広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・ニュー・プレイ賞受賞作。
或る事故をきっかけに家族の結びつきを失った三世代家族の再生物語、そんな謳い文句である。物語は、日常のありふれた光景や会話を描き紡いでいるだけだが、次々と情景や状況が変わる。登場人物は、舞台上の違う場所(部屋)や時間をあっさり乗り越え 心地良く展開していく。公演の面白いところは、会話がちぐはぐで一貫性があるのか、場面を繋ぐ構成も断続的で統一性があるのか。その不完全とも思えるところが、物語の崩れかかった関係に重なるようだ。
物語は、2004年の晩秋もしくは初冬から翌年の初夏迄の約9か月間か。英国マンチェスター郊外のストックポードで暮らすホームズ家の三世代。夫々の夫婦の関係や子供との関わりを断片的に描き、場所は違えど同じ時を過ごしていることを語っている。物語は休憩をはさみ前半と後半、その空白の時間(休憩)に或る事故が起き、数か月間の時が経っているよう。休憩の前後で状況が変化、端的には衣裳に表れている。
日常の生活…ストックポートに行ったことはないが、多くの場面に酒とスポーツ(サッカー?)が登場する。それを会話の潤滑材として 世代間の意識や行動の違いを描く。例えば祖父母の場合、祖母が外出する際 祖父が俺の飯はどうするんだ。外出などするなと怒り出す。父母の場合は、当然のように母も働きに出ている。その息子たちは…その考え方や行動が冒頭のシーン。それにしても汚い言葉が所々に発せられて…。
(上演時間2時間50分 途中休憩10分)
広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「広い世界のほとりに、独り佇みもの思えば、恋も名誉も無に沈む」19世紀のロマン主義詩人ジョン・キーツ。
この世界、実は何も無いと気付いた詩人が吐いた溜息。だが何かあるのでは?無の中にまだ何かあるのでは?足掻いた英国の劇作家サイモン・スティーヴンスの書き殴った戯曲が今作。果たして何か有ったのだろうか?それは観劇した者それぞれの胸の内。
開演前にはモリッシーの曲が流れている。
ホームズ家の三世代家族の人間模様。個人で独立して工務店をやっているピーター(江崎泰介氏)、妻のアリス(落合るみさん)。リタイアしたが時々手伝ってくれるピーターの父親チャーリー(金尾哲夫氏)、妻のエレン(姉崎公美さん)夫妻は近くに住んでいる。ピーターの息子、18のアレックス(笹井達規氏)、15のクリストファー(福田匡伸氏)。
アレックスはドイツ人の彼女、サラ(賀原美空〈みく〉さん)が出来て家に泊まらせる。クリストファーは一目で彼女に夢中になる。アレックスとサラは二人で家を出てロンドンで暮らそうと考える。何気なく家族の生活に落ちた小さな石ころが波紋となり、遂には家族の存在の核にまで届き揺さぶっていく。
休憩10分込みで2時間50分。
ハッキリ言って前半は退屈。だが休憩後の後半がまるで違う作品のように面白い。これを味わわないのは実に勿体ない。落合るみさんがどんどんどんどんイイ女になっていく。恋バナの時の表情なんか少女のよう。どこの国もこの年代の女性がキーパーソンなんだな。
主人公ピーターに家の修繕の依頼をする妊婦スーザン(舞山裕子さん)もいい味。ピーターの誰にも言えない心の痛みをずっと静かに聞いてあげる。
観客も世界もいつしかピーターのどうしようもない心象風景に同期していく。
杉山至氏の舞台美術に照明の田中祐太氏が投げ掛ける光。影の形を練って作った造形なのだろう。伸びる影のフォルムが見事な演出となっている。登場人物達の心情を伝える光と影の演出。
この戯曲の本国での評価は各世代の纏った痛切なリアリティーなんだと思う。それぞれの抱えたやり切れなさ。
是非観に行って頂きたい。
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
シンプルな舞台で中央に卓球台置いて
周囲に人数分のパイプ椅子を置いての
会話劇ですかね
体育会系の立て型社会とか
怖い先輩とか世代の格差とか
いろいろと詰め込んでて
なかなか楽しめた作品となっていました
100分で全席指定デス
嗤う伊右衛門 2024
Mido Labo
サンモールスタジオ(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。これぞ舞台は総合芸術と思わせる秀作。
「京極ワールドを一冊読み切った達成感」…この謳い文句に誇張はなく、十分に堪能させてもらった。
本「嗤う伊右衛門」は再演ということだが、自分は未見。京極夏彦の小説も未読であるが、その世界観がしっかり伝わる。いや小説という自分の想像によって世界を膨らませることと違い、舞台は視覚聴覚など直接的に感じる。その意味で狭いといった印象を持っていたが、登場する人物1人ひとりを深堀し、語り部をもって物語を紡ぐ。そこには頁と頁、行間を読むといった小説の味わいとは別の面白さがあった。語り部は1人ではなく、1冊の台本を手にした者が話を前に…。このように人物と物語が併走していく感覚が好い。
小説の登場人物は、役者の体を通して立ち上がる。勿論 役者の体現がそうさせるのだが、たぶん小説とは違って生身の人間=役者の感情が直接訴えてくる迫力に圧倒される。繊細かと思えば荒々しく大胆に、しかも所作に様式美まで感じてしまう。
この役者陣の熱演を支えているのが、舞台技術ー照明・音響音楽であることは間違いない。単に技術的な効果だけではなく、情景や心情といった内外に秘める機微のようなものが演出される。見事の一言。
(上演時間 前半1時間35分 後半1時間10分 途中休憩10分 計2時間55分)10.5追記
How do you survive? #1
How do you survive?
ニュー・サンナイ(東京都)
2024/10/03 (木) ~ 2024/10/05 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/03 (木) 19:30
5年ぶりの今城文恵作・演出で新ユニットの旗揚げ。ちょっと不思議な展開で面白い。(3分押し)25分(32分休み)30分。
『多夫多妻なぼくら』は、重婚で多夫多妻制が成立した近未来。歳の離れた兄の息子・龍人(結城洋平)と久々に会った満咲美(山脇唯)は、子どもを何とかキッズルームに預けられないかと相談され、古い知り合いの幸太郎(森啓一朗)に相談するが、話は思いもかけない方向に向かい、…の物語。まぁ予想できる展開だけど、なところで、1幕が終わる。
ライブハウス形式なので飲食も楽しむということで30分の休憩を経て『一夫一妻のわたし』。1幕の終わりから続く話は、ますます思いもかけない方向に向かう。
今城の物語は、ちょっと変な生き辛さを抱えた人を描くことが多いんだけど、本作も似た傾向かな、と思う。次回作も観たい。
初めて行った会場だが、とても面白いスペースだし、周辺の店も興味深い。
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
女子高卓球部のOG会を舞台にした会話劇。ある出来事に関して核心にふれず進行していくことで、徐々に元部員達の思いがあふれ出していく。最初は、ああ部活の上限関係での会話ってこんな感じだったよなと思いながらも、各人の立ち位置や心情が読み取れ、ひき込まれていく。ラストにどんどん分かる事実が伏線も回収しており面白い。トツゲキさんらしく、基本的には良い人ばかりなので、暖かく見守れる舞台でした。
広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2時間30分以上の大作で途中休憩有。作者の出身であるイギリスのストックポートの街を舞台にしており、ある家族の苦悩と再生を描いている。役者陣は実に繊細で見事な演技を見せてくれる。各人の心の機微が伝わり、感情移入しやすい。ただ、舞台設定が英国でやや文化の違いもあり、また演出上汚い言葉遣いも散見されるので、少し違和感を覚える場面もある。
『chill』
劇団鮫軟骨
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
Bチーム初日を観劇しました。
始まりはびっくりする表現(実際に見てほしい)でしたが、結局は心にグサッとくる。
ストーリーは若干、無理くり感がありましたが、
「しょうがい」は「handicap」か「character」か?
「助け」か「共感」どっちが必要か?考えさせられました。
いろいろな世代の方に観ていただきたい作品でした。
あと、エアキャッチボールがかっちょ良かったです。
『chill』
劇団鮫軟骨
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かったです。
人は、周囲の人や環境によって自分を変える事が出来るんだなと思いました。
改めて、環境や人間関係の大切さを感じました。
ストーリーは、やや無理があると感じましたが、心が温かくなる素敵な話でした。
優しく、切なさも残る良い舞台でした。
来てけつかるべき新世界
ヨーロッパ企画
本多劇場(東京都)
2024/09/19 (木) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/03 (木) 13:00
コテコテの懐かしい大阪人情喜劇、あの濃厚なソース味の人間模様に
新時代のテクノロジーを振りかけたら・・・という発想が秀逸。
テンポ良く飛び交う台詞の掛け合いに練り上げた脚本の凄さを感じる。
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
RTA・インマイ・ラヴァー
東京にこにこちゃん
駅前劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
灯に佇む
加藤健一事務所
紀伊國屋ホール(東京都)
2024/10/03 (木) ~ 2024/10/13 (日)公演終了
実演鑑賞
カトケンはいい役者である。役を芝居らしい表現で見せる力量がある。喜劇も悲劇も出来る。舞台を仕事の中心においてブレない。芝居の好みにこだわる。個人事務所で自ら役を選ぶ。結果、いまもなおその居場所が決まっていない。珍しい俳優である。
加藤健一事務所は年に二三本の主演公演をやって40年になるという。その初期に「寿歌」(81)を見たのも、この紀伊國屋ホールだった。小劇場の一つのあり方を実践してきた。再演も多いが、公演していると、たまに見たくなる。
今回は創作劇である。医療の現場の問題を扱った「新劇」である。カトケンは地域に生きる老開業医である。次々の難題は降りかかるが、地方の開業医には自分の医師としてのささやかな志も生かせる環境がない。かつては手近なところにあった医師と地域の関係も今は遠い。こういう役に時代の未来を重ねなければならないところにも、日本の疲弊した現状が見える。
観客層は民藝に近く、昼公演が断然多くなったが、それでも七割の入りだ。出演メンバーも顔ぶれの幅が狭くなっている。今回は占部房子が初参加ではないだろうか。そこに僅かに新しい風が吹く。
嗤う伊右衛門 2024
Mido Labo
サンモールスタジオ(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
すばらしかったです。まず言えることは大人の劇団による大人の舞台だなということ。全体的に落ち着いていて安心して観ていられました。俳優さんの動き1つとっても余分な動きがなく、セリフも過不足なく必要なことばのみを発されていますし。ほんと、筋肉だけでできた舞台です。最初「あれ、これってもしかして朗読劇?」と思いましたが、その後、ちょっと変わったつくりの舞台へとシフトしていき「ああ、こういった見せ方をするのね…」と感心しました。あと、ぜんぜん怖い話じゃありませんでしたね。ふつうに純愛ものでしたね。最高の時間をありがとうございました。
海のない島
劇団B♭
テアトルBONBON(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
ピンポンパン!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/10/03 (木) 14:00
座席1階
あうるすぽっとという比較的大きな舞台を使って、頻繁に行われる場面転換を舞台の各所にスポットライトを当てることでうまくカバー。さらに、出番の役者とはける役者のつながりも、例えばビールを飲むという行為を同時に行わせることでスムーズな動きとして描いた。演出はよかったのだが、この物語の筋立てにはあまり共感できなかった。特にラストシーンはとても性急に感じた。
劇団昴の役者たちの責任ではなく、劇作のサイモン・スティーブンズの描き方なのだろう。タイトルとのつながりもよく分からない。イェルマとかラビット・ホールとか、とてもいい海外作品を選んできた過去作に比べると、ちょっと物足りない気がした。
3世代の家族の物語。祖父と祖母、父と母はそれぞれ夫婦関係に微妙なすきま風が吹いている。10代の2人の息子のうち、兄に彼女ができて家に連れてくる。その彼女に事前に会った弟が一目ぼれして横恋慕しようとする。当然、彼女は拒否する。こうした微妙な人間関係の亀裂が、ある事件を境にとても大きくなる。どこの国にもありがちな、家族関係のほころび。父と母は不倫ではないけれど他の異性に引き込まれる場面があるのだが、この展開にもちょっと理解に苦しむ筋立てがあった。
途中の休憩は、舞台美術に手を入れる大きな場面転換があるためだ。これがなければ、一気に行ってしまった方がスッキリする。
演出はとてもよかった。ただ、劇作には言いたいことがいっぱい。
フラガール’24 東京公演
羽原組
赤坂RED/THEATER(東京都)
2024/10/01 (火) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
良く泣き良く笑うことが出来ました。
物語の情景が目に浮かんで来ました。
学生時代の同窓である藤田さんに元気をもらいました!
『chill』
劇団鮫軟骨
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「僕は普通じゃない」…サラリーマンになった僕は、人間関係に苦しめられたが 今はその人間関係に助けられている。登場するのは皆 善人ばかり、それでも誤解や思い違いによって ぎくしゃくする人間関係の難しさを温かく見守ったヒューマンドラマ。また人の思いや考え方は複雑、一方向だけではなく 表裏(双方)を描く。変哲のない日常風景はリアルではあるが、舞台としては何か物足りない。惜しい。確かに笑いや泣きといった場面は描かれており それを紡いでいる。しかし それは表層的に並んで描かれている といった印象を受けた。
ラストは、主人公 杉本応助の妹 が兄に「運を使い果たしたね」といった件で何となく想像が…。公演は、何事も努力、やれば出来る といった根性論的なサラリーマン人生を少し見直すといった観点で描いている。何も道は一つだけではない、ただ自分に合った選択肢を見つけられるか否か。物語では良き伴侶と仕事を見つけて心豊かに そんな成長譚でもある。いろんな意味でちょっと疲れている人にはお勧め。
(上演時間2時間20分 休憩なし) 【B】