満足度★★★
議論とは?
劇団・北京蝶々の【都道府県パズル】を観劇。
近未来の日本の道州制導入をめぐって、各代表がメリット、デメリットを議論し合う芝居。
ハハ~ン、これはどうみてもベケットのゴドーを引用した芝居、まさしく終わりのない議論の芝居だな?何て思っていたら、意外にもややハズた議論から始まり、議論に議論を重ねていく人達を描いている。結末で答えは出てこないのだが、珍しい議論ずくしの芝居だった。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
昨年話題になったトラッシュマスターズの【背水の狐島】の再演を観劇。
3・11の事件を最初に取り上げた劇団で、昨年の主要な演劇賞を取っている話題作。
が、僕にとっては初見の劇団で、骨太な芝居と公演時間が長すぎる?というのは噂では聞いていたのだが・・・。
3・11の事件によって被災生活を余儀なくされたある家族、ボランティア、そしてその家族を追っているテレビクルーが登場人物である。
被災者の生活状況、ボランティアの位置づけ、テレビの報道の意味などを的確に描きつつ、人間が普段経験する事のない出来事に出合ったが為に、ある事件を起こしてしまい、苦悩している家族の姿を通して被災の現状を描いているのが非常に面白い点だ。その状況の中で、どのように人間は苦悩し、理性を持って対処すれば良いかを問いかけている。
そして後半からは、3・11から何十年後の未来の日本国家の中枢で働き始めた登場人物達が、どのようにすれば原発停止、災害防止を出来るか?を世に働きかけて行く姿を描いている。前半が被災者の状況をリアルに描いているのであれば、後半は絵空事のような描き方に驚いてしまう。それは日本が立ち行かゆかなくなってしまった場合に、国を動かすのはテロしかない!という答えにしてしまっている点だ。ちょっと70年代のアメリカ映画的なノリ(映画・チャイナシンドローム)にそっくりだった。
そこが演出家のメッセージなのだろうか?
前半の問いかけに近い芝居が、後半の直接的な芝居によって全てを台無しにしている。
これで良いのかは疑問であったが、このような直接的なメッセージを述べられるのはやはり小劇場の醍醐味だろう。
そして休憩なしで、3時間15分の上演時間を飽きさせずに見せてくれたのは偉大だ。
満足度★★★
ネタばれ?
ネタばれ的感想か?
ネタバレBOX
月影番外地シリーズの【くじけまみれ】を観劇。
月影シリーズとは、劇団・新感線の看板女優・高田聖子の劇団外のユニットである。
北区赤羽でティッシュ配り20年の幸薄い40過ぎの麻子は、深夜にラジオ放送を聞くのが大好きである。そんな麻子がある日、誰も聞く人がない海賊放送をキャッチする。そしてDJと恋に落ち、二人は世界革命ならぬ赤羽革命を起こし、赤羽を混乱に陥れるのである。
大まかな筋はこのような感じで展開していくのだが、始まった瞬間からこれはどう見てもアングラではないか?と勘ぐってしまうほど、唐十郎の描く上野、浅草ならぬ場末の赤羽を描いているのである。無駄の多いアドリブ芝居、痺れるセリフの数々、一瞬に場面転換する安っぽい舞台セット、そして物語らしい物語が無い混沌としたアングラ感たっぷりの世界観を描いていくのである。
そして普段、劇団新感線で見せる18番の高田聖子の芝居は月影シリーズでは封印しているのだが、ここぞという時にはしっかりと堪能させてくれる。そして主演男優が唐組の俳優さんで、戯曲に当て込んだキャスティングは絶妙であった。
今作のアングラ的戯曲の演出方にはやや疑問があり、前半がやけに長く感じられ、後半からやっと進んで行くのであるが、それが狙いではなく演出上の失敗と感じられる。起承転結がない話だけに、前半から飛ばしていかないと簡単に失速してしまうのである。唐十郎の場合は初めからただひたすら飛ばしまくり、途中平気で失速してしまうのだが、それは唐十郎が書いて、演出して、決まり決まった舞台壊しというラストへ向かえるという観客の安堵感があるから問題ないのだが、今作は戯曲・福原充則、演出・木野花と別々な人が書いていて、戯曲が狙っている箇所と演出家の狙いとでづれがあったのだろうか?それとも女性だからだろうか?女性が描くアングラ芝居はないもんなぁ。男性はアングラ芝居にロマンを感じやすいから、その辺りの温度差からくるのだろうか?
まぁ、本日が千秋楽なのでもう観る事が出来ないが、個人的にはお勧め芝居ではない!という処か.....。
満足度★★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
団・少年社中の【モマの火星探検記】を観劇。
宇宙飛行士モマは、父親との約束を果たす為に人類初の火星探索に挑んでいる。そして少女ユーリは、宇宙で行方不明となった宇宙飛行士の父親にメッセージを送ろうと、自ら小型ロケット作りに勤しんでいる。
現代と過去の話が同時刻で進行していき、最後にシンクロするという展開。
宇宙飛行士モマと少女ユーリの関係性は自ずと分かって行く様に舞台が構成されている。この劇団、既に若手の部類には入らないだろうと思われるが、現代の小劇場シーンとは全く異なる派手な演技、照明、ドラマチックな展開と商業演劇の面白さを追求しているようだ(前作の天守物語も同様)
出だしからの派手な演出や人海戦術によるパフォーマンスには前作同様、舞台でしか味わえない興奮を感じる。だがどうもこのタイプの演劇に最も必要な最後の山場に見せ方には前作同様やや不満を感じてしまう。起承転結の起承転までは緩急を上手く使いながら飽きさせずに見せて行くのだが、結の部分の粘りの無さというか、あっさりした感じは感動を求める観客にはやや物足りなかったようだ。やはりこの手の芝居は、最後は濃厚でなければいけないのである。
比較してはしょうがないのだが、誰が観ても面白いと思える劇団・新感線、劇団・キャラメルボックス、スーパー歌舞伎などの濃厚さには太刀打ち出来てないようだ。
満足度★★★★
ネタばれ
劇団・芝居流通センターデス電所を観劇。
全く知らない劇団で、ネットでの情報のみであったが、どうも気になってしょうがなかったので観劇を決意。
ネタバレBOX
内容は、ミチル(男)がバイトをどうしても休まなければいけない理由が出来てしまった。それは同居している彼女が部屋で浮いているのである。どんなに説明してもバイト先では納得してくれない。果たしてミチルはバイトを休む事が出来るのか?
センスのないチラシのデザインと映画・エクソシストのパクリか?と思わせといて、見事なまでに観客を熱狂の渦に巻き込んでしまう芝居であった。
前半のミュージカル仕立てから始まり、彼女が浮いている理由をあっさり分からせてしまうなど退屈だなぁ?と時計を見た瞬間から、内容が二転~三転していき、重いテーマへの突き進んでいき、ラストは唖然!としてしまう。明らかに前半の退屈な展開を伏線の様に利用して、後半に観客を掴んでしまうという演出力はお見事!としか言いようがない。
やや劇団・新感線的ノリもなくはないが、こちらの方がやや上を見た。勿論、比較してもしょうがないのだが。
今作はお勧め。
満足度★★★
太宰治?
ややネタばれ?
ネタバレBOX
劇団・ままごとの新作【朝がある】を観劇。
太宰治の【女性徒】をモチーフに、少女の朝の一日の瞬間から世界へと繋がる連鎖を音楽、映像、言語、踊りを使って表現していく。
作・演出 柴幸男の世界観は毎度の事ながら壮大過ぎる。過去の作品では沢山の役者を使って表現してきたのだが、今作は男性俳優一人でその世界観を見せていく。今作は新しい試みなのだが、過去の作品が壮大な世界観と多数の役者での表現に圧倒されていただけに今作はやや物足りなさを感じた。決して失敗作ではないのだが、過度な期待を持つ観客と作家の狙いがあまり埋まっていなかったようだ。でも作家が次のステップを目指している事は明らかに分かる意欲作だ。
今作は劇団・ままごとを初見で観る方にはお勧めではないようだ。
満足度★★★★
ややネタばれか?
五反田団の新作【宮本武蔵】を観劇。
ネタバレBOX
五反田団の新作【宮本武蔵】を観劇。
前田司朗が宮本武蔵を描くとなるとこれはまともには描くとは思えないな?と観客は誰でも思うし、そこに期待をするのだが、意外にも今作はちゃんとした物語があり、戦いのシーンがあったりするのである。特に今作はあらすじの説明が簡単に出来たり、夢のシーンがあったり、照明で表現している箇所があったりと驚かされるばかりである。何時もながら前田司朗の描き方は馬鹿馬鹿しさで成り立っているように錯覚してしまいがちだが、その部分を外して観て見ると、非常に戯曲の上手さが滲み出ていて、更に前田司朗の演出が際立っているのである。
そして今作もやはり前田司朗は観客の期待を裏切らないのである。
因みに誰が宮本武蔵を演じたのか?それ自体が非常に面白い。
満足度★★★★★
山内ケンジ?健司?
何となくネタばれ?
ネタバレBOX
劇団・城山羊の会の【スキラギノエリの小さな事件】を観劇。
ヨーロッパ北東辺りのスキラギノエリという小国は、頼りない国王とプライドが高い王妃、そして息子スキラギ、家来ゴルク、そこに出入りしている修道女ヨハンナがいる。
国王は何時も女遊びに興じ、王妃は家来と浮気まがいの事をしている。そんな夫婦にも息子のスキラギの悪戯には手を焼いているので、家庭教師ホロスを雇い入れる。だが家庭教師ホロスの努力も空しく、息子スキラギは小国にいる連中の偽善性を暴きだしていくのである。
内容はこのような感じなのだが、毎度の事ながら物語らしい物語が殆どなく、ちょっとした出来事から(息子スキラギの悪戯)誰もが持っている本音と建前の本音の部分をやたらにクローズアップして描いていく。その本音の部分をやや茶化した感じで見せて、更に役者の芝居と台詞で強調しているので、観客は妙なリアリティーを感じてしまい、笑いの渦に誘われていくのである。
とまぁ感想はこのようなのだが、どうも上手く面白さを説明出来てないのが本音なのだが、完璧な戯曲と役者への演出が非常に細かく丁寧で、作・演出の山内ケンジは計算しているのか?自然発生で出来た物なのか?は分からないが、ただ毎回きっちりと独自の世界観が確立されているのは確かだ。はっきり言える事は「山内ケンジという人はあの面白いCMを撮っている人だね。何となく舞台の感じも分かる気がする」という発想で観劇してはいけないという事だ。
今作の石橋けいの芝居の上手さは観客を虜にする(特に今作は男性客) そして山口奈緒子も暴れまくりも良い。
今作はかなりお勧め。小劇場ファンにはたまらない芝居だ。
満足度★★★
つかこうへいか?
ややネタばれ?
ネタバレBOX
亀戸カメリアホールにて【だいだいの空】を観劇。
今作は親子向けのファミリー芝居なので、決して観る事のないタイプの芝居なのだが、何故か?たまには観るのである。
昭和22年のとある町で一人暮らしのおじいさんがひょんな事から井戸に落ちてしまい、現代にタイムスリップしてしまう。現代の街並みの変わり様に唖然としてしまうのだが、そこで知り合った少年と少女と仲良くなりどうにか生きていく。そしてまたひょんな事から井戸に落ちた少女を助けに少年とおじいさんは井戸へ入っていき、昭和22年に戻っていく。
そして昭和22年は新しい日本の発展に向けて開発が進み始め、未来の姿を見たおじいさんは子供達に何を残さなければいけないかを伝えようとし始める。
おじいさんと少年、少女との出会いと別れを過去と現代のシーンで描き、そこで何が生まれ、何に未来に託すか?という事がテーマであり、子供でも分かる様に分かりやすく作っている。だが、子供を舐めるのをいい加減にせい!と言わんばかりの紋切り方の表現方法にはやや疑問を感じた。未来へのタイムスリップの仕方、ドリフターズ的な映像の使い方など舞台での表現方法があまりにも乏しすぎる。ただ俳優への演出がキチンとしているのでまだ良いのだが、子供に生でしか味わえない舞台を体感させるという興味は演出家にはない全くない感じだった。でもねぇ、両方兼ね備えないと大人も子供も楽しめる舞台は作れないのだが・・・・。
そういえば主役ではないのだが、存在感抜群の女優さんがいた。声の通りと芝居の表現力。いきなり始まりからマイクで歌い出すからねぇ(つかこうへいか?)パンフレットによると北区つかこうへい劇団の出身らしい。流石!というしかないな。でも彼女にわざわざマイクで歌を歌わせたのは演出家の洒落か?
満足度★★★★
世情
ネタばれ
ネタバレBOX
池袋シアターグリーンにて劇団ろりえの【よろこび】を観劇。
前作【三鷹の化け物】では等身大のゴジラ(上半身)を登場させて度肝を抜いたが今作は何を見せてくれるか?
ホモの為に村で爪弾きにされているカップルが捨て子の赤ん坊カヨ子を見つけて育ていく。ホモの親でもカヨ子は愛情につつまれて、子供~少女~大人へと立派に成長していく。そしてカヨ子も結婚して愛する夫が出来るのだが、突然の事故で夫を失い、茫然自失のカヨ子は親と娘を残して上海に流れついてしまう。そして生きる為に娼婦になるのだが、事件に巻き込まれ何十年振りに日本に戻ってくる。そして残された家族と再会するのだが、カヨ子は癌に犯され余命幾ばくもない状態だった・・・・。
カヨ子の生まれてから死ぬまでの一生を3時間かけて描いていく。不幸な運命の持ち主のカヨ子なのだが、周りの人達との関わりや生きる喜びを見出しながら、負の面をあまり見せずに、己の人生に投影するという行為を観客はしないでカヨ子の波乱万丈の人生を観ていく。だが最後にカヨ子の葬式が終わって舞台の幕が閉じるという終わり方には度肝を抜かれてしまった。始まりから終わり直前までは観客の感情をあまり動かさない芝居だったのが、最後に人生の一生を終える瞬間がこの舞台の最大のクライマックスであり、ここで初めて観客の感情を揺さぶり、己に投影させるように持っていくとは・・・・。
中島みゆきの【世情】が久しぶりに効果的に使われていた。金八先生以来かも?
満足度★★★★
放置!
劇団・犬と串の新作【宇宙Remix】を観劇。早稲田大学での最後の公演。
毎度の事ながら内容の無い物語の連続で、2時間を持たせてしまう若い劇団の熱量は日本一と言っても過言ではない。鈴木アメリの変顔は勿論の事、男優人の熱さも観ていて気持ちが良い。この劇団、かなり実力をつけてきているのは、毎回の公演で俳優人の成長がはっきり見て取れる事だ。
これからは早稲田大学の冠を外して行くらしいが、果たしてどのようになって行くのか?演出家の何気に冷めた目線で、笑いやギャグに転じて見せていく作劇は面白いのだが、このままでは大人の観客のリピーターが付いてこないだろう。犬と串の運命を握るのは作・演出のモラルの戯曲次第だろうな。
やはり鈴木アメリには野田秀樹の芝居で舞台を走り回って欲しい!と思うのは勝手な願いなのだが・・・。
満足度★★★
公開ゲネプロ観劇。
ややネタばれ。
ネタバレBOX
劇団・フルタ丸を下北沢で観劇。
初見の劇団。チラシのデザインと劇団名からいってあまり良いセンスが漂ってこないのだが。
個人の時間売買が法律で施行される頃に、下請けの小さな町工場に役所から謎の商品の発注の依頼がくる。何故か?毎回渡されるデザイン画が商品の一部分のみで、完成した形が見えないまま工場では疑問に思いつつ完成させていく。それと並行して何十年後の未来では、時間売買の法律が既に禁止されていて、闇での取引が盛んに行われている状態だった・・・・・。
謎の商品が時間売買との関係に繋がっている様に見せていく展開にワクワクドキドキしながら観ていたのだが、当然そのネタばれがラストにアッとくるのだろう?と期待していただけに、後半であっさり見せてきたのがちょっと残念か。そのネタばれから過去~未来へと物語を新たに持って行っているのだが、その謎の商品がけっこうアッと驚くような物だったので、やはり最後の最後に持って行くような展開に出来なかったのだろうか?とちょっと残念でならないのだが。
満足度★★★★★
日本バージョン
ネタばれ
ネタバレBOX
【The Bee 】の日本バージョンを観劇。
前回のイングリッシュバージョンと同じ戯曲で、日本人の配役に変えての公演。
イングリッシュバージョンが外国人向けか?ややストレートプレイに近い形で行っていたのに対して、日本バージョンば大胆な小道具の使い方で、野田秀樹の得意の小劇場っぽい表現の数々で展開していく。ただ初演に比べるとイングリッシュバージョンはさほど進化はしているようには思えなかったが、日本バージョンの方は更に明確にテーマを表現していったようだ。サラリーマンが被害者から加害者に変貌していく様の変わり方が異常過ぎで、明らかに今の日本にメッセージを訴えている。同じような問題を全世界でも抱えているのに、何故日本に対してここまで訴えるのか?イングリッシュバージョンは物語を通してメッセージを伝えていたのに対して、日本バージョンは最初にメッセージありきで出来あがった芝居の様にも感じ取れた。改めて両作品を比較してみると、世界での日本の存在位置というのがかなり危ういのではないか?と演劇を通して野田秀樹の心の叫びが聞こえてくるようだった。
初演では秋山菜津子が演じた役を宮沢りえがどのように演じたか?日本一スリップが似合う女優と言われている秋山菜津子の色気に対して、宮沢りえは生足丸出しで、野田秀樹扮するサラリーマンに前、後ろからと犯されていき、哀れに狂人化していく野田秀樹を見つめる一瞬の表情、そして自らも奴隷の様に野田秀樹に奉仕していく虚ろな表情、今作が宮沢りえの生涯の芝居でベストワンと言っても過言ではない!と思わせるぐらいに非常に良かった。今作の宮沢りえの芝居を見逃すのは勿体ないと思われるので、是非劇場へ!
尾藤イサオの【剣の舞】というおバカな歌が効果的に両バージョンで使用されていた。
満足度★★★
夢かぁ?
劇団・範宙遊泳の【夢サイケデッリック】を観劇。
期待の20代の劇団で、以前に短編を見て以来。長編は初観劇。
夢のまた夢の世界を描いていて、何かスタンリー・キューブリックを思わせるようなSF感が漂っている。やや哲学的な描き方もすれば、お遊戯的な描き方もしていて、時折ハッとさせるような表現には何度なく驚かせる。その辺りが世間のこの劇団の期待値の高さか?更にバックに流れる音楽がワルツやオペラなので、夢の世界には持ってこいの表現方法だ。ただ長編という枠の中では、90分が持たないというのが正直なところだ。一応物語があるのだが、その物語をお座なりにしているようで、途中に何度なく飽きてしまう。そこをもう少ししっかり取り組んでいけば、劇団・大人計画辺りは簡単に越えてしまうのだが・・・・。
満足度★★★
代表作なので観劇した事は自慢出来るが・・・・。
ネタばれあり
ネタバレBOX
劇団・サンプルの【自慢の息子】を観劇。
今作は岸田戯曲賞を取った作品である。前々作の【ゲヘナにて】はとても観るに耐えられない芝居だったのだが、今作は劇団の代表作でもあるので再度挑戦をしてみた。
母親の自慢の息子・正はとある場所に王国を作っている。その王国では正の信奉者達で共同生活を行っている。正は神憑り的な存在なのか?その王国はジャングルの奥地か?カーツ大佐かアギーレか?などと勘ぐってしまうのだが、実はそこは単なるアパートで、正は引きこもっている中年オヤジである。その共同生活の風景を正の役を扮する・古館寛治を中心に描かれている。
前々作での耐えられない芝居も今作ではそれほどでもなかったのだが、やや同じ様な体感をした事は確かだ。今作はラストに向かって行くに従って、このような王国を作ってしまった?作ってしまう?に陥った理由のような物が観客にボンヤリと見えてきた点だ。ただそのような物語やテーマを疑問視して追求していく鑑賞法は間違いのようで、ただただ観客は舞台で行われている出来事を漠然と眺めていれば良いのかもしれない。観客に一切寄り添わない、近づかせない見せ方にこの劇団の面白さと魅力があるのかもしれない。明らかに小劇場ブームの頃の熱い演劇とは正反対だ。今の時代を語るにはこのような表現方法が一番正しいような気がする。でも自分自身が次回作を観るかは非常に疑問ではあるが・・・・。
満足度★★★
初見
どん底を描くには演出家が如何に役者の熱量を引き出せるかにかかっているが、その辺りは今作は見事。
加藤ちかの美術には毎回惹かれるものがある。
満足度★★★★★
三田和代の怪演
ネタばれあり
ネタバレBOX
新国立劇場にて蓬莱竜太の【まほろば】を観劇。
今作は劇団・モダンスイマーズとしてではなく、蓬莱竜太が戯曲のみ提供した作品。
人生に追い込まれた男性達を描くのを得意とする蓬莱竜太が、女性だけのドラマを描くとどのようになるかのか?
以前に劇団・モダンスイマーズで観劇した【夜行ホテル】というのが、過ちを犯して逃げてきた男性達が、狭いホテルで、もがき、苦しみながら人生をどのようにして立て直していくのか?という芝居だったが、今作も同じ様な閉じ込められた設定である。
とある田舎町の祭りの最中で男性達が出払っている家では、本家を必死に守ろうとする母と大母様、突然東京から帰省した長女、それにバツイチの次女とその娘、そして次女の今の彼氏の娘の6人の女性だけで展開するドラマ。 閉じ込められてという設定ではないにしても、祭りで出払っている男性達が帰ってくる間を家で待っている女性達=閉じ込められている?とやや設定が似ている点が面白い。今作は女性のみのドラマであり、彼女達に降りかかった危機というのが、血脈、結婚、不倫、閉経、生理と過ちは犯していなくとも人生に降りかかった危機をどのように乗り切るか?男性ならそんな状況でもロマンの一つでも語ろうとするが、女性は決してロマンなどを語ろうとせず、現実のみを見据えてその場を乗り切ろうとするのである。男性が見たら非常に息苦しく、女性が見たら自身の現在を踏まえて観てしまう辺りがこの舞台の面白い処である。男性作家なので男性視点が多少あるだろうなぁ?と思っていたが、そのような事は一切なく、女性の視点のみで展開している。この設定の代表格である長女役の秋山菜津子は、小劇場出身ながら風格があり、商業でもこなせる女優だ。演劇界では大竹しのぶの次の位置にいる事は間違いない。そして三田和代というベテラン女優は、怪演という言葉がピッタリと当てはまってしまうほどの俳優になっていたのは驚いた。
今作の戯曲は岸田戯曲賞を取っただけに、見応えのある芝居であり、脱ドラマが叫ばれている若手の演劇人には到底書く事の出来ない傑作戯曲である
満足度★★★★
堀川炎の名前と顔が気になってしょうがいない
初見の劇団・世田谷シルク【kon-kon,昔話】を観劇。
最近ではシアタートラムに進出して、注目され始めている劇団。
食べる物に困っていた狐を人間が餌を与えた事によって、恩返しに狐が遊女になり人間を助け続ける話し。(原案は狐遊女)今作は福岡公演がメインで、東京公演はない予定が急遽公演するようになったようだ。
踊り、芝居、内容と全体のバランスが取れていて、非常に小劇場らしい面白さを体感させてくれた。若手劇団にありがちな得意な物だけに偏らず、あくまでも戯曲に沿って表現している事が完成度を高くしている。演劇においてのバランスの良さというのが非常に難しく、それが出来ない劇団は毎回完成度には難があり、集客がまちまちだのようだ。自分中での面白いと思える演劇指数にピッタリと当てはまる劇団を見つけてしまったようだ。
野田秀樹はよく人間スローモーションを行うが、世田谷シルクは人間早送りをやっていた。
写真に写っているのが、作・演出の掘川炎のようだが、名前と顔の個性が強すぎ。
満足度★★★
初見の劇団
劇団・年年有魚の【春風】を観劇。
市井の人々をゆっくりと丁寧に描く事をモットーとしている劇団のようだが、肝心の戯曲に難があったようで、出来はイマイチ。
でもチラシは良いのだがなぁ~。
満足度★★★★
痺れ過ぎた!
新国立劇場にてワグナーの【さまよえるオランダ人】を観劇。
何十年前に指揮・小沢征爾、演出・蜷川幸雄を観て以来。
悪魔の呪いを受けて永遠に海をさまようオランダ人船長。7年に一度しか上陸を許可されず、永遠の愛を捧げる乙女と出会った時に呪いが解かれるオランダ人船長の物語。
愛による救済がテーマで、とんでもない物語と陶酔するアリアの連続で僕を異次元に運んで痺れさせてくれたオペラであった。まさしく見応えは十分。
チケット代金は高額だが、ワグナー初心者には何気にお勧め!
衣装は、ひびのこずえさん。