MaTsuの観てきた!クチコミ一覧

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アニー【4月25日(日)以降の東京・新国立劇場公演中止/松本公演中止】

アニー【4月25日(日)以降の東京・新国立劇場公演中止/松本公演中止】

日本テレビ

東急シアターオーブ(東京都)

2021/08/14 (土) ~ 2021/08/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2021/08/14 (土)

東急シアターオーブにてミュージカル『アニー 2021』を観劇。
毎年当たり前のように開催され、恒例行事のように現地で観劇してきた大好きなミュージカル作品。昨年初めて開催中止となり、今春も開幕初日で打ち切りとなっていただけに、今回東急シアターオーブという初めての会場に「Overture」が流れ、幕が上がり、孤児達のシーンを観ただけで、これまでにも増して深い感動を覚えました。ようやく出会えた2020年選抜のアニー達。いやー、本当に良かった。それだけで★5つを付けたいくらいです。
山田和也氏の演出になってから、ミュージカルナンバーの詞が変化しただけでなく、全体的に内容が凝縮され、コミカルに描くシーンも増えるなどだいぶ変化したなと感じていましたが、コロナ禍の中の公演となる2021年版は途中休憩なしの1幕超凝縮版。オーケストラの生演奏やダンスキッズの登場もなく、スピーディーに突き抜けるような構成でした。
このような構成の場合、本来であれば若干物足りなさを感じるような気もしますが、そこはさすがのアニー。キャスト一人一人の演技力の高さや目まぐるしく変わる舞台セットに圧倒され、非常に内容の濃い素晴らしい時間を提供していただいたと感じました。当然寂しさはあるものの、新しい様式のアニーもこれはこれで特別感があって良き。また、パンフレットも当初のスケジュールから変更が生じたこともあり、幻の春公演?の舞台スナップが加えられた特別仕様になっており、新たな喜びがありました。
そして久しぶりに味わったステージと客席が一体となるカーテンコールの感動。涙腺崩壊が止まらず、周りのお客さんもいつもにも増して涙を流しながら拍手している方が多いように感じました。何せ2年分の想いが詰まったアニーですから、歴代の中でも特に印象深い公演になったのではないかと思います。これだけ多くの観衆に感動を与えることが出来る演劇はやはりなくてはならない存在だと改めて感じます。先が見えないコロナ問題も、この作品と同じように「♪朝がくれば いいことがある あしたは幸せ」と信じて前向きに生きていきたい。1日も早い終息を願いたいです。

初恋2020

初恋2020

日穏-bion-

シアター風姿花伝(東京都)

2020/11/05 (木) ~ 2020/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

日穏-bion-『初恋2020』を観にシアター風姿花伝へ。
今年2月以来9ヶ月ぶりの観劇。久しく忘れていた劇場でお芝居を観るという行為。。スケジュール帳を見返すと3月から7月まで観劇予定が入っており、どの作品も楽しみにしていましたが、今年は予定が大幅に狂ってしまいました。今更ながら本当にコロナウイルスが憎いです。公演中止となったものもいつか必ず同じキャストでリスタートが切れる日が来ることを願って止みません。。
前置きが長くなりましたが、9ヶ月ぶりの観劇再開作品は日穏-bion-さんの『初恋2020』。2014年に存在を知り、心温まる上質な昭和テイストのような作風にハマり、以来連続して拝見しているお気に入りの団体さんの一つですが、今回の作品もやはり期待を裏切らない素晴らしい内容でした。
これまでの長編1本とは異なり、4本の短編からなるオムニバスのような構成であったものの、バラバラの4本ではなく、絶妙に混じり合うストーリー性のある展開で、その仕掛けに気付いたときは思わず「なるほど!」と唸りたくなりました。決して無理のない自然な会話から繰り広げられるユニークなやり取りもお見事。笑えるシーンも多くありながらも、最後は感動的な結末があり、改めて上質な作品を作られている団体さんだなと感じました。そしてやはりDVDや配信では十分に味わえない生のお芝居の臨場感。今までは当たり前であった感覚も、9ヶ月のブランクがあったことで余計に感動を覚えました。
入場時に検温があったり、1時間半程度の作品でも途中に換気中断を入れたり、折り込みや劇場に置かれているフライヤーが極端に少なかったりと、まだまだコロナ禍にあることを痛感させられる部分もありましたが、ひとまず観劇が再開出来たことを喜びたいと思います。日穏-bion-さんの次回公演は赤坂での新作とのこと。今から楽しみです。

見よ、飛行機の高く飛べるを 

見よ、飛行機の高く飛べるを 

日本工学院専門学校 声優・演劇科

片柳記念ホール(東京都)

2020/02/11 (火) ~ 2020/02/13 (木)公演終了

満足度★★★★

日本工学院専門学校 片柳記念ホールにて『見よ、飛行機の高く飛べるを』を観劇。
以前から一度観てみたかった演目。CoRiChでたまたま公演情報を得ることが出来たため、微かに聞いたことがある程度だった日本工学院専門学校さんのホールに初めて足を運んでみることに。「声優・演劇科43期/演劇スタッフ科35期 卒業公演」という位置付けの3日間4ステージのみの無料公演。確かに「観たい!」と思って観劇を決めた公演ではあるものの、「学生さん達の公演だし…」、「無料公演だし…」と正直そこまでの期待はしていなかったのですが(失礼)、良い意味で期待を裏切るとても素晴らしい内容で驚きました。変な先入観を持ってはいけない。恐れ入りました。。
明治44年、小学校の教師を目指す女子師範学校が舞台の物語。現代でこそ男女平等の思想が定着してきましたが、当時の女性が置かれた立場はとても厳しいものであり、この作品においてもその情景が随所に垣間見れ何とも切ない印象。ただ、そのような環境の中、自らの強い信念を貫き新たな時代に向かって前進しようとしている女性の姿が描かれており、非常に力強くカッコ良く見えました。人の生き方など何が正解で何が不正解なのかはわからないというか、それを判断出来るのは誰もいないのではないかと感じます。結局は本人次第であり、本人が良いと思うなら良いのではないかと思うので、少しでも自身にとって満足、納得のいく生き方をすること、それに向かってブレずに進化を続けていくための努力を怠らないことがとても大事であると改めて感じました。これはいつの時代であっても共通していることだと思います。“十人十色”、“みんなちがってみんないい”、“日進月歩”などの言葉が多くの人の心に刺さり、共感を得ているのは、結局はそういうことなのかなと。
ストーリー的にも見応えはありましたが、横長のステージ形状を生かした立派な舞台セット、わざと校舎の使い込み感を見せているような窓、壁の細かな色味、そして演者さんの役に成りきった気持ちの入った演技など、どれを取ってもクオリティの高さを感じました。フルカラーの当日パンフレットも嬉しいサービス。皆さん良かったですが、中でも主演の板倉由香さん、関谷優風音さんは目立つ存在でした。小島美波さん演じる少し腰の曲がった賄い婦、鈴木沙霧さん演じる先生もなかなかの好演ぶり、校長先生役の土池悠介さんは良声が印象的だと感じました。このクオリティならまた他の作品も拝見してみたいところです。

エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

東京芸術劇場/新潟市民芸術文化会館

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/05 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/02 (日)

東京芸術劇場にて俳優・佐藤隆太さんの一人芝居『エブリ・ブリリアント・シング』を観劇。
これまでの「演劇」という概念を覆す非常に斬新な手法を用いた作品。メインとなるステージを劇場の中央に持ってきてその四方を観客が固めるという配置は何度か観たことがありますが、東京芸術劇場では初めて観ました。普段ステージがある位置に客席があってとても不思議な感覚。この配置だけでも斬新でしたが、この作品の凄いところは観客参加型、そしてその参加方法かと思います。開演前から会場に佐藤隆太さんが登場し、観客とコミュニケーションを取りながら小さなカードを配布している光景は何とも異様な雰囲気であり、一体何が始まるのか、どんな作品なのか、幕が上がる前からとても興味深く、独特の高揚感がありました。そして実際に幕が上がったらもう完全にブリリアントな世界。佐藤隆太さんが持つ優しく温かな雰囲気と相まって、終始ワクワクが止まらない今まで味わったことがないような興奮がありました。
元々は2013年のイギリスが発祥で、翌年から世界中で上演されている人気作品の日本初公演。人間生きていれば苦難にぶち当たることは多々ありますが、決してそれだけではなく、大きかれ小さかれ素敵なモノや体験もあります。この作品はそんな素敵なこと、ものを探し続けているある男性の物語です。海外戯曲の翻訳版ということもあり、やや日本離れした価値観や印象を受ける部分はあるものの、ベースとなる物語のストーリーはとても魅力的なお話で、観ていて活力が湧いてくるような感覚がありました。また、観客にフレーズを読んでもらったり役に成り切ってもらったりする独特な作品なので、まさに1回1回の重みがあるというか、まさにその回だけの限定感があるお芝居だと感じました。だからこそ本当は全ての回を観たいというのが本音です。一人芝居だけど会場全体で作り上げているお芝居。全然知らない人達の集まりでもこれほどまでに妙な一体感が生まれたのは不思議だなと感じました。観客の立場であってもカードを受け取ったら誰もが主役になれるような作品。これは新感覚の演劇。面白かったです。佐藤隆太さんの演じ方、エンターテイメント性もさすがだなと感じました。

沖縄世 うちなーゆ

沖縄世 うちなーゆ

トム・プロジェクト

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2020/01/25 (土) ~ 2020/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/01/25 (土)

東京芸術劇場にてトム・プロジェクト『沖縄世 うちなーゆ』を観劇。
2020年の観劇初めはトム・プロジェクトさん。今回の作品は戦後27年の1972年、沖縄が日本復帰する直前をメインとしたお話。フィクションではあるものの、主人公のモデルとなった方は、沖縄人民党から共産党に入り、那覇市長も務められた〈瀬長亀次郎〉という実在の国家議員であり、その方の奮闘ぶりや生き様をそのまま描いたような作風でとてもリアリティーがある印象。とはいえ、自分自身が生まれる前に起きた出来事ということもあり、正直あまり知識を持ち合わせていなかった中での観劇であったため、作品を通してこの方の知識を深めていった印象です。トム・プロジェクトさんの作品はこのような社会派の作品が多いので、観劇の度に新たな学びを得られたような感覚になるのも魅力の一つであるように感じます。やはり生きた教科書的な存在。毎回勉強になります。
「戦争」と聞くと個人的には原子爆弾が投下された広島や長崎を真っ先にイメージしがちで、その爪痕は計り知れないということは当然理解していましたが、沖縄にとっての戦争はまた違った問題があり、これまた根深い問題だということに改めて気付かされました。戦争の重み、というか敗戦の重みというか…。戦後75年が経った現代でも、沖縄は米軍基地の問題が常にあり、まだまだ課題は山積。沖縄返還に向けて闘った今回の作品のモデルとなった方の奮闘ぶりや歴史、背景は理解出来ましたが、だからと言って基地問題が何一つ解決する訳ではないのがもどかしい気もします。でもこの作品を通して、今まで知らなかった事実を知ることが出来た点、基地問題は決して遠い話ではないということを感じられた点は少なからずプラスの要素だったかなと感じます(作品の中で出てくる「沖縄の中に基地があるんじゃなくて、基地の中に沖縄がある」みたいな台詞はなかなか印象的だったなー)。瀬長亀次郎氏はもちろん、沖縄人全員が望む社会に近付くことを願うばかりです。
トム・プロジェクトさんの作品は比較的お堅い内容であっても程好い笑いを織り混ぜて上手くバランスを取っている印象がありますが、今回はその印象はあまり受けず、終始重い感じがしました。

スクルージ ~クリスマス・キャロル~

スクルージ ~クリスマス・キャロル~

ホリプロ

日生劇場(東京都)

2019/12/08 (日) ~ 2019/12/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/12/08 (日)

日生劇場にてホリプロ主催ミュージカル『スクルージ ~クリスマス・キャロル~』を観劇。
一度観てみたかった市村正親さん、武田真治さんら出演のミュージカル。1994年の初演から何度も再演がなされている名作ミュージカルでしたが、個人的にはなかなか観る機会に恵まれず今回が初めての観劇でした。この日が初日ということもあり、1300人以上収容の日生劇場の入口に「満員御礼」が掲示されていたことにまず驚き。あの光景を見て「やはり何度も繰り返し再演されている人気演目だけあるなぁ」と開演前の高揚が一段と増したような気がします。
そして本編。舞台は19世紀末のロンドン。讃美歌が流れるクリスマス・イヴの街の情景を描いたシーンから始まりましたが、このオープニングのシーンからステージ上に創られた街の情景、演者のパフォーマンスのいきなり圧倒されました。決して広くない空間を上手く使った小劇場での作品も良いけど、大きな場面転換が出来る大規模な可動式舞台装置を伴う作品もやはりこれはこれで良いと改めて感じさせられました。とにかくその舞台セットが造り出す迫力あるステージに圧倒させられました。ステージ上を人が飛ぶシーンは同じホリプロさんの『メリー・ポピンズ』や劇団四季さんの作品などでも拝見したことがありますが、数多くある印象に残るシーンの中でも特に強いインパクトを残すような気がします。この辺りは小劇場ではあまり体感出来ない興奮と感動かなと思います。
ケチで意地悪なクリスマス嫌いのスクルージが、クリスマスの精霊達と出会い、過去から未来への旅ではないですが、自分自身の生き様を見つめ直すファンタジー要素が含まれたストーリーは、観る者を惹き付ける場面が幾つも盛り込まれた素敵な作品だと感じました。人間ある程度歳を重ねてくると、ふとそれまでの生き方やこれからの生き方について考える瞬間があるような気がします。今回の作品はスクルージの生き方を描いたものではあるものの、自分自身にも重ね合わせ、改めて生き方について考えさせられたような感覚にもなりましたし、同時に、誰もが限られた人生なのだから人それぞれ自身が納得出来る且ついつか終わりが来る時に少しでも後悔の少ない人生を歩んでいけたら良いなと感じた部分もありました。スクルージ役の市村さんが実にハマり役で素晴らしかったです。武田真治さんはテレビなどで見せる筋肉キャラとはまた違った役どころを好演。子役達も絶妙な心情をよく表現されていたと感じました。クリスマスを迎えるこれからの時期にピッタリの笑って泣ける良質なミュージカル。観に行けて良かったです。また観たいなー。カーテンコールでの観客のスタンディングオベーションも素晴らしい一体感でした。

昭和芸能舎版フラガール2019

昭和芸能舎版フラガール2019

昭和芸能舎

赤坂RED/THEATER(東京都)

2019/11/26 (火) ~ 2019/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/11/27 (水)

赤坂RED/THEATERにて昭和芸能舎『フラガール2019』を観劇。
10月に日本青年館ホールで拝見した同作品の昭和芸能舎版。この作品は原作が優れているので、映画版、日本青年館ホール版、そして今回の昭和芸能舎版、と何度拝見してもそれぞれに感動があり、観終わった後の余韻も凄いと感じます。今回の昭和芸能舎版もとてもエネルギッシュで見応えのある120分でした。
作品は1965年の福島県いわき市が舞台。炭鉱の町として栄えてきたものの、時代の波には勝てず、ハワイアンの町として変貌を遂げるまでの過程が描かれた内容で、もちろんその中にはこの地に住む様々な人々の葛藤、苦悩、努力、力強さなどが絶妙なタッチで盛り込まれていて、それぞれの立場を想うと何とも言えない複雑な心境に立たされます。映画版も良かったですが、やはり目の前のステージで気持ちのこもったお芝居を見せられると、映画版以上に複雑な気持ちに立たされたように感じました。そして様々な問題に直面しながらも力強く乗り越え、プロのダンサーとしてフラダンスを踊るシーンまで辿り着くと自然と涙腺が緩みました。こういう歴史を経て今のハワイアンズがあるのだなとしみじみ。クライマックスでのフラダンス披露シーンは圧巻の一言。舞台ならではの臨場感がとにかく凄く、さらにダンサー各々の表情がキラキラ輝いていて素晴らしい。観るものを虜にする、というのはこういうことを指すのだなぁと感じた圧倒的なパフォーマンスでした。演者さんのダンス稽古の大変さを考えると決して再演を繰り返して欲しいとも言い難い部分もありますが、やはりこの作品は舞台化されることで一段と輝きを増すように感じたので、数年に一度でもまた再演の機会があれば良いなと思いました。
個人的に昭和芸能舎さんの作品観劇は2017年の『たまべん』以来2年ぶり2回目でした。まだどのような個性を持った劇団さんなのかイマイチよく把握していませんが、今回の作品に限っては若干コメディー要素を入れすぎた感があったのが残念。。せっかく良いストーリーの作品なのに、随所に盛り込まれた強引に笑いを誘うようなシーンで感動が少し薄れてしまったような印象を受けました。演者さんでは先生役の稲村梓さんが見た目の印象からなのか、何となく強気のキャラクターによく合っていたように感じました。元々都会的な先生が物語の最後には福島弁を使っているシーンも良かったです。公演パンフレットでは福島県出身の鈴木万里絵さんの「来らっせ、ふくしま!」のコメントが目に留まりました。確かに実際のフラガールを観がてら福島県を訪れてみたいところ。ベテランの男性陣たちも炭鉱を守り抜くべくハワイアン計画に猛反対する様をよく表現されていたと感じましたし、最後にはハワイアンたちの努力を認め、新たな時代の幕開けを感じられたのも良かったです。

シェアハウスカムカム

シェアハウスカムカム

劇団娯楽天国

ザ・ポケット(東京都)

2019/11/20 (水) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/11/22 (金)

中野ザ・ポケットにて劇団娯楽天国『シェアハウスカムカム』を観劇。
元喫茶店の店舗を改装して造られたシェアハウスに住む人々のドラマ。フライヤーが目に留まった初見の劇団さんでしたが、まず舞台セットの凝り方が凄い。元喫茶店の名残を残しつつも、シェアハウスとして機能している古びたちょっと変わった造りの建物を細かい部分までよく凝られて作られており、素晴らしいと感じました。そしてそれだけ立派なセットの中で繰り広げられるシェアハウス住人達のドタバタ劇がこれまた面白い。そもそも登場人物の数が多い上、そのキャラクターが皆濃い。そして決してその中の誰かが主役なのではなく、一人一人にスポットライトが向けられ、それぞれのエピソードが散りばめられていているようななかなか複雑な構成。一見頭をフル回転させなければ物語の世界についていけないようにも感じますが、一つ一つのエピソードは分かりやすく、目まぐるしく展開するストーリーであるものの、その世界から逸脱することなく最後まで観られた印象です。
ただ、一つ一つの展開は面白いものの、上演時間150分という長めの作品のストーリーとしては、伏線回収が弱いというか、リンク感が低いというか、振り返って考えたときに「あのエピソードは何のために必要だったのだろう?」「あの役必要?」などと感じる部分も幾つかあり、イマイチ何をテーマとした作品なのか理解しにくいようにも思えました。空襲のエピソード、なりすましで入れ替わって住む人々のエピソード、結婚を申し込んだ男性のエピソードなど、その様々な内容が複雑に絡み合って、一つの作品としての奥深さがあれば尚良かったと感じました(当然何かメッセージが込められていた作品なのでしょうが、個人的にはこの作品の持つメッセージ、伝えたいことは100%理解出来なかった印象です)。なかなか独特なカーテンコールを含め少々詰め込みすぎの内容。見応えはありましたが、個人的にはもう少しテーマや登場人物を絞り込んで、短縮した作品でも良いのではないかと感じました。フルカラーの当日パンフレットは良かったです。

流れ星

流れ星

タクフェス

サンシャイン劇場(東京都)

2019/11/13 (水) ~ 2019/11/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/13 (水)

サンシャイン劇場にてタクフェス『流れ星』を観劇。
待望の10年ぶりの再演。前身の東京セレソンDX時代の作品の中でも特に好きな作品で、再演を心待ちにしていました。当時は新宿シアターサンモールでの公演であったと記憶していますが、“笑って泣ける”作品に定評がある主宰・宅間孝行さんの作品の中でも、この『流れ星』は特に“笑って泣ける”をモロに体感出来る名作中の名作であると感じます。今回も終始楽しませて頂きました。
物語の舞台は1970年の東京。自分自身はまだ生まれていない時代ですが、当時の家電や流行が舞台上に散りばめられていて、まずはそれを見るだけでもとても楽しい。タクフェスは舞台セットに対する力の入れ様が、他の団体よりも常にワンランク上をいっているように感じるくらい、毎回お見事過ぎる芸術的な舞台セットを組まれている印象を受けます。そしてストーリーは文句の付けようがないくらい素晴らしい。ちょこちょこと登場する細かい小ネタは、後にとんでもない伏線回収に繋がったりするから驚き。今回もその仕掛けが幾つもあり、やはり『流れ星』は改めて観ても感動するし、本当にお見事な作品だなと再認識しました。
熟年離婚を考えていたくらい冷めきっていた夫婦に突然訪れた夫の死。しかし、夫が内に秘めていたのは妻に対する純愛。妻がその愛情に気がつくのは夫の死後。何とも切ない背景がある内容の作品ですが、徐々に明らかになっていく真相の追求に、観る側は完全に物語の中に引き込まれ、作品が描く夫婦愛の奥深さに魅了されました。生きているからこそ、一緒に暮らしているからこそ不満を抱いてしまうことは多々あると思いますが、その時はその感情ばかりが先行してしまい、小さな感謝は忘れがち。しかしその感謝を伝えられるのは、相手が生きているからこそ。今回の作品は、そんな思わず忘れがちな実はとても大切なことを伝えてくれる非常に心温まるストーリー。作品の描き方がとにかくユニークで、的確で、観る側の心を大きく揺さぶる。何回拝見しても宅間孝行さんの創る作品は何と素晴らしいのだろうと感動が止まりません。個人的には前回出演されていたうつみ宮土理さん、山田まりやさんのイメージが強く残る作品でもありますが、今回の田中美佐子さん、飯豊まりえさんも前回のお2人に負けないくらいそれぞれの個性を生かして新たな世界観を出されていたと感じます。
そしてタクフェスは舞台が終わってからもパンフレットを熟読する楽しみがあるのも素晴らしい。こんなに見応えのある充実したパンフレットを作られるのは日本でタクフェスが一番だと思います。著者の越村友一さんいつもありがとうございます。作品の見応えはもちろん、常に観客を楽しませようとして下さっている演者さん、スタッフさんなど、とにかく全てがエンターテイメントの一級品。長く続いて欲しいカンパニーだと思います。

かなわない夢ガール

かなわない夢ガール

タイマン

シアター風姿花伝(東京都)

2019/11/14 (木) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/15 (金)

シアター風姿花伝にてタイマン『かなわない夢ガール』を観劇。
折り込みチラシだけを頼りに観劇を決めた初見の団体さん。結果、大当たり。これだから折り込みのチェックは欠かせない、とつくづく感じさせられた素晴らしい公演をされている団体さんでした。存在を知らないのはホント損でしかありません。
大きな夢を持つとある女性の半生を描いた作品。これだけを見ればよくありがちな内容に思えるものの、その大きな夢というのが何ともまぁ独創的でスケールがハンパない。実際にはまずあり得ない、実現不可能な夢であるのにも関わらず、あまり違和感なくその夢を実現した様が描かれているのが素晴らしかったです。何というか、この作品を観たら、どんな夢でも強い想いを持ち続けていたら実現出来るのではないかと、思わず錯覚してしまうような感覚を抱きました。老若男女誰もが楽しめる前向きな気持ちになれる作品だと感じました。
ストーリーの独創性はもちろんですが、そもそも展開のテンポが非常に優れており、主人公女性の小学生時代から波乱万丈の経験を経て、自身の娘の結婚を見届けるまでの人生を、決して慌ただしくではなく、一つ一つの出来事を上手く切り取りながら見せ場を作りながら進行していく展開はとても好印象でした。さらに、随所に登場する小道具の大半がダンボールで作られたオリジナルの品であること、その一つ一つのクオリティーが実に高いことに驚きました。また、舞台セットは比較的簡素なものであるにも関わらず、空間の使い方、効果音の使い方などが巧く、不思議とその世界が浮かび上がって見えたのも凄いと感じました。演者さんの一人で何役もこなす器用さ、表現力の高さもお見事。特に主演の笠井里美さんは小学生役から母役まで幅広い役回りを圧倒的な演技力で好演。とにかく表情豊かで圧巻の演技でした。阿久澤菜々さんはどこかで拝見したことがあるような、と思って振り返ってみたら、2016年の劇団歪[いびつ]さんの公演で好演されていた役者さん。やはりお芝居上手い。男性では齋藤陽介さん、森田祐吏さんのタイマンメンバー?2人の存在感が素晴らしい。何という芸達者たちの集まりなのでしょう。日替わりゲストを迎えての熱量の高い即興芝居も見応えありました。同時進行していた異なる2つの世界が最後に一つに結び付く仕掛けの秀逸さもあっぱれ。娘役の橘花梨さんの少しミステリアスに映る表情も相まって、最後に物語が完結したときは感動すら覚えました。ストーリー、独創性、テンポ、展開力、音響、小道具、演技力、アドリブなどどれを取ってもとても満足度の高い作品でした。観に行って良かったです。他の作品も拝見してみたいところ。

shoes storys

shoes storys

演劇企画アクタージュ

北池袋 新生館シアター(東京都)

2019/11/14 (木) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/11/14 (木)

北池袋・新生館シアターにて演劇企画アクタージュ『shoes storys』を観劇。
今回は童話に登場する靴を取り扱っているという不思議な靴屋さんと、そんな靴屋を見つけてしまったとあるデパート従業員達のお話。童話の靴と聞いて真っ先に思い浮かぶのはやはり「シンデレラ」のガラスの靴ですが、今回の作品はその「シンデレラ」ストーリーだけでなく、他の童話のストーリーが登場するのが面白かったです。先月に拝見したミュージカル団体・ヒラオカンパニーさんの作品も様々な童話の登場人物達が一つの舞台上に集結する場面があり、その発想力の豊かさにあっぱれでしたが、今回のアクタージュさんも同じような感情を抱きました。誰もが知る有名童話の掛け合わせ。うん、これは面白い!今回は「シンデレラ」×「○○○」のストーリーが軸となる組み合わせでしたが、これ他の作品でやってみてもまた思わぬ新展開が生まれそうでなかなか興味深いなと感じました。ちなみに今回の作品において、後者の「○○○」の靴の正体が明らかになるのは、まさに物語のラストシーン。そこまでは何の靴であるか基本的には伏せられているので、観る側にとっても色々な可能性を探りながら楽しむことが出来、一体どんな展開になっていくのだろうと終始ワクワク感が止まらなかったような気がします。登場人物一人一人のキャラ設定も実に個性的、且つ物語の進行に深く絡んでくるものであり、描き方が上手いなと感じました。
アクタージュさんの作品観劇は今年2月の『福寿庵』以来9ヶ月ぶり4作品目でしたが、毎回感じるのは作品の面白さと空間の温かみ、さらに決して大規模な装置ではないものの、作品の背景が見えやすい的確な舞台セット(前作の蕎麦屋のセット、今作のデパートの従業員控室のセットともに雰囲気出てました)が作り出すリアル感です。今回は内容自体は非現実的なお話ではありましたが、何となく日常的な光景にも見えるような不思議さがありました。強いて挙げるなら、靴屋さんの登場シーンはスモークを用いたり特殊な照明にしたりなど、もっと謎めいた変化が欲しかったかなと感じました。とは言え、靴屋を演じられた菅政美さんの独特な語り口はなかなか味がありましたし、世界観に引き込まれました。思ったことが言えないけど素敵な夢を持っている役を演じられた未来さんも表情が絶妙で好演であったと感じました。主宰・大関雄一さんは何故オネェ役?と思わず笑ってしまいましたが、物語進行上、オネェ言葉が重要なポイントであることを知って納得。細かい部分までよく出来た作品だと感じました。

風を打つ

風を打つ

トム・プロジェクト

俳優座劇場(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/11/08 (金)

俳優座劇場にてトム・プロジェクト『風を打つ』を観劇。
1993年の熊本・水俣を舞台とした家族のお話。3年前に拝見した同団体の『静かな海へ―MINAMATA―』で、それまであまり詳しい知識を持ち合わせていなかった水俣病という公害問題について様々な学びを得られた中で、今回はそんな水俣に住むとある家族の物語ということもあり、個人的にとても興味のあるテーマの作品でした。
水俣病は高度経済成長期にあった1956年に熊本県と新潟県において発生・発見が認められた公害ですが、今回の作品はその公害発見から37年後の1993年を舞台としたもの。その間に公害自体は改善が図れたものの、40年近い月日が流れているのにも関わらず、尚様々な問題を抱え、水俣地区の人々にのし掛かっている様子が随所に垣間見れて、やはりこの手の大きな公害問題は一度起きるとその完全解決にはとてつもない年月、そこに暮らす人々の苦悩・努力などが伴うという何とも言えない重みのようなものを痛感させられました。しかし、この作品はそのような社会派の内容であると同時に、決してその悲観的・マイナス的な要素だけでなく、むしろ水俣公害を乗り越え、バラバラになりかけていた家族の希望溢れる再生の物語であったようにも感じます。クライマックスシーンでの家族一丸となっての太鼓生演奏は何ともまぁ素晴らしいの一言でした。家族の愛情、家族の素晴らしさを感じました。ストーリー展開上でも当然感動のラストシーンではありますが、太川陽介さんをはじめとする男優3名の熱量が凄まじかったです。前方中央の座席だったこともあり、演者さんの全身を使った太鼓演奏に圧倒されました。とてもカッコ良かったですし、これはやはり劇場で観劇しないと味わえない興奮だなと感じました。
トム・プロジェクトさんの作品観劇は今年2月の『軍人と兵隊』以来9ヶ月ぶりでしたが、毎度のことながら自分自身の知識アップになるとともに、心地よい笑いシーンも盛り込みながらテーマに沿って丁寧に描かれている印象を受けるので見応えがあるし、とにかく色々と考えさせられます。『萩咲く頃に』『にっぽん男女騒乱記』で拝見した音無美紀子さんは今回は肝っ玉母さんのような役。相変わらず好演が印象的だと感じました。また、個人的にテレビの旅番組のイメージが強い太川陽介さんのお芝居は初めて拝見させて頂きましたが、何となく普段から印象の強い笑顔の中に、九州男児の役らしい強さのようなものも感じました。他の3名の演者さん含め熊本弁も違和感なく使いこなされていたと思います。やはり今回もトム・プロジェクトさんの作品は“当たり”でした。

死に顔ピース

死に顔ピース

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2019/10/24 (木) ~ 2019/11/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/31 (木)

中野ザ・ポケットにてワンツーワークス『死に顔ピース』を観劇。
遅かれ早かれ誰にでも訪れる《死》。人間の最期の迎え方、過ごし方について、医師・看護師・患者・その家族など様々な立場の視点から鋭く斬り込んだ、とても考えさせられる内容でした。国民の2人に1人がガンになると言われている現代社会において、決して他人事では片付けられない問題だと思いますが、今まで漠然としか考えていなかったものが、今回の作品を拝見したことで、一気に身近になったというか、何となく一つヒントを得たしたような感覚になっています。とはいえ、当初、物語の中に登場するガン患者と家族が、死を受け入れて笑って過ごしている部分に違和を感じましたし、あまりにも大袈裟過ぎないかとも思いましたが、この日のアフタートークで「実際の現場のケースに似ている部分がある」との話を聞き、その違和感はスーっと和らいだような気がします。この考え方は今まであまり持ち合わせていなかったので、発見になったと同時にとても勉強になりました。もちろん人の生き方はそれぞれですし、何が正解で何が不正解なんていう考え方もないと思いますが、どんな人間でも必ず死を迎えるというのは決定事項なので、それなら少しでも一秒でも長く笑って楽しまなきゃ損、…いや、損得感情では到底片付けられない深い問題ではあるものの、少なくとも自分個人としては、今回の作品の中に登場する患者の生き方に共感出来る部分は多いような気がしたので、出来る限り楽しみながら死を迎えたいなと感じました。(まぁでも実際に死を意識しなければならない事態に直面したら、恐らくネガティブな発想しか生まれて来ないだろうな…。その際はこの作品を思い出したいところ)。ちなみにこの作品の中で大きなテーマとなっている「どこで死にたいか」の部分に関しては、やはり「自宅」と答えてしまうような気がしますが、その時の家族構成だったり周りの環境によっても変わってくるような気もします。結局難しい問題だと改めて感じました。
ワンツーワークスさんの作品観劇は昨年の『善悪の彼岸』以来1年ぶり4回目でしたが、毎度の事ながら観客の心に突き刺さる何かがあるような気がします。様々且つ身近な社会問題を独特の鋭い視点で斬り込む作風はお見事。物語の世界に引き込まれる感覚を強く体感します。冒頭のテンポをズラした動作パフォーマンス、統一感も素晴らしい。演者さんでは奥村洋治さん、藤敏也さんが特に存在感あると感じました。YAMAさんの大道芸はずっと見ていたいと思えるスゴさがありました。まさにプロ。上脇結衣さんはドラマの印象が強かったですが、舞台での演技もさすが。みとべ千希己さん、小林桃子さんは感情表現が素晴らしかったです。小熊綸さん、榊原あみさんの娘役2人も好演。藤村忠生さんも味のある芝居が印象的でした。とてもよく研究し創られた脚本、演出、メッセージ性などどれを取ってもさすがワンツーワークスさんだと感じました。

ナイゲン

ナイゲン

果報プロデュース

王子小劇場(東京都)

2019/10/16 (水) ~ 2019/10/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/18 (金)

王子小劇場にて果報プロデュース『ナイゲン』を観劇。
feblaboさんの公演で2回拝見したことがある作品で、今回が2年ぶり3回目の内容限定会議“ナイゲン”傍観でしたが、相変わらず面白く、今回も夢中になって拝見させて頂きました。3回観てもこんなに面白いと感じるのは、やはり脚本が優れているのは当然のこと、登場するキャラクター達の色の濃さ、そしてそれを演じる演者さんの技量の高さ、熱量が伝わるからだと思います。ストーリー自体は単純なのに随所に色々な仕掛けがあって見応え十分。誰が観ても作品の中に引き込まれる魅力があるように感じます。
作品の中で登場する普通の県立高校・国府台。千葉県民の自分にとってすぐに思い浮かぶ学校があるのですが、パンフレットに書かれている脚本家さんの話を読む限り、どうやらその予想は合っているような。。実在する学校、実在する会議をモデルとして書かれた作品だからこそ、なかなかリアリティーのある(いや、リアリティーはないですが、何か妙な生々しさがある)内容になっているのかと感じる部分もあります。文化祭での各クラスの発表内容がまとめれた藁半紙の会議資料を片手に、目の前で繰り広げられる白熱した会議の動向を傍観するスタイルはとても滑稽で好奇心を掻き立てられますし、一つの発言により立場 が有利になったり不利になったり二転三転していく様子は、観ていて全く飽きないどころか、ずっと観ていたくなる感覚にもなりました。基本的には会議資料に書かれた規約や発表内容に則って会議を進めていくものの、粗捜し?抜け目?穴?を見つけながら進めていく会話の一つ一つが、更なる先の展開を生む引き金のような形になっており、それどころか恋愛感情まで上手く盛り込まれていて、なかなか天才的な脚本だとも感じました。とにかく熱く真面目に話し合っているように見えて内容を掘り下げていくと実にくだらなくて爆笑、爆笑の連続。今回の演者さんも全員が良かったなー。議長役・三宅勝さん、海のYeah!!役・山咲和也さん、おばか屋敷・吉田裕太さん、3148役・石川彩織さん、アイスクリースマス役・東直輝さん、監査役・田久保柚香さん…特にハマり役だと感じました。どさまわり役・秋本雄基さんはどこかで拝見したことあるなーと思っていたら、アナログスイッチの役者さん。なるほど納得の巧さ。誰か一人でも違ったらまた違った感じのナイゲンになっていたと思います。このメンバーだからこそのこの面白味。逆に演者さんを替えればいくらでも新たなナイゲンが生まれる。それも観てみたい。。いやー、この『ナイゲン』という作品にはあっぱれです。

三億円事件

三億円事件

ウォーキング・スタッフ

シアター711(東京都)

2019/10/12 (土) ~ 2019/10/20 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2019/10/14 (月)

下北沢シアター711にてウォーキング・スタッフ『三億円事件』を観劇。
2016年、第24回読売演劇大賞優秀作品賞に輝いた作品の再演であるという事前情報、さらに1968年に実際に起きた有名な窃盗事件を題材にした作品ということで結構期待して拝見させて頂きました。今回の作品は事件当日の様子を描いたものではなく、時効成立が迫っている最後の3ヶ月を描いたもの。特別捜査室を再現した独特の舞台、というかもはや本当の捜査室。会場の中心で役者さんたちが演じ、その周りを観客が囲む個性的な舞台セットはなかなか趣向を凝らして創られており、魅力的に映りました。なるほどー、こういうセットの組み方もあるのかと新発見でもありました。男性キャストだけのお芝居でしたが、だからこそ三億円を盗んだ犯人を捕まえようとする捜査員たちの緊迫した会話、なかなか進展しないことに対する苛立ち、情熱などの心情がとてもよく伝わってきて緊張感のある作品になっていたと感じました。
一方で、三億円事件についてもっと事前に知識仕入れていれば、よりリアルにより細かい部分まで楽しめたのではないかとも思いました。この事件自体、自分自身が生まれる数十年前の出来事なので、当然当時の様子は知りませんし、何が真実で何が作り話なのかすらよく把握出来ていません。なので今回の作品に対する理解度も不十分だと思います。もし今度再々演があるのならば、もっと事件について調べてから観てみたいと感じました。

ピースフルタウンへようこそ

ピースフルタウンへようこそ

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

サンシャイン劇場(東京都)

2019/10/11 (金) ~ 2019/10/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/14 (月)

サンシャイン劇場にて劇団スーパー・エキセントリック・シアター『ピースフルタウンへようこそ』を観劇。
以前から気になっていた三宅裕司さん主宰の老舗劇団。所属団員さんが出演されている作品は何本か観たことがありましたが、本公演は今回が初観劇でした。いやー、面白い。“ミュージカル・アクション・コメディー”を売りに活動されている劇団だけあり、非常にエンターテイメント性の高い見応えのある公演であったように感じます。三宅裕司さん、小倉久寛さん、野添義弘さん ・・60代になられた大ベテラン役者さん達の存在感がハンパないです。というか、三宅さんって68歳になられたとは。三宅さんに限らず自分自身を含め皆同じように年齢を重ねていくことは平等なことではありますが、こうして実際の年齢を拝見すると、時の流れを痛感させられます。でも実年齢からは到底想像出来ないくらい皆さんお若くて只々驚き。演者さん達のパワー溢れるステージに圧倒されました。お見事です。
過疎、高齢化が進む町と、品がありどんどんと進化し続けている隣町に住む人々の物語。その両極端を描いた情景がユニークで面白く、そこに登場する人物達もキャラが濃くて面白い。単純で馬鹿げているような会話シーンであっても、決して笑いを強制しているような演じ方ではなく、真面目に演じているのがプラスに働き、思わず笑ってしまう心地の好い空間を生んでいたように感じます。アクションシーンは当然迫力がありましたし、アドリブも多く、まさに“演劇は生モノ“を体感出来た瞬間でもありました。ストーリーの流れを考えると最後にあのような結末が待っているとはちょっと想定外で、単にコミカルなだけでなく実はなかなか深い内容かもしれないと感じました。創立40周年の記念公演。ぜひ50年、60年と長く続いて欲しいなと思います。劇団の歴史を振り返る過去ポスターの展示企画も良かったです。40年も続いている人気劇団のスタートが、個人的に何度も訪れている池袋シアターグリーンだったとは驚きました。今回の公演は池袋凱旋にもなるので、当時を知る方にとっては感慨深いものでもあったのだろうなと思います。大いに楽しませていただきました。カーテンコール3回の余韻も素晴らしかったです。

boy be...

boy be...

ミュージカル座

六行会ホール(東京都)

2019/10/09 (水) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/13 (日)

六行会ホールにてミュージカル座『boy be...』を観劇。
毎回ミュージカルナンバー盛り沢山で、老若男女誰もが楽しめる分かりやすくて説得力のある良質な作品創りをされている印象を受けるミュージカル座さん。個人的には『アワード』以来、1年ぶり7回目(7作目)の観劇でした。
今回は「役立たず」と罵られるダメロボット《Be》の成長を描いた作品。近年のロボット産業の発展は目覚ましく、今まで人間が務めてきたことをロボットがやる時代になってきましたが、Al(人工知能)の技術などが進化しているとは言え、やはり所詮は機械なので、一つ一つのやり取りは無機質と言うか味気無さと言うか、形式的なものにしか過ぎないのが現状だと感じます。でもこの作品では、そんなロボットに人情味のある生きた感情を加え、人間側からだけでなく、ロボット側から見た世界を描いている作り方が面白く興味深いと感じました。何だろう、ドラえもんの世界に近いような。。?ドラえもんもネコ型ロボットとして人情味溢れるキャラで愛されていますが、今回の作品に登場するbeも似たような雰囲気を感じました。
そして人間とロボットの違いと言えば、やはり生命の問題。ロボットは仮に壊れても修理すれば再始動可能ですが、人間となると多少の延命は出来てもいつか必ず死が訪れる。だからこそこの作品の中で登場する「生きている時は魔法の時間」という言葉はとても印象的で心に突き刺さりました。魔法の時間を過ごせている今には本当に感謝しなければならないですし、当然それを思うなら生命を脅かすような争い事は絶対に排除すべきとも改めて感じました。でもこの作品で面白いのは、前述の通りロボット側にも感情を入れている点かなと思います。どれくらいの時間経過をイメージしている作品なのかは分かりませんでしたが、共に生きてきた人間が次々とあの世へ旅立っていく中で、ロボットbeだけは動き続けている様子は、今まであまり考えたことがなかったような感情を掻き立てられたような気がします。自らのスイッチを切って欲しいと訴えるクライマックスシーンは切なくもあり感動的でもありました。まさに「お疲れ様、Be。」という感覚です。最初カタコトだったbeの話し方が、最後には流暢になっていたのも印象的だったなー。
また、本来はロボットが人間の動きをするような進化が必要ですが、最近は人間自体がロボット化しているのではないかと感じたりもしました。人間にしか出来ない様々な経験や感情表現も大事にすべきだなとしみじみ。
今回もさすがミュージカル座さんと思わせる素敵な作品。ストーリーはもちろん、ミュージカルナンバーの豊富さと美しさ、華やかさなど、どれを取っても非常に満足度の高い作品でした。一人で何役もこなす演者さんの器用さも素晴らしいと感じました。元アニー役の栗原さんをはじめ、個人的に大好きなミュージカル『アニー』の経験者も多く出演されていた点も嬉しさがありました。

ホテル・ミラクル7

ホテル・ミラクル7

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2019/10/04 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/10/10 (木)

シアター・ミラクルにてfeblabo『ホテル・ミラクル7』を観劇。
2016年に上演された同シリーズの『ホテル・ミラクル4』がとても印象深く、また観たいと思っていた作品。なかなかタイミング合わず3年が経ってしまいましたが、今回久しぶりに拝見することが出来ました。feblaboさんの作品自体は2017年『ナイゲン』以来2年ぶり5回目の観劇でした。
新宿・歌舞伎町のホテルの一室を覗き見しているような感覚になるリアルなお芝居。雑居ビルの上層階に入っている会場シアター・ミラクルの異様な雰囲気も相まって開演前から独特の空気感がありました。この感覚はここでしか体感出来ないものであり、前シリーズを観ている身としては少し懐かしい気も。決して綺麗でも広々としている訳でもなく、むしろ小汚なくて狭苦しい会場(失礼!)ですが、この『ホテル・ミラクル』シリーズには実に適した会場であるように感じます。それくらい新宿・歌舞伎町のホテルの一室という雰囲気によくマッチしているのです。
今回も4本の短編作品を集めた公演スタイル。どの作品もらしさ全開の個性的な内容でしたが、個人的に期待値を上げすぎていたためなのか、何となくの雰囲気を知っていたためなのか、シリーズ4ほどのインパクトは感じられず、内容も期待値を少し下回ったような印象を受けました。とは言え、注意事項を伝えるベッドシーンから始まるオープニングはやはり個人的。1・2話の物静かな会話シーンならではの緊迫した雰囲気は何とも言えない臨場感があり、この作品ならではの生々しさを感じました。演者さんも自然体で上手かったなー。3話はストーリーはユニークであるものの、劇場のスペックに合っていないような大きな声量や演じ方が気になり、イマイチ内容が入って来ず。4話はなかなか奥深さのある内容に感じました。20時開演で160分公演となると少し長さを感じる印象。20時開演自体は良いですが、130~140分くらいでまとまっているとベストだと思いました。

コルセット

コルセット

劇団朋友

俳優座劇場(東京都)

2019/10/09 (水) ~ 2019/10/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/10 (木)

俳優座劇場にて劇団朋友『コルセット』を観劇。
前身から数えて創立65年の老舗劇団。個人的には今回が初見でしたが、ベテランの役者さん達による安定感のあるお芝居とストーリーの緻密さはさすがだと感じました。
50代女性2人の生き様を描いたリアリティー溢れる会話劇。成長を続ける女性下着メーカーが舞台となっており、登場する女社長や若手社員、用務員、元同僚など一人一人の設定が絶妙で、冒頭のレセプションパーティー映像上映シーンからまるで実際の会社を覗き見しているような感覚に。冒頭で少し流れるだけと思いきや、なかなか本格的な映像を作っていていきなり作品の作り込み度の高さを感じました。そしてその後に巻き起こる騒動。「あー、実際にこんなことありそうだなー」「あー、こんな人いるいる」などと感じられる無理のない自然な展開やキャラ設定に、完全に物語の中に引き込まれました。人生色々。ターニングポイントとなるような選択を迫られる場面は何度もあるかもしれないけど、結局何が正解で何が不正解であるかなんて誰もわからないし、ましてや他人の人生の正解・不正解なんて周りが判断を下すことでもない。本人が良いと思っているのならそれで良いし、本人が違うと思うなら修正していけば良い。そんなことを感じた作品でした。
会社を辞め家庭を優先した生き方をしている久莉子が物語の途中で放つ「自分の人生がちっぽけでつまらないもんだと思ってしまった」というニュアンスの台詞。ちょっと印象的でした。これは誰かと比べて劣等感を覚えたからこそ出るような台詞。でも結局自分は自分、相手は相手。人それぞれの生き方があって当然だと思うので、しっかりとした信念を持ち、周りと比べるようなことはせず、自信や誇りを持って生きていくことが必要なことではないかと感じました。物語の核となる2人の女性役は当然印象に残りましたが、御曹司・岩清水正彦役の方のキャラが面白く、好演ぶりも良かったです。クレーム電話を巡る少しミステリアスな要素、用務員と社長との因縁から来るサスペンス的な要素も作品に深みを加えていたと思います。

キンギンヒシャカク!〜乙女の一手〜

キンギンヒシャカク!〜乙女の一手〜

劇団TEAM-ODAC

新宿シアターモリエール(東京都)

2019/10/04 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/10/07 (月)

シアターモリエールにてMonkey Works『キンギンヒシャカク!〜乙女の一手〜』を観劇。
うーん、面白い!「元のジャイアンツの仁志敏久」のくだりからジワジワと観客の笑いを誘い始め、中弛みすることなく同じボルテージのまま最後まで笑いに包まれた公演。あっという間の120分でした。
物語はとある高校将棋部に巻き起こる部の存続をかけた熱い対戦や、高校生ならではの甘く切なく面白い?恋愛模様、友情関係などが描かれた青春ドラマ。何だろう、、決して頭を使うような難しいストーリーではないものの、観終わった後のこの充実感、満足感。やっぱり序盤の掴みから終始笑いが絶えない面白い脚本だったことはあると思いますが、ただ単に面白いだけでなく、将棋に対する部員たちの熱い想いだったり、好きな人に対する熱い想いだったり、父娘のちょっとほっこりするようなエピソードだったり、序盤の細かな伏線が最後に有効に働いていたり…。部の存続をかけた戦いと恋愛という軸となるストーリーはあるものの、その中に様々な要素・エピソードが盛り込まており、笑って感動して笑うという見応えのある作品だったことが、充実度や満足度のポイントが高かった要因かもしれません。
また、登場人物一人一人がそれぞれ単独で笑いを取りに行けているのも素晴らしいと感じました。これくらいの演者さんが登場する作品となると、何人かは印象薄くあまり記憶残らないこともありますが、今回は全員のキャラが強烈で、恐らくもれなく記憶に残っているような気がします。特に神楽駒音役・村田寛奈さんは見た目の印象からなのか転校生らしい弱々しさ初々しさが適役だと感じましたし、将棋に対する熱さ、力強さの部分もしっかりと表現されていて素晴らしいと思いました。通行人A役・千綿勇平も絶妙なツッコミで何ともまぁジワること。とにかく笑わせて頂きました。仁志敏久役・林勇輝さんはイケメンなのに少しマヌケな変人キャラ?とのギャップが絶妙。林さんが演じるからこその面白味があったと感じました。その他のキャスティングもとても良かったです。たまにはこういうTHE青春ドラマも良いものです。

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