その頬、熱線に焼かれ 公演情報 On7「その頬、熱線に焼かれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2018/08/12 (日) 14:00

    座席1階B列12番

    on7第2回公演の再演、劇場をこまばアゴラからシアターウェストに移して。
    on7は、第3回公演の「ま○この話~あるいはヴァギナ・モノローグス~」から観劇を始め、正式公演ということでは、今回は3回目となる。

    第2回公演の口コミが絶賛の嵐だったので、遅れてきた者としては観れなかったことが悔しくて。再演ということを抜きしても、実験性に溢れた企画、芝居を追求するon7と、次々と称賛をを獲得する劇団チョコレートケーキの脚本・演出コンビのコラボとなれば、観に行かないことの方が不思議だろう。ましてや、この2つのユニットに、一度ならずも魅了されてしまった者としては、見ないこと自体があり得ないこと。

    今回は終戦記念日を挟んだ公演日程で、時宜も得ている。こうしたテーマ性の高い芝居には、旬であることも重要だと思う。

    さて、当日は東京の千秋楽、客席も満員でテレビ録画も入っているらしく、カーテンコールでは大きな拍手と、役者の皆さんも感極まって落涙している方もいる。
    なのだけれど、どうもしっくりこない。悪いというわけではないのだけれど、期待を超えていないのだ。失礼を怖れずに言うと、「劇団民藝」の戦時・戦中芝居を観ているような感じなのだ。

    まず、on7側から言わせてもらうと、「ま○この話~あるいはヴァギナ・モノローグス~」や「かさぶた」でみられたような、軽快で緻密、即興性に溢れながら、常に解体と構築を繰り返すような高い挑発度がないのである。
    戦争の悲劇を通して人生の儚さや苦しさを描き、予定調和的に結末に向かうような舞台。そこに待っているのは諦観と僅かな希望だ。そうした芝居が悪いのではない。
    ただ、今のon7がやるべき芝居なのかと思ってしまう。

    劇団チョコレートケーキ側から言うと、いつもなら史実や歴史的現象を、自らの解釈と理解に首根っこを引っ張るように持ってくる古川脚本が、今回は自ら寄り添うようにして書かれており、一向にダイナミズムを感じない。

    この物語では、原爆女子と呼ばれた7人(全体では25人)が、それぞれ異なる境遇と想いをぶつけ合う。ともすれば第三者からは、ステレオタイプに理解されている存在は、あくまで1人1人の個人であることが強調され、会話を通じて寛容と癒しと平穏を獲得していく物語である。しかし、舞台からはそこに至るまでの心の機微や、それぞれの気付き、驚きが感じられなかった。

    この理由は、会場のパンフレットを見たときに思ったのだけれど、役者も演出側も、取材や理解を通り越して、再演に当たり当時からご存命中の方々に寄り添いすぎてしまったからではないだろうか。掲載されている写真には、当時を知る関係者の方々と肩を並べるon7の皆さんの写真が何枚も掲載されている。
    こうした機会を得て、新たな発見や親和性を得たことは想像に難たくない。

    しかし、そうして生じる気持ちの高揚は、ともすると舞台上にのみ熱量を持たせ、それが観客席に拡散していくことを妨げることにもなりかねない。役者相互に気持ちが行き過ぎてしまうのだと思う。

    脚本や演出法に、前回公演とどういう違いがったのかは判らない。だけれど、もしかしたら、古川氏や日澤氏にも、前回には突き放せて描けたことが、登場人物1人1人に強い親和性が生じたことで、描けなくなってはいなかったろうか。

    そう考えると、やはり前回の公演を観られなかったことが、一層悔しく思われてくる。



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    2018/08/14 14:00

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