しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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アジアン・エイリアン

アジアン・エイリアン

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/06/22 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

19年前に初演された戯曲の再々演。テーマは人種差別とアイデンティティ。小空間で水を使う演出は贅沢。水は終盤でさらに意味を発揮。「何とも思わない」「気にしない」と即答できることこそ差別なんだなと自戒した。

古城十忍さんと鐘下辰男さんのトークがとても興味深かった。ここ十年の間に自由に使える劇場が激減してるとのこと。昔は「劇場を燃やす以外なんでもやっていい」という場所があったのにと。今回もいつも使っている劇場だから許可がもらえたそう。作り手の若者の劇場離れも指摘。

目の前で水が増して行き、照明、音響と関係しながら、水とともに演じる人々を観られるのは貴重な体験。

屠殺人  ブッチャー

屠殺人 ブッチャー

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2017/06/23 (金) ~ 2017/06/30 (金)公演終了

“東欧の民族抗争”を題材にしたカナダの劇作家ニコラス・ビヨンの推理劇。1時間半スリルが持続!面白い!怖い!佐川和正さんは『エレファント・ソング』と全然違う役。森尾舞さんの低い声が良い。6/30(金)まで下北沢の「劇」小劇場。

ネタバレBOX

マルコの「リベンジはしない」という言葉が彼女を再び“公爵夫人”にしたのかも。
おーい、救けてくれ!

おーい、救けてくれ!

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2017/06/23 (金) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

昔、パルコ劇場で観たことがある戯曲。今回ようやく意味がわかった。無料なのに照明、音響、大道具もそろったリーディングはいつもながら贅沢。上演時間は約35分だったような。

ネタバレBOX

婦女暴行で独房に入れられた若い男が、刑務所で働く少女(17歳ぐらい)と恋に落ちる。終盤に男が暴行した(?)女の夫が登場し、最後には女も登場。
人間が人間を殺すための道具(銃)は、やっぱり存在しちゃいけないと思った。
「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

 北海道出身者で結成された道産子男闘呼倶楽部の今公演は、作・演出のニシオカ・ト・ニールさんも、会場であるSPACE雑遊のオーナーも北海道出身というこだわりぶりです。開場中の客入れ時間が心なしかアットホームで、好感をもって幕開きを迎えることが出来ました。舞台との心の距離が近くなったせいか、中年独身男性2人のダメっぷりが早い段階から可愛らしく見えて、進んで声を出して笑えることもありました。

 出演者の犬飼淳治さんも津村知与支さんも舞台でよく拝見する俳優で、演技が達者であることは織り込み済みでした。お二人がいつもより魅力的に見えたのは、女性であるニシオカ・ト・ニールさんが男性像を俯瞰して描いてくださったからではないかと思います。熱さも冷静さも、かっこよく見えるところで止めると、ナルシスティックになって鼻に付くものです。弱さ、愚かしさを過剰と言えるほどにさらけ出す演出に、俳優が本気で応えたから、性別を超えて人間の地力が溢れ出たのではないでしょうか。現代口語の会話劇に演劇的な大仕掛けも用意されていて、お芝居ならではの楽しみを味わえました。

ネタバレBOX

 北海道の大学を卒業して今は東京で求職中の金平(津村知与支)は、嫌々ながら清掃のアルバイトをしています。ある日、浮浪者と思われるむさくるしい男性が金平の仕事場の近くに居座っていたため、注意をすると、なんと高校時代の同級生の内藤(犬飼淳治)でした。2人で飲みに行き、金平は「自分は大企業に勤めていて、恋人もいる」と嘘をつきます。気のいいホームレスの内藤は金平の話を素直に信じるので、金平は大卒の自分よりオツムが弱そうな内藤を気に入ります。

 金平が一人暮らしをしている部屋に内藤が転がり込み、2人の共同生活が始まりました。内藤は会社の金を横領したという濡れ衣を着せられ、前科(たぶん求刑1年、執行猶予3年)があるため再就職ができません。米粒に筆で絵や文字を書いた「コメッセージ」という商品を路上で販売しています。内藤は金平に1泊200円を支払い、家政婦役を買って出て、パソコンの使い方も覚えて、着々と成長していきます。

 やがて内藤に20歳以上年下の恋人ができました。報告された金平は大きなダメージを受け、立場が完全に逆転します。金平の取り乱しっぷり、そしてそれを隠そうとする慌てっぷりがなんとも情けなくて滑稽です。「ダブルデートをしよう」と誘う内藤の純朴さが、かえって残酷に映ります。そして金平は、ハローワークの窓口の女性に「彼女になってくれ」と迫り、警察沙汰を起こすまでに追い詰められるのです。2人の男性を徹底的に対照させるのが効いています。
 
 とうとう金平は内藤に、何もかもぶっちゃけて告白します。そのあたりから、舞台上に並べられていた漫画や服などの家財道具を、2人の俳優が自分たちで片づけ始めました。しっかり建てられていた棚がキュっとたたまれるのは、ちょっとしたイリュージョンでしたね。何もない空間に立つ2人は、金平と内藤であり、津村さんと犬飼さんでもありました。ありのままの個人として舞台上に立つ人は強いです。そして強さは美しさだとも思います。

 題名の「輓曳(ばんえい)競馬」については、最後の最後に一言のセリフでしか出てきませんでした。そういえば賭け事もしない2人でしたね。馬が引くソリの重さは、40代独身男性のプライド、または人生そのものなのかもしれません。重荷を捨て、解放された彼らの前途は洋々とは言い切れませんが、覚悟が決まった笑顔が清々しかったです。

 部屋にずらりと並ぶ漫画は「マカロニほうれん荘」「銀牙-流れ星銀-」「ドラゴンボール」「三国志」など、40代の私が懐かしいと感じるものが多く、比較的新しい「トリコ」もありました。“男子”らしい感じです。「BEATLESの青版LPなら2万円で売れる」的な話題も懐かしかったですね。

 ニシオカ・ト・ニールさんがハローワークの窓口の女性と、金平の清掃バイト先の乱暴な同僚を演じていらっしゃいました。全然違うタイプの女性を演じ分け、アクセントとしても効果的だったと思います。
『あゆみ』『TATAMI』

『あゆみ』『TATAMI』

劇団しようよ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/06/01 (木) ~ 2017/06/05 (月)公演終了

満足度★★★

 柴幸男さんの『あゆみ』は1人の女性主人公を複数の俳優が演じる、一風変わった戯曲です。女優3人バージョンの初演以降、さまざまな演出で色んな地域で上演されてきた人気作で、私は数バージョン拝見しています。劇団しようよ版は男優のみが出演するという、柴さん曰く、さまざまに存在する『あゆみ』の中でも唯一のものだそうです。

 京都では同じく柴さんの戯曲『TATAMI』との二本立て上演でしたが、残念ながら京都まで行けず、見逃しました。

ネタバレBOX

 開場時間から柴さんが舞台上にいらっしゃいました。原作者ご本人として、特に用意された台本などはなしに、舞台上に待機している俳優たちに話しかけていたようで、メタシアターの構造が露わになりました。素を演じるのと素のままであるのは、言うまでもなく異なる行為です。どちらにしても作品が始まる瞬間は非常に重要ですので、もっと周到な準備をしてもらいたかったです。「今のお気持ちは?」「緊張してます」といったやりとりがありましたが、俳優の表情が硬く、空気が温まるわけでも面白いわけでもありませんでした。俳優の多くが劇場の壁沿いに静かに座って、下を向いていたのも不思議でした。俳優なら観客に対して、または作品のために、自分から積極的に動いて欲しかったです。何より、俳優に恥をかかせない演出が必要だと思います。

 私が『あゆみ』を初めて観たのは2008年のこまばアゴラ劇場公演でした。2009年と2010年に三人芝居バージョン、2009年に中高生バージョン、2011年に愛知での再創作を経た横浜公演を拝見し、どれも柴さんの演出でした。描かれるのは「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のような昭和のステレオタイプの家庭ですが、1つの場面で主人公を演じる俳優がくるくると交代していくトリッキーな演出で、家族像が相対化されます。今回は1つの場面の主人公を1人の男優が担当し、母親役、父親役、犬役などの演じ手はほぼ固定でした。そのため、現代の感覚だと女性蔑視とも受け取れる戯曲の家族像が、そのまま肯定されてしまったように見えました。

 今作の最大の特徴である、女性を男性が演じる演出について。カメラを構えて舞台を見つめる父親(門脇俊輔)を下手手前に配置することで、全ては父親による実娘の人生の回想なのだと解釈できました。主人公とその周囲の人々を演じる男優それぞれが、世界中にいる「父親」一人々々であると想像できました。黒い床には白い線の四角い枠が複数、少しずつ重なるように描かれています。1つの枠が1枚の写真のように見えて、舞台空間が1冊のアルバムであると思えました。

 場面転換時に演出家の大原渉平さんが、文章が書かれた白い紙の束を持って登場し、無言でその紙を紙芝居のようにめくっていきます。手書きの黒いペンで書かれた内容は、アンネ・フランクやルーマニアでの日本人女子大生殺人事件(2012年)など。若くして亡くなった実在女性のエピソードが加えられ、下手にいる父親が回想する実娘もまた、早死にしたのではないかと想像しました。2013年の渡辺源四郎商店『ひろさきのあゆみ~一人芝居版』(上演台本構成・演出:工藤千夏)では、1人の女性の生涯が描かれていて感動しました。柴さんの『あゆみ』は老後が描かれていないので個人的に不満だったのです。今作の主人公には不幸にも老後が訪れなかったのだと考えれば、その不満は解消されます。ただ、舞台上の大勢の「父親」の悲しみにフォーカスした作品なのだと思うと、全体的に感傷的であることが気にかかり、その雰囲気を説明するような生演奏の音楽も少々苦手でした。

 最後に再び柴さんが登場して大原さんと会話をするのですが、冒頭と同様、柴さんのお子さんの性別や名づけについてなど、プライベートな内容でした。大原さんが未来の自分の子供につけたい名前も公表していらっしゃいました。真偽はどうあれ、20~30代の男性2人のごく私的な会話で終幕することで、『あゆみ』の世界が矮小化されたように感じて残念でした。

 高校時代の主人公が恋に落ちるエピソードは、相手が女性か男性かわからないのが面白いんですよね。今作では男性の先輩に恋をしていました。先輩役の俳優(土肥嬌也)が女性役とは異なる男性らしさを身にまとってくれていました。
罠々

罠々

悪い芝居

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/04/18 (火) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

満足度★★★

 悪い芝居は『キャッチャーインザ闇』でCoRich舞台芸術まつり!2013春・最終選考作品に選ばれ、今回が二度目の最終選考進出になります。再挑戦に感謝します。

 同劇団の公演は『駄々の塊です』(2011年)、『キャッチャーインザ闇』(2013年)、『スーパーふぃクション』(2014年)、『春よ行くな、』(2016年)を拝見していまして、今回が私にとって5作目です。個人的なことなのですが、『スーパーふぃクション』と『春よ行くな、』と同様、音響と音楽が苦手で序盤から集中できず、終盤には耳を塞ぐほどになってしまいました。胸にズンズンと響く重低音や、驚いて飛び上がるほどの突然の大音量、全体的に音楽が鳴り止む時間が少ないことなどが、私にはどうしても合わないようです。申し訳ないです。

 終演後のトークで明かされたのですが、NMB48の石塚朱莉さんは19歳、The Stone Ageの緒方晋さんは45歳とのこと。作・演出の山崎彬さんはたぶん34歳ですので、年齢幅の広い座組みだったんですね。トークでは緒方さんに大いに笑わせてもらいました。ネタをきっちり披露して常に観客を楽しませようとする、サービス精神とプロ意識に感心しました。劇中の演技についても緒方さんに惹きつけられました。

 客席数300席弱とはいえ東京芸術劇場シアターウエストは規模が大きいです。受付やロビーの制作者の人数が多い目で、物販が充実していました。また、指定席にホっとしました。

ネタバレBOX

 俳優は白、黄色などの同系色でまとめた裾の長い抽象的な衣装をまとい、さまざまな人物を演じていました。東京から故郷に帰った主人公の羽尾(渡邊りょう)が高校時代の同級生の壺見(山崎彬)に偶然再会し、壺見が関西弁を話すので、舞台は関西地方です。

 開演前からビデオ中継を多用していました。ロビーから楽屋を通って舞台に登場する俳優を追ったり、舞台上でお互いを撮影し合ったりして、オンタイムの映像が舞台奥の壁に大きく映し出されます。自らを録画して全世界に公開するユーチューバー(狐子:石塚朱莉)の生活や、街中にカメラが設置された監視社会を劇場内でリアルに体験できる仕掛けで、見られることが前提の振る舞い、つまり人間の二面性や嘘を強く意識させてくれました。

 “神様”っぽい人物(釈迦男:植田順平)が舞台中央にいすわり続けることで、お芝居を俯瞰する視点が確保されます。ただ、その人物の正体も変化するため、世界を見守る、または監視する大いなる存在も信用ならないものになります。作り物、まがい物ばかりが陳列され、嘘に支配される現代社会を映しているように感じました。主人公を罠にハメた「光のない黒い玉のような目をしたヤツ」がカメラのレンズであるならば、レンズを向けたのが“神様”なのか、または自分自身なのかという問いにもなります。ダジャレと謎かけでリズムをつけて、人間の心の闇を旅していくブラック・ファンタジーと受け取りました。
 
 観客に向かって積極的に思いをぶつけていく姿勢には好感が持てるのですが、個人的に「伝える」より「伝わる」ことを目指す表現が好きなので、もう少し観客とともに呼吸をするというか、音にはならない観客の声に耳を澄ますような時間があって欲しかったです。ギャグが多かったのですが私はあまり笑えなかったですね。緒方さんの「あーまーたーマーガリーンぬーりぬーりでぇす!」には笑いました!

 舞台正面奥にそびえる壁の右上に開いた窓は、目にも月にも見えました。終演後のトークで緒方さんが「天井から吊り下がる電球は精子で、壁の中央にある出入口は子宮(命の出口)のようだ」とおっしゃっていて、共感しました。
「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

「母さん、たぶん俺ら、人間失格だわ~キャンピングカーで巡る真冬の東北二十都市挨拶周りツアー♨いいか、お前ら事故るなよ、ぜったい事故るなよ!!編~」

MICHInoX(旧・劇団 短距離男道ミサイル)

Studio+1(宮城県)

2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★

 太宰治作「人間失格」のあらすじに則り、出演者(加藤隆 小濱昭博 本田椋)の私生活と、ダメ人間エピソードを絡めて展開していく、メタ構造の喜劇でした。観客参加型の仕掛けも誠実で好感の持てるもので、演劇作品としても面白く拝見しました。「元気な男子が所かまわず脱ぐのであろう」と予想して伺いましたが、それほど露出が激しくなくてホっとしました(笑)。プロジェクターの文字および映像、照明、選曲も効果的で、俳優が半裸で暴れる中(笑)、高度なテクニックで劇世界へと誘い込んでくれました。

 作品をより楽しむためのノートとして「人間失格」のあらすじ(はしがき、第一の手記、第二の手記、第三の手記、あとがき)が配布物にまとめられていました。私は大昔に読んでほとんど忘れていたので、開演前に読んでおいて助かりました。

ネタバレBOX

 開演前に、本田さんが携帯電話云々の前説を物まねで披露してくれました。「フレディ・マーキュリー、菅野美穂、藤原竜也の三択」の中から観客が「藤原竜也」を選び、テレビや映画で有名なのであろう、藤原竜也さんらしいセリフを交えながらの熱演です。もう、これだけで仙台に来てよかったと思いました。

 体を張ったギャグが多かったですね。なぜか乳首を洗濯バサミで挟む!(笑) 洗濯バサミを紐でつないで、3人で上半身裸のみつどもえ状態になったり!もう…バカバカバカ!(褒め言葉です・笑) アントニム(対義語)・ゲーム、シノニム(同義語)・ゲームも可笑しかったです。「切手のないおくりもの」の歌詞を太宰風に変えていくのも面白かったですね。タイトルが「希望のない日陰者」になっちゃったり(笑)。

 葉蔵(加藤)とツネ子(小濱)が心中に至るエピソードが文楽風になってたのも良かった~。本田さんは手作り(?)三線を演奏しながら太夫のように謡っていました。葉蔵とツネ子の道行はしっとりとした情感が伝わりました。文楽人形を脱いで、全員が葉蔵に変身する時は、使っていた人形や道具を舞台中央に集め、その上にこたつを被せて隠したのが秀逸でした。

 出演者3人の実のお母様が息子に向けて話された言葉の録音が流れました。「結婚して子供をつくって育てて欲しい、でも収入が安定していないから結婚できない、親として心配」という赤裸々なもので、しかも3人の幼い頃からのスナップ写真を映像で見せていくので、余計に生々しいです。本田さんのお母様からはお言葉を頂けなかったそうで、本田さんご自身の声のアナウンスが流れました(笑)。

 小濱さんは「ネットゲームに耽ったり浮気したりしたために恋人にフラれた」という自虐的なエピソードを、淡々と話すのがお上手でした。複数役の演じ分けもくっきりしていて、説得力もあって良かったです。
いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した

ロロ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/13 (月)公演終了

満足度★★★

 “いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校”を舞台にしたロロの「いつ高シリーズ」は4作目を数え、これまでの3作と合わせて一挙上演されました。4作とも上演60分と上演前のセッティング10分の計70分です。3/7の追加公演の日にvol.1~vol.4を連続で拝見したので、高校演劇の大会を鑑賞するような体験にもなりました。

 作・演出の三浦直之さんがこのシリーズと高校演劇の説明をして、セッティングの指示を出し、開幕します。高校生らしいカジュアルな制服姿の俳優が「長い方のベンチ出しまーす」「新校舎側のパネル出しまーす」などと言って大道具を運んで設置するため、舞台がどのような場所なのかのヒント(ベンチがある、校舎がある等)が得られます。そこは高校演劇とは違うところでしたね。

 30歳ぐらいの男女が17歳前後の高校生を演じるという“無理”が前提になっています。そのまま受け入れられれば良かったのですが、私には俳優がかまととぶっているように見えて、残念ながら素直に物語を楽しめませんでした。また、顔の表情で状況説明をする演技が多く、たとえば「噂が好き」といった役柄の特徴が信じられませんでした。行動のもととなる動機が見えづらいこともありました。

 登場するのは放課後の中庭でコイバナをする女子高生3人だけですが、vol.3までの話も出てくるので、登場人物がもっと大勢いるように感じられました。

 戯曲はvol.1とvol.2が公式サイトで無料公開されています。挿絵が可愛らしいですね。

ネタバレBOX

 放課後。太郎と別れて傷心中の海荷と、その友達の茉莉(噂好き)と瑠璃色(絵が好き)が中庭のベンチに腰掛けています。正面に見えるのはvol.3の舞台だった渡り廊下。「偶然通りがかった男子を好きになれば?」という茉莉と瑠璃色のアイデアに、海荷も乗って、渡り廊下を通る男子の品定めを始めます。やがてグンジョー君とジャム君(だったかな?)が好きな人候補に。

 脚注を読む限り、出演者それぞれが好きな漫画、映画、音楽などがそのまま戯曲に反映されているようです。「スマホを持っている高校生が、なぜそんな昔の話を…?」と何度も不可解に思いましたが、“~~第三高等学校”には今と昔が混在しているのだと解釈しました。私事ですが、フィリックスガムは幼い頃によく食べていました(30年以上前・笑)。
愛死に

愛死に

FUKAIPRODUCE羽衣

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2017/06/08 (木) ~ 2017/06/18 (日)公演終了

約1時間50分弱。今燃える命の表出としての性愛(セックス)に死が並走。糸井幸之介さんの歌をもっと多くのアーティストの歌ってもらいたいです。アイドルにも歌って欲しいと2008年から願ってます(笑)。一ファンの勝手な妄想です。誰か叶えて~!!

六月物語

六月物語

SPAC・静岡県舞台芸術センター

舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」(静岡県)

2017/05/01 (月) ~ 2017/05/01 (月)公演終了

「亡くなった母が聴いているかもしれないから、最後に言う3つのことは秘密にしておいて」と冒頭で言われて、最後にその3つを聞いた時、ジーンと来た。

ネタバレBOX

お母様は敬虔なカトリック教徒だった。息子には言えないことがあるんですよね。
髑髏城の七人 Season花

髑髏城の七人 Season花

TBS/ヴィレッヂ/劇団☆新感線

IHIステージアラウンド東京(東京都)

2017/03/30 (木) ~ 2017/06/12 (月)公演終了

成河さん素晴らしい。こんな公演を2ヶ月半、シングルキャストでやるなんて…キャスト、スタッフの皆様、どうぞ最後までお健やかに。つ

鰤がどーん!

鰤がどーん!

渡辺源四郎商店

ザ・スズナリ(東京都)

2017/05/03 (水) ~ 2017/05/07 (日)公演終了

震災による癒えない心の傷に向き合い、演劇の喜びと可能性を現前化させる悲喜劇でした。

ダマスカス While I Was Waiting

ダマスカス While I Was Waiting

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2017/05/03 (水) ~ 2017/05/04 (木)公演終了

独裁政権下で内戦が続くシリアの2015年の一年間を、当事者である劇作家、演出家がリアルな現代劇に。記録映像を大きく映写したり流行歌をマイクで歌ったり、過去と現在を自在に行き来するシャープな演出で、“イスラム国”の兵士に志願した青年の独白は痛切でした。

ホールドミーおよしお

ホールドミーおよしお

オフィスマウンテン

STスポット(神奈川県)

2017/05/24 (水) ~ 2017/06/10 (土)公演終了

満足度★★★

 細長いシートが上手にぶら下がっている以外はほぼ何もないSTスポットの白い空間に、現代の普段着姿の若者7人が登場します。役を演じる俳優、踊りを踊るダンサーというより、パフォーマー(演技者)と呼ぶのがふさわしそうな存在の仕方です。演者がいて観客がいますから、まぎれもない演劇作品ですが、作品全体が観客を含めた実験であり、インスタレーションのようだとも思いました。

 作・演出の山縣太一さんは数年前にチェルフィッチュや遊園地再生事業団の公演で拝見していましたが、今回は出演されていません。ご本人が出演するオフィスマウンテンの公演も観てみたいと思いました。

 ロビーでこの公演のサウンドトラック付きの台本を購入(1000円)。音楽・出演の大谷能生さんがサインしてくださいました。

ネタバレBOX

 役柄は野外音楽フェスに行く男性たち、キャバクラに行く男性たち、そしてキャバ嬢たちなど。大谷能生さんの役は音楽フェスに出演する人です。

 出演者は観客という他者の前で、自分の心身をさらしていました。手足の動きも表情の変化も、胸(乳首?)をつまんだ時の体の反射も、使えるもの・ことは全て使うというハングリー精神を感じました。演技の求道者たちをじっと見つめる時間だったように思います。音楽も照明も、彼らの演技の補助をするとか、作品の方向を定めるとかでなく、同じ出演者としてそこにあるようでした。

 戯曲は基本的に独白で構成されており、現代日本、特に首都圏の過去数十年と現在とが、若者のシニカルな話し言葉から浮かび上がります。ダジャレの言葉のセンスが独特で、とても面白いです。たとえば「言い訳、おすそ分け、ヨイトマケ、パケ放題」で笑っちゃいました。語尾が変化するのも楽しかったですね。言葉の意味をそのまま届けるような演技ではなかったので、言葉と意味、演技、動作を別々のものとして味わいました。

 出演者の中では稲継美保さんが特に印象に残りました。観客とともにある柔軟さと攻めの姿勢が動き続ける体に同居していて、挑発的な視線に私自身が影響を受けました。

 終盤になって照明が明滅を繰り返し、不穏な雰囲気が高まってくるのが良かったです。
ふしぎの国のアリス

ふしぎの国のアリス

カンパニーデラシネラ

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2017/06/03 (土) ~ 2017/06/11 (日)公演終了

お子様たちに囲まれ鑑賞。超楽しかった〜♪カンパニーデラシネラ作品で休憩を入れたのは初めてだそうですが、それがとってもよかった!意外に原作に忠実で、ダンサーがよくしゃべります。一人ひとりがスターだった。昔の人気劇団のよう。可動式舞台美術が大掛かりで贅沢!

木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』

木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/31 (水)公演終了

終演後のトークで聞いたことに納得。お岩とお袖が武家の娘であることが肝。人々の行動原理を丁寧に表現。伊右衛門がお岩を捨てる場面が良かった。「夢の場」の演出意図も。引き込まれた俳優は小沢道成さんかな。

ネタバレBOX

ヘリコプターと飛行機の音は現代のもので上空を想像させる。お岩さんの思いが今も続いているように解釈して観ていました。
レモンキャンディ

レモンキャンディ

匿名劇壇

王子小劇場(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

満足度★★★

 劇場エントランスにチラシと「CoRich舞台芸術まつり!2017春・最終選考作品」の看板があり、嬉しくなりました。そして劇場内に入るなり、舞台美術(柴田隆弘)を見て気分がアガりましたね~!超急こう配の円形なんです。こういう空間に入り込んだ瞬間、「小劇場って素晴らしい!」と思いますね。当日パンフレットに書いてあった通り、開場時間のBGMの選曲とミックスが楽しかったです。

 「上空10億kmから7日間落下し続ける飛行船」が舞台のシチュエーション・コメディーでした。終演後のトークで作・演出の福谷圭祐さんが「自分は自分の戯曲のセリフの応酬が好きで、物語や起承転結はそれほどでもない」とおっしゃっていたとおり、辻褄を合わせるとか、整合性をとるといったことは重要視していない作品でした。極限状態の集団に起こる事件を滑稽に見せる趣向だと思います。福谷さんは『悪い癖』(2015年)で第23回OMS戯曲賞・大賞を受賞されています。

 終演後のトークでの「この美術を東京まで運んでくるのが大変」という福谷さんの発言を受けて、ゲストの北川大輔さん(花まる学習会王子小劇場芸術監督)が「地域の劇団の東京公演は輸送費、交通費にかなりお金がかかる。ご興味あればグッズをご購入下さい」とおっしゃいました。ロビーでは過去公演のDVDや公演公式Tシャツなどの物販が充実してまして、私は戯曲(1000円)と公演パンフレット(800円)を購入しました。

ネタバレBOX

 白と薄い灰色が基調の美術に白装束の俳優たちが登場し、カラフルな照明(西崎浩造)が映えます。ムービング照明がリズミカルで、特に客席にも当たるレーザー照明がとても良かったです。花まる学習会王子小劇場 のロフトのパイプの色と舞台美術がマッチしていて、この劇場に合わせて作られたのかと思えるほどでした。
 
 飛行船に閉じ込められたのはイケメンのホスト・快晴(佐々木誠)、現実と虚構を区別できない病気にかかった男性・曇天(福谷圭祐)、新興宗教の女性信者・雨水(松原由希子)、地下アイドルグループ「しゃかいもんだいっ!」のメンバー・綿雪(東千紗都)、スタントマンの雷鳴(石畑達哉)、大学院生の女性・夜霧(芝原里佳)、綿雪のファンで同人誌を発行する男性・砂嵐(杉原公輔)、風俗嬢の朝凪(吉本藍子)の8人。

 砂嵐が歌う「しゃかいもんだいっ!」の曲がすっごく可笑しかったです(作詞・作曲:福谷圭祐)。もう一度聴いて笑いたい。一番笑ったのは、死を超越したようなことを偉そうにのたまっていた雨水が、いよいよ衝突が近づいてきた段階で「死にたくない!」と叫んだ時です。本気で取り乱す姿が滑稽で愛らしく見えました。

 題名であるレモンキャンディーは“6秒を1時間に感じさせるドラッグ”で、スマホに電波が入り、地上が目視できるほど近づいて、とうとう衝突まであと12秒という最後の瞬間を2時間に延ばしてくれます。死を目前に、人間は何をするのか…。雷鳴が、日課なのであろう筋トレをしていましたが、他の人たちはうなだれていたり、立ち尽くしていたり、全体的に静かでしたね。個人的には誰もがジタバタする姿が見たかったなと思いました。

 演技については次々に起こる出来事や会話が「振り」に見えることが多く、残念ながら引き込まれなかったです。夜霧役の芝原里佳さんの演技には真実味を感じられることが多かったですね。匿名劇壇の出演者は劇団員のみだそうです。女優さんが美人揃いですね~。
パレード

パレード

ホリプロ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/05/18 (木) ~ 2017/06/04 (日)公演終了

すっごく良かったです!!!歌って踊ることの意味が大いにある、さすがの森新太郎演出!(観客にもドS!)

王将

王将

新ロイヤル大衆舎

小劇場 楽園(東京都)

2017/04/27 (木) ~ 2017/05/14 (日)公演終了

古河耕史さん目当てで第三部を拝見して大満足。たまたま下手側の客席で幸運。江口のり子さんもとっても良かった。福田転珠さんの愛嬌は凄い。久しぶりに本物の大阪弁を長時間浴びて気分が良かった。

春のめざめ

春のめざめ

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2017/05/05 (金) ~ 2017/05/23 (火)公演終了

刺激強くて面白かったー!白井晃さんの耽美で残酷な世界を小空間で堪能。思春期の子供達と一緒に観客も息が出来ない水槽の中に閉じ込められる。徹底した閉塞感はラスト10分のためかな♪性描写過激だけど必要と思えた。残席ないみたい。5/22(月)14時の追加公演あり。

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