満足度★★★★
鑑賞日2018/07/14 (土) 14:30
横手慎太郎氏、劇団 普通のカフカ作品に再登場。
前回「変身」のグレゴール・ザムザと今作の測量士Kのイメージが、石黒さん自身の中でシンクロしたのかもしれない。
あ、だからシンクロ少女の横手氏なのか。と、今唐突に思った。でも、横手氏は、シンクロ少女とは全く趣が異なる、このような作品にとっても馴染む。
今回も「変身」同様に新宿眼科画廊なのだけれど、長細い2間の奥の間のみを横に使い、舞台となる長テーブルを前後に役者が挟むようにして進行する。
入口側の間は暗くしたままなので、舞台に登場する人物が誰なのか、長テーブルに来るまで判らない。この空間をもっと有効に使う手はなかったのかな、と思う。
カフカの作品は、作品を知る限りでは、世界の脆さというか、信頼したもの(関係性とか意思疎通とか)の崩壊感というか、それが招く絶望感が異様に際立つ。
この「城」も、測量士Kがあらゆる人々に引きづり回されながら、何ら本来の目的にたどり着けない様に、ただただ不安にかられるのみ。そして、物語の迷宮は一向に解消されることなくラストを迎える。「城」という未完の長編を、90分という時間で、どのように料理するのかと思ったのだけれど、この不安を生み出した点で、成功作と言いえるのかも。