員の皆さんが直々に客を迎えてくれるアットホームな雰囲気は良く、また、接客も丁寧で、好感の持てる劇団ではありました。

ネタバレBOX

上にホンがロジカルだと書いたが、別言するなら理屈っぽいということでもあり、話を咀嚼するのにやや苦労した。

見所は、理屈っぽさが薄れてナンセンス度が増していく終盤。
中でも、強盗と人質三人が、誰が犯人かをまだ知らない刑事相手にミニドラマを演じるくだりがいい。
「演技をヒントに犯人を当てろ!」
強盗に入られたサラ金社長役のオメオリさんの言葉に続いて四人は芝居を始めるが、誰かが勝手に刑事を演じ、刑事が主役の青春ドラマが始まる展開には爆笑!
しかも四人の演技にはヒントなぞ微塵も隠れておらず、怒る刑事にサラ金社長は言う。「こういうのをやってみたかっただけなんじゃ(笑)」
これには笑った。
バカバカしくって最高でした♪
お暇をこじらせてⅡ

お暇をこじらせてⅡ

aji 2021年活動終了

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/01/29 (木) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

海外文学二作品を巧みに編集した佳作/90分強
カミュ『正義の人びと』とワイルド『幸福な王子』。この二作を原作とし、「正義と幸福」に真っ向から迫った舞台作品。

両作を90分でやりきるのは無理なので、どちらもかいつまんであるのだが、話の編集がとても上手く、骨子をきちんと押さえてあるため、原作を知らなくともおそらく理解は可能なはず。

思わぬ趣向を取り入れ、さらに音楽と照明を効果的に用いた演出も素晴らしく、「正義と幸福」を主題とする大真面目な作品にもかかわらず、面白く鑑賞できた。

それでも、我々に身近でない「革命」を扱った『正義の人びと』を軸に劇が進むため取っつきづらいところもあり、眠気を誘われやすいのも事実。

今作のテーマを伝えるため、そして眠気を覚ますため(?)随所で「語り部」が登場し、マイクを使って軽快に喋るのだが、いかんせん言うことが分かりづらく、かえって眠気を促す結果になっていたのは残念至極。

ただし、眠気を誘う内容でも良作は良作。
本作を含め、出来がいいのに眠気を誘う演劇作品は少なからず存在する。

印象に残った俳優は『幸福な王子』でツバメを演じた若手女優。情感あふれる豊かな演技に魅きつけられた。

ネタバレBOX

ピエロメイクをした役者たちがズラリ並んで椅子に座り、客席に向かって語りかけるようにセリフを発する『正義の人びと』の演出にはビックリ!
ただ、一様なピエロメイクは各人から固有性を奪い、「正義と幸福」が誰彼問わず全人類に共通の普遍的な悲願であることを印象づける上、手に入れ難いそれらを求める人間の営みの滑稽さや哀しさを表してもいて、とても効果的だったと思う。

最も感動した場面は、革命の第一歩たる大公襲撃が成功する直前、革命グループ一同が成功の予感に酔い痴れるかのように湧き立つシーン。
乱舞し絶叫する役者たちと晴れ晴れしい照明が込み上がる歓喜をこれでもかとばかりに伝えてきて、胸が震えた。
とらわれた夏

とらわれた夏

ほりぶん

ムーブ町屋4階ハイビジョンルーム(東京都)

2015/01/29 (木) ~ 2015/02/11 (水)公演終了

満足度★★★★

女優たちがワンステージで消費するカロリーは相当なはず。楽日には初日よりもきっと痩せている?/約60分
混乱が混乱を呼ぶハチャメチャでバカバカしい物語を堪能。
女優四人が振りきれた演技で作り出す狂乱の修羅場は圧巻!

罵り合いのくだりで面白ゼリフがクロスし、聞き取れないものが多々あるのは残念だが、これは鎌田作品では毎度のこと。
「作風」なのだと割り切るしかありませんな(笑)。

ハチャメチャながらも話の構成がスッキリしていて、観やすいのも良い点。
結末にもうひと押しあればなお良かった。

ネタバレBOX

他三人はともかく(失敬!)、菊池明明さんまでが鎌田カラーに染まり、女を捨てて乱れ騒ぐのにはビックリ!
ホームのナイロン100℃でもここまで乱れたことはないのではないか?
鎌田作品ならではの唾吐きまでやっておられて、その女優魂には感嘆!
軽い重箱

軽い重箱

殿様ランチ

新宿眼科画廊(東京都)

2015/01/11 (日) ~ 2015/01/21 (水)公演終了

満足度★★

Aチームのみ鑑賞。こちらの期待値が高すぎたか??/約80分
3つの短編演劇から成る80分。短編は切れ味が命だと思うが、どれも結末がピリッとせず、かなり物足りなさが残った。

とりわけ1作目「あいつの身代わり」と3作目「失われた記憶」は、笑劇として作られていながらオチがないという体たらく。
明快なオチを必要としないタイプの笑劇もあるにはあるが、2作とも秀逸なオチがつかないことには締まらないタイプの作品。

作・演習家には、短編演劇として抜かりのない作品に仕上げるべく、脚本執筆の段階でもっと粘って欲しかった。

再演時には良いオチがついていることを期待したい。

ネタバレBOX

2作目「人の金」も残念な出来。
結末が強引だし、劇中に登場する2件の「人の金」がリンクしないのも作劇的に上等とは言い難い。

こわれゆく部屋

こわれゆく部屋

水素74%

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

会話主体の派手さに乏しい劇の中に様々な人間ドラマが…/約90分
ある家庭を舞台に展開される、会話主体の派手さに乏しい劇の中に様々な人間ドラマが織り込まれていて、おおいに引きつけられた。

説明文に示されているテーマとは無関係に思えるエピソードもあったが、それも含めて面白い。

この劇団を観るのは前作『コンタクト』に次いで二度目だったが、前作のようにSF味がなく日常劇に徹している今作のほうがこの団体にはお似合い。

ネタバレBOX

両親がすでに他界し長女と年下のカレシが二人きりで暮らす家に、長らく家出状態だった次女が男連れで帰ってくる話。

次女のカレシ面をしている同伴者が実はホストで、ツケの回収のため次女に付きまとっているだけだったとおいおい判る展開がいい。

ただ、次女とホストは脇役に過ぎず、本作の主題と直接的に関わっているのは次女の秋子とそのカレシである高橋、そして家に遊びに来た二人の同僚・三浦の三人。
三人は大病院の小児科で共に働く看護師であり、時々起こる、入院していた子供の死をどう受け止めるかをめぐって激しい口論が交わされる。

看護師としてのキャリアが浅い高橋と三浦は子供が死ぬたび、あまりのショックに食事も喉を通らなくなるが、キャリアが長く子供の死にも慣れている秋子は、子供が死んだ直後にカツ丼を平らげてしまうことさえある。

人の死が日常である病院という社会に「順応」しているとも言える一方、子供の死という重い事態に直面したとき当然発動すべき感覚が「麻痺」しているとも言える秋子のことを高橋と三浦はなじるが、秋子は「子供が死ぬたびに落ち込んでいたら仕事にならないから悲しみを抑えているだけ。私も実は悲しんでいる」と言い返す。

このやり取りを聞いて素朴に思ったのは、子供の死を悲しむこととカツ丼を平らげることは両立できるのではないか、ということ。それも、秋子のように小児科看護師として長いキャリアを積んでいるのなら尚のこと。

日本では通夜の席で酒を飲むのが慣習化しているが、あれが許されるのなら、秋子の行動も許されていいのではないだろうか?
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

ギャグ・ハードボイルド
観劇中にフワッと浮かんだこの見出し。あながち的外れでもないと分かったのは、カーテンコールで或る役者がYシャツを脱ぎ、中に着込んでいた物販用の劇団オリジナルTシャツを披露した時。

なんとそこには「HARD BOILD & BOILD GAG」の文字!
ライオン・パーマは“笑えるハードボイルド”を志向する集団だったのだ!!

その原点回帰公演とも言うべき今作の内容は劇団Tシャツに記されたスローガンそのまんまで、随所にギャグがちりばめられた熱き物語を堪能!

お笑い好きな私はストーリーにちょっぴり感動しながらも主にギャグに注目しつつ鑑賞したが、センスを誇ろうなどという虚栄心が微塵も感じられない本気でおバカなギャグの数々に爆笑したり失笑したり。

…あ、でも、近づくと加齢臭のしそうな(失敬!)平均年齢高めなオイチャン達が必死にバカをやる姿が笑いと同時に少しばかりの感動を与えてくれるのもまた確固たる事実。
いや、マジで。

しかし、ハードボイルドとギャグって意外に相性がいいもんですね。
ハードボイルド調の力んだ演技でギャグをかますと、緊張と弛緩のギャップがデカくて可笑しみが増す。

上演時間はちょいと長めで約125分。

ネタバレBOX

タイトルが暗示する通り、一度挫折した男達が再起に向けて奮闘する物語。

いちばん笑ったのは、いっとき売れかけたコント集団の元メンバーが現在の職業をキザな口調で勿体つけて明かすシーン。
カラーひよこの行商をしていることがおいおい判り、これには吹いた(笑)。
プロジェクト7

プロジェクト7

田上パル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/01/05 (月) ~ 2015/01/12 (月)公演終了

満足度★★★★

花嫁修行の話…なのか??/約95分
チラシの煽り文にもある通り、花嫁修行の話。

ただ、花嫁修行というものが思いっきり寓話化されている上、寓話化の方向性が著しく常軌を逸しているため、多くのお客さんは奇想天外な物語を見せつけられてお口アングリ状態。
こういうものが決して嫌いじゃない私は、少数のお客さんと共に客席でクスクス笑ってました。

ただ、コメディだと捉えるならば、もっとバカバカしさが振り切れていても良かったか?
個人的には、まだまだ、との印象を受けた。

ネタバレBOX

身も蓋もないまとめ方をするならば、結婚の挨拶をしに婚約者宅を訪れた女が、結婚をたやすく許そうとはしない“七笑福”なる一団と戦う羽目になる不条理コメディ。

彼らのデタラメぶりに翻弄されてトチ狂った女が、樽をまとって登場するシーンがツボでした。

ひょっとすると結婚に絡む真摯なメッセージが込められていたのかもしれませんが、私にはそうは感じられませんでした。

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