Koujiの観てきた!クチコミ一覧

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アンチクロックワイズ・ワンダーランド

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

果てなき挑戦に拍手!
 人気絶頂の阿佐ヶ谷スパイダーズ代表の長塚圭史が、文化庁の芸術家留学制度で1年間の海外留学をし、その成果を見せつけようと、満を持して行った公演が今回の『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』。期待に胸を膨らませて観に行ったが、その期待はうれしくも(?)裏切られた。

 長塚圭史は過去の栄光や功績にとどまることなく、あえて今回冒険とも思える公演を打った。さまざまな人の感想を聞くと賛否両論である。あまりに難解であまりに理解することを拒絶したような作り。舞台装置もほとんどなく、音響や照明に凝ることもなく、ストレートプレイでありながら、ストーリーはわかりづらく、笑うシーンなど全くない。

 終わった瞬間もここで終わったのかと観客はとまどい拍手をする手もためらいがちだった。海外留学からの凱旋公演。本来なら溢れる拍手でカーテンコールを繰り返し、長塚圭史をひきづり出したいところだが、そんな雰囲気ではなかった。

 しかし、長塚圭史はその光景にしてやったりと思っているのではないだろうか。(以下ネタバレで)

ネタバレBOX

 物語は作家の夢の中の物語、ネットの劇評で袋だたきになるシーンは、今回の公演を予見し、開き直ったと考えるとなかなか面白い。見る側と見られる側、そして物語の中と外、未来と過去、それらがたくさんの象徴的なキーワードとともに、想像力をかき立てながら縦横無尽に展開してく。

 人形、猫、殺人事件、取り調べ、バーの女、病院、そしていつも誰かに見られている気がする男。パラノイアの男の頭をのぞき見たように、物語は分裂しながらも一人の作家像を象徴的に見せてくれる。この作家こそ長塚圭史そのものではないのか。
 
 とすると、今回の公演ほど奥深く興味深いものはない。人気劇団として、客受けする芝居を安易に選択しなかったことに、長塚圭史の志しを見た気がする。
別役実vs阿藤智恵part-Ⅲ

別役実vs阿藤智恵part-Ⅲ

Pカンパニー

西池袋・スタジオP(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★

不思議な世界を魅力たっぷりに描く!
Bプログラムを観させていただいた。作、阿藤智恵、演出=冨士川正美というオリジナル作品『バス停のカモメ』。Aプログラムで別役実の三本立てをやり、Bプログラムでオリジナルをやり、共通するモチーフはバス停というところが面白い。

 舞台にはバス停がひとつ。 いかにも別役実の世界のような舞台装置。しばらく、物語は別役作品のように不条理感たっぷりの言葉遊びが続く。しかし、この作品は単なる別役実へのオマージュではない。あえていえば、別役実にチェーホフを掛け合わせて、化学反応を楽しもうとうような作品。全く相反するものが、混ぜ合わせて食べると意外とおいしかったりするが、それに当たるのが今回の作品。チェーホフと別役実、意外と合うじゃないと感じた。
 
 もちろん、作品自体は阿藤智慧のオリジナル作品であり、そこに描かれるのは阿藤智慧の世界であることは間違いない。物語の中に閉じこめられた家族、そのフィクションの中で生きる人々が外界へ出ようとする物語と、仕事で旅をする男が迷宮に迷い込んだ物語を両A面で見せてくれるようなストーリー。シンプルだが奥が深く、想像力にあふれる物語だ。(続きはネタバレで)

ネタバレBOX

 その重構造の物語を演出の富士川正美が正攻法で演出し、役者の少し抑えた演技で、物語にさらに奥行きを持たせた。ラストシーン、背景に鏡が出現し、フィクションの世界から現実の世界に旅立つ娘の世界観の変化と、所詮はどこにも逃げられない鏡の世界の物語という二面性をしっかりと感じさせた演出は見事。

 役者ではセールスマン役の内田龍麿の安定した演技。不思議な母親役を演じた水野ゆふの個性に惹かれた。登場人物はそれぞれ達者であり、声がいい。
バベルノトウ

バベルノトウ

国道五十八号戦線

サンモールスタジオ(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/25 (月)公演終了

満足度★★★

新しい主役の誕生!
 今回彗星のように登場した新人金丸慎太郎を主役に抜擢。そのみずみずしい演技で芝居を盛り立てた。ちょっとクールで二枚目で声が良くて、関西なまりも魅力を増した。初日ゆえの緊張した様子も、若干のせりふの噛みも、すべて初々しく感じられる好演。魅力的な役者のそろっている国道五十八号戦線にさらに魅力的な新星が誕生した。

 物語はバベルノトウという不思議な植物をめぐっての友寄流ファンタジー。 こういう不思議な素材を題材にして、われわれの想像力を掻き立ててくれる構成は相変わらずうまい。

 また場面転換が見事で、それぞれのシーンが象徴的なせりふで終わり、絶妙のタイミングで音楽が入り、いつの間にか観客は友寄マジックに引き込まれてしまう。

 初日ゆえの練習不足な面(息があってないところ)や、せりふのとちりがあったのは残念だが、それゆえにこれからますます面白くなるだろう。期待したい。

ネタバレBOX

 先生と生徒という関係のシーンが多く、席に座っているシーンが多かったので動きに乏しかったのが残念。

 そして、この劇団にはハマカワフミエ、福原冠など他の劇団で活躍している素晴らしい役者が揃っているのに、それらを脇にまわしているのがもったいない。(ハマカワフミエは数日前まで他の公演に出ていたのでしょうがないが。)

 伊神忠聡、ハマカワフミエ、福原冠、彼らのホームグラウンドでしか出せない魅力をたっぷりと見たかったなあと個人的に思ったが、いい役者をたくさん抱えている劇団ゆえの贅沢な悩みか。
僕らの声の届かない場所

僕らの声の届かない場所

ろばの葉文庫

The Art Complex Center of Tokyo(東京都)

2010/01/12 (火) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

贅沢な空間で濃密な時間を楽しめた!
 画家の物語をやるにあたって、あの素敵なギャラリーを会場として見つけたということがまずこの芝居を成功に導いている。会場についたときから雰囲気がびんびん伝わってきた。まさに隣の部屋で絵画展をしており、それを見ながら会場入りするので、本当に画家のアトリエに来たという感覚がもてた。

 そして、三人のタイプの違う画家のプライドのぶつかり合いと葛藤が面白くも切ない。

 心の闇をテーマにしているので、怖い部分もあるのだが、見終わった後、なにか美しいものを見た後のような爽快感が残った。とても不思議な体験だ。

ネタバレBOX

 3人の女優が素敵だった。まずは、やり手の絵画評論家を演じた佐々木なふみの演技が颯爽としていた。気むずかしい画家たちを相手に一歩も引かず、見事に手玉にとっていくさまはかっこいいのひとこと。しかも、決してあなどったり馬鹿にしているわけではなく、それぞれの才能をしっかりと育てていこうとういう愛のある姿勢が伝わってくる。強くて才能ある女性を魅力たっぷり演じてみせた。

 少女茜を演じたハマカワフミエは、独特の直感力がある少女を、持ち前の眼ちからで演じきった。ちょっと不思議で気が強く、しかも薄幸な美少女、ハマカワフミエのはまり役だ。

 そしてアルバイトのモデル(実は隣の喫茶店の子)みどりを演じた清水穂奈美は個性が光った。独特の不思議な明るさを持ち、何でもないシーンまでがとても新鮮に見える。貴重な女優だ。

 他にも達者で魅力的な役者を揃え、物語りはまるでクラシックの音楽のように格調高く、見終わった後、心が洗われる思いがした。
美しいヒポリタ

美しいヒポリタ

世田谷シルク

小劇場 楽園(東京都)

2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

古典と新作の融合から生まれたものは・・
 シェイクスピアの名作「夏の夜の夢」を現在のIT会社の風景に置き換えて、いつの時代にも風化しない恋の愛憎を風刺してみせた。

 不思議な動きの踊りやコマ落としのような動き、さまざまな遊び的要素を織り交ぜながら、しっかりと想像力あふれる舞台を作り出している。時間がとても短く感じられた。

 妖精のいたずら物語を会社で開発中の携帯ロールプレイングゲームと交錯させて自然に見せたところは見事。最もアナログ的なものをデジタルの中で描き、古典と新作を融合させながら、そこに普遍=スタンダードなものを作り出した。刺激いっぱいの舞台だった。

ネタバレBOX

ラストで、社長と不倫をしていたのは実は・・・○○だったことがわかる。それがわかった瞬間、冒頭の社長と○○の会話が急に意味深なものに感じられ、芝居全体のテイストが全く違うものに感じられた。巧妙な仕掛けである。
世界の秘密と田中

世界の秘密と田中

ラッパ屋

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/01/09 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

ハートフルコメディの完成品!
 ラッパ屋の芝居としての質の高さと期待を裏切らない楽しさは安定感がある。これだけ長期にわたってほぼ変わらないメンバーで良質な公演を打ち続けている劇団は少ない。そしてラッパ屋は数少ない大人の楽しめるコメディだ。もちろん若い人にも楽しめるし、家族連れなど最高だ。大人が楽しめるという意味はそこで語られている物語が本物だという意味。

 鈴木聡の書く台詞はひとつひとつが重い、心に響く。重い台詞を積み重ねながら喜劇を作りあげる才能は恐ろしいばかり。

 役者では主役の田中を演じた福本伸一の人の良さがたまらない。そして三鴨絵里子のあの声、中毒になりそうなくらい素敵だ。個性派揃いというのはよく使われる言葉だが、それぞれがこの劇団ほど粒ぞろいで魅力的な劇団を他には知らない。

 笑わせて、泣かせて、感動させて、生きていく勇気を与えてくれる。これこそコメディの王道だ。鈴木聡の芝居に悪人は一人も出てこない。安心して誰にでも奨められる芝居である。そして人生における大事なものをしっかりと教えてくれる劇団でもある。チケット代がとても安く感じられた。

夢見る乙女じゃいられない

夢見る乙女じゃいられない

たすいち

王子小劇場(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

目崎ファンタジーの確かな歩み!
 若い作家&演出家の進歩を確認出来ることはとてもうれしい。前作の感想でも書いたが、目崎剛は作家としても演出家としても着実に階段を昇っている。昔の作品で感じた歯切れの悪い部分や未完成の部分がどんどん洗練されていっている。しかも短期間の間にだ。

 しかし、前作が去年の11月末、それから2ヶ月もたたずに新作とは、その創作意欲に恐れ入るし、それでこれだけの作品を作るのだから、それだけでも凄い。油がのってきているのではないだろうか。

 役者では売れないけど前向きな漫画家工藤優女を元気いっぱい演じた矢鋪あいが素敵だった。夢を食う妖怪獏を演じた紺野タイキと枕返しを演じた石下ゆかも独特の魅力があって引きつけられた。

ネタバレBOX

 物語は売れない漫画の作者と、同人誌の漫画家が、いつのまにか漫画の中の登場人物となって、現実と漫画とが交錯しながら、それぞれの夢に向かって戦っていくというお話。これだけ書くとありきたりだが、現実と漫画世界の行き来が実に見事なのだ。

 前から思っていたが、この演出家、場面転換の処理がうまい。今回も登場人物が交錯しながらストップモーションや照明で、次から次へとシーンが切り替わっていく。その流れがそれだけで劇的なのだ。

 物語全体としては題材が漫画や夢であるために青くさい部分がたくさんある。しかし、私はそれを含めてとても好きだ。目崎ファンタジーの世界で次第に確立されていくのを観るのは楽しい。
三月の5日間

三月の5日間

オーストラ・マコンドー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

表現方法の斬新さに感動!
スタートから舞台上に見事に渋谷の雑踏が表現され、とても斬新な舞台だった。特に映像の使い方が見事で、客席も含めた劇場全体が渋谷となっていた。  
 驚いたのは自然な会話。あたかも本当に渋谷の街で交わされているような若者の会話が舞台上に展開する。台詞回しや間合いがとても自然で(というより完全に日常会話)、これだけ自然な会話を再現して見せることがどれくらい練習が大変なことかと逆に想像させられた。  
 舞台上では常時、ほとんどの登場人物(全部で8人)が出ずっぱりである。つまり渋谷の街のあちこちで起こっているであろう出来事を観客が俯瞰して見ているような構造だ。(以下はネタバレで)

ネタバレBOX

 てっきり河合龍之介と岡田あがさが中心の芝居だと思ったら、(彼らも重要な役どころだが)安井順平と坂口辰平が最も印象に残った。彼らの会話は絶妙だ。うっとうしいキャラを見事なまでにうっとうしく演じ、そのうっとうしさが芸術の域まで達している。

 渋谷という現代を象徴する街をテーマにし、SEXや退廃、混沌、その中で生きていく若者達の日常をしっかりと切り取って、見事に表現して見せた。

 何よりも表現方法の新しさ、斬新さに感動。岡田利規作品とはひと味違った舞台を創り上げた演出家としての倉本朋幸の才能をしっかりと感じさせられた。

 余談になるが、渋谷で100人に実際にインタビューするなど、劇団員のこの演劇にかける熱い情熱が感じられた。また会場で全員に分厚いパンフが配られ、そこには対談や岡田あがさの小説などもあり、読み応え十分、観客サービスも満点だった。
【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】

劇団宇宙キャンパス

吉祥寺シアター(東京都)

2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了

満足度★★★★

10周年に相応しい素敵な物語!
 初日につき、未完成な部分があったり、役者の緊張感が見える部分もあったが、それらを含めて全体がみずみずしくさわやかだ。

 吉祥寺シアターの広い舞台を立体的に使った装置が見事。その装置を生かして舞台上を縦横無尽に役者が飛びまわりはねまわる様子は気持ちよかった。

 役者ではキムラシゲオが軽快な身のこなしで主役を演じきった。22人という多数の登場人物を舞台上でしっかりとまとめあげていたのは見事。女優陣では大田原りなが演劇部の演劇LOVEの女の子をさわやかに演じて魅力的だった。脇役陣も個性派揃いでそれぞれ面白いが、特に生徒会長関口純子、副会長玉渕正紀ははまり役だった。

ネタバレBOX

 映像も照明も素晴らしかったが、音響の音が割れていたり、すかすか聞こえるところがあった。音響設備のせいかもしれないし、私の座席の位置のせいかもしれないがそれだけ残念だった。

 今回の公演は劇団の10周年という節目で(しかも主催小林ともゆきは本日33歳の誕生日だそうで)主催の演劇人生を振り返ったような作品だった。各所に青い部分を感じる劇団だが、その青臭いところが胸をきゅんとさせる劇団でもある。そして今まで色々な苦労があったけど、これからも演劇を続けていくという宣言。とても素敵だった。

 そしてまた登場人物それぞれがほんとに楽しそうに芝居をしていることも素敵だった。
LOVE

LOVE

ロロ

王子小劇場(東京都)

2010/01/01 (金) ~ 2010/01/04 (月)公演終了

満足度★★★★★

新春の楽しい観劇初め!
 新春の観劇初め。王子小劇場で新しい才能の登場を確かに感じさせる劇団と出会った。

 シュールながら胸を打つ恋愛ドラマ。あたかも不条理演劇のように突飛な設定が続くが、伝わってくるのはいずれもまっすぐな純愛。

 まだまだ荒削りながら感性のみずみずしさと大いなる将来性を感じる。また登場する役者も同様、細かい部分の稚拙さや発声の未熟さを補ってあまりある存在感を感じさせる役者ばかり。将来が楽しみでならない。

ネタバレBOX

 背面に並んだ電球の数々。シンプルな舞台で、ちょっと寂しい感じがしたが、この電球がさまざまな演出効果を見せる。その演出も見事。1本観ただけだが確かな才能を感じた。久々に日大芸術学部から魅力のある劇団が誕生した。
オサムシ

オサムシ

バジリコFバジオ

駅前劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/29 (火)公演終了

満足度★★★★★

面白い!
 文句なく面白い!

 この劇団初見、最初は人間と人形のコラボにとまどったが、途中からどんどん引き込まれていった。漫画家たちの切なくも熱いマンガに賭ける情熱を見事に表現。時に場面が全然違う世界に移ったり、シュールなギャグに走ったりするが、中心的なテーマはそれることがない。

 演出家の剛腕で、我々はストレートに熱いものをしっかりと感じさせられた。

 役者はみな上手い。特に大寒治虫を演じた武藤心平の骨太の演技に感激。客演陣では七味まゆ味が好演していた。

ホナルチー・ブギー

ホナルチー・ブギー

激情コミュニティ

早稲田大学学生会館(東京都)

2009/12/24 (木) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

マイムの身体表現を上手く取り入れ、素敵な演劇を完成!
 開演前に短いパントマイム劇を見せてくれる。ほとんどの役者がマイムを中心にやっているメンバーだそうだ。そのことを聞かなければわからないほど、芝居の役者としても十分するぎほど魅力的なメンバーだった。普段はほとんどしゃべらないそうだが信じられない。

 しかし、やはり体の使い方等には違いがあり、身のこなしの軽さ、ストップモーションの上手さ等、ひと味違う魅力を見せてくれた。こういったマイムだのダンスだの体操だの、普段は演劇をやってない人が演劇の世界に進出することはとてもいいことだと思う。双方が刺激になる。

 物語は撮影所の物語。うだつのあがらない(しかもひきこもりの)監督の元、チームは解散寸前である。そういったさびしい職場で、それでも精一杯働く、助監督や照明やその他裏方たちの青春群像。

 切なさが舞台中に漂うが、それをダンスやマイムやしゃれた動きで、ちょっとおしゃれな作品に仕上げている。こういった企画をこれからもどんどんやってほしい。

スポーツ演劇「すこやか息子」

スポーツ演劇「すこやか息子」

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2009/12/25 (金) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

健康な肉体に健康な芝居が宿る!
 前回の公演「悪趣味」にしびれ、そういった路線を期待して会場に駆けつけたので、少し肩すかしを食らった。

 しかし、どんどん新しい方向性にチャレンジする柿喰客の姿勢に感心。芝居自体は新しい演劇としてとても楽しめた。

 「演劇をする人間も健康でなければいけない。」というアフタートークでの中屋敷氏の話はなるほどと思った。

ペンタゴン

ペンタゴン

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2009/12/19 (土) ~ 2009/12/21 (月)公演終了

満足度★★★★

エンクラオールスターを堪能!
 高木健を中心に登場人物総勢23人、そのそれぞれが個性的で役者として魅力的なことに驚く。中でも高木健の上手さと存在感は学生演劇という枠を超えて、若手俳優の中で間違いなくトップランクである。

 今回の芝居はその高木健を中心に添えた高木健ショーであり、またエンクラ忘年会オールスター顔見世興行でもある。
 
 ストーリー自体には今回さほど意味はなく、23人のメンバーにそれぞれ見せ場を作るということに作演の江尻雅輝は重きを置いたのだろう。普通はこれだけの登場人物に見せ場を用意しようとなると破綻するものだが、それぞれの役者が個人技で客を惹きつける力量を持ち、それを高木健がきちんとまとめるので、物語としても破綻しない。シュールな青春群像として、思わず胸を打たれたりもした。

 学生演劇の頂点の一角を占める早稲田大学演劇倶楽部、その底力を見せつけた公演だった。

FUTURE

FUTURE

ブラジル

駅前劇場(東京都)

2009/12/16 (水) ~ 2009/12/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

構成が見事!
 笑いに包まれながら、少し怖いシーンがあり、しかも最終的にはびっくりさせてくれる。たっぷり楽しませて作品がよく練られ、構成が見事だ。ブラジリィ・アン・山田の術中にはまってしまった。

エンジェル・イヤーズ・ストーリー

エンジェル・イヤーズ・ストーリー

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2009/11/28 (土) ~ 2009/12/25 (金)公演終了

満足度★★★★★

定番、安心して楽しめるクリスマス公演!
 キャラメルボックスのクリスマス公演は安心して楽しめる。それだけですごい。家族連れで、恋人を誘って、間違いなく楽しめる公演を打ち続けるということは簡単なことではない。

 今回の公演はファンタジーでもなければサスペンスでもない、しかし、後半どんどん盛り上がっていき、演劇の楽しさを堪能させてくれる。

ネタバレBOX

 キャラメルの看板役者、西川浩幸と大森美紀子は実の夫婦。その夫婦が舞台上で夫婦役を見事に演じる。それを観ただけでほのぼのした気持ちになる。

 家庭生活がうまくいっていなければ、長期公演の主役を夫婦で演じられるものではない。

 キャラメルは今回そのことを売りにはしてないが、素敵な夫婦の共演こそ、このドラマの最大の魅力である。拍手を贈りたい。
海ノ底カラ星ヲ見上ゲヨ

海ノ底カラ星ヲ見上ゲヨ

おぼんろ

サンモールスタジオ(東京都)

2009/12/17 (木) ~ 2009/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

幻想的でスケールの大きなロマン!
 死神の物語に乙姫の物語を加えて、おとぎ話のように物語は展開するが、その奥には実はもうひとつの秘密がかくされていたのだ。幻想的な物語とリアルな物語が入り交じりながら壮大なロマンが舞台上に展開する。

 照明と音響が見事に芝居とマッチし、縦横無尽に展開されるおぼんろの芝居をしっかりとサポートしていた。

 役者では、阿久澤菜々の圧倒的存在感に恐れ入る。まだ未完成で稚拙な部分も残るが、その女優としてのキャパシティは計り知れない。なによりも独特の空気感を持っていてとても魅力的だ。

 他の役者ではユキ役の前園あかりと医師山下役の福原冠に魅力を感じた。また太郎役の山本卓の華麗な身のこなし、死に神役の末原拓馬の体の使い方にも感動した。

 あまりにおぼんろの役者の動きが軽快なので、サンモールスタジオが狭く感じられたくらいだ。

(補足)
 楽のマチネにもう一度見にいった。初日気になった部分がほとんど解消されていたことと、アンサンブルの調和が大きく前進していたことに感心した。

ネタバレBOX

 作演の末原拓馬がまず観客に挨拶をし、ひとつの話を聞かせる。そこから本編につながっていくのだが、その始まり方が素敵だ。ラスト近く、穴の空いた布があたかも海中を表すように舞台上に現れ、我々はその隙間から登場人物を観ることになる。その演出も魅力的だ。随所に光る演出が見受けられた。

 舞台が終わった後、阿久澤菜々に会ったが、あまりに小さく、あまりに華奢なのにびっくりした。まさに小さな大女優だ。彼女の透き通った演技が観られるだけでも2500円は安い。

 後で耳にした話だが、重要なスタッフが本日の公演前に事故にあったらしい。そのアクシデントを乗り越えて初日の幕を上げた。その苦労はいかばかりか。そのせいでうまくいかなかった箇所がいくつかあるそうだ。それを聞くと、もう1回観たくなった。
「FoRGet.Me.NoT」

「FoRGet.Me.NoT」

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2009/12/11 (金) ~ 2009/12/13 (日)公演終了

満足度★★★

重いテーマを軽やかに!
舞台装置、照明など、POPな感じで仕上げられているが、物語自体は薬害問題という重いテーマを扱っている。脚本演出の高藤沙和子が役者の長所を引き出す軽やかな演出で、登場人物は皆、輝いていた。

『プルーフ/証明(Repirse)』

『プルーフ/証明(Repirse)』

DULL-COLORED POP

SPACE EDGE(東京都)

2009/12/12 (土) ~ 2009/12/12 (土)公演終了

満足度★★★★★

名作は何度見ても素晴らしい!
 素晴らしい脚本、素晴らしい役者、素晴らしい演出、名作は何度見ても飽きがこない。これからも再演を繰り返し、スタンダードに育ててほしい。

 中田顕史郎の父親役ははまり役だ。今日のステージでは小栗剛とともに乗りに乗っていた。このまじめな芝居で、客席を大いに沸かせていた。木下祐子は的確な演技で舞台を締めた。そして清水那保がまた一回り成長した。どこまで大きくなるのか楽しみでならない。

 舞台が終わった後、客席の拍手がいつまでも終わらなかった。

西から昇る太陽のように

西から昇る太陽のように

タテヨコ企画

吉祥寺シアター(東京都)

2009/12/10 (木) ~ 2009/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

タテヨコ企画10周年に相応しく!
 タテヨコ企画10周年記念公演の最後を飾る吉祥寺シアターでの公演。劇団のこの公演に賭ける意気込みが随所に感じられた。

 山村の陶芸教室の何気ない日常の中から登場する人々のそれぞれの抱える苦悩をきちんと描いている。達者な役者たちと、見事な脚本で、大人のおとぎ話を楽しませてもらった。

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