東京バビロン演劇祭2018
東京バビロン
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/08/26 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/08/17 (金) 19:30
園 「そうかもしれない」
正直なところ、舞台を観ているだけでは、セリフも聞き取りにくいし、音響がセリフに被ってしまったりで、うまく内容が伝わらないこともあって、何だこりゃ的な感じでした。しかし(これは本来ではないのですが)、アフタートークを聞いて、目指していることが判り、かなり舞台内容がほぐれて助かりました。
正直、セリフと音響の調整、セリフが聞き取りやすくなれば、是非もう一度観たい舞台です。セリフの音と音楽、効果音の音が作り出す寓話なのですね。
少女を探しに海にでる2人が乗る船や、登場しない海に消えていった少女は、ドラマの持つ揺らぎの象徴、演劇が日常からの逸脱であることを端的に表すメタファーなのですね。(違うか?)
ちょっと話が長かったですけれど、増田義基が「演劇というのは、終わるからいいんだ」と話したことは共感というか、ちょっと気づかされました。そうか、海に消えた少女も、彼女を探しに出た2人も、終わることで回帰できるのだなあ、と。
緊張した身体から発声される言葉、制御されながらも即興性を失わない音楽や効果音、その主従のめまぐるしい転換を売りにした舞台。
台本ではなく、CDが欲しかったなあ。是非、再演した時には音量を調整して(要はセリフが聞き取れるようなバランス)録音をお勧めします。私はCDになれば必ず買いますよ。聞いてみたいのです。
浅草アリス IN WONDERLAND
劇団ドガドガプラス
浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)
2018/08/18 (土) ~ 2018/08/27 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/08/20 (月) 19:00
2012年版のアリスの舞台が、ネットでダイジェスト再生できますが、セットやセットを立体的に使うところを除けば、あまり変わっていないような。ただし、配役はかなり変わっているのに、主演アリスの松山クミコさんだけは、全く変わらない。これは誉め言葉ですよ。
夏のドガドガ、月曜日ということもあってか、初日の満員に比べるとちょっと入りが少ない感じかな。初日、二日目では盛況もあり、トップギアで走り続けたのでしょうね、いつも通りにテンションは高いのですが、少しお疲れ気味な感じも受けました。
それでも、高いサービス精神で、客席を一切飽きさせることがありません。
グダグダな前説の劇団が多い中、前説も途中休憩トークも、よくもまあバカバカしくも楽しませてくれます。ちなみに、蜂巣和紀さんのヤマトタケルの物まねに一言、ヤマトタケルと卑弥呼は、全く関係ないですよ。
こういうエンタメの舞台は、やはり途中休憩って大事です。また、飲食OKもあった方がよい。一旦クールダウンする時間が欲しいし、トイレの心配をしなくてよいね。それで2時間強はお手頃な時間感覚です。
さて、物語りですが、アリスは主軸の話に関係ないじゃない!バスガイドである必要ないじゃない!なぜ巨乳になるの?などとやたらと取っ散らかっているのですが(私のドガドガ経験で最大級の取っ散らかり方、でも再演に当たって、そこに手を入れる気は全くなかったのですね)、いやあ、それゆえにか、ひたすら暴走してくれて楽しめました。
起承転結なんて全くなく、展開は序破急のリズム。
夏にドガドガは合うなあ。また浅草東洋館に来ますね。
ロンギヌスの槍
風雷紡
d-倉庫(東京都)
2018/08/15 (水) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/08/15 (水) 19:00
「ロンギヌスの槍」は、一義的には赤巌委員長を刺殺した17歳少女まことのナイフのこと。一方で、象徴的に見れば、あらゆる行為に理由を求めようとする、人間の理性的な思考に対する揶揄とも思える。
神はただ許しを与えるのではない、それは「裁き」の結果なのだ。「裁き」というと、そこには当然、当事者の自由意思に対する、罪状の重さが勘案されるはずのものなのだが、神の「裁き」とは、神の「意思」の総体であり、いわゆる「神の思し召し」とはまさに「裁き」ななのだ、とこの物語は言っている。きよしの死も、赤巌委員長の死も、ラストにおとずれる生あるものの死と、生を与えられることのない死も、全ては「裁き」である。一方、父親が戦争に行き死なずに帰還できたのも、母親が子供を失い苦しむのも、赤巌夫人が少女に激烈な憎悪を抱くのも、これもやはり「裁き」なのだ。
そこに「理由」を見出すことに意味はない、ただそれは「意思」なのだから。人間はそれぞれの事象に、正解のない「意味」を見出すことに人生を」さ挙げるしかないのだ。
17歳のまことが刺殺にいたった「意味」は何なのか。まことが刺殺に向かい階段を上る姿は象徴的だ。一段上るごとに、逡巡と決意とが目まぐるしく交錯する。彼女は自らの意思で、刺殺を止めることができたはずだ、と観客は思う。しかし、それは、この物語では何の意味のない。この感情の交錯さえ、「意思」によるものであり、こうした感情の発生の「意味」を考えることしか、人間の存在の埒内にはないのだから。
こうした人間の行動における合理性の排除は、不条理な状況に見える。しかし、この物語が語っているのは、「不条理」の否定であり、また神の名を借りた「運命」の肯定でもなく、自由をもって現実に抗おうとする無力な「実存」なのではないかと思う。
舞台は取調室での会話をもって進行するが、頻繁に出てくる回想シーンや取調室外のシーンも、観客の視線や、刑事たちの視線を取り入れて、場面転換を無理なく行っていて素晴らしい。
特に刑事を演じた霧島ロック氏と杉浦直氏が、とてもよい。狂言回し宜しく、時に軽快に、時に重厚に話を進行させるし、掛け合い1つ1つが、この淀み見えなくなりそうな物語を、ひたすら日の光の下に救い上げて見せる。
テンポもよく、場面の繰り返しも、散漫になりそうな観客の注意をテーマに引き戻してくれる。
浅沼稲次郎暗殺事件に材をとっているけれど、それはこの事件からテーマを取り出したのか、あるいはテーマを表現するのに、この事件が適していたのか。ちょっと興味があるところ。初見の劇団なので、次回作以降でそれが見極められたよいな。
その頬、熱線に焼かれ
On7
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/08/09 (木) ~ 2018/08/12 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/08/12 (日) 14:00
座席1階B列12番
on7第2回公演の再演、劇場をこまばアゴラからシアターウェストに移して。
on7は、第3回公演の「ま○この話~あるいはヴァギナ・モノローグス~」から観劇を始め、正式公演ということでは、今回は3回目となる。
第2回公演の口コミが絶賛の嵐だったので、遅れてきた者としては観れなかったことが悔しくて。再演ということを抜きしても、実験性に溢れた企画、芝居を追求するon7と、次々と称賛をを獲得する劇団チョコレートケーキの脚本・演出コンビのコラボとなれば、観に行かないことの方が不思議だろう。ましてや、この2つのユニットに、一度ならずも魅了されてしまった者としては、見ないこと自体があり得ないこと。
今回は終戦記念日を挟んだ公演日程で、時宜も得ている。こうしたテーマ性の高い芝居には、旬であることも重要だと思う。
さて、当日は東京の千秋楽、客席も満員でテレビ録画も入っているらしく、カーテンコールでは大きな拍手と、役者の皆さんも感極まって落涙している方もいる。
なのだけれど、どうもしっくりこない。悪いというわけではないのだけれど、期待を超えていないのだ。失礼を怖れずに言うと、「劇団民藝」の戦時・戦中芝居を観ているような感じなのだ。
まず、on7側から言わせてもらうと、「ま○この話~あるいはヴァギナ・モノローグス~」や「かさぶた」でみられたような、軽快で緻密、即興性に溢れながら、常に解体と構築を繰り返すような高い挑発度がないのである。
戦争の悲劇を通して人生の儚さや苦しさを描き、予定調和的に結末に向かうような舞台。そこに待っているのは諦観と僅かな希望だ。そうした芝居が悪いのではない。
ただ、今のon7がやるべき芝居なのかと思ってしまう。
劇団チョコレートケーキ側から言うと、いつもなら史実や歴史的現象を、自らの解釈と理解に首根っこを引っ張るように持ってくる古川脚本が、今回は自ら寄り添うようにして書かれており、一向にダイナミズムを感じない。
この物語では、原爆女子と呼ばれた7人(全体では25人)が、それぞれ異なる境遇と想いをぶつけ合う。ともすれば第三者からは、ステレオタイプに理解されている存在は、あくまで1人1人の個人であることが強調され、会話を通じて寛容と癒しと平穏を獲得していく物語である。しかし、舞台からはそこに至るまでの心の機微や、それぞれの気付き、驚きが感じられなかった。
この理由は、会場のパンフレットを見たときに思ったのだけれど、役者も演出側も、取材や理解を通り越して、再演に当たり当時からご存命中の方々に寄り添いすぎてしまったからではないだろうか。掲載されている写真には、当時を知る関係者の方々と肩を並べるon7の皆さんの写真が何枚も掲載されている。
こうした機会を得て、新たな発見や親和性を得たことは想像に難たくない。
しかし、そうして生じる気持ちの高揚は、ともすると舞台上にのみ熱量を持たせ、それが観客席に拡散していくことを妨げることにもなりかねない。役者相互に気持ちが行き過ぎてしまうのだと思う。
脚本や演出法に、前回公演とどういう違いがったのかは判らない。だけれど、もしかしたら、古川氏や日澤氏にも、前回には突き放せて描けたことが、登場人物1人1人に強い親和性が生じたことで、描けなくなってはいなかったろうか。
そう考えると、やはり前回の公演を観られなかったことが、一層悔しく思われてくる。
bug-depayse2018年度公演「愚頭-guzu-」
bug-depayse
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/07/28 (土) 19:00
「虐げられてきたものたち、奪われたものたち、今も生きながらにして苦痛に耐え忍ぶものの、声なき声を可視化し、曝すことで、「尊厳」とは何かを問う舞台。」
確かに、キャッチとしては、舞台内容をよく表していると思います。でも、アフタートークでも、役者さんたちが、舞台をよく咀嚼しきれていないというか。むしろ、それによる不協和音、ベクトルの交錯、あるいは視点のズレ、意識の階層化などを狙っていたとすれば、それはそれで成功しているような気がするのですが、、、
足りないもの、満たされないもの、欠けたもの、損なわれたものを表現しようとしているわけですから、方法論としてはよいのかもしれません。
ただ、トークラストで、宗方さんの一人喋りになっていてことが、やはり演出家としても、不満なところがあったのではないかと思った次第です。
私も、正直消化不良でした。
疑惑の教室にて
カスタムプロジェクト
調布市せんがわ劇場(東京都)
2018/08/10 (金) ~ 2018/08/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/08/11 (土) 13:30
座席1階1列
他の皆さんが、舞台の内容を細かく書かれているので、重複は避けます。
もう四半世紀前になりますが、フジテレビの深夜で「トラップTV」という番組がありました。30分の推理ドラマなのですが、吹越満が演じる「あなた」を、昼の庭園に友人が訪ねてきて、「あなた」が提示する写真と説明で、友人が犯人や事件の顛末を推理するといったエンタメです。タイトル通り「トラップ」が仕掛けてあるので、友人は「あなた」に、まんまと裏をかかれるのですが、今回の舞台作り込みの丁寧さといい、とても良い意味で、この番組を思い起こさせてくれました。
今回の舞台でも、ビデオや写真、図版を多用して、視覚で伝えるところと、セリフで伝えるところを、きちんと整理して推理劇としての整合性を保ちつつ、ツッコミどころもむしろ愛嬌にして、かなり楽しませてくれました。確かに、奇想天外な設定でもあるのですが、そこがエンテメ度を増幅してくれる、1粒で何度もおいしい、グリコアーモンドキャラメル的な舞台です。
ここまで作り込んだ推理劇ですから、演技上で過度な演じ込みや、ましてや表現ミス、セリフ間違いなどがあっては興覚めもいいところなのですが、そこは演技に齟齬が生じないように演じきった役者の皆さんは見事。
そして、丁寧な資料作成や淀みない舞台進行に尽力された裏方さんたちの手腕も立派。
とても楽しめた2時間半でした。
ただ、惜しむらくは、再演が難しいところですよね。手を加えて、別の結末の舞台にするのもとても面白そうではありますが。
初日の昼の部では、全問正解者は1人(どういう思考回路しているのでしょう、驚愕です)、夜の部は8人だったとのこと。この劇団を過去観た方には、1度回答編は見たものの、再見でいろいろ検証してみたいという方もいたのでないでしょうか。いや、それとも、夜の部の観客の皆さんは、結構な熟達者だったのかな。
他の方がおっしゃっているように、年2回見たいなあ。このレベルの作品作りが難しいことは、重々承知していますが、ご検討ください。半端な作品になるのなら、年1回でもという声は聞こえてきそうですが。
マナナン・マクリルの羅針盤 2018
劇団ショウダウン
シアター風姿花伝(東京都)
2018/08/11 (土) ~ 2018/08/16 (木)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/08/13 (月) 19:00
「蒼のトーテム」を観劇。
1人芝居というと、1つの役柄を独白調で舞台装置を駆使しながら演じ切るものかと思い込んでいましたが、複雑多岐な役柄を仕草や声のトーンで演じ分けるものだったのですね。
さながら、超ハイスペックな身体使いの群像落語。
話の導入では、「不思議の国のアリス」のようで、主人公蒼が奇妙な人物や動物と邂逅しします。何ともはや、うまく噛み合わない会話と、異次元な世界模様。
漆黒とやらが、あらゆる色を塗りつぶして、この世界を闇と化そうとしているようなのですが、、、
蒼も漆黒に狙われます。しかし、蒼がなくなると、美しい空はただの灰色に化してしまう。
蒼は必死に抗います。それは、生まれ来たる次世代の者たちの眼に、この青空を見せる責任があるからです。さて、蒼は残ることができるのか。
2回公演というのも、少しもったいないですねえ。また、今後も磨き上げていくのでしょうけれど。驚くべき熱量を感じたがゆえに、この発展版を見てみたいですねえ。竹内敦子さんも、もっと作品の咀嚼が進めば、緩急・メリハリが出てきて、一層良い作品になることは必至です。
期待を込めて、星は少なめに。
娘、父、わたしたち
le 9 juin ルナフジュアン
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2018/08/03 (金) ~ 2018/08/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/08/03 (金) 19:30
何、なのだろう。
凄く「拾われている」感がありますね。
素敵なお芝居だな、という感じ。こう、心が伝わるというか。
愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸
文学座附属演劇研究所
文学座アトリエ(東京都)
2018/08/03 (金) ~ 2018/08/05 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/08/04 (土) 13:00
当たり前な事なのだけれど、どのような創作物も、その作成時の時代的な制約を受けるものなのだな、ということを目の当たりにした舞台でした。
1991年初演。自らの虚栄心から愚かな行動をとる「裸の王様」は、また夢想家で自らを英雄視する「ラマンチャの男」であった、という設定は、バブル期の絶頂とその後の没落を象徴する物語としては、まさにうってつけであるし、ラストに露呈される王様の正体は、いたずらに賛美され続けた理想の人間像への断罪の声ともとれる。
でも、やはり、現在の物語としては、こちらに響かないよなあ。
役者さん各位、演出の小林勝也さんがどうこうというのではなく、「だから何?」としか受け止められなかったなあ。
武田知久、飯川瑠夏、松浦慎太郎のトリオは軽快で、それぞれの役割を洒脱に演じていて好感。
高額時給制アシュトレト
演劇企画 heart more need
コフレリオ 新宿シアター(東京都)
2018/08/01 (水) ~ 2018/08/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/08/01 (水) 19:00
まず、このタイトルを見て、舞台に対する興味は
「アシュトレトとは何か?」
「高額な仕事とは何なのか?」
そして、仕事内容が判ると「なぜそのような仕事が必要とされるのか」という順で起きてきます。→ネタバレ
その他で。
まずは初日に関わらず、舞台進行に淀みがなく、何と言っても誰一人噛むことがなかったこと、
舞台上で並行した芝居がなされるときでも、役者の移動が適確で混乱を招かなったことは、最近の経験から称賛したいと思います。
最近の小劇場の観劇では、噛み噛みは論外としても、ここ一発の決めのところで噛んだりすることでかなりストレス続きだったので。噛んでも、それが登場人物の動揺に見えたり、何の支障もなく進行することもあるので、やはり、観客が気になる「噛み」は、役者の集中力や習熟度の問題ではないかと思います。
今回はストーリーに興味を持って観たので、役者さんについては全くノーマークでした。(この劇団だから観る、この作家だから観る、この作品だから観る、と場合によって役者さんへの関心度は変わりますが)
そうしたら、開幕早々、いきなりピアスをしたイッチャッテいるお兄さんが登場。ちょっと派手でヤバ目な感じ。強いオーラで、どこかで見たよなあ、どこだっけと思っていると、チームまん〇の熊野隆宏さんでした。この方、本当にどこか危ない雰囲気持っています。
それと、長戸勝彦さん演じる佐世、おっとりした雰囲気とタイミングのよいツッコミ、しかし、元〇〇という設定で、怒らせたらこういう人が一番やばいのだろうな、という感じを醸し出していています。この劇のコメディリリーフと「闇」を、スマートに演じていて、評価大です。素晴らしい。
死と乙女
LAL STORY
サンモールスタジオ(東京都)
2018/07/26 (木) ~ 2018/08/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/28 (土) 19:00
座席1階C列9番
朴璐美さん目当てでしょうか、若い観客の方々が目立ちました。
でも、所々で笑い声が起きるのは、どうも若い方が多いようで、どうしてそこで笑うのかが、おじさんにはどうもよく判りません。主にセックスに関する(レイプやア〇ルなども含み)とおころが多いようでした。
しかし、この舞台のキーワードが「レイプ」であり、テーマがジェラルドとポーリアの性生活も含めたアンビバレントな夫婦関係の修復、ポーリアの心的回復の物語だとすれば、セックスに関する表現は、痛々しくこそあれ、とても笑える場面だとは思えないのですが、、、、(ちょっと、白けたので愚痴ですみません)
舞台は砂砂砂、、、舞台上から落ちてくる砂は下手に飾ってある砂時計と共に、時の経過の速さと重さを象徴しています。一方で、砂というのは、無形で捉えどころのない存在でもあります。砂の演出は、この舞台の肝ですね。
東京バビロン演劇祭2018
東京バビロン
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/08/26 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2018/08/12 (日) 11:00
Charmer Company ミュージカル「アンデッドウォー」
2年後に2時間半程度の大作ミュージカルになる予定の試作。
今回は1時間程度の作品なのだけれど、衣裳といい、ダンスといい、かなり練り込まれていて見応えがあります。ただ、これから膨らませるということで、物語は弱い。
何と言っても、狼人と吸血鬼の出自と、諍いに至った背景が描かれないと、吸血鬼の配下となるゾンビの悲しみや、狼人や吸血鬼の正義が理解できないので、これでは物語に感情移入しようがない。モンスターの差別化は必要だ、でないとゾンビにされる側の立ち位置が定まらない。まあここあたりは、2年後の楽しみかな。
ちなみに「ゾンビ」という言葉は、ロメロさんのお陰で、かなり色がついてしまった表現なので、ここは「グール」とかの表現の方が、物語の運びとしては無色でよいような気がします。
青鬼の褌を洗う女
metro
代々木能舞台(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
当日は、台風12号が西日本に上陸し、東日本でも大雨が予想される天気。
場所は、初めての代々木能舞台。15:30の回に向かう頃は、まだ小雨模様だった。
能舞台の下手には、渡り廊下とその前には、中庭がある。
舞台の進行に合わせて、雨は強まり、最後にはかなりの強雨となっていく。
雨は音と視界で舞台を席巻し、役者も観客も飲み込む勢いだ。
月船さんが抑揚を抑えたセリフ回しに、雨音が内面の高揚感を煽り立てる。
稀有な体験。人為を介さない舞台装置の偶発なる演出。
綾田さん、石見さんの存在が朧な陰影で覆いつくされ、月船さんの独白調の想いが、
雨音にきれいに沁み込んでいく。
よいものを観たな。
なんなら、あの猛暑日の日差しが差し込む日の舞台も観てみたかった。
その対比は、一生ものの舞台体験になったかもしれない。
「天守物語」〜夜叉ケ池編2018〜
椿組
花園神社(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/18 (水) 19:00
座席1階1列10番
恒例の花園神社の椿組公演。
今年は、泉鏡花の「天守物語」「夜叉が池」から題材をとった作品。
高取英氏が脚本と知って、あれどういう繋がりなのだろうと、ちょっと意外な感じ。
高取英氏の脚本の多くは、発想の自由度が高く、一気に書かれたような疾走感が楽しい。
ゆったりとしたテンポで始まりながら、突然ギアがトップに入ると言えばよいかな。
しかし、それが仇になることもあって、とにかく発想がぶっ飛んでたりするので、時として迷宮の闇に突入して、物語が破綻するようなことも珍しくない気がする。ご本人が演出を手掛けると、この傾向は舞台上で顕著に表れる。(月蝕歌劇団では、よくそう感じる)
しかし、今回は演出が花組芝居の加納幸和氏。天守物語なら、私の範疇とばかりに、奇想天外な物語に抑制を効かせて、その上で松本紀保が舞台上で引き締める。椿組の力量に問題はないので、かなり耽美で妖異な舞台なった。泉鏡花の舞台としては、成功の範疇じゃないかな。
毎年、終了後の打ち上げのビールが楽しみです。
マクガワン・トリロジー
シーエイティプロデュース
世田谷パブリックシアター(東京都)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/24 (火) 18:30
座席3階B列10番
素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい。歌舞伎でいうところの色悪。
これは、今年、片岡仁左衛門の「絵本合法衢」並みの悪の美学。
フライヤーの印象、そのままだったですねえ。
タイトル通り3部構成なんですけれど、元は1部だけの話だったそうです。
そこに、マクガワンの生い立ちや行動原理の背景を観たいというリクエストがあって、2部3部ができたということらしいのですが、時系列ではあるものの、話は順に静謐になり、2部で元恋人(かな)、そして3部でボケ始めた母親との2人芝居が続きます。
1部だけ観るとマクガワンは悪の魅力あふれる強烈な個性の人物ですが、
2部、3部と、人物が矮小化されることなく、一貫した行動原理とそこに潜む生い立ちが明確化されていき、2時間、全くダレません。特に2部、3部の連結は、マクガワンが生み出した悲劇の背景の奥深さを丁寧に描き込み秀逸です。
途中休憩時間除いて、2時間5分の予定が1時間55分で終わりました。愛知、兵庫の公演を経ての東京ですので、かなり演技もこなれたのでしょうね。
松坂桃李のオーラは半端ないですよ。いや、これがテレビで見る松坂桃李かと。
声がうまく通っていてテレビとは全く違って聞こえますし、行動範囲の広さや仕草の細かさが舞台を支配している感じ。
「ペール・ギュント」の浦井健治にも、同じような印象を受けましたが、松坂桃李の方が上手ですね。役への入りきり方と、物語の消化度でも、すごいです。
あまり積極的に観る気がなったし、チケットも高価だったので、一番後ろの席で構わないと思っていましたが、これだったらもうちょっと前の席をがんばればよかった。
9月から新国立劇場の演劇部門芸術監督になる小川絵梨子。次回は「スカイライト」か楽しみだな。
子守唄より深いところで
Tokyo Grow Fiction Company
RAFT(東京都)
2018/07/19 (木) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/20 (金) 19:30
自殺した男性(悟)と、それを帰宅後に発見した恋人の女性(真冬)。それ以降、真冬には自分しか見えない悟が現れて、、、果たして悟は幽霊なのか、幻影なのか。妹、空巣、精神科医、悟を見える女性、霊払いの僧侶、地縛霊とのそれぞれのエピソードを通して、1年後に2人が出した結論は、、、といったお話。
出だしを見ていると、死の真相は!とかいう少々陰鬱な物語を想像するのだけれど、主催者がパンフに書いているように普通の人の普通な物語。人を愛するとは、何なのか、というテーマをけして構えることなく淡々と描いた舞台は、とても温かい。愛することの切なさと、尊さを謙虚に見せてくれる。エピソードを紡ぐ、各登場人物(と霊)は、それぞれに愛する、ないし愛した人たちがいて、皆ちょっとした後悔をしている。その話を通した悟と真冬の最期決断が、大仰ではなく、自然でほのかに美しい。
草苅事件
しむじゃっく
高田馬場ラビネスト(東京都)
2018/07/21 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2018/07/21 (土) 15:00
全ての登場人物に、均等に見せ場を作ったため、やや冗長の感がある。
それと、初日ということで、セリフの噛みも多かったし。
ふくしまけんた氏の演じる平田のセリフ回しは、演技なのかな。聞き取りにくいのとセリフがやたらとつっかえるのは、人物描写なのかな。朴訥で、ちょっとおつむが足りない感じを出すための。ただ、彼が締めのキーマンだとすると、あまり効果的ではないような気がする。
「"懐疑"は踊る、ルンバのリズムで!」ああ、そのリズムなのね、というのはラストに判ります。
消えていくなら朝
新国立劇場
そぴあしんぐう(福岡県)
2018/08/12 (日) ~ 2018/08/12 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/16 (月) 14:00
座席1階B列10番
鈴木浩介、山中崇、高野志穂、吉野実紗、梅沢昌代、高橋長英
あるよなあ、こういう家族での集まりって。蓬莱さんに限らず、こんな小さな家族の修羅場って、誰でも経験したことがあると思う。これが蓬莱さん特有なのは、主人公・定男が作家であるということ。
「今度の新作は、この家族のありのままを描いてみようと思うんだ」と発言することで、大きな波風を立ててしまう。これは作家という存在の特殊性を、前面に押し出している発言で、家族の心が穏やかであるはずはない。それはそうで、どのように自らが描かれるか、気が気ではないはずだ。それも、「ありのまま」と言われているのだから。
高野長英の抑えた演技と、山中崇の起伏のある演技が好対照でよかったと思う。
城
劇団普通
新宿眼科画廊(東京都)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/17 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/14 (土) 14:30
横手慎太郎氏、劇団 普通のカフカ作品に再登場。
前回「変身」のグレゴール・ザムザと今作の測量士Kのイメージが、石黒さん自身の中でシンクロしたのかもしれない。
あ、だからシンクロ少女の横手氏なのか。と、今唐突に思った。でも、横手氏は、シンクロ少女とは全く趣が異なる、このような作品にとっても馴染む。
今回も「変身」同様に新宿眼科画廊なのだけれど、長細い2間の奥の間のみを横に使い、舞台となる長テーブルを前後に役者が挟むようにして進行する。
入口側の間は暗くしたままなので、舞台に登場する人物が誰なのか、長テーブルに来るまで判らない。この空間をもっと有効に使う手はなかったのかな、と思う。
カフカの作品は、作品を知る限りでは、世界の脆さというか、信頼したもの(関係性とか意思疎通とか)の崩壊感というか、それが招く絶望感が異様に際立つ。
この「城」も、測量士Kがあらゆる人々に引きづり回されながら、何ら本来の目的にたどり着けない様に、ただただ不安にかられるのみ。そして、物語の迷宮は一向に解消されることなくラストを迎える。「城」という未完の長編を、90分という時間で、どのように料理するのかと思ったのだけれど、この不安を生み出した点で、成功作と言いえるのかも。
THE SHOW MUST GO ON !!
劇団天動虫
ワーサルシアター(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/13 (金) 19:30
大変失礼なことを申し上げますので、先に謝ります。
岩井梨沙子さんが、こんなに素敵な役者さんだとは!!!
女形を女性が演じる場合、男性が強調する女らしさ、例えば艶っぽさ、繊細さ、しなやかさといったものが、男性に敢えて寄ろうとするがためにあざとくなろうかとも思うのだけれど、驚くくらいに女性的かつ中性的。女形ならではの、女性的な魅力満載でした。こうした、エキセントリックな役柄をこなすのは、並大抵の胆力ではないと思います。
配役は帆足さんが決められたのでしょうか。とても優れた選択だと思います。
それと井村タカオさんの團十郎、これ團 十郎だったのですね。当初は控えめかつ没個性的だった十郎が、次第に自我に目覚め、「團」という文字をもって役者の途に入り、
強烈な個性を発揮し始めるところなどは、まさに傾奇芝居。阿国から野郎歌舞伎への展開という流れもスムーズで見事。
タイトル通り「The SHOW must GO on」な舞台。