新釈 ヴェニスの呆人 2009
コマツ企画
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/08/27 (木) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
演出が見事!
全編こまつみちるワールド。シュールな狂気が気持ちいい。次から次へと展開していくシーンは、それぞれの心象風景を断片的に表現し、その断片が積み重なって壮大な物語へつながっていく。
観ながら久しぶりに芝居に酔っている自分を感じた。しばらくの間、酔いが醒めそうもない。
アレが死んだ日
TangPeng30 Bグループ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/25 (火)公演終了
満足度★★★★
質の高い三劇団の競演!
ガレキの太鼓以外は聞いたことのない劇団だったが、三劇団とも質が高い。各地に頑張っている学生劇団がいることがわかり、うれしかった。
これからそれぞれの劇団を追いかけてみたい。
エンジイロエンジェル
プラスチカロマンチカ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/25 (火)公演終了
(タイトル未定)
バンライボウ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/25 (火)公演終了
土葬?火葬?
ガレキの太鼓
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/25 (火)公演終了
紙くさい暮らしの中で・・・
劇団宇宙キャンパス
萬劇場(東京都)
2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
完成度の高いヒューマンコメディ。
CチームとTチームのWキャスト、Cチームは若手を中心としたチーム、Tチームはベテランを中心としたチームだそうだ。ちなみに私が観たのはCチーム。
7年前に上演した劇団代表作の再演。主宰の昔の想い出(新聞配達をしながら声優を目指す)を下敷きにした新聞配達店の物語。劣悪な仕事環境と変わった人ばかりが集まった新聞配達店で、登場人物がそれぞれの夢を探す物語。個性的で芸達者な役者を揃え、あっと言う間の1時間40分。小林ともゆきの作家としての技量と人間としての温かさを再確認した作品だ。
反重力エンピツ
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★
魅力的な役者が勢揃い!
シーンがカットアウトされ、次から次へと展開していく。
ハマカワフミエと伊神の掛け合いのシーンは独特の世界観で魅力的だった。
ストーリーは最後のどんでん返しを含め、見事だが、それ以上に役者の一人一人が個性的で魅せられた。
「この世で一番重いものは何だと思う?」この問いかけの効果は抜群だ。その手法を考え出しただけで作者はただ者ではない。
ノンセクトラジカルとは国道五十八号線そのものではないか?
レストラン ル・デコ
角角ストロガのフ×elePHANTMoon×犬と串
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
30分だからこそ、出来る芝居。
30分のドラマというのは、見本市のようなもので、将来本公演を観る前にどんな劇団かということを知るための場かと誤解をしていた。3作品とも立派にひとつの作品として完結をしていたし、30分だからこそ出来る新しい芝居のありようだと思った。
まず、角角ストロガのフ。とりあげられたテーマ、そして、シーンとシーンが交錯していくめまぐるしい演出、その全てが前衛的であり刺激的だった。続いて犬と串。今まで早大劇研アトリエという学生劇団の中でもっとも恵まれた環境の中で、照明や装置に懲りに凝った芝居を繰り広げていた。その劇団が、そういったスタッフワークを捨てて、純粋に役者の演技で見せた芝居。従来の犬と串とは全く違う方向で十分楽しめた。最後にelePHANTMoon、真打ちとしてトリを務め、真打ちとして王道の芝居を見せてくれた。あのミルクの缶(?)が確かに赤ちゃんに見えた。その演技力に脱帽だ。
このような楽しい公演を企画してくれた角角ストロガのフの角田さんに感謝だ。
『問題、この暑さが焦がすもの』
【主催者長田莉奈】
早稲田大学学生会館(東京都)
2009/08/22 (土) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
素敵なお芝居の二本立て!
10人ちょっと入ればいっぱいになるような練習場公演。それにも関わらず、芝居の質は高く、魅力的だった。
最初の芝居は「ふたり」ーあるいは嫉妬、喪失、友情の話。
仲良し3人組の一人が死に、残ったふたり(花野と観月)の物語。友達の死を受け入れられないふたりは、一緒にいながら昔の関係に戻れない。そういうもどかしい関係の友情とぬぐいさることの出来ない心の傷跡を抑えめの演技でうまく表現している。また日記のエピソードが心を打つ。
二本目の芝居は「3人」-あるいは宿題・日常・捜し物の話。
シュウちゃんと鮫島はつきあっていながら、温度差があり最近うまくいっていない。そのふたりのすれ違いを上手く描き、観客をはらはらどきどきさせながら、最後にとても幸せな気持ちにさせてくれる。見事な脚本だ。ふたりのキューピット役がっちゃんを演じる石井由希子のキュートな演技が魅力的だった。また、お嬢様キャラの鮫島が宿題の媚薬を探しに行って、ずぶ濡れになって帰ってくるところがなかなかいい。その後の鮫島のやや狂気じみた演技を本山紗奈が見事に演じた。ラストシーンで胸がきゅんとなる素敵な物語である。
天翔ける風に
TSミュージカルファンデーション
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2009/08/21 (金) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★
踊りに迫力あり。
確かに野田秀樹の『贋作・罪と罰』を原作としたミュージカルなのだが、『贋作・罪と罰』の中の野田カラーは陰を潜め、ドフトエフスキーの『罪と罰』を日本の幕末に置き換えたという部分だけが残ったような作品。しかし、京劇を思わせるような踊りのシーンは見事。全編がクライマックスであるような全力投球の演出にも恐れ入った。 なまじ、野田版『贋作・罪と罰』を観てない方が楽しめるかもしれない。
灯
劇団eggplant
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/15 (土) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★
練られた脚本を役者が好演。
よく練られた脚本。社長の一人娘さゆりの秘密がわかってからは涙々の連続。名古屋の社会人劇団らしいが、演劇を楽しんでいることがよく伝わってくる。衛(まもる)役の竹内智史がちょっと情けないが憎めない男を好演。また真知子役の四釜里絵との掛け合いは息がぴったりだった。
シアターグリーンの企画で、名古屋や大阪の優秀な劇団の公演が東京で観られることはとてもうれしい。シアターグリーンに感謝。
巨人は熟睡中(ご来場ありがとうございましたっ!!)
贅沢な妥協策
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/20 (木) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★
光る役者の個性!
シュールな笑い。しかし、その奥にあるのは、実はとても身近なテーマ。恋であり、友情であり、夢であり、そういったものへの憧れと挫折。様々に仕掛けられたぶっとんだ演出が心地よく、場内は笑いに包まれるが、その裏には作者のニヒルな部分と、センチメンタルな部分が見え隠れし、青春のある時期の淡い感情が見事に表現されている。
役者が個性的で魅力的。演技が上手い下手ではなく、存在感がある。これからが楽しみだ。
斎藤幸子【作:鈴木聡 演出:河原雅彦】
パルコ・プロデュース
ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)
2009/08/14 (金) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
鈴木聡の人情喜劇はもはや神の領域だ。
鈴木聡の人情喜劇は、はずれがない。登場人物がみんなお人好しで、愛すべき人たちだ。斉藤幸子という姓名判断的に最悪の名前を持った娘は、その名前ゆえか、次々に不幸がおとずれる。しかし、本人のくよくよしない性格、そして周りの暖かい応援で、決して悲惨にならない。
この物語を通じて我々は作者から人生においてとても大切なことを教えられる。幸せか不幸せかは、起こっている現象ではなくて、それをどう捉え、どう行動していくかで決まるのだ。不幸が次から次へと起こる(というか不幸に向かってどんどん突き進む)斉藤幸子だが、それでもとても幸せだと思える。幕間をはさんで3時間。少しもだれることなくたっぷりと楽しませてもらった。
斉藤幸子を演じた斉藤由貴が好演していた。周りは芸達者で固めていたが、その中できたろうの愛情あふれる父親像がとても素敵だった。心洗われる芝居である。
ロミオとジュリエット
少年社中
あうるすぽっと(東京都)
2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
意外に正攻法で勝負!
ジュリエットが実は男だったという設定で繰り広げられるロミオとジュリエット。ジュリエットが男だったなんて、少々の理由をつけてもこじつけにしかならず、ドタバタ喜劇にでもするつもりかと思って観たが、意外と正攻法。真正面からシェイクスピアに向き合った作品に仕上がった。
ジュリエットが男だった理由も違和感を感じなかったし、それにも関わらず、ロミオとジュリエットの間には、(ホモとかそういうことではなく)確かな愛が感じられた。
ロミオ訳の森大が芸達者で、小技でたくさん笑わせてくれたが、それでも主旋律である悲劇性は、失われることなく、観客の胸を打った。
男としてのジュリエットだったが、演じた鈴木拡樹の美しさにも驚かされた。さすが少年社中という出来である。
野外パフォーマンス『果物夜曲』 *入場無料
FUKAIPRODUCE羽衣
東京芸術劇場 アトリウム前広場(東京都)
2009/08/11 (火) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
芸劇前、野外劇場で羽衣が魅せた夜!
いつもの羽衣メンバーに、冨士山アネットの長谷川寧さんが特別参加して、繰り広げられる20分間のスペシャルステージ。たった20分ではあるが、贅沢な時間を過ごさせてもらった。客入れから役者自らひとりずつていねいに客席に案内して、始まる前も色々と話しかけて盛り上げる。今回の出し物は「果物夜曲」という音楽劇(妙ジカル)。
野外ステージを見事に使った演出で客席と舞台を一体化させた。客の大半はたまたま芸劇前を通りかかった人たち、そういう人たちに興味を持たせ、そして20分間で虜にした。羽衣恐るべしだ。
リチャード・イーター
劇団銀石
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/08/12 (水) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★
新しいシェイクスピアに才能ある若手が挑戦!
リチャード三世というシェイクスピアの中でもベテランが好んでやる芝居を、売り出し中の若手劇団が果敢に挑戦した。
シェイクスピア作品と言っても、佐野木さんは全ての脚本を自分で書いたそうだから、あくまで原案シェイクスピアというところか?
演出が至るところでかっこいい。特に紗幕を使った演出は見事。そしてびっこでせむし(この言葉はどちらも使ってはいけない言葉だが・・・)で有名なリチャードを、健常者として演技をさせ、その他の登場人物をその登場シーンで身障者を想像させる登場のさせ方をしている。
このことはとても深い意味を持つ。二人のリチャードを登場させたこと、現在の作家を物語に乱入させたこと、そしてラストシーンでリチャードが死ななかったこと、佐野木氏は独自の解釈で様々な実験をしている。その結果、全く新しい劇団銀石版「リチャード三世」が誕生した。
大作であり、意欲作であり、劇団銀石の力量を見せつける芝居だった。ただ、リチャードイーターを演じた役者が熱演ゆえか、声が涸れてきており、若干聞き苦しかったのが残念。ベストの喉の調子だったらもっと素晴らしい演技だったと思うのだが。
マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人
DULL-COLORED POP
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/08/14 (金) ~ 2009/08/17 (月)公演終了
満足度★★★★★
記念碑となる作品!
27歳の演出家が小劇場の役者を集めて、17世紀のブランヴィリエを演るという、一見途方もないミスマッチが、逆に反作用のエネルギーとなって、舞台の質を高めている。小劇場でこんな芝居が出来る劇団が他にあるか!という演出家の声が聞こえてきそうだ。
連続殺人犯として名高い実在のブランヴィリエ公爵夫人を谷賢一がどう料理するかと想像を巡らせていたが、あくまで正攻法でこの猟奇的物語に挑んでいた。そして正面から堂々とこの物語に対しながら、既に事件自体で劇的なこの物語を、ダルカラの色に染めて美しく見せてくれた。すごい演出力だと思う。
チラシを観た瞬間からこの劇団が今回の公演にいかに賭けているかということがよくわかったが、期待どおり見事な作品に仕上がった。
初日で役者が若干噛んだところを除いてはパーフェクトと言っていい。モリエール進出と併せて、DULL-COLORED POPが一段階、駆け上がった記念碑となる作品だ。
お、わ、り。
TangPeng30 Aグループ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/04 (火) ~ 2009/08/11 (火)公演終了
満足度★★★
公演の新しい形
シアターグリーン学生芸術祭のひとつの売りになったTANG PENG 30、これは3つの劇団が30分ずつの公演をするという三本立て興行。今回はAチームとBチームに別れ、今日はAチームを拝見した。
参加したのは桜美林大学の大石憲の一人芝居、早稲田大学のたすいち、立教大学のUO企画。三つ併せて「お、わ、り」という意味深なタイトルが付いている。つまり、ひとつひとつ独立した芝居でありながら、3つの芝居が相乗効果をもたらすという構成なのだ。
なるほど、観客は満席である。そのひとつをとってもても3劇団の合同興行というのは意味のあることだろう。
大石憲の一人芝居は、トップバッターでやりにくかっただろうが、スパイの恋の物語を一人何役もこなす器用さで魅せてくれた。ただ、途中から声が少しかすれてきたのか、聞き取りづらいところがあったのが残念。
たすいちは全員が達者な役者で、多重人格という難しい設定を見事に演じていた。特に主人公ユカを演じた椎谷万里江の声が素敵だった。
UO企画は男性が妊娠するという話をカフカの変身にひっかけ、面白い不条理演劇に仕立ててみせた。端々に魅力的なシーンがあったが、全体としてはまだまだ未完成さの残る芝居だった。発想がいいだけにもう少し磨くと面白くなりそうな芝居だった。
どちらにしろ三大学の有志が集まり、三本立てで競い合うというのは素晴らしいこと。この公演を通じて、輪が広がり、ライバルとして競い合う下地が出来れば大成功であろう。シアターグリーンの企画に拍手を送りたい。
六人の母と私
たすいち
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/08/04 (火) ~ 2009/08/11 (火)公演終了
満足度★★★★
今度はしっとりとした心理劇に。
前回のたすいちは活劇シーンが華麗な動的芝居だったが、今回は一転、主人公の心の中を探る静的な芝居。こちらもなかなかの出来で、作者の技量に感心。魅力的な登場人物が多数いたので30分ではもの足りなかった。もっともっと観たかった。
6人の母を家の中の家具等に見立て、そこから動き出す演出は秀逸。最後に主人公が別れた母と会うためにドアを開けるシーンは主人公の心の動きが伝わってきて鳥肌が立った。
ただ、6人の母の衣裳が全員黒服なのは、(演出意図はよくわかるのだが)せっかく演技力のある個性派の役者を揃えているのに、衣裳に埋没してしまい、もったいなかった。
ハッシャ・バイ
虚構の劇団
座・高円寺1(東京都)
2009/08/07 (金) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
やはりすごい!
過去の名作をあらためて観て、やはり名作は風化しないと思った。いや、相当部分が書き直されて進化している。今では大御所となった鴻上尚史さんのみずみずしさが残った作品。
こんなにも大笑いするということと、胸がしめつけられるということが、隣り合わせになっている劇団は少ない。さすがに役者はみんな素敵だが、大久保綾乃、小野川晶のさわやかな演技と、小沢道成の独自の世界を持った演技に感動した。