満足度★★★★★
埼玉県立秩父農工科学高等学校「少年神社」
「劇団桟敷童子」のような世界観。こう書けば小劇団マニアの方たちには解ると思う。セットは神社とおみくじ箱と鳥居。これだけで土着的な情景を空想できるってもんだ。更に序盤から他校を圧倒的に平伏させるような摩訶不思議な光景が目に焼き付く。照明が特に素晴らしい。観客をあっと言うまにその世界に吸引しねじ伏せるような力のある演出だ。瞬間、「やるな。」と期待に胸膨らませてドキドキしてしまう。音響、大道具、小道具、あの世とこの世の狭間で織り成す不思議色ロマンな演出、構成、キャラクターの立ち上がり、衣装、メイク・・それらはまさに独特なあっちの世界のようで完璧だった。さらに童の歌う歌、踊りはこれに調和し融合し「精一杯生きる」という言霊のようなバイブルを突きつけた舞台だった。あまりにも素晴らしく秀逸な舞台に鳥肌が立ったほど。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
村に祭られた氏神様の周りで遊ぶ黄泉の国の狭間からやってきた子供たち。それは現在大人になった彼らの過去の光景だ。過去の4人と、血のように紅く染まった唇に白い肌を持つソラと、大人になった4人が交錯する物語。
狭間の子供たちも大人も白い狐のお面を腰にぶら下げている。この小道具が終盤、ライトアップされて黄泉の国の情景を幻想的に塗り替え美しい幕引となる。
狭間の子供たちはソラを交えて仲良く遊んでいたがソラは突然居なくなってしまう。残された4人はソラが最後に言った言葉「5110日後に逢おう」という言葉を信じて大人にななったものの、なんだか現実を受け入れられない彼らが居た。現実って厳しいな。他人と関わらなければ自分自身が傷つかなくて済む。現実に押しつぶされる前に自分から逃避しよう。なんて考えワタルは神社に居座って大学にも行かない日々が続いた。
そんな折、土地にまつわる伝説は14年に一回ずつやってくると言われそれが今年、ソラが居なくなってから5110日目だった。チーーーん・・鈴の音が鳴り響く度にあの世から子供たちはやってくる。そうして人形を抱えたお婆もやってくる。人形はソラの身代わりだ。お婆はソラが死んでから、その現実を受け入れがたく人形をソラと思い込んでいたのだった。
ソラはお婆や大人になった4人を勇気づけ生きるという現実を受け入れられるように・・とやってきたのだ。かつてソラが友の為に血液を提供し死んでいったその血は友の中で生き、流れていた。なのに友は生きていても死んでいるようなさまだ。「せっかく赤い血が流れていても君はいったい誰なんだい?」と白いソラが吐くセリフが静かに響く。
そして、ソラはお婆に「大丈夫だよ。この子は氏神になってこの村を守っているよ。」と囁くのだった。
過去の自分と向き合う今の彼らが対峙する描写が絶妙だった。物語にインパクトを与える為に響かせる鈴の音、子共らが遊びに興じる光景、神隠しの伝説、ソラと子供たちのキャラクターは観客を充分に魅了し、終焉後の拍手喝采とざわめきは確実に優勝を予感するものだった。
生徒らの演技力、堂々とした佇まいは幻想的な世界観の中にひょこりと現れた迷子の子鬼を想像し、なんだかとっても嬉しくなってしまった。素晴らしい舞台をみるとなぜこんなにも幸せなのだろうと、つくづく思う。
☆次回の全国大会は8月の福島。福島なら行けるから、泊まりがけで行こうと思う。
満足度★★★
伊那西高等学校「The Lost Ones」
占いの館でのサスペンス。占い師を演じた清水彩香里のキャラクターが実に素敵だ。彼女のインパクトのあるキャラは他を圧倒的に引き離し、立ってるだけで絵になる。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
占いの館の占い師はとにかく当たると評判だった。噂を聞きつけて大勢の迷った人間たちがやってくる。更に街のあちこちで連続爆破事件が起きるがこれも占い師は予言してしまう。結果、マスコミに祭り上げられ大儲けをするのだが、蓋を開けてみれば各地の大爆発は占い師自らの自作自演だったことが、探偵によって明かされる。
一方、さやかは自分の母親・まゆみを占い師に殺された事件で占い師を憎み恨みを晴らそうとしていた矢先、はからずもそのチャンスは巡ってくる。さやかは激情にかられ占い師を刺したが、その直後、この占い師こそがさやかの実の母親だったことが解る。失意のうちにもいくつかの謎は解明されていくうち、さやかが幼いころ、占い師はさやかを轟家に預けたのだと知ることになるが、占い師は息をひきとってしまうのだった。
この作品は生徒・顧問の創作だが、ホームレスの人たちと占い師の関係性がいまいち解らない。むしろ轟家と占い師の関係性に重点をおいて立ち上げた方がもっとサスペンス色が色濃くなったような気がした。更に探偵が動いてるのに警官が動かないというのもちょっと不思議な気がしたのだが・・。
満足度★★★
専修大学松戸高等学校「みんなでロミオとジュリエット」
富岡高校と聖キャピュレット高校の演劇部の情景を描写した物語。演劇ではよく使われる舞台セットの上下での演出が面白い。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
聖キャピュレット高校の演劇部は「ロミオとジュリエット」を演じることになったが、これを偵察する富岡高校の演劇部の男子部員・恭平はは敵の聖キャピュレット高校演劇部のあかねに恋してしまう。
この時点で既に現代版ロミジュリなのだが・・笑
やがて二人は予定通りに愛を告白して、これまた予定通りに付き合うことになる。しかし、これを知った二つの演劇部はいがみ争い、これまた予定通りに乱闘となってしまうのだが(もうまさにロミジュリ!)、しかしいつの間にか彼らを仕切る通行人(先輩)が登場し、「仲良くやれよ」みたいな一言で、一同は頭を垂れ平伏し改心し、そしてみんなでロミジュリを演じることになる。笑
殆どコメディ。
作者は「浅田太郎(顧問)と專松の愉快なひとたち」とある。
たしかに愉快だ。高校生って笑いのセリフがコミカルでアニメ的だから、大人のコメディよりはセリフは斬新だ。だから高校演劇は面白い。
満足度★★★★★
新潟県立新潟南高等学校「夏への扉」
作者の谷藤太が主催する劇団「enji」といえば小劇団マニアの方はご存じのはず。実に「enji」らしい戯曲でした。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
1966年、初夏。
ビートルズの来日に熱狂した夏。若き父と母がいた夏。
そして大好きだった叔父さんがいた、あの夏。
そして冬、母も亡くなって現在に失望した少女はあの夏の陽射しのような明日を探して、喫茶店にあるいくつもの過去の扉を開けて回り、幸せだったあの頃に思いをはせながら傷心していた。
そこへ不思議な香・オプナースを持って売りに来た女から、それを買った少女は香を吸い込んで目を覚ますとその夏の中にいた。彼女の名前は「明日香」。
その時、明日香は安らぎの中で眠り続けていた。彼女の一番幸せだった時間に戻り、過去から帰ってこないつもりだったが、これを現実の世界の明日香の恋人が連れ戻すストーリー。
「私、あの頃の方がいろんなもの掴んでいられた。手はずっと小さかったけど、小さい手の中に大事なものがたくさんあった気がする。だけど今はこぼれちゃう。手はずっと大きくなったのにこぼれちゃうの。ザーーーっと。」
相変わらずの谷藤太独特の言葉の表現の巧みさ。この戯曲は聴覚でも刺激され心地よい美しいメロディーとなって耳の周りをくるくる、くるくる回りながらすとん!と入り込むのだ。これをまたキャストらが見事にその情景を演じ、高校生ながら登場人物の年齢に似せた見せ方はむしろ職人技だった。ワタクシは完璧に騙されその世界観に浸り、しばし、ゆるりと過去の美しい風景を眺めていたのでした。
素晴らしい舞台でした。
満足度★★★
栃木県立佐野松陽高等学校「ぺっとしょっぷ。」
動物嫌いの高校生と動物達が織り成すハートフルストーリー。龍太のキャラクターが凄く笑えた。コミカルな表情はまるでアニメを見てるかのよう。笑
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
動物嫌いの龍太は金の為にペットショップのバイトを始めるも、元来の動物嫌いの魂はペットショップに居る犬たちとも折り合わない。それどころか溝は深まるばかりだ。
しかし龍太はショップで働いているうちに動物の声が聞こえるようになり、すると人間たちの都合で捨てられた動物たちの気持ちも解るようになったのだった。そして人間たちの身勝手さも思い知るようになった龍太はペットショップの店長の勧めで犬を飼うことになるのだった。
殆どコメディ。コミカルなセリフも絶妙で犬や猫のキャラクターの立ち上がりは秀逸だった。特にシャムネコを思わせる優雅で上品な角田猫には引き込まれた。少人数ながらきっちり魅せたと思う。
満足度★★★
埼玉県立浦和北高等学校「さよなら小宮くん」
小宮君の親友・マナブは父親が経営する中華料理屋で小宮君のお別れ会の為に場所を提供し、男女8人が集った。ここで織り成す人間模様。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ここに集った目的は小宮君の送別も兼ねて親友の好きな相手にコクる手助けをしようと考えた、まるで「男女8人夏物語」みたいな恋愛物だ。わりにドタバタカラーの強いコメディだった。
自分の恋の相手にコクる場面では自分の気持ちとうらはらに意中の相手にはこれまた別の意中が居たりして、まったく上手くいかない。それは右を向いた先には自分の片思いの人が立ち、そのまた右には自分の片思いの人の片思いの相手が立って、まあるく円を描いた連鎖のように繋がっているのだ。
そうしてそれぞれの心の内は何かに傷ついたり悩んだり失恋したり学校に行けなくなったりしている。そんな彼らを友達が勇気付けるという友情を主軸にした物語。
全体的に楽しく観られた。また終盤にほろり・・とさせる場面の構成はやはり素敵だ。
満足度★★★★
新潟県立塩沢商工高等学校「麦に水を」
小さく、何もない部屋。麦と女はその部屋にいる。そこに新たに一人の男が入れられた。閉じ込められた牢のなかで2人の人間の行動、深層心理を描いた不条理劇。少人数での演劇はキャストらの演技力が試されるが、しっかりした演技力で充分に濃厚な舞台だった。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
部屋に入れられた男・ナインはなにが何だか理由が解らず戸惑う。先に部屋に入っていた女・セブンは司令官の指示通り動き従うが、新参者のナインはその指示に抵抗し反抗する。
聖書を読むように強制させられ、これを断ったナインだったが、代わりにセブンがナインの身代わりにずっと聖書を読み続けなくてはならない、と知ると、やがて籠の中に閉じ込められた鼠のように抗うことをしなくなるナイン。
一日一回の水を与えられ、意味のないことを何でやらせるんだ!?といちいち意見しながらも徐々にナインの中にある異質なものが矯正させられ、人間らしさを失われていくさまは末恐ろしい脅迫を垣間見るようだが、セブンがナインを窘める「白い羊の中に一匹だけいる黒い羊は省かれる」という言葉は圧倒的に静かな迫力があった。
セブンは人間が人間でなくなっていくとき、喜怒哀楽が必要で、無感動の後に来るのは死ぬことだけ。と麦に貴重な水を与えて育てるが、この麦こそがセブンの心を支えたゆういつの希望だったのだ。
終盤、セブンは殺される運命だが、残されたナインはセブンの育てていた麦に水を与えてセブンと同じように育てる。ナインもやがてセブンと同じ運命を背負っているのを知っているのだ。
素晴らしい舞台だった。ちっさな箱の中で蠢く人間模様。
満足度★★★
群馬県立伊勢崎清明高等学校「くまむしくらぶ」
「くまむし」という虫をワタクシは知らなかったが、説明によると、0度~120度の温度に強く放射能にも強いめっぽう大層な虫らしいが、意外にも体長1mmのちっさい虫だ。しかしこの虫は誰にも振り返ってもらえない、誰の仲間でもない隅っこでうずくまる弱い虫でもある。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
引きこもりの啓太は「くまむし」のように、誰にも振り返ってもらえない、誰の仲間でもない隅っこでうずくまる弱い少年だった。
彼は生真面目だが空気が読めない少年だ。だから変人扱いされて一人だけ取り残されてしまうような孤独な少年でもあった。そんな少年がある日、ツンデレの彼女に恋をする。
空気の読めない啓太とツンデレの恋のゆくえを描いた物語。
どうすれば強くなれるだろう・・と悩みながらも死ぬことはしたくない。母親が悲しむから。というセリフは胸にジン!と響いた。
満足度★★★★★
群馬県立前橋南高等学校「荒野のMarchen」
セットは何もない。しかしむしろ無の状態が光った舞台だった。序盤の照明が幻想的で美しい。そして、これ以降の照明の使い方が巧みだった。その為、何もない舞台の空間が映えた芝居。
民間伝承の童話を前橋南風にアレンジしたお芝居だったが、本日のトップと公言しても良い位の公演だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
シュールな描写で会場の爆笑をかっさらう男子組。対極にベタな、いなかっぺ丸出しの女子組が奏でる童話は、「ハーメルンの笛吹き」「あんじゅとずしお」「鉢かぶり姫」などを独特のしゃべりで観客の空想を誘う。この二極を交互に描写する構成は流石だった。
更に男子の衣装、女子の制服衣装もこれまた対極で、バックが黒の舞台に美しく浮かび上がって演出ともに素晴らしい舞台だった。
ものすっごく楽しませてもらった舞台。大絶賛!
満足度★★★★
長野県岡谷南高等学校「マクベス」
魔女にそそのかされて、その気になったマクベスの悲劇。古着で壁を作ったセットが圧巻。
ネタバレBOX
16世紀、古着屋だったマクベスは魔女のささやきを信じて、大不況の中、ダンカンを殺して王になったものの、何万もの殺戮を命じ、侵略と虐殺の王というレッテルを貼られてしまう。
マクベス自身も人を殺した実感から逃れられず、徐々に精神を病んでいき、その血なまぐさい呪縛に苦しみもがき、ついには折れてしまったまでを描いた物語。
劇中、ヒトラーとゲッペルスの描写もあり、かつて激しくゲッペルスを研究した身にとっては楽しい場面だった。
ここでの見せ場はやはりマクベスとマクベス婦人だろう。彼らの油が切れたロボットのような動きは、この上もなく素晴らしかった。
誰かにアオラレ自分では気が付かないうちに巨大な何者かに仕立て上げられ、気が付いた時点では、既に戻れなくなっている。という悲しい性を持つ人間はいとも簡単に流されてしまうのだという描写も巧みだった。
満足度★★★
栃木県立宇都宮女子高校演劇部「林檎の唄」
高橋彩花は臆病で言いたいことの半分も言えない女の子だ。彼女の心の襞を演じた芝居。
ネタバレBOX
舞台のセットは積まれた無数の段ボール箱。これは彩花の心の壁だ。彩花がちっさな頃、青い林檎を画用紙一杯に描きたかったのに赤い林檎しか描けなかった。
その後、彩花は高校生になり、好きな男子ができたが、想いを告白することが出来ない。そんな彩花に赤い林檎が励ましながら彼女の心を成長させ勇気を取り戻してゆく物語。
林檎らのプチコントが楽しい。彩花を応援する姿勢も独特だ。やがて林檎らの応援の甲斐あって彩花は自分の壁をぶち破り色んなカラーで描けるようになる。
フレッシュで高校生らしい演技だった。
満足度★★★
埼玉県立芸術総合高等学校「どうしようもないもの」
どうしようもない人たちのどうしようもない思いをどうしようもなく扱ったどうしようもないお話。
ネタバレBOX
院内で、暇を持て余してる入院患者は院内で遊びまくる。これに注意し抑えようとする看護師の会話劇だが、殆どが短編コント集のようなもの。
たしかにどうしようもないお話できっと直ぐに忘れるだろう的なコントの数々。まあ、たまにはこんな緩い芝居もいいかも的な。
終盤はどうしようもない患者を上手く操る成長した看護師のほのぼのとした情景が素敵だった。
満足度★★★★
霊験あらたかな想い
チェロに魅せられた女とその女に生涯を捧げた男の物語。
男が命をかけて捧げる純愛ほど観ていて美しいものはない。この物語は崇高で美しい物語だと思う。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
貴子はベルギー人の夫とチェロ奏者の自分から逃げ出して、かつて貴子がアルバイトしていたペンション森の園にやってきた。聞けば、夫と離婚をしてチェロも止めるという。その理由は10万人に5人の難病である右手に握力がなくなってしまったことだった。そうしてこの病気は余命1年あまりだという。
全てをチェロに捧げてきた貴子は絶望のあまり途方にくれ、自分の全てを受け入れてくれる圭に逢いにきたのだった。
圭の貴子に対する一生懸命さが痛々しい。12年前に貴子の僕のように蜜月を過ごした思い出だけで生きていける、という圭は貴子が結婚した後も、ずっと、圭を慕い続けていたのだった。その想いは変わることなく圭の中で灯火のように燃え続け、時として傲慢な貴子を癒し続けるのであった。
貴子を受け止める圭の不器用で一途なキャラクター、及川のおちゃらけてキモチ悪くてオモチロイキャラ立ては、時として湿っぽくなりがちな情景をコミカルに、また飽きることなく会場を沸かせていた。物語の結末も温もりのある終わらせ方だ。
ワタクシが今まで観た東京イボンヌの公演の中ではピカイチだと思う。
満足度★★★
三人三様の恋事情
恋愛関係はつくづく面白いと思う。
冷静な他人からみたら、やれやれ・・と感じることも当の本人たちにとったら、めくるめく輝くじかんなのだ。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
男子3人にはそれぞれ彼女が居る。そして3人はパンクユニットらしい。はた目にはけっしてそんな風に見えないが。笑
今回の物語はパンクらしくない3人がパンクらしい生き方とか、パンクらしい会話とか、らしい音楽をやろうぜ!と意気揚々と語り合いながら、結局薬局、彼女の尻の下に敷かれながら足掻く物語。
マコト君はあずきちゃんが大好きだが、あずきちゃんもまた、マコト君が大好きで仕方ない。あずきちゃんのような好き好き光線をしょっちゅう出されると決して悪い気はしないのが人間事情だ。
一方で潤哉と美月の恋愛はシュールだ。しょっちゅう喧嘩しながらもイザっていうと手を繋いでお買い物に出かけるシーンは本人たちしか解らない。
更に今回、爆笑したのは櫻井と石澤美和のタッグだ。 石澤美和のキャラクターが実にいい。はた目にはモテそうもない美和が実は一番需要があるってのも解るような気がする。ついでに櫻井と同棲しておきながら浮気して他の需要があった男とくっつき、あっさりと櫻井をフル場面もあっけらかんとしていて絶妙だった。吐くセリフもいちいち面白くハマったキャラだった。笑
結局薬局、経過はあれど、結果的には女の手のひらに乗せられてぐるぐる転がされてる情景は、そんなもんでしょ、だった。笑
男たちの刹那コメディ。
満足度★★★
静岡市立商業高等学校「私の上に降る雪は」
中原中也の生涯を描いた作品。中原は8歳の時に亡き弟を歌ったのが詩作の最初だった。書けない事を苦悩しながら2冊目の詩集「在りし日の歌」の刊行を待たずして、30年の人生を終えた。
個人的に中原の詩で一番好きなのは「汚れちまった悲しみに」だ。だから中原の生涯の描き方はどんなか興味津々だった。
以下はネタバレBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台は中原の17歳の時から30歳までを描いたもの。主に二人の女を描く。
中原は17歳の時から3歳年上の女優長谷川泰子と同棲、翌年上京し、本格的な詩作活動を始めた。その後、泰子は友人だった小林秀雄のもとへ去り、26歳で遠縁に当る上野孝子と結婚。結婚後も自らの家庭の経済を顧みず泰子を援助していた。
27歳の時に、最初の詩集「山羊の歌」の出版を果たす。2歳の長男の死に痛手を受け、療養所に入院、2冊目の詩集「在りし日の歌」の刊行を待たずして、30年の人生を終えた。
劇中、太宰治に中原が「僕は貴方が嫌いだ」といったエピソードも含まれ、良く調べたな、と思う。それにしても三島由紀夫が22歳の時に「僕は貴方が嫌いだ」と面と向かって言ってのけた相手が太宰だから、太宰は嫌われたものだ。
中原を物語にするのは至難の業だと思う。30歳で死んでるのだから、泰子と家族と詩集以外にあまり取り上げる題材はないからだ。それでも約1時間の制限の中で幻想的に描写していたと思う。
満足度★★★
茨城県立土浦第一高等学校「Damn!舞姫!!」
演劇部員が部での活動や練習風景、淡い恋愛を物語にしたもの。劇中劇。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
部員たちは「舞姫」を練習しながら役とキャストを決めていく。「舞姫」は森鴎外がドイツ留学から帰国して約1年半後の1890年、陸軍軍医学校の教官となっていた森鴎外(本名・林太郎)が文壇デビューを飾る小説で、ベルリンの日本人留学生と悲恋に陥り、むごすぎる別離で狂女へ追いやられる少女「エリス」が登場する。
部員たちは「舞姫」を読んだことがなく、その説明にナビ役として一人の部員が他の部員に教えて進ませるが、これは同時に観客にも理解してもらうことを意味する。
部員の西はエリスが林太郎から受けた屈辱に憤慨し、史実や歴史を捻じ曲げてエリスの恋愛を成就させようと意見するが、同時に自分が現在進行中の淡い恋をも成就させたいという心持から、こうした発言になるのだった。誰かに恋した乙女は自分をエリスに投影してしまうものなのだ。悲劇のヒロインになりたくないばかりに・・。
丸4年におよんだ林太郎の留学中、かりそめの情人としたドイツ人女性の秘事は帰国直後、海軍中将・赤松則良男爵の娘、登志子との縁談が整いつつあった林太郎の身辺を不穏にするスキャンダルの火種にもなる。そうして西自身も淡い恋が難しい局面を迎える。
その後、エリスは故郷に帰るが、同じく西も完全に恋に破れてしまうのであった。
演技をしながらも、恋に破れた西はその劇場を抑えられずに暴れフテルも気を取り直して夕日に向かって帰路に着くのだが、現代の女子高校生にしては淡すぎる恋の描写は逆に新鮮だったりする。
ああ、そうやって青春していたんだね。・・・としみじみ懐かしむお年頃!笑
満足度★★★★
日本芸術高等学校「ゴジラ」
音響が最高!ちゃららん♪ちゃららん♪~~から始まる音楽はまさにゴジラ。勿論、ハヤタ、モスラ、ピグモン、ミニラネタは登場しゴジラファンを沸かせる。どちらかというとゴジラよりも怪獣にめっさ詳しいワタクシはドキドキ、ワクワクしながら見入っちゃったよ。笑)
物語に着ぐるみは登場しない。ゴジラもセットの裏側に乗っかってお山のてっぺんから人間がゴジラの動きをする。しかし着ぐるみはなくても充分に想像できる範疇だから、まったく問題はなかった。そうして、何故、ゴジラが着ぐるみを必要としなかったかが、終盤になって謎解きされる。
それにしても・・ゴジラ役の木村雄作がめっさデカイ男だった。苦笑!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
三原山の噴火に伴ってやよいの家族は避難することになるのだが、噴火を見たやよいの妄想と家族の物語。殆どコメディ。
やよいの父は裏千家一ノ瀬流茶道だったが、この父がめっさ面白い。裏千家のくせに味音痴なのだ。更に祖母のキャラクターもハンパではない。この家族を牛耳っているのが祖母なのだ。笑
やよいはゴジラを好きになってしまい結婚の約束をする。そこでゴジラはやよいの家族に「やよいさんをください。」とのっし、のっし・・と頼みに来るわけだ。びっくり仰天した家族は勿論、反対するがゴジラは火を噴きながら説得する。笑
しかし祖母は黙っていない。お前にはミニラという子どもがいるじゃないか!結婚しててやよいをくれとはどうゆうことじゃ!・・と。笑
困ったゴジラは一時退散し、怪獣仲間に相談するのだが、ここでの会話がバカバカしくもリアルなコメディ。円谷英二も登場させちゃうのだから、いやはやワタクシなど大いに楽しんで笑ったわさ。
悩みぬいたゴジラは生まれ変わってやよいの元に必ず現れる。その時は結婚しよう!とこれまた火を噴きながら山に戻っていったのだった。やがて三原山は噴火し、一ノ瀬家と地域の人々は避難する為に船に乗り込むのだが、やよいだけが中々、乗り込まない。遠くの噴火を愛しそうに眺めているのだった。そこに慌てて逃げてきたでっかい青年を見つけたやよいは「ゴジラ?、・・ゴジラ!!」と叫ぶ。その名前の真意をよく理解出来ない青年は、首をかしげながらも、とりあえず、さあ、一緒に逃げよう!とやよいの手を掴むのであった。めでたしめでたし。
個人的にものすっごく楽しんでものすっごく笑った。
やよいがゴジラに恋した場面から、ゴジラが山に戻るまではやよいの妄想の中の物語だが、結果、ゴジラのような青年と恋に落ちる予感を残しほんわかとさせる終わり方は心地よかった。
満足度★★★★★
東京都立六本木高等学校「六本木少女地獄」
800人の会場を騒然とさせた芝居。とにかく素晴らしいの一言。ここ数年、こんな破壊力のある芝居を観たことがあっただろうか・・。終焉後、大人も学生も、しばし、我を忘れてシーーン・・となった。そして少したってからザワツキ、そうして口々に「凄いね」と絶賛していた。高校生の殆どはこんな演技をした彼らに衝撃を受けたようだった。そうしてワタクシも。姉を演じた若狭明美の、観客丸ごとぶち殺してやる的な演技に全身の毛という毛が逆立ったように感じた。
脚本は原くくる(生徒創作)だ。これは本としてもヒットするだろうし、映画でもイケル。そんな六本木少女地獄。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
シーンは行方不明になった両親に置き去りにされた姉とひきこもりの弟の描写から。姉は弟を苛めぬく。姉は居なくなった父の真実を弟には告げず、「父さんはボクロケットミントンの有名な選手だった。」と嘘をつく。「まったく情けない。お前も強くなって父さんのようにおなり。」と。
やがて弟はその気になって父の跡を継ぎボクロケットミントンの選手になるが、このボクロケットミントンの説明がハチャメチャで面白い。その後のコミカルでバカバカしくてハイテンションな情景はアニメを見てるようで、かなり笑った。もしかしたらこのままコメディとして確立させるのか?なんて考えながら観ていたら、後半からのうねりのスピードは素早かった。
過去の描写から。
姉は、父親から近親相姦される。この時の姉が空を突き刺すような絶叫は観ていた観客を凍りつかせるような演技力だった。壮絶としか言いようのない絶叫は孤独と絶望とこの世の終わりを告げられた時に発する恐竜のような声だった。何もかもが滅んで虚ろになっていくさま。その断末魔のどこにも届かない叫び。ただ苦しみと怒りと悲しみから発せられる切り裂くような叫び。渾身の力を込め、声の限りに叫んだ姉はカラッポだった。静寂な空気を揺るがすように、その声は会場に響き渡ってストンと落ちた。
そんなことをした父は行方不明になって、その幻影を引きずることになった姉。街でうろつくとオヤジに5万でどうだ?と声をかけられる。5万じゃ安いよ、オッサン!と返事する。なぜ女に生まれちゃったんだろう。ああ、嫌だ嫌だ女なんて・・と、女であることの卑屈さも表現しながら、しかし、姉はその叫びの後に全てを許すという。父の行為も全てを。そうして私たち兄弟が世界を征服してやる、とのたまう。それは兄弟の希望だ。
少女が飼っていた鳥かごの中の鳥は卵を産むが孵らない。なぜって卵を替えていたから。
個人的な意見だが優勝に値する作品だと思う。現代の少女が抱えた問題作だとも思う。終焉後、ワタクシはうるうると涙が溢れ、しばし席を立てなかったのだった。
(六本木高校はチャレンジスクールです。定時制・総合学科・三部制・単位制で開校6年目を迎えました。制服はなく、上履きもありません。不登校経験者や高校中退経験者が多く在籍しています。)
満足度★★★★★
浜松海の星高等学校「ホーリーナイト」
素敵なファンタジーだった。個人的にこういった芝居は好みで大好きなのだが、このミュージカルで歌われるキャストらの声が美しい。特に素晴らしかったのは北谷優希の天使のような声。また、キャッツのような衣装で広場に集る猫たちの集会の場面では、バックに映るブルーの空とそこに浮かび上がる大きな満月のワンシーンはシンプルな舞台セットと完璧に融合し美しい一枚の画を見てるかのようだった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
小学生のあきらは飼い猫のホーリーを庇って自分が事故にあってしまう。これに責任を感じたホーリーは落ち込んで家出をしてしまう。ホーリーが居なくなってしまってから笑顔を失くしてしまったあきらを見たサンタクロースはサンタ学校のサンタの見習い生・2号に課題を出す。それは「あきらを笑顔にすること」。
これを受けて2号は白い猫となりホーリー達の仲間になってあきらの想いを伝えることを思いつく。猫たちはどうしたらあきらを笑顔に出来るか、どんなプレゼントをしたら喜ぶかを考えた挙句、「ホーリーナイト」の物語を歌にしてプレゼントしようと考えた。「ホーリーナイト」はクリスマスの晩に拾われた黒猫と家族の物語だ。
こうして2号はあきらを広場に読んで猫たちの歌を聴かせるのであった。ベタで解りやすい何処にでもあるような内容だ。だけれど、とにかく楽しかったしキャストらが吐くセリフもひじょうに聞き易かった。滑舌が素晴らしい。シンプルだけれどジーーン・・と響いて、じわっとしてなんだか涙が出た。心が温かな甘水で満たされたような芝居だった。
夢と希望に満ちたファンタジー。
満足度★★★
茗渓学園高等学校「うちに来るって本気ですか?」
御殿場家の騒動コメディ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
御殿場家の姉の元へネット・結婚情報センターで知り合った男が尋ねてくるという。しかし、姉はそんなちょっとカッコ悪い事を兄弟に知られたくない。ひた隠しに隠そうとした姉の行為から、兄弟は偶然にも多くの勘違いをし、その勘違いから騒動になる。
ここでの兄弟達はおっちょこちょいで人の話を最後まで聞かない。笑
その結果、勘違いのたらい回しとなったコメディだった。
小説家を目指す兄の残念すぎる勘違い度が観ものだった。