各団体の採点
引きこもりの男を癒すために、捨てたはずの「演劇」の手法を用いる主人公。と、同時に彼は、過去作から飛び出してきた3体の絶滅種(の人形)の案内で、ふたたび自らの「演劇」に出会うことに……。
活動10年目の「演劇で人を救う話」は、「演劇で人を救い、自らも救われる話」でもあり、そのストレートで爽やかな設定、また開演前の客席のわいわい感に「幸せなカンパニーだな」と感じ入りました。
キモかわいい人形の存在感(前説等も含め)は抜群ですから、2時間という上演時間を、いっそうドライブさせるための工夫、という意味でも、もう少し、ストーリー(舞台上の世界)に絡んでもいいのかなという思いは残りました。
率直な芝居づくりと、なんだかちょっとヒネた雰囲気を漂わせる人形。この二つの個性を、今後、さらにさらにうまくミックスさせ、昇華させるような展開があればいいなと期待しています。
劇団活動を10年続けてきた劇作・演出家の男性と、引きこもりの兄がいる女性を軸に、2つの物語が交わって行きました。バックステージものや劇団の内部事情を暴露するタイプのお芝居は苦手なのですが、それだけに終わらなかったでホっとしました。
劇中の会話は短いコントのようなやりとりが多く、つっこみが巧みで、ナンセンスギャグも冴えています。折り込みチラシで作・演出の佐々木充郭さんがコントユニット親族代表の新作を手掛けられると知り、納得でした。
オリジナルの人形が俳優同然に活躍するのを期待していたんですが、今作はそうでもなかったですね。たまたま10周年記念アフターイベントのある回だったので、たくさんの人形を拝見できて良かったです。ロビーでオリジナルの人形を販売していることについて、前説で「里子に出します」と言っていたのに和みました。人形への一方ならぬ愛情を感じました。
正直言うと、最初バジリコを見たとき、人形のグロテスクさにちょっと引いてしまった。しかし次第に慣れてくると、あのグロテスクさこそが、かわいくてたまらなくなるから不思議だ。
人形を使う劇団はたくさんあるが、バジリコはその使い方が見事である。人形を使わなくても成立するだけの作品のクオリティを持ちながら、突然の人形の登場によりわれわれを一気にファンタジーワールドに連れていってくれる。
その高揚感がたまらない。
ちょっと懐かしい、ちょっと甘酸っぱい、そしてちょっと切ない。それがバジリコワールド。独自のスタイルを持っている劇団は強い。
人形が!
素晴らしい!
……と開演前からワクワクさせてもらった。KINO4TA氏によるこのキモカワ人形はぜひETVとかにも進出していただきたい。なかなかシュールな教育番組がつくれると思うし、子供への教育効果(?)も抜群だと思います。
客入れの雰囲気も非常に良くて、みんなでワイワイガヤガヤしながら始まるのを待つ感じ、なんかいいな、と思った。
しかし実際の本編ではあまりその人形が活躍しなかったのが残念。もっと出番が見たかった。いちおう「演劇」に関わる人間の端くれとしては、感動を誘う物語ではあった。ただ、テーマ自体はシンプルなわけなので、これならもっと上演時間をコンパクトにして、エンターテインメントとして押し切ってもよかったのではないかと。