最新の観てきた!クチコミ一覧

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きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

未見の団体、そして「CoRich舞台芸術まつり!2023グランプリ作品」ということで興味をもって観たが、自分にはよく解らなかった。いや説明を読んでいたからだと思うが、描こうとしていることは何となく分かる。

タイトルの<きく>ことを色々な方法・手段で表現しようとしているのだろうが、今まで観てきた作品と違うため戸惑う。今では、このような作品が好まれるのだろうか。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、正面後ろにスクリーンが3枚。その前に横並びで箱馬がキャスト分並んでいる。天井や壁には手作りのモノが吊下がり 貼られている。シンプルな空間だが、展開に応じてスクリーンを上げ、箱馬を動かし場転していく。ここは何処で、集まっているメンバーの関係性は、といったことは判然としない。

冒頭、横並びの箱馬に座って たわい無い話を小声でしているが、1人の男が突然大声で「母が癌だった…」と話す。東京で働いている男(息子)、広島にいる病気の母、母子家庭で頼る親戚はいない。その彼に向って母の介護は大切と諭すメンバー。「そんな事は解っている!」、しかし遠方・仕事・経済など八方塞がりの状況だから苦悩しているのだと。彼の状況には同情するが、解決策は見出せない。この時点で彼は自分の心情は解りっこないと拒絶している。

そのうち 別の話題へ移行し、<きく>について次から次に色々なアプローチをする。夫婦で行っているゲーム、長大な筒を耳に当てた何らかの競技など、雑然とした情景が繰り広げられる、といった印象である。この場面を煽るのが撮影しているスタッフ。実はキャストの1人になっているよう。そして照明とは別にキャストをスクリーンへ、更に角度を変え上手の壁にも映し出し 多くの人が存在しているような錯覚(混沌とした世界観)を演出する。場面によっては、キャストが1人ひとりバラバラに喋り 会話が成立しているのか否か。いや物語における会話ではなく、日常の雑踏の中で知らぬ者(同時に多人数)が勝手に喋っている光景か。その意味では舞台という虚構性ではなくリアルな現実世界を描いているのかも知れない(台本通りorアプローチか?)。

通底しているのは「母が癌だった」である。<きく>という行為の真剣度、それは意識的か無意識かといった違いで、大きく違うのだろう。親身になれなければ 実際は聞いていないに等しい。<きく>は<きかせる>と対になり、男が初めの段階で拒絶しているよう。だからこそ <きく>人たちの会話が漂流し始めるのではないだろうか、と勝手な解釈をしている。
次回公演も楽しみにしております。
キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

シャーク・アタック・トルネード・アフタートゥモロー

シャーク・アタック・トルネード・アフタートゥモロー

なかないで、毒きのこちゃん

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/20 (木) 19:00

105分。休憩なし。

きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ひとこと、すごい!こんな舞台観たことない!傑作ですね。母親の告白があるまで「うわー、手抜きの舞台かな…」と思ったらそこから大化け。すべて計算されていると考えたらとんでもない舞台です。演出も演技も何もかも規格外です。これは観て損はないですね。お世辞抜きに度肝抜かれました。

キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

昔の映画館はそれぞれ特長あって面白かったなぁと思い出しました。

キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
映画愛に満ちた珠玉作。少しネタバレするが、古びた名画座といった場所。劇場内に入った瞬間、昔よく行った映画館の雰囲気で懐かしさが込み上げてくる。といってもまだ都内にある いくつかの名画座に行くことがあるが。

秋葉 舞滝子女史の演技は勿論、演出は実に巧い。特に照明の諧調によって 登場人物の心情や情景の変化を効果的に表現している。物語は滋味に溢れ、印象付けと余韻が見事。

劇中に出てくる映画に準えている様な物語。それは日常の暮らしを淡々と紡ぐ、しかし それだけに多くの人(生)に寄り添うようで、思わず共感してしまう。自分にとって、映画は娯楽であり学び でもあったような気がする。そんな懐古的な思いに浸った。
(上演時間1時間20分 途中休憩なし)6.21追記

ネタバレBOX

舞台美術は、地方都市の寂びれた映画館(扇野文化劇場)のロビーが舞台。正面に多くの映画(洋画)ポスターが貼られ、上手に売店カウンター、下手に演台のような捥ぎり場。その近くに入場料(大人1,000円、中高校生700円、60歳以上500円)が掲げられている。

劇中の台詞 「終わらない映画ってないかな? 映画は終わりがあるから映画なんだよ」は 映画に準えて人生を語るようなもの。2本立の映画を上演している古びた映画館、そこに毎日通ってくる常連客 戸田克子(秋葉 舞滝子サン)、そして最近同じように毎日通う女子高生 一ノ瀬沙織の映画愛。と言っても2人の感性や事情は異なる。一方 映画館を含む このあたり一帯が再開発される予定でデベロッパーも通い出した。ちょっとした事件といえば この立ち退き騒動ぐらいか。

克子の大学時代は学生運動が盛んで、自分と彼も運動に参加していた。しかし運動の方向性を巡ってグループ内の対立から彼を…。その彼と待ち合わせをして見ようとした映画が「さよならコロンバス」、しかし現在に至るまで見ていない。克子は、この映画を見るまでは(人生)先に進めない。この見ることの出来ない映画(存在)こそが この劇作を支えており、克子の心情の肝。映画の内容は、一ノ瀬家が一代で築いた成金という設定と同じ。映画の恋沙汰とは多少違うが、沙織を監視していた執事の橋田正孝が、映画館に通っているストリッパーの篠山ローザに惚れた。そして避妊を含めた下ネタは映画そのもの。貧富という格差恋愛に対する差別や偏見といった観点ではなく、何方かと言えば古びた映画やストリップという廃れつつある<文化>のようなものへのノスタルジー。その対となる例として、再開発ーアウトレットモールが絡んでくる。

現代の忙しない日常とかけ離れた空間と時間、昭和という時代の雰囲気が漂う中で、過去を引きずり愁いある人生を送る。最新の話題作ではなくリバイバル、そこに古き良き時代の郷愁が感じられる。それまでの映画は、非日常・虚構の世界が強く反映された内容。しかし本作で取り上げた映画は、 日常というあり触れた内容を撮るという、当時としては斬新なもの。今では、うらぶれているが 何故かホッとする。映画を見て心に残る…その映画のフィルムがたとえ失われても、見た人の心の中で残り(生き)続ける。人生も同様で、大切な人が亡くなっても その人のことを忘れなければ、心の中でずっと生き続けるのだと…。そう考えた時、「さよならコロンバス」がたいして面白くもなく、すぐ忘れることが出来るならば、克子は新しい人生を歩み出すことが出来るのだろうか。
次回公演も楽しみにしております。
キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お昼の回、観劇しました。80分は短いなぁ。
館長と克子さん、技師さんが映画によってつながっている感じが素敵でした。
久美ちゃんのキャラがキュートで、GOOD!
鉄平さんのちょっと距離をとってるのにしっかり見守っているところ、グッときました。
沙織ちゃんの英才教育受けてる感、さすがです。

学生運動の頃のアーティストたちの様子が語られるところ、善悪を100 or 0でしか考えられないところ、
今の世と同じじゃん、って。ちょっと考えさせられました・・・。

野がも

野がも

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2024/06/07 (金) ~ 2024/06/21 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ヘンリック・イプセン、19世紀ノルウェーの劇作家。「近代演劇の父」と呼ばれたのはモラルや道徳的予定調和(所謂ビルドゥングスロマン〈教養物語〉)を無視し、現実に即したリアルな作劇を呈示したから。作家の意図が論議される作品の走り。何となく知っているような気がしていたが、多分初めて観た。
俳優座は2月の『スターリン』がつまらなくて足が遠のいていた。(自分の理解力にも問題があったようなので違う形でもう一度観てみたい気はするが)。

演出も俳優も最高の水準。
地元の名士、財を築いた実業家ホーコン・ヴェルレ(加藤佳男氏)の屋敷での晩餐会。小さな写真館を営むヤルマール・エクダル(斉藤淳氏)は一人場違いな場に招待されている。山の工場から16年振りに町に帰って来た息子グレーゲルス・ヴェルレ(志村史人氏)が友人として招待したのだ。グレーゲルスはヤルマールからいろいろと近況を聞いていく内にある疑念が生まれる。父は妊娠させた使用人ギーナ(清水直子さん)をヤルマールに押し付けたのではないか?更にヤルマールの父、エクダル元中尉(塩山誠司氏)はかつてヴェルレの事業の共同経営者だったが、国有林伐採の罪を一人被らされて投獄、出所後は酒浸りの廃人となってしまった。理想家グレーゲルスは唾棄すべき父に訣別を告げ、屋敷を出て行く。彼が向かう先はヤルマールの家。嘘と欺瞞に満ちた暮らしに正義の光を照らし、真実の生へと人々を導いてゆく事こそが己に課せられた使命だと信じていた。

凄くよく出来た喜劇。
劇団エース格の斉藤淳(あつし)氏は今作では若々しくオリラジ中田に見えた。終盤頬張るサンドウィッチがやたら美味そう。
加藤佳男氏は政界の大物風味。突っ立ってるだけで金が取れる。児玉誉士夫なんか演って貰いたい。
釜木美緒さんは29歳!マジで子役だと思っていた。

こんな古典を易々とこなす老舗プロ劇団の強み。古今東西、世界中のどんな戯曲でも美味しく調理してやんよ。
流石に面白かった。

ネタバレBOX

ヤルマールの写真館を兼ねた家では妻のギーナと14歳の娘のヘドウィク(釜木美緒さん)、父エクダル元中尉が共に暮らす。階下は二部屋、人に貸している。そして秘密の屋根裏部屋では、まるで“海底(うなぞこ)”のような深く暗い森を作っていた。鳩や兎が放され、水槽の池もある。誰も知らない一家だけの森。一番の自慢は野鴨。野生の真鴨が我等が森に棲んでいるのだ。一流のハンターとして輝かしき過去を持つエクダル元中尉は屋根裏でハンティングに励み己を鼓舞していた。
アヒル(家鴨)は真鴨を家禽化したもの。今作で屋根裏部屋で飼育しているものはアヒルではなく、野鴨であることを一家は誇りに思っている。

一家の生活はグレーゲルスが真実を告げて回ることで急変。生温い嘘で現実から目を逸らす偽りの暮らしよりも、残酷なる真実を直視せよ。ヤルマールのそれなりに満ち足りていた暮らしは一夜で引っ剥がされる。権力者に孕まされた嫁を宛てがわれてそいつの娘をいそいそと育てていた日々。嵌められて汚名を着せられた親父は慰謝料として毎月小遣いを貰って安酒を飲んでいる。自分を包んでいた優しい嘘や誤魔化しの幻想が剥げてそこに見えたものは己の醜さ。そしてそれでも尚何も出来ない無力さ。

グレーゲルスはヘドウィクをやたら煽る。父親への信頼回復の為に自分が最も大事にしているものを捧げよ、と。グレーゲルスは悪魔にしか見えない。敬虔なクリスチャンと共産主義者をカリカチュアライズしたキチガイにしか。全ての真実を受け入れた上で許し合い愛し合うことこそが真の人間の生である、みたいな与太話。
真実を知ったら人間はとても生きてはいけない。ゴータマ・シッダッタが説いた最初の真実は『一切皆苦』。この世には苦しみ以外は何も存在しないということ。

作品最大の謎はヘドウィクが何故、野鴨ではなく自分を撃ったのか?だ。大事にしていた野鴨を殺そうとしている自分自身に耐え切れなくなったのか?父親に自身の清冽な魂を証明する為に野鴨よりも自死を選んだのか?自分を殺すことでしか伝えられそうもない何かがあったのか?
多分正解はない。登場人物にも作者にも解らない。ただそういう出来事が起こったというだけ。

豪商だったがイプセンが7歳の時に破産した父、まさにエクダル元中尉のようになったらしい。ヘドヴィクはイプセンの妹と祖母の名前。イプセン自身、母の不倫の子だったのではないかという話もあるそうだ。16で家を出て二度と帰ることはなかったイプセン。チェーホフは今作に影響を受けて『かもめ』を書いたという、成程。更に想起されるのはテネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』。あの屋根裏部屋の“海底”が一家にとって唯一の“世界”だったのか。

自分的にはこの終わり方は承服出来ない。理想と現実の境目を越えようとしたら死ぬしかないのか?演出、俳優は完璧だがイプセンの原作が中途半端。
キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

地方の古びた映画館を舞台にしたお話で、登場人物のクセは強めだけど、仕上がりは小品的味わい。壁に飾られたポスターは古い映画でもリバイバル時のものだったり、さほどレアなものはないものの、客席側にも同じくポスターが飾られている設定のようなので、もっと古いのはこちらの方が多いのかも。

ネタバレBOX

劇中で名前が出てくるあの映画のことを思い出してみると、下ネタ寄りのセリフとかも含め、舞台の内容に重なる部分もあるなあと。あと、客席によっては見えにくいけど、階段横に飾られているマルセル・カルネがいい感じ。
おちょこの傘持つメリー・ポピンズ

おちょこの傘持つメリー・ポピンズ

新宿梁山泊

新宿花園神社境内特設紫テント(東京都)

2024/06/15 (土) ~ 2024/06/25 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/06/19 (水) 19:00

座席1階

新宿梁山泊は今回、力が入っていた。熱量が違う。花園神社でのテント公演、原作者の唐十郎が亡くなった直後のタイミング、そして、中村勘九郎、豊川悦司、寺島しのぶ、六平直政、風間杜夫という豪華メンバー。超満席のテント内は開幕前から熱気にあふれていた。

唐十郎が状況劇場で展開したすさまじい妄想の舞台。今回の金守珍の演出は歌舞伎テイストで彩られ、昭和の芸能スキャンダルをおもしろおかしく表現し、そしてラストにはお約束の空中戦を用意した。その金守珍が、けがで降板して代役を立てるという衝撃の発表で開幕した。
豊川悦治の「檜垣」はとにかくかっこいい。中村勘九郎はさすがの立ち回り。長ぜりふも流れるようにきっちりこなす。一方で、せりふに詰まった風間杜夫は客席の拍手で立ち直るという場面も。寺島しのぶは単にセクシーなだけでなく、上下の声色を使い分けて「カナ」の七変化を展開し、客席を魅了した。花道を間近で走り抜ける寺島には鳥肌が立った。
チケットは発売直後から売り切れているそうだが、終幕後の役者紹介ではいつも通り「SNSなどで宣伝を」とやって客席を笑わせた。状況劇場で唐とアングラ舞台を作り上げてきた金守珍が梁山泊を引っ張っていっている限り、またこのような見事な舞台は再演されるだろうし、梁山泊の次の世代がまた違ったテイストで再現していくだろう。今回は、いつもの主役級の水嶋カンナなどが脇に回って盛り上げているところも希少だ。令和の時代に息づくアングラ劇を目撃すべきだ。

きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2024/06/19 (水) 19:30

観るの2度目のユニットで、1回目も分からなかったが、本作も分からん。(前説と客入れで7分押し)91分。
 昨年上演された作品の再演だが初演は観てない。友人達がとろとめもなく語る物語の通奏低音として、母親が癌になったと語る男の物語が繰り返される展開。やはり意図が分からないが、アドリブ風に語ってはいるがセリフだろ思うので、役者陣の負荷は大きいだろうと思う。私のテイストにはフィットしないユニットだなぁ、とは思う。何故か大きく笑う客が少なくなくて、私の感性がズレてきているのかとも思う。

キネカメモリア

キネカメモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

どこか田舎の古びた映画館。そこに集う人たちの物語。映画への愛に溢れていました。
売店カウンターのポスター?が面白そうなのですが、ちょっと遠いし暗いのでよく見えなくて残念でした。懐かしいポスターもたくさん飾られていて良かったです。私が見ていないのはあれとあれと・・・開演前にずっと見てしまいました。

雨とベンツと国道と私

雨とベンツと国道と私

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/06/08 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

モダンスイマーズ25周年作品。コロナでしばらく劇団作品は見ていなかったが(ここ五年の間に二作だという)「現代新劇」とでも名付けたくなる作風は健在である。
「デンキ島」はあまり素材になってこなかった沿岸離島の青春期から成人期の若者を描いて新鮮だったし、バブル崩壊後の若者を中心に地方の家族を舞台にした庶民劇「まほろば」は、現代新劇の路線でよかった。最近は、劇団外の大手興行会社からの注文で得意とは見えないファンタジー系もある。どれもそつなくこなしているうちに、いまや女優との噂がスポーツ新聞の記事になる中堅の地位を固めている。周囲に同じような作風の劇作家がいそうで、いない。そこが重宝される由縁だ。無理をしないで、期待に応えている。
今回の舞台は、地方(群馬)で撮影される地元の自主映画の撮影現場である。パワハラで仕事がなくなって、やっと地方の自主映画を名前を変えて監督することになった監督(小椋毅)が慣れないニコヤカ・ムードで仕事を進めている。
自主映画は、地元出身のそろそろ30歳代も終わりかけの元女優(小林さやか)が良人を亡くし、その思い出を映画にしたい、と見つけてきた監督以下の映画の制作陣で撮影が進んでいる。撮影現場でのお手伝いにと、かつて東京で女優志願時代の同年代の友人(山中志歩)を呼ぶ。舞台はグレイの単色のノーセットで、物語はナレーションも芝居と並行しながらこの部外者の視点で語られていく。テンポよく次々に過去・現在のシーンが展開する。
表向きのテーマは映画製作の場でのパワハラになっている。
撮影現場のトラブルはよくある話のレベルだが、東京でだらだらと生きてきた女優志願時代の友人が現場に入ってきて、ドラマは面白く動き出す。友人は監督がかつて一緒の撮影現場で出会ったパワハラ監督だと見破る。監督が乗っている古いベンツに見覚えがあったのだ。この友人の沈滞の20年そのもののような(名前も五味栞、愛称ゴミチャンである。つまらないようだがこういうところ上手いのである)視点も面白いが、それにもまして、外れていることに本人が気づかずに集団に平然とついていく現代人の多くの滑稽さを演技でも体現しているゴミを演じた山中志歩はこの公演随一の殊勲者だろう。パワハラの話はそれなりに出来てはいるが、話よりも、作者はそれを担う人物たち、パワハラを捨てきれない監督やカメラマン、地方の市民ミュージカル出演を誇りに俳優気取りの地方人(古川憲太郎)成り行き任せの若い助監督、などなどの人々を巧みに描いている。沈滞の20年はナニも経済や政治の沈滞だけでなく誰もが安易に手にした無気力無責任で生きられる生活が生んだのではないか、と言っている。ラストは映画の撮影で、相手役の若い男優が雨の中の空漠とした国道を走り出すところで終わっている。ここでダメ押しの台詞をつけていないところにもこの作者の年輪を感じる。
この劇団はいつも男性の俳優しかいなかったが、25年の間にほとんど顔ぶれも変わっていない。そういう人付き合いの濃いところが作風にも出てきたように思う。今回は小品だが、いつも面白く見せてしまう劇作家というのは数少ない。1時間50分。自由席3千円で満席。




水彩画

水彩画

劇団普通

すみだパークギャラリーささや(東京都)

2024/06/17 (月) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/19 (水) 14:00

座席1階

マチネの回だったので、隣のカフェは営業中。その店内音楽がちょうどいい具合に聞こえてきて、いいバックミュージックになっていた。舞台は茨城県内のちょっとしゃれたカフェ。ここで、両親と娘夫婦の4人組み、そして若いカップルの双方の会話劇に注目するという趣向。劇団普通定番の全編茨城弁の舞台だ。

双方のテーブルの会話がクロスするわけでなく、実際にカフェで行われている会話のようにそれぞれ独立している。ただ、双方の会話が重なるところは少なく、話が重なって聞きにくいということはない。
会話の中身は、そのような立場になった人なら一度は経験したことがあるような話で、客席は共感できる。若いカップルは地元で同棲中で近く所帯を持とうとしているが、この二人が、東京に出て行ってしまって愛想がない同級生を非難するような場面もある。首都圏とは言いながら東京の吸引力に翻弄される若い世代の思いが少し、興味深い。首都圏以外から東京に出てきた人には「そんな思いもあるんだ」という気付きになるかもしれない。

劇団の名前の通り、普通の会話劇が進んでいき、盛り上がるところは少ない。だが、普通の会話を会話劇にするのは恐らく、相当高度なテクニックが必要なのだろう。劇団普通も経験を重ね、しっかり若いファンをつかんでいる。普通の会話劇にクスッとしたり、共感したり。こうした演劇体験をさせてくれる劇団やユニットはそれほど多くない。

ただ、工夫が必要と思うところもある。普通の会話劇の締めくくりの仕方は、「普通」では落胆する人もいるのではないか。舞台も後半になると、「この会話劇はどんな終局を迎えるんだろう」とソワソワしてしまうが、そういう意味では肩透かし。劇団普通の作品では、ヒット作「病室」の方が楽しめる(近々再演もあるそうだ)

地の面

地の面

JACROW

新宿シアタートップス(東京都)

2024/06/14 (金) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

実際の地面師事件がモチーフ。
なぜ騙されたのか、なぜ気がつかなかったのかと、事件が明るみになった時、多くの人が思ったあの事件。
なるほどと思う説得力の流れと、縦社会のサラリーマンの常識や悲哀がコミカルに描かれていて、とても面白かった。
役者陣がみな非常にいい。
そしてラストがとてもいい。
今回は話がわかりやすくて、JACROWは難しそうだなと敬遠して来た人にもオススメ。

きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「よりアクティブになった充実の再演」

 昨年の「CoRich舞台芸術まつり!」グランプリ受賞作の再演である。

ネタバレBOX

 母親が末期がんと告知された青年の告白に皆が耳を傾けながらも実はあまり内容を聞いておらず、話題の主軸が連想ゲームのように入れ替わっていく。途中に各俳優の独白は映像で投射されたりする。そのうち「きく」という行為を筒を使った競技のようにしたり、上下に激しくカエルジャンプのようにして表現したりとさまざまな方法で戯画化し、最後には「きく」行為の身勝手さを露わにする。

 このように大筋はほとんど同じだが前回とはまた異なる趣の作品になった。前回SCOOLでの上演は天井が低く横長の空間設計のためか俳優の動きが左右が中心に見えて、さながらボードビルのような心地がした。今回の上演が行われたアトリエ春風舎は、客席から舞台を見下ろすようになっており俳優の動きが前回よりもよくわかる。舞台奥の階段や客席横の入口からも出入りするためよりアクティブな印象を受けた。

 初日の客席は満員で特に若い観客を中心に反応がよかった。今後の上演でより多くの観客が本作を目にすることを期待したい。

ラフカットFINAL

ラフカットFINAL

プラチナ・ペーパーズ

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2024/06/12 (水) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/12 (水) 19:00

【Aプロ】
1995年に始まった短編集、今年が最後ということでここで生まれた堤作品セレクション的な企画。
4本とも初演を(一部は再演も)観ていたので「あー、そうだったそうだった♪」「あの役は以前あの人だったっけ……」などと思い出しながら楽しむ。
そしてタイプもシリアス、コミカル、スリリング(?)などそれぞれ異なり、最後に「演劇讃歌」で〆る構成も巧み。イイ2時間半を過ごせて満足♪

きく

きく

エンニュイ

アトリエ春風舎(東京都)

2024/06/18 (火) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

長編のシュールなコントみたいだった。

かえりみちの木

かえりみちの木

空の驛舎

ウイングフィールド(大阪府)

2024/06/14 (金) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

満足度★★★★

夫を亡くした配偶者が生きる指針を見失い、バイクのツーリング途中にある御神木に纏わる話 近くには精神的に支障をきたした人が生活する施設 自然酵母のパン屋そして保護猫🐱保護犬🐶の施設が 
配偶者は施設に見習いとして パン屋の配偶者は夫の友達と逃避行 大学教授の息子(施設に入居)は施設を逃亡する等々 各々が悩み苦しみながらも、生きる指針というか再生を目指し、各々が生きる生き甲斐を見つけていく 切ないながらも、生きていくことに各々が一生懸命になるのであった

有頂天

有頂天

中央大学第二演劇研究会

シアターブラッツ(東京都)

2024/06/13 (木) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

若いから仕方ないんだろうけど。

ネタバレBOX

「カツラギユキって知ってる?」
「『ボヘミアン』の?」
となります。45歳以上にとっては。
大学生だから、40年前のヒット曲やそれを歌った歌手を知らないのは致し方ないのですけどね。
 
ちなみに撮影費は沢山撮るほど稼げるらしいです。
芸術家気取りよりコマーシャルな写真家の方が撮影コマ数が多いのが自然なはずでは?
若いから、そういうこと知らないのも仕方ないでしょうけど。

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