満足度★★★
独特の気品あふれる作品
太宰治の短編小説「燈籠」が原作だと知って驚いた。時代が違うだけでなく、ありとあらゆる面で生田恵のオリジナルと言っていい作品に仕上がっている。むしろあの「燈籠」を原作にこの作品を書いたということに生田恵の想像力の豊かさ、発想の斬新さを感じた。
しかし、確かに作品の中に漂う独特の空気感は太宰の世界に近いものであり、退廃と気品が同時に成立する世界は太宰そのものとも言える。そう、この作品にはえも言われぬ気品があるのだ。
そして「ことりとアサガオ」というタイトルの付け方が絶妙だ。ひらがなとカタカナが若干の違和感とともに混じり合う。どちらも和風のイメージでありながら、どこか異質なものが混じっている感じ。それがこの芝居そのものであり、その違和感の中に不思議な情緒があるという劇構造が見事だった。