Koujiの観てきた!クチコミ一覧

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とりあえず寝る女

とりあえず寝る女

箱庭円舞曲

駅前劇場(東京都)

2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

役者が全員魅力的!
 役者ひとりひとりが本当に上手い。そして何よりその役者のいいところをしっかりと引き出す本と演出である。古川貴義の言葉選びのセンスはますます磨かれてきた。もはや職人芸だ。

 誰もこの芝居を喜劇とは呼ばないだろう。癖の悪い血筋の家系の物語を軸に、人間の弱さや愚かさを肯定もせず否定もせず、ていねいに描写してみせるストレートプレイ。しかし、その描写力があまりに見事なので我々は思わず笑ってしまうのだ。

 登場人物ひとりひとりを見事に書き分け、しかもその一人一人が愚かさを抱えながら、それでいて魅力的なのである。この人物描写の上手さは神がかり的になってきた。名作の誕生である。

 役者では看板役者須貝英の上手さは定評があるが、その須貝英に対抗して、小林タクシー、赤澤ムック、村上直子らが、演技勝負を仕掛けてくる。舞台上で役者同士の演技バトルが観られる作品である。

ネタバレBOX

 昨年のCoRich舞台芸術まつりで俳優賞を獲得した小林タクシー、王子の佐藤佐吉演劇賞で最優秀主演男優賞を獲得した須貝英、どちらも受賞はダテではないということを見せつけた。
ヒメ

ヒメ

チェリーブロッサムハイスクール

吉祥寺シアター(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★

よく練られたSFファンタジー!
 推理小説のように謎解きも楽しめるSFファンタジー。大学教授の謎の自殺と、その教授が研究していたという散らない桜の謎を巡って、哀しくも美しいドラマが展開する。よく練られたストーリーだ。

 吉祥寺シアターの広い舞台をさらに広く使ったような演出が見事。特に奥行きの広さはこの芝居の幻想性を高めた。そして、2階席舞台袖部分を使ったのも上手かった。よく考えると吉祥寺シアターを素のまま使ったということだが、そこに見事な照明が加わって幻想的なステージとなった。

 広い舞台をエリア毎に照明で照らし、次から次へとシーンが展開していくのはビジュアル面でもストーリー展開面でも素敵だった。

 役者では阿久澤菜々が透明感あふれる演技で、ミステリアスな少女役を好演した。その他にも個性的で魅力的な役者が多数いた。

エ キ ス ポ 【満員御礼!!】 

エ キ ス ポ 【満員御礼!!】 

トランジスタone

ザ・ポケット(東京都)

2010/03/31 (水) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★

本物を追求する劇団!
 毎回観るたびに違うテイストの芝居を見せてくれる。そのことにまず驚く。今回の芝居は母親の葬式が舞台。最近葬式ものが多いので、今回もそのパターンかと思ったが、途中からどんどん面白くなり、ラストシーンではさわやかな気持ちになった。

 主宰の松下達也が公演のたびに違う演技を見せてくれる。どこまで芸達者なんだ。

ネタバレBOX

 毎回質の高い大人の芝居を見せてくれるが、そろそろこれがトランジスタOneの芝居だというものを作ってほしい気がするのは私のわがままか。

 台詞をかんだりとちったりすることが、今回の公演では何回かあった。演技が上手い劇団だけにそれが余計に目立つ。残念だ。

 私の好きな荒井典子、井上美夏が今回は出てなかったのも寂しかった。男優では宇貫貴雄が相変わらず上手い。
三五大切

三五大切

花ざかりのオレたちです。【公演終了しました!】

王子小劇場(東京都)

2010/03/31 (水) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★★

思わず二回目を観てしまった。
 前回、早稲田どらま館で今公演を観、今日が二回目。どらま館公演があまりに完成度が高く、それぞれの役がはまり役だったので、どれくらい練習をしたんだろうと思ってたら、毎公演、キャストはシャッフルしていますと聞いて衝撃を受けた。ひとつの役をモノにするのだって大変なのに、複数の役を練習してその都度シャッフルしながらの公演なんて考えられない。

 しかも本日は源五兵衛を三人で演じるという。どこまで挑戦的なんだと、その若さとしたたかさに恐れ入る。思わず当日、他の予定をキャンセルして王子小劇場に飛び込んだ。

 芝居の出来そのものは、どらま館で見た方がよかったかもしれない。私が観た回はたまたまか、源五兵衛が永島敬三、小万が佐賀モトキだった。ひょっとしたら前回、ベストの組み合わせを見たのかもしれない。

 今回、源五兵衛を、永島敬三、大橋一輝、金丸慎太郎の三人で演じた。そのことがとても斬新だったが、役者としては見比べられることになる。大橋一輝、金丸慎太郎、どちらも魅力を持った役者であるが、現時点では永島敬三が一枚も二枚も上だ。

 小万役は、佐賀モトキの方がはるかにうまいが、望月綾乃もいい味を持っている。これからが楽しみだ。清水穂奈美の小万役が観たかった。どんな味になるのだろう?

 本日は熊川ふみに興味を持った色んなことが出来そうな女優だ。これから注目したい

泣き虫なまいき石川啄木

泣き虫なまいき石川啄木

ハイリンド

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/03/27 (土) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★★

さわやかな井上作品。
 いつも大笑いして見る井上ひさし作品だが、今作は少しテイストが違い、胸をしめつけられたり涙を流したりしながら観た。喜劇を観たという感じではない。それでもやはり笑いどころ満載で、たっぷり楽しませてもらったのだが。

 多根周作は晩年の石川啄木をさまざまな悩みを抱えながらも前向きに生きる人物として演じている。とてもさわやかで独特の品がある石川啄木だ。多根周作が演じると人物に気品が出てくる。さすがだ。そして金田一京助を演じた伊原農がこれまたとてもいい。スーパーお人好しの金田一氏を、魅力たっぷりに演じた。

 この作品をさわやかに仕上げるところがハイリンドの持ち味か。愛すべき劇団だ。

このままでそのままであのままでかみさま

このままでそのままであのままでかみさま

COLLOL

BankART Studio NYK(神奈川県)

2010/03/26 (金) ~ 2010/03/30 (火)公演終了

満足度★★★★

すべてが詩的で幻想的。
 横浜の倉庫を改造した素敵な空間。何より広く天井が高い。その会場と音響と照明と本と役者と、全てが相乗効果をあげている。特に音響と照明が立体的なことに驚く。

 観客は決まった席がなく、会場の好きなところに移動しながら見ることができる。まだまだ演劇は決まった座席で見るものという固定観念が強く、動きながら見る人は少なかったが、劇場の人からアドバイスをうけて、意識的に動いてみた。すると本当に空間の広がりを感じ、芝居が何倍も魅力的に思えた。役者が演じているエリアまで進んでいく勇気はなかったが、この芝居にはそれもありだろう。面白い試みだ。

ネタバレBOX

 固定観念を打破し、観客を劇空間内にリアルに引きずりこむにはどうしたらいいか、それがこれからの課題だ。役者が演じているのを客席で見るのではなく、われわれが演出家の用意した異空間に出向き、役者たちとともにその世界で過ごすのだ。

 新しいし、面白い。世界で通用する芝居だ。
モグラの性態

モグラの性態

ぬいぐるみハンター

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★

若さが爆発して胸を打つ!
 SF青春グラフティといったところ。舞台全体に若さが爆発している。SF仕立てであったり、学園もの仕立てであることなど、途中からどうでもよくなる。それよりかわいいあのことやれるのかやれないのかというのがメインテーマ。

 若い男の子達ってほんとに・・・と思ってしまうが、それが純情であったり、かわいく見えたりするとこが、この劇団の特徴か。確かにラストシーン、ぐっと胸にくるものがあった。若い男の子にはたまらない作品だろう。

ネタバレBOX

 本日のマチネー終了後、主要キャストが急病で出演出来なくなるというアクシデントがあったらしい。公演中止まで検討したが、ソワレを観に来るお客様に連絡するすべもなく、演出家が急遽代役となって公演を続けたという。終了後の挨拶で初めてそのことを知らされたが、アナウンスが無ければ気がつかなかっただろう。それくらい池亀三太の演技は自然だった。

 多分、劇団員全員がこのアクシデントに動揺しながらのソワレだったことだろう。それにも関わらず、全員で力を合わせて、無事公演をやりとげた。そのことがかえって芝居を新鮮なものにし、演技を高揚させたのかもしれない。役者の健康回復を祈るとともに、アクシデントの中で頑張った劇団員の皆さんに拍手を送りたい。特に演出家の勇気と決断には強く感動した。
止まらずの国

止まらずの国

ガレキの太鼓

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了

満足度★★★★

細部までていねいに。
 ガレキの太鼓の作品は手作りのていねいさを端々まで感じる。今回の作品は特にそうだ。芝居という作り事の世界だからこそ、ディテールにこだわって、リアリティを持たせようという演出意図がよくわかる。

 登場人物ひとりひとりの設定がていねいで、類型的でない。何人か外人が登場するが、日本人が外人を演じているといういやらしさがない。

 そして、仮想の国で起こった仮想の出来事でありながら、今まさに日本人旅行者が世界のどこか巻き起こして(巻き込まれて)いそうな物語だと感じられる。そういう意味で作り込まれた作品だ。

 登場人物の一人一人は、決してヒーローでもないし、特別な存在でもない。それにも関わらず、それぞれの登場人物がとても素敵に感じられる。ここら辺も舘そらみの凄いところだろう。

ネタバレBOX

 中盤の戦争かテロかを予感させる薄暗いシーンがとても良かったので、最後の実は○○でしたというオチには少し違和感を感じた。途中何度か登場人物が外へ出て行ったので、そのときに雰囲気でわかるだろと思ったのだ。

 そういったことはあるにも関わらず、ラストシーン、全員が顔や体を汚しながら、喜びを表現するところは、大変素敵だった。極限状態の人間を表現しながら、最終的には愛にあふれたラストを用意してくれる。そこら辺もガレキの太鼓の素敵なところだ。
三五大切

三五大切

花ざかりのオレたちです。【公演終了しました!】

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2010/03/26 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

学生演劇の頂点たる公演!
 全日本大学選抜と言ったメンバー。このメンバーで公演を打つというだけで胸がわくわくする。どんなに新しいものを見せてくれるのかと思っていたら、出し物は「三五大切」だということを聞いて、腰を抜かした。「三五大切」とは鶴屋南北の代表作「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)のこと。

 そのストーリーをデフォルメはしているもののそっくり借りてきて、時代設定もいじってない。しかし、このメンバーがやるのだからただの「盟三五大切」ではないはず。

 一挙に興味は史上最強学生演劇から、鶴屋南北をこのメンバーがどう料理するのかということに移った。結論から言うが、表現が大変新しいとても面白い「盟三五大切」が出来上がった。お見事である。

 演出家の山本卓卓は空間の使い方がすごくうまい。また動きもかろやかな動きを駆使する独特の表現形態が成功していた。

 役者では、復讐の鬼と化した源五兵衛を演じた永島敬三が哀しい役を独特のコミカルさと個性を交えて見事に演じきった。技量の高い役者が揃っている中でも今回は一段上だった。その他、佐賀モトキ、高木健、清水穂奈美らは、他の役者では真似の出来ない個性を発揮していた。いずれも将来が楽しみだ。

ネタバレBOX

 役者陣にもしびれたが演出家としての山本卓卓の才能にも目を見張った。舞台上に用意された四角いリング。これから始まる殺戮の物語をあたかもプロレスに例えたのか、それとも学生演劇日本一を賭けた天下一武闘会からの発想か、とても面白かった。しかもそこに張り巡らされたロープの使い方がうまい。

 その他ありとあらゆる面で、山本卓卓の演出の切れ味を感じた。
はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】

はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】

キコ qui-co.

王子小劇場(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了

満足度★★★

これからが楽しみな旗揚げ公演!
 旗揚げ公演だそうだが、小劇場の人気役者を揃え、大いに注目を集めての本公演だ。詩的な言葉とビジュアルなシーンで彩られた幻想的な物語。特に映像の使い方がうまい。
また演劇的な実験を随所で行い、そこら辺も面白かった。まずまずのスタートを切れたのではないだろうか?

 役者では、楓役の木下祐子の安定した演技に魅せられた。声が非常に聞きやすく、他の役者とは一線を画していた。ナギ役の堀奈津美は出だしのシーンとラストシーンがとても素敵だった。男性陣ではまつばら役の千葉淳に魅力を感じた。

ネタバレBOX

 初日ゆえの台詞のとちり、役者間の連携ミスのような箇所が何カ所か感じられた。それが残念。そのためにせっかくの物語がいまひとつ盛り上がっていかなかった。ただ、その点はこれからどんどんよくなるだろう。

 舞台の床に直接あてられる照明、映像、この美しさは際だっていた。その他にも印象的な素敵なシーンがたくさんあった。その逆にワンパターンな部分、意味不明の部分もあり、若干のちぐはぐさはあったものの、演出家の才能を感じるには十分なステージだった。
~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)

~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2010/03/22 (月) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

脳天をぶち抜かれた快感!
 バナナ学園おはぎライブ初見。強烈な刺激に脳天をぶち抜かれた感じ。しかし快感。あらゆる意味で(演劇的に)感動した。観るまでは、勝手に、アイドルのコンサートを真似したアイドルおたく達のライブと勘違いしていた。お詫びしたい。今日観てわかったことは、はっきりとこれは演劇だということ。

  歌もまともに聞こえないし、台詞など全く聞こえないのだが、それでも確かに伝わるものがある。しかも強烈に!「暗黒AKB」とでも名付けたいような、オタク文化アイドル文化を根こそぎ足下からすくってこなごなにして見せたような衝撃的舞台を見せてくれた。またさまざまなメッセージ性も感じ、バナナ学園が仕掛けるものは奥が深かった。

 かつて60年代、寺山修司が天井桟敷で繰り広げていたような視覚的にも聴覚的にも刺激的舞台だった。

 「普通の演劇には興味がない」と舞台上で宣言する二階堂瞳子がかっこよかった。

ネタバレBOX

 数人、踊りの上手な女性がいたが、なかでも前園あかりは格段にうまかった。舞台の上で踊りと目で何かを伝えるということがしっかりと出来ていた。その逆に残念ながらメンバーの中に動きの明らかに劣るもの、舞台上にいることにてらいがあるものが一部いて、それが少し質を落とした。舞台上のメンバーが全員、二階堂、前園のテンションを持ち得たら、革命的芝居になるような気がした。

 それと芝居自体が新しすぎるので、観客の方がどうこの舞台に接したらいいのかがわからずとまどってしまうというのも現在の問題点か。このおはぎライブにはアイドルのコンサート風を装って、アイドル文化を風刺し、その裏にひそむ悪意さえも浮き彫りにし、なおかつ世の中全体に強烈なメッセージを伝えるという凄さを持っている。とすると、観客としては単純にライブの観客としてノリノリになるのがいいのか、ちょっと小難しい顔をして腕を組みながら前衛演劇を観るテイストで観るのがいいのか、観客自身がまだ迷っているという状況がある。その状況を乗り切ったときにバナナ学園旋風がきっと巻きおこるだろう。観客の方にすりよることはない。二階堂瞳子よ疾走せよと言いたい。
フジヤマタイガーブリーカー

フジヤマタイガーブリーカー

MCR

駅前劇場(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

MCRの名作二作品を観る!
 「Track Back System」と「マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック」という再演ものを二本あわせてフジヤマタイガーブリーカーという興行名にしている。ちょっとここら辺がわかりにくい。最初1時間くらいの作品を二本建てで見せてくれるのかと思ったが、それぞれ全く別の作品で、それぞれ100分近くある力作。よってわれわれはいやでも二作品観ざるをえない(笑)。

 しかし、我々フアンにとっては、過去の名作を二本連続で観ることが出来るのはうれしい限り。それぞれテイストは違うながらも桜井ワールド全開で、昼夜観させていただいたが、MCRを堪能した幸せな一日だった。

(付記)

 「Track Back System」の近藤美月、「マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック」の石澤美和、この2人の存在感にしびれた。特に石澤美和、かつては強烈な個性だけで勝負をしていたが、最近どんどん演技がうまくなっている。将来が楽しみでならない。

ネタバレBOX

 「Track Back System」は戦隊モノの物語、デパートの屋上の子供向けのショーを舞台に、MCRの中では明るく派手な作品。しかし、内容は登場人物それぞれの悩みやいいらだちがあふれ、ロックコンサートの最後にギターやドラムを壊したり燃やしたりするような、破壊的なエネルギーを感じた。

 一方「マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック」はSFチックな物語。ある日、ある男性とある女性が痛みや感覚を共有するようになる。ところがこの二人には何の関係もなく、また運命的出会いでもなんでもない。全くの赤の他人がある種の感覚を共有するという不思議な設定の中に、繰り広げられる不条理演劇。しかし、随所に桜井流哲学がちりばめられ、我々は笑いながらも人間の切なさを感じる。

 MCRをコメディ劇団だと言ったら櫻井智也は怒るだろう。この芝居のどこがコメディだと。確かにありとあらゆる意味で深く哀しい(切ない)物語だ。

 二本とも面白かったが、どちらかと言うと「マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック」の方が私は好きだった。下ネタがあふれる芝居だったが、いやらしさは全くなく、下ネタになればなるほど切なくなるという不思議な芝居だった。
罪~ある温泉旅館の一夜~【作・演出 蓬莱竜太】

罪~ある温泉旅館の一夜~【作・演出 蓬莱竜太】

アル☆カンパニー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2010/03/18 (木) ~ 2010/03/24 (水)公演終了

満足度★★★★

胸打たれる意欲作!
 大学時代からの演劇仲間が結婚し、50をすぎても二人で芝居をプロデュースし、同じ舞台に立ち続けている。平田満、井上加奈子、なんて素敵な人生なんだろう。しかも連れてくる作演が凄い。青木豪、蓬莱竜太、前田司郎等、若手の活きのいい演劇人を連れてきて、その新鮮な感覚を自分たちのものにしようというどん欲な姿勢。この夫婦の演劇に対するあくなき探求心は若手も見習わなければならない。

 今回の舞台もその二人のエネルギーが劇全体にほとばしっている。家族に障害者を抱える家庭の崩壊寸前の状態を巧みに表現し、その中でそれでも明日に向けて前向きに生きていこうとする家族を、リアルに、しかしどこか幻想的に表現した。加藤健一事務所「高き彼物」で加藤健一の娘を明るく好演した占部房子が今回は難役を繊細に演じていたのも光った。

 アルカンパニーで「飛龍伝」とか「松ヶ浦ゴドーの戒め」とかやってくれないかなあ。この二人なら今でも十分に出来ると思うのだが・・・。

ソリティアが無くなったらこの世は終わり

ソリティアが無くなったらこの世は終わり

山田ジャパン

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★

深いテーマを軽やかに。
 物語は最初から最後まで喜劇チックに進行する。しかし、そこで語られているのは複雑な家庭の複雑な問題。そのアンバランス感が絶妙だ。

 まず本がいい。前編笑いで包まれているが、主題を壊すことがない。そして最終的に、悩みを抱える現代人に勇気と希望を与えてくれる。また、役者がいい。すべての役者がしっかりとした演技をしている。

 はまち役の尾形雅宏、美弥子役の玉手みすずが特に素敵だった。満知子役のいとうあさこは最近TVでよく見るコメディアンで、舞台上でも似たテイストの演技をしていたが、やはり存在感は抜群だ。役者としても非常に魅力がある。

 職人が集まって作った名品という感じの作品である。

まなざし

まなざし

掘出者

タイニイアリス(東京都)

2010/03/19 (金) ~ 2010/03/23 (火)公演終了

満足度★★★★

本の面白さと役者の魅力が際立つ。
 不条理風な会話の中に物事の本質が見え隠れする芝居。家族とは?兄弟とは?恋人とは?人生とは?世界とは?少し病んだ登場人物たちの独自のロジックによる弾丸トークがとても面白かった。そして、ハチャメチャではあるが、ときに哲学的な会話に思わず引き込まれてしまった。

 役者では木村慎二の姉役を演じた石井舞、栄吉の婚約者を演じた黒木絵美花が独特の世界感を魅力的に演じてみせた。

 様々な設定の二人の会話がとても面白かったが、登場人物は病んでいる人間だらけなので、後半パターン化し、少しだれた部分があったのが残念。
まだ初日なのでこれからどんどん良くなっていくだろう。

ネタバレBOX

 後半舞台にはまなざしという役名の舞台監督が出てくる。様々なルールを司る神のような存在だが、舞台監督が舞台に出てくること自体がルール違反だ。そういった矛盾を逆手にとって、劇構造をさらに多重化している。

 まなざしという言葉が何を意味するのかと考えたが、やはり世界を見る神の視点だろう。登場人物それぞれはゴドーを待ちながらのように、ひたすら自分の求めるものを待ち続けている。それは永久に獲得出来ないものであるということを知らずに。

 田川啓介の物事を見つめる目はとてもユニークでとても深い。今後が楽しみな作家だ。
Fight Alone 2nd

Fight Alone 2nd

エムキチビート

ギャラリーLE DECO(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/21 (日)公演終了

満足度★★★★

独特の緊張感があり、面白かった。
 たまたま誘われて緑チームを拝見した。国道五十八号戦線、福原冠、エムキチビート、太田守信、漣圭祐、ochazuke wemens、緑茶麻悠の4人の一人芝居。とても面白かった。

 それぞれが普段の芝居とひと味違い、また独特の緊張感があり、とても新鮮だった。しかし、やっている役者にとっては一人芝居というのは大変だろうなとつくづく思った。舞台を一人で支えるということがいかに大変なことか。どこにも逃げられない、誰も助けてくれないという状況で一人で芝居を支えなければならない。これは相当な力量がなければ出来ないことだ。大変だが、役者の修業にとってはこれほどの機会はないだろう。またそういう緊張あふれる状況を観ることが出来る観客も幸せだ。
 
 せっかくだからフェスティバルにして、観客投票でナンバー1を決めるとか、色々と企画を盛り上げていけば良いと思う。是非、エムキチビートには引き続きこの企画を継続してもらいたい。

 聞けば他にも青・赤・白とチームがあり、やはりそれぞれ4人の一人芝居をやっているそうだ。ということは4チーム×4人、16作品が一挙に観られるわけだ。それなら少々無理をしても全チーム観たかったと思った。

ネタバレBOX

 福原冠の芝居はどんな役をやっても福原冠、その独特な存在感は観客をすぐに引きつける。手塚治虫と太宰治の区別も付かないちょっといかれた青年を魅力たっぷりに演じた。 

 太田守信は人形を恋する男の物語をシリアスに演じた。短い時間でやるには濃い物語なのだが、それでも客席には涙を流す観客もいて、太田の必死の演技には胸を打たれた。

 一転、漣圭祐のドラマは、笑いの渦。設定された状況がとても面白く、その設定だけで、十分楽しめた。演技も一番メリハリが効いていた。

 最後の登場人物、緑茶麻佑は、一人芝居というより、一人パフォーマンス。独特の世界を独特の感性で演じた。途中リボンをかけるところで、うまくいかないところがあり心配したが、平然と物語を進行させ、さすがだと思った。アクシデントがあればあるほど、一人芝居は緊張感を増し、観客の楽しみが増える。そこら辺も面白い。
『学生・生徒または未成年者は勝馬投票券を購入できません(再)』

『学生・生徒または未成年者は勝馬投票券を購入できません(再)』

8割世界【19日20日、愛媛公演!!】

劇場MOMO(東京都)

2010/03/16 (火) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

コメディ好きにお薦めの舞台
 8割世界お得意のワンシチュエーションコメディ。再演だけあってストーリーが細部までよく練られていて完成度が高い。

 学生の数が減って、いつ廃校になるかもわからない学校の職員室で1枚の馬券を巡って繰り広げられる大騒ぎ。慾がからむと人間とはかくもあさましくなるかという物語だが、その物語を鈴木雄太は素敵にまとめあげている。

 役者は皆芸達者。ミュージカル好きの松永先生役の鈴木啓司や、うざったさで群を抜く安田先生役の岡本陽介らは、飛び道具のように面白いが、やはり喜劇役者としては小林守が一段レベルが高い。その小林守の出番をわざと抑え、後半の切り札として使ったことが成功している。

 個性派の喜劇役者がそろっている中で、落ち着いた演技を見せた北村先生役の川久保宏之、控えめな演技で存在感を示した三浦さん役の倉田春香らがかえって輝やきを見せた。また教頭役の宮沢ちさ恵が老け役をかわいらしく演じたことも特筆ものだ。

 誰にでもお薦め出来る作品だが、特にコメディ好きにはたまらない作品だろう。

ネタバレBOX

 しっかりとした演技と、練られたストーリーで、会場は最初から最後まで笑いの渦。その中で人生の負け組に対し、今が最悪ならこれからよくなるばかりと希望のメッセージを与えてくれた。この不況の時代、生きる勇気を与えてくれる物語である。

 演出面では特にロッカーの使い方が絶妙だった。
スイングバイ

スイングバイ

ままごと

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

柴幸男ワールド全開!
 前回の「わが星」で星の誕生から滅亡までをちょっとコミカルな5人家族で表現した柴幸男が今度は「スイングバイ」で人類の歴史を超高層ビルに見立て、悠久の営みを会社での仕事に置き換え、独特のリズム感で表現した。

 初日ゆえの堅さもあってか、完成度ではまだ「わが星」に及ばないものの、岸田戯曲賞受賞というプレッシャーに負けず、自由奔放に演出している様子が伺えてうれしかった。端々に独特の感性と感受性が感じられ、今、時代と共にある劇作家の代表である。見逃してはいけない作家だ。

「わが星」で完成させた柴流のリズム演劇が、今回も見事に機能し、オープニングとエンディングの会社の風景はまるでスポーツ中継を観るかのようなわくわく感でいっぱいだった。

 役者では部長を演じた菅原直樹が独特の魅力があった。新人サラリーマンを演じたいしおと、その恋人でエレベーターガールを演じた菊池明香がさわやかだった。

ネタバレBOX

 場面転換で役者達が一斉にくるりと宙を舞う。これがスイングバイだと思った。回転しながら加速度を生む運動。このスイングバイで芝居全体にリズムを作り、そのリズムの中で物語にきらめきを持たせる。

 柴幸男はまるで化学者のように、新たな実験を次から次へと始めた。我々は錬金術師の産み出す化学変化をただ、楽しめばいいのである。
ことりとアサガオ【舞台写真UPしました】

ことりとアサガオ【舞台写真UPしました】

三角フラスコ

エル・パーク仙台 スタジオホール(宮城県)

2010/03/12 (金) ~ 2010/03/16 (火)公演終了

満足度★★★

独特の気品あふれる作品
 太宰治の短編小説「燈籠」が原作だと知って驚いた。時代が違うだけでなく、ありとあらゆる面で生田恵のオリジナルと言っていい作品に仕上がっている。むしろあの「燈籠」を原作にこの作品を書いたということに生田恵の想像力の豊かさ、発想の斬新さを感じた。

 しかし、確かに作品の中に漂う独特の空気感は太宰の世界に近いものであり、退廃と気品が同時に成立する世界は太宰そのものとも言える。そう、この作品にはえも言われぬ気品があるのだ。

 そして「ことりとアサガオ」というタイトルの付け方が絶妙だ。ひらがなとカタカナが若干の違和感とともに混じり合う。どちらも和風のイメージでありながら、どこか異質なものが混じっている感じ。それがこの芝居そのものであり、その違和感の中に不思議な情緒があるという劇構造が見事だった。

ネタバレBOX

 生田恵が登場させた作家という登場人物がとても気になった。最後までこの作家がどういう存在かがわからなかった。いや、むしろ作者としてもわからせない存在としてこの作家を登場させたのであろう。

 非日常的要素を強調する役割は感じたが、私には少し難解だった。
LIVE雅咆2010~FINAL!

LIVE雅咆2010~FINAL!

the CRAZY ANGEL COMPANY

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/03/13 (土) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白い!演劇以上に演劇的!!
 ひとことで言うと、楽器演奏とダンスを融合したようなパフォーマンスだが、ありとあらゆるエンタメ的要素を縦横無尽に取り入れて、全く新しい分野を切り開いているところが凄い。

 そのすべてがパフォーマンスとして完成度が高く、その迫力と訴えかけてくる力に心から感動。初めて拝見したが一回で虜になってしまった。すべての演者が楽器もやるし、踊りもやる。そして楽器を演奏しながら踊ったりするのだ。

 第一部はクールでかっこよく、第二部はお祭りとして、どちらも良くできていた。パフォーマンスの中には演劇的なものをどんどん取り入れているが、逆に既存の演劇界がこういったものをどんどん取り入れていくべきだと思った。そういった意味も含めて必見のステージと言いたい。

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