満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/10 (木)
俳優座劇場にて劇団朋友『コルセット』を観劇。
前身から数えて創立65年の老舗劇団。個人的には今回が初見でしたが、ベテランの役者さん達による安定感のあるお芝居とストーリーの緻密さはさすがだと感じました。
50代女性2人の生き様を描いたリアリティー溢れる会話劇。成長を続ける女性下着メーカーが舞台となっており、登場する女社長や若手社員、用務員、元同僚など一人一人の設定が絶妙で、冒頭のレセプションパーティー映像上映シーンからまるで実際の会社を覗き見しているような感覚に。冒頭で少し流れるだけと思いきや、なかなか本格的な映像を作っていていきなり作品の作り込み度の高さを感じました。そしてその後に巻き起こる騒動。「あー、実際にこんなことありそうだなー」「あー、こんな人いるいる」などと感じられる無理のない自然な展開やキャラ設定に、完全に物語の中に引き込まれました。人生色々。ターニングポイントとなるような選択を迫られる場面は何度もあるかもしれないけど、結局何が正解で何が不正解であるかなんて誰もわからないし、ましてや他人の人生の正解・不正解なんて周りが判断を下すことでもない。本人が良いと思っているのならそれで良いし、本人が違うと思うなら修正していけば良い。そんなことを感じた作品でした。
会社を辞め家庭を優先した生き方をしている久莉子が物語の途中で放つ「自分の人生がちっぽけでつまらないもんだと思ってしまった」というニュアンスの台詞。ちょっと印象的でした。これは誰かと比べて劣等感を覚えたからこそ出るような台詞。でも結局自分は自分、相手は相手。人それぞれの生き方があって当然だと思うので、しっかりとした信念を持ち、周りと比べるようなことはせず、自信や誇りを持って生きていくことが必要なことではないかと感じました。物語の核となる2人の女性役は当然印象に残りましたが、御曹司・岩清水正彦役の方のキャラが面白く、好演ぶりも良かったです。クレーム電話を巡る少しミステリアスな要素、用務員と社長との因縁から来るサスペンス的な要素も作品に深みを加えていたと思います。