交響劇第二番嬰イ短調
劇団再生
APOCシアター(東京都)
2010/11/13 (土) ~ 2010/11/14 (日)公演終了
満足度★★
夜
暗い中、マッチやロウソクの火が灯もり、客席の上まで雑然と立体的に組まれた単管パイプのセットを役者達が上下に動き回る、ダークで幻想的な雰囲気の、正当派な(?)アングラ演劇でした。
状況や登場人物の設定が説明されないまま物語が進み、テーマをあまり理解できなかったのですが、人間は必ず死ぬということを受け入れる葛藤を描いていたのだと思います。オートバイが擬人化されて演じられていた(全然バイクらしい格好もしていません)のが新鮮でした。
個人的にはあまり好きな演出スタイルではなかったのですが、役者の雰囲気も内容に合っていて、世界観がはっきりと打ち出されていて良かったです。
The Blue Dragon - ブルードラゴン
東京芸術劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2010/11/11 (木) ~ 2010/11/14 (日)公演終了
満足度★★★
技術は凄い
一見、男女関係のメロドラマ的な物語ですが、その背後にどんどん大きくなって行く中国の歪みが描かれた作品でした。
基本的にはとても分かりやすい説明的な演出で、ラストシーンだけちょっと驚く仕掛けが施されていました。
冒頭の書について語るモノローグが、中盤とラストの場面の伏線になっている構成は巧妙で面白かったです。
物語としては凡庸に感じたのですが、映像や美術の使い方は噂通りにとても素晴らしかったです。役者の動作にリアルタイムに反応するCG映像処理や、さまざまな表情を見せる2層になったセットを活かした素早い転換は圧巻でした。カーテンコールで裏方やオペレーターが10人近く出て来たのですが、やはりこの高度なビジュアル表現にはそれだけの人員を動員しているんだなと思いました。
作品から訴えかけてくるものがあまり感じられず、技術ばかり気になってしまい、演劇というよりショーケースを見ている気分になってしまい、ちょっと残念に感じました。
果実の門
乞局
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/11/12 (金) ~ 2010/11/23 (火)公演終了
満足度★★★
おぞましい世界
乞局の10周年記念の作品ということで、過去の作品に出てきたキャラクターたちによって描かれる物語になっていました。それぞれ心に闇を抱える犯罪者が集まる町に新たな家族がやって来てという話で、痛々しく重いシーンが多いのですが笑えるところもあり、観終わってからの印象は意外にヘビーさを感じませんでした。
途中それぞれの人物のエピソードを読み上げるシーンがありましたが、そういう説明的なシーンを作るということは登場人物が多すぎたのかもしれません(構成的にはとって付けた感がありましたが、ビジュアル的には印象に残るシーンでした)。
それぞれの人物がどのような人かが分かって来て、いよいよこれからそれぞれの関係が展開して行くのかなというところで終わってしまった感じがしました。110分の上演時間中に飽きることがなかったので、もっと時間を長くして人々の絡みを見せて欲しかったです。
どの役もエキセントリックなキャラクターで、役者がその雰囲気を上手く出していた思います。元警官の落ちぶれっぷりや、多重人格者のじわじわと詰め寄る様子、自分の血で絵を描く画家のマイペースぶりがとても不気味で引き込まれました。冒頭に出てくる象徴的な浮浪者の2人も良かったのですが、その後あまり物語に絡んで来ないのが残念でした。
空き缶と枕木を使った立体的な美術(登場人物の再利用に合わせて、素材の再利用をしたのでしょうか?)は不安げな重苦しさを出していて良かったです。
ちなみに、最前列に席は物や液体が飛んでくる可能性があるので、気をつけた方が良いかもしれません。
タンゴ-TANGO-
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/11/05 (金) ~ 2010/11/24 (水)公演終了
満足度★★★
挑発的
普段コクーンで上演される作品に比べるとかなり尖った雰囲気の戯曲・演出の作品でした。
とある家族の生活に政治的な比喩が多少のユーモアを伴って被せられていて、いかにもヨーロッパの戯曲らしい感じでした。
舞台美術が印象に残りました。西沢立衛さんや石上純也さんの建築作品を思わせる、部屋サイズの箱が舞台に数個設置されていて、一幕ではそれらの位置が絶えず変化してダイナミックな効果をあげていました。椅子や机などの家具は透明アクリルのもので(おそらくカルテル社製)、不思議な存在感を出していました。
役者たちも個性的な人ばかりで、特に森山未來さんの早口の長台詞と身体表現が素晴らしかったです。片桐はいりさんのちょっとエキセントリックな動きのおばあちゃんも楽しかったです。
シリアスな場面にふいに笑いが差し込まれてあったりして、物語も演技も飽きることはなかったのですが、この作品を上演するにはコクーンは空間が大きすぎるように感じました。もっと間近で台詞の応酬を観てみたく思いました。
【終了!】B4 paper books【ご来場ありがとうございました!】
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2010/11/03 (水) ~ 2010/11/09 (火)公演終了
満足度★★★
黒鑑賞
「白の章」に続いて、黒を観ました。白より黒の方が暴力的な内容でしたが、深みのある充実した内容で好みのテイストでした。
『バートリ・エルジェーベト』
若い女の生き血を浴びて美貌を保った妃の物語。光のない空間に幽閉されているシーンでは実際に照明なしで数分の間は台詞だけが聞こえる演出で臨場感がありました。その次のシーンでの床一面の赤色がとても映えていました。
『ロマノヴィチ』
連続殺人犯は実は政府側の人間だったという話で、話の盛り上がりに欠ける気がしました。平良和義さん演じるアレクサンドル・ロマノヴィチのやり場のない苛立ちが良く伝わってきました。
『シャウクロス』
サン=ジュストの部下、マーカス大尉と無政府主義者のサッカウェイとの会話劇で、何が正義なのかを考えさせる内容でした。サッカウェイの妻の凛としたした振る舞いが格好良かったです。最後のシャウクロスの半狂乱の姿が物悲しくて印象に残りました。
『シュルレアリスム宣言』
先に観た白のバージョンのときより役者たちが楽しんでいる感じがして、観てる方もちょっと楽しかったです。しかし、このテキストを使う意図がよく分かりませんでした。
このようなオリジナル脚本のシリアスな西洋コスチュームプレイものをやる劇団はあまりないので、今後もこの方向性でさらに洗練された作品を観てみたいです。
3Abschied ドライアップシート
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2010/11/06 (土) ~ 2010/11/07 (日)公演終了
満足度★★★★
実験的
いわゆるダンス公演とはかなり毛色の異なるドキュメンタリー的な構成で、コンセプチュアルで刺激的な作品でした。
マーラーの交響曲『大地の歌』の終楽章『告別』をCDで流し、この曲で踊ることになった経緯をアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルさんが語り、最初から30分ほどはまったくダンスも演奏もありません。
(別れNo.1)
その後、いよいよアンサンブルとメゾソプラノによる生演奏に合わせて踊るのですが(ムーブメント自体はいかにもローザス的なしなやかなものでした)、終盤は音楽に見合うダンスが見つからず、踊ることを止めてうずくまってしまいます。
(別れNo.2)
そこでジェローム・ベルさんがおもむろに客席から現れ、終わり方を変えることを提案し、実演します。
1つの案は同じ『告別』というタイトルのハイドンの交響曲(終盤に奏者が一人ずつ席を去っていく指示があります)に倣って、途中からどんどん奏者が帰っていく方法。もちろんマーラーの『告別』はそのような演出を前提にした曲ではないので、スカスカな音響になっていきます。
2つ目の案は歌詞が死別を扱っているので、立ち去るのではなく、その場で死ぬふりをする方法。それまでシリアスだった雰囲気がバタバタ倒れていく音楽家たちの姿で一気にスラップスティックなものになりました。言及はありませんでしたが、カーゲルの『フィナーレ』(指揮者が倒れて担架で運ばれる曲です)に倣ったのだと思います。
この間もケースマイケルさんは踊りませんでした。
(別れNo.3)
そして最後にたどり着いた方法は、アンサンブルの演奏をやめて、ピアノ1台だけで演奏し、ケースマイケルさん自身が歌いながら踊るというもの。椅子と譜面台だけが残っている広い空間の中を弱々しく歌いながら踊る姿はとても訴え掛けてくるものがありました。
曲が終わり、ダンスも終わるかと思いきや、舞台奥のかすかに姿が見える薄暗がりの中、無音で祈るようなダンスが続き、最後はステージの一番手前で別れを覚悟したかのように数分間客席を見つめ続けました。そして舞台上に設置された照明卓を自ら操作して暗転して、全てのパフォーマンスが終了しました。
型破りな構成、そっけない照明、上演時間の半分程度の時間しか踊らないことなど、ローザス的な作品を期待していると幻滅するかもしれません(実際、ダンス公演には珍しくブーイングが出ていました)。
個人的にも、もっとバリバリ踊る姿を観たかったのですが、敢えて今までの作風を封じて舞台芸術や別れについての思索を舞台に上げ、観客に問いかけをするチャレンジ精神を素晴らしく感じました。
必ず訪れる日~石鹸工場~
かもねぎショット
ザ・スズナリ(東京都)
2010/11/03 (水) ~ 2010/11/09 (火)公演終了
満足度★★★
おばさんトークでまったり
石鹸工場の工員(元・工員も含む)たちの物語で、過去に工場で起こった事件が明らかになっていくのですが、コミカルでまったりとした雰囲気でした。
舞台中央にベルトコンベアーがあり、4人が箱詰め作業をしながら会話をする様子がユーモラスでした。
それほど込み入った話ではないのに、何故か人間関係が把握しにくかったです。笑わせようとする場面が沢山あるのですが、間が悪いのかあまり笑えませんでした。それぞれの役者の演技は良かったので、もったいなく感じました。
赤桃
こどもと演劇2010
RAFT(東京都)
2010/11/05 (金) ~ 2010/11/07 (日)公演終了
こどもと演劇
赤ずきんと桃太郎を扱った作品ですが、子供向けということで過剰に分かりやすくすることもなく、難しい言葉や抽象的な表現も多く使われていました。アイデンティティや悪について考えさせる作品でした。
台詞に重心を置き過ぎず、生演奏やダンスや映像などがバランスよく使われていたと思います。
開場してから開演までの間、紙を丸く切ったり絵を描いたりして壁に貼付けて舞台美術にするワークショップがあるので、お子様のいる方は早めに入場して参加するのも楽しいかと思います。
【終了!】B4 paper books【ご来場ありがとうございました!】
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2010/11/03 (水) ~ 2010/11/09 (火)公演終了
満足度★★
シュルレアリスム?
白の章を鑑賞しました。
『シュルレアリスム宣言』
大人数によるリーディングでゲーム的要素を盛り込んでいましたが、いまいち高揚感に結び付かず、ただ大声になっているだけに感じられ残念でした。
『H+(トランスヒューマニズム)』
画家のエゴン・シーレを実在の人物とは少し異なる人物として描いていました。活人画、赤と黒の美術など耽美的な雰囲気の作品でした。絶えずBGMが流れていて(しかもアディエマス等かなりドラマティックな曲調)、役者の演技を殺してしまっているように感じました。
『ニヒリズムの肖像』
前2作に較べて格段に充実した内容で、とても良かったです。惰性で生活する貴族と正義を貫く平民の対比が鮮やかに描かれていました。前に出るタイプの役者が多い中、ベラ役を演じた伊達由佳里さんが抑えた演技ながら強い存在感を見せ、引き込まれました。
全体を通して観ると、夢や無意識、オートマティスムといったシュルレアリスム的要素が感じられず、寧ろタイトルや台詞に出てくるニヒリズムやヒューマニズム、超人といった言葉に象徴される、ニーチェ的な美学を感じさせる作品でした。
舞台袖から段取りのヒソヒソ声や、小物を動かすノイズが聞こえて来たり、貴族役の人たちの衣装から糸が飛び出ていたりと、細かい部分の詰めが甘く感じました。
黒の章も観に行くつもりなので、白の章との対比や、ロベスピエールとサン・ジュストの現れかたを楽しみにしています。
ビントレーのペンギン・カフェ
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2010/10/27 (水) ~ 2010/11/03 (水)公演終了
満足度★★★★
バラエティ豊かなトリプルビル
新国立劇場のバレエの監督がビントレーさんに代わって最初の公演は、定番モノをやらずに20世紀の作品3本と意欲的なプログラムでした。
『火の鳥』
音楽や振付、衣装、美術のどの要素もロシア的雰囲気がしっかり出ていて楽しかったです。
バレエの上演はあまりなく、寧ろオーケストラの演奏会で良く演奏される曲ですが、バレエが付くと曲のフレーズが各役柄に対応しているのが良く分かり、面白かったです。
大団円の終曲のときにあまり動きがないのがちょっと残念でしたが、観応え聴き応えのある作品でした。
『シンフォニー・イン・C』
筋のない、純粋にダンスだけを見せる作品で、新国バレエのアンサンブルのレベルの高さを見せつけられました。素舞台に白と黒の衣装を着たダンサーだけなのにとても華やかな印象でした。
終楽章のコールドバレエでどんどん人が増えていってもアンサンブルが乱れないのは圧巻でした。
『ペンギン・カフェ』
動物の着ぐるみを着て踊るのですが、コンテンポラリーな要素が多く、ユーモラスな作品でした(ちょっとイデビアンクルーっぽいところもありました)。
最後に動物たちがノアの箱舟に乗り込み、幕に描かれた船の絵の後ろに透けて彼等の姿が見えるシーンは物悲しく美しかったです。音楽も感情に訴えるようなドラマティックな曲調でなく、ミニマルで淡々とした感じだったのが効果的でした。
シーズン幕開けのプログラムでこのようなメッセージ性のある作品を上演することに気概を感じました。今後もこのような現代の作品を数多く上演して欲しく思いました。
ジゼル・ヴィエンヌ『こうしておまえは消え去る』
フェスティバル/トーキョー実行委員会
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2010/10/30 (土) ~ 2010/11/03 (水)公演終了
満足度★★★★
圧倒的な美
人間、人形、動物、美術、音、光、霧、それぞれの要素が拮抗して、緊張感のある美しさが表現されていました。芝居やダンスを期待していた人には拍子抜けなのかもしれませんが、舞台は総合芸術であることを強烈に感じさせる作品でした。
生き物のように動き舞台を覆い尽くす霧や、まるで自然光のように滑らかに変化する照明の「演技」が素晴らしかったです。
非常にリアルな表現なのに、逆に現実離れして見えるという不思議な印象を受けました。
音楽に関しても、激しいノイズから微かなアンビエントまで、先鋭的で刺激的でした。当日パンフを見ると音楽のスティーヴン・オマリーさん、ピーター・レーバーグさんの他にも、協力者として秋田昌美(メルツバウ)さんや、ツジコノリコさんやジム・オルークさんの名が。アヴァンギャルド音楽好きな人は必見だと思います。
いつかの森へ
海市工房
「劇」小劇場(東京都)
2010/10/27 (水) ~ 2010/11/04 (木)公演終了
満足度★★★
繰り返される過ち
複雑な事情を持った家族を中心とした物語で、同じような過ちをしてしまう人間の弱さが丁寧に描かれていました。
トラウマから精神を病んだ人の描写が絶妙で、ちょっとした言動から痛々しさを感じさせ、印象に残りました。
重苦しいエピソードが続き、陰欝な雰囲気が支配的なのですが、希望が見えて来る終わり方で、後味が良かったです。
役者の演技が落ち着いていて、良かったです。出番は少なかったのですが、大家さん役の抑えていながらも存在感のある演技が素敵でした。
かもめ
MODE
あうるすぽっと(東京都)
2010/10/27 (水) ~ 2010/10/31 (日)公演終了
満足度★★★
ストレートなチェーホフ
置き換えや大胆な再構成などのない、戯曲に忠実な演出でした。
舞台の袖や裏が剥き出しの中、一段上がったステージがあり、演技はそこで行われ、出番でないときはステージの周りに座って待機という空間の使い方をしていました。
終盤、理想と現実に折り合いをつけ、忍耐の必要性を語るニーナがそれまでと異なるトーンで演じられるシーンがとても印象に残りました。
この物語で描かれている内容がどこにでもありえるということを象徴する様な、最初と最後の役者たちの出捌けのシーンが美しかったです。
転転転校(千秋楽・当日券ございます)
水素74%
アトリエ春風舎(東京都)
2010/10/26 (火) ~ 2010/10/31 (日)公演終了
満足度★
意図が分かりませんでした。
事前情報がほとんどなく、謎が多かったのですが、観ても謎のまま終わってしまいました…。
タイトルの通り、転校生の話でしたが、物語としての一貫性はなく、身体表現(いわゆるダンスではないです)の比重が高い作品でした。
椅子などの小道具もない完全な素舞台の中、音楽もなく話の展開もないストイックな時間が淡々と続き、ちゃんと見聞きしているのに意識が朦朧とした状態になってしまいました。
ソクーロフ監督の映画『静かなる一頁』を思わせる、絶えず微かに聞こえる水の流れる音(建物の配管を流れる音でしょうか?)が、幻想的な雰囲気を醸し出していて、皮肉にもこの舞台の中の要素で一番良かったです。
客に媚びない姿勢には好感を持ちましたが、それならばもっと唖然とさせてくれる突き放した表現を見せて欲しかったです。
おそるべき親たち
TPT
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/10/21 (木) ~ 2010/11/03 (水)公演終了
満足度★★★★★
大人の芝居
ベテラン俳優たちの演技を堪能しました。
物語は結構ドロドロとした話で、エロティックなシーンも多いのですが、下世話な感じにはならず、格調の高さを感じさせたのは流石でした。
普段は客席になっている部分に大きな張り出し舞台を作り、贅沢な空間の使い方をしていました。
中嶋朋子さんの演じるマドレーヌは第1幕の幕切れにやっと現れるのですが、そのときに流れる音楽(シューマンのピアノ四重奏曲)と相まって、とても印象深いシーンになっていました。
派手な演出で驚かせたり、強引に笑わせようとしたりしない(けれどもクスリと笑えるシーンは結構あります)、小細工無しの大人の為の芝居で、濃密な時間が楽しめました。
少々値が張るためか、空席が結構あったのがもったいなく感じました。
ピーピング・トム『ヴァンデンブランデン通り32番地』
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2010/10/23 (土) ~ 2010/10/25 (月)公演終了
満足度★★★★★
不穏なユーモア
奇妙な物語と動きに引き込まれる不思議な作品でした。全体のトーンとしては暗く飄々とした感じで、性的なイメージを強く感じさせるものなのですが、結構笑えるシーンも多かったです。具体的な物語があるわけではないのですが、6人の登場人物の関係性の移り変わりが様々なエピソードを通じて描かれていて興味深かったです。
雪原や建物などの美術の作り込みが素晴らしく、劇場の中なのに屋外に居るかのような感じでした。
そして、なんといっても身体表現が凄かったです。ダンス的な動きも、小道具を用いたマイム的なテクニックもレベルが高く、実際には存在しない風や揺れがとてもリアルに感じられました。足を組んだままのダンスや、関節が外れたかのようなクネクネとした動きは人間離れしていて、見てはいけないものをものを見てしまったかのような気分になりました。
一瞬のうちに消えたり、衣装の早変わりなどの手品的な演出も良いスパイスになっていました。
今後も定期的に来日公演をして欲しいです。
神様さん
MCR
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2010/10/22 (金) ~ 2010/10/31 (日)公演終了
満足度★★★
楽しく、ちょっと切ない
初日を観ました。
3層になっている立体的なセットが迫力ありました。作品の中で出てくる人たちの身分や状況と演じる高さが対応していて分かりやすい演出となっていました。
ひと癖ある役が多く、台詞の応酬が楽しかったです。「変人」の有川さんの演技が独特の雰囲気で印象に残りました。
桑原さんの演じる姫は劇中でブス扱いされてましたが、とてもチャーミングでした。
自分の意志とは関係なく勝手に神様のように崇め奉られることによる困惑というテーマは面白かったのですが、物語としては終盤になって無理矢理まとめに入った感じがあり少々雑さを感じました。
上演時間100分と、それほど長くもなかったので、もう少し尺を長くしてそれぞれのエピソードを丁寧に描いて欲しかったです。
グロリア
ハイリンド×サスペンデッズ
「劇」小劇場(東京都)
2010/10/14 (木) ~ 2010/10/24 (日)公演終了
満足度★★★★
丁寧に作られた作品
戦時中に風船爆弾を作っていた女性を通じて、1944年の日本、1945年のアメリカ、2010年の日本でのエピソードが重ね合わされた物語で、戦争の虚しさが描かれていますが、やたらと声高に訴え掛けることもなく、後味の良い作品でした。
7人の役者が場面毎に色々な役を演じ、演技力と演出によって、もっと多くの人が出演しているかのように感じました。特に、枝元萌さんのキャラの変わりっぷりは見事でした。
それぞれの時代で別れる運命になってしまう2人がどの時代でも同じ役者で演じられたり、祖母の若い頃をその孫の役を演じていた役者(男性)が現代の格好のままで演じたりと、配役が物語の構造と上手く結び付いていたと思います。
アメリカの話で幸福な暮らしに不幸が忍び寄るのを予感させるシーンが素晴らしい演出でした。風船爆弾の素材である和紙で統一した美術もシンプルで美しかったです。
いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校
ロロ
新宿眼科画廊(東京都)
2010/10/17 (日) ~ 2010/10/24 (日)公演終了
満足度★★★★
ポップな作品
小学校を舞台にした作品で、とても可愛らしい雰囲気の中に懐かしさを感じさせる作品でした。去年夏に上演した作品の再演とのことです。
相変わらず突飛なキャラクターや会話が出てくるのですが、近作に較べると分かりやすい展開で、やりたいことがストレートに出ているように感じました。
単語一つでどんどん景色が切り替わって行くような、最近の作風の方が個人的に好みですが、この作品でもみずみずしい台詞が爽やかでした。
終盤のシーンは音と光を伴って若いエネルギーが爆発していて、とても美しかったです。
60分程度の上演時間もちょうどいい長さで、あっという間でした。
百年の絆―孫文と梅屋庄吉
東京ギンガ堂
紀伊國屋ホール(東京都)
2010/10/16 (土) ~ 2010/10/24 (日)公演終了
満足度★★
役者は良かったのですが…
中国の王朝制を廃止させ、民主化の道を伐り開いた孫文と、日活の創業者、梅屋庄吉の友情を描いた作品でした。
音楽劇と銘打っていますが、台詞劇が主体で、歌うシーンはそれほど多くありません。
オーソドックスな演出で役者の台詞も聴き易く、安心して観られる舞台でした。
冒頭から孫文と梅屋の初めての出会いのシーンまでは緊迫感があって良かったのですが、その後の展開にあまりメリハリがなくて感情も伝わって来ず、2時間半が長く感じました。
歌の上手い人が何人もいたので、もっと歌を聴きたかったです。