かずの観てきた!クチコミ一覧

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トンマッコルへようこそ

トンマッコルへようこそ

ナッポス・ユナイテッド

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2016/05/04 (水) ~ 2016/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

桟敷童子が舞台を絶妙な色合いに
韓国で大ヒットした名作。東憲司だからこそ、という演出に加え、劇団桟敷童のおなじみのメンバーが、悲しい物語にさわやかな風を加えてみせた。劇団の本領発揮というところだろう。

国を守るためには武器を持って戦え、と言われる。武力にはそれ以上の武力が必要なのだ。では、武器を持たない人々は、本当に無力なのか?
この舞台は、武器を持っていた軍人たちによって救われた山奥の村の話だが、本当の強さとは何だろうと考えさせられる。

舞台は朝鮮戦争当時の半島だが、今はとてもリアリティを持ってのめり込める。

三代目、りちゃあど

三代目、りちゃあど

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2016/04/29 (金) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

国際色豊かな野田演劇
1990年に野田秀樹が初演しているが、全く古さを感じない。シンガポールのオン・ケンセンの演出手腕が光る。

郷ひろみとか70年台のJ-POPの多用には違和感もあったが、光と影、影絵をうまく使っての演出は見事だ。野田の戯曲は面白い。それにどう味付けするなのだが、十分に成功している。英語と日本語の字幕が出るのもいい。国際色豊かな野田の戯曲を感じられる。ふじのくにせかい演劇祭の、間違いなく目玉作品。

二人だけの芝居―クレアとフェリース―

二人だけの芝居―クレアとフェリース―

劇団民藝

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/04/04 (月) ~ 2016/04/21 (木)公演終了

満足度★★★★

奈良岡朋子の迫力がすごい
難解な劇である。パンフレットによると、それは訳・演出の丹野郁弓も認めているし、この二人芝居の出演者も同じだという。しかし、現実と空想、過去と現在、さらに芝居の練習と現実生活をシームレスに行きつ戻りつするこの会話劇を、奈良岡朋子と岡本健一が見事に演じきっている。

元ジャニーズの岡本健一は既に円熟というか、ベテラン舞台俳優の域に達している。そのベテランが「超ベテラン」の奈良岡朋子に堂々たる絡みを見せてくれるのだ。その岡本の迫力、言葉の強さ、声の通り具合にさらに負けない奈良岡の舞台は見事と言うよりない。40歳の年の差、86歳の迫力に客席は圧倒されている。だが、ある意味で、この奈良岡の迫力を引き出しているのは、岡本のすごさなのだろうと思う。

難解な会話劇で眠くなるかもしれない。だが、その節々で舞台に釘付けになる、その迫力を堪能したい。

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

劇団四季

四季劇場[夏](東京都)

2013/04/07 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

素直に楽しめる
ディズニーの有名作品でロングランだから、家族連れやカップルが客席に多い。子どもの視線を釘付けにして、しかも飽きさせない工夫が凝らされている。愛と勇気の物語、思わず口ずさむ楽曲。そして、海の中と宮廷などを瞬時に変えてしまう演出。ヒットの要件はそろっている。

アリエルを演じた小林由希子はよかった。空中、いや水中での動きにちょっと苦しさがあったようにも見えたが、歌唱は安定感がある。カニのセバスチャンの荒川務もよかった。

毛皮のマリー

毛皮のマリー

パルコ・プロデュース

新国立劇場 中劇場(東京都)

2016/04/02 (土) ~ 2016/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

やはり、美輪明宏でないと
寺山修司の名作で、あちこちで上演されてきた。だが、この戯曲は天井桟敷のときに寺山が美輪明宏に当て書きしたとされる。昨年末に花組芝居で上演されたのも見たが、今回の舞台を見ると、やはり美輪でないと思わせる。

モーニング娘。の曲を使ったりしていたが、それ以外はやはり、昭和のムードあふれる演出だ。それは、きっと成功の鍵だと思うのだが、オーディションで選んだという美少年役、勧修寺保都がどうしても浮いてしまう。時代の流れを埋めるのは難しいかも。特に、お客さんの層が幅広い今回の舞台では。

幅広い、と言ったのは、若い女性から年配の男女までという客層で、新国立中劇場は多彩な年代層で埋まった。笑うポイントがずれているというか、お客さんの年齢によって笑いが出る場面が違う。見ていて、それが結構な違和感がある。つまり、隣に座っている年配のおじさんがガハハと笑うのが、結構迷惑だったりする。
そういう意味でも特別な体験ができる貴重な戯曲だ。

イニシュマン島のビリー

イニシュマン島のビリー

ホリプロ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/03/25 (金) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

鈴木杏演じる暴力女の示すもの
生卵を頭でかち割るんである。かわいい顔した暴力女・ヘレンを鈴木杏、その弟を柄本時生が演じる。とにかく口は悪いし、すぐ殴る。気に入らないと売り物の生卵の相手に投げつける。その主な被害者は弟だ。

劇中、姉が「イングランド対アイルランド」というゲームを持ち掛ける。姉がイングランドの立場になってアイルランドの弟を殴る、蹴るという遊びだ。「これこそがアイルランドの歴史だ」と姉は言うが、相手を威嚇し、暴力で制圧する女から、この国の悲しい生い立ちを学ぶことができる。

さて、主役のビリーを演じた古川雄輝はなかなかの力演だ。「びっこ」に加え、結核に罹患。幼なじみのヘレンにも殴られたり蹴られたりするから、まさに体を張っての舞台だ。主役だけでなく、上記の姉弟、そして、江波杏子演じるアル中の老女など、脇を固めるメンバーも熱がこもった立ち回りを見せてくれる。

ネタバレBOX

生卵は本来、ここに書くべきかもしれませんが、タダ投げたりかち割ったりするだけでなく強烈な場面がもっとあります。
最前列の席の人たちは、生卵の汁をよけるビニールカバーで防御していました。
「安全区/Nanjing」ご来場ありがとうございました。

「安全区/Nanjing」ご来場ありがとうございました。

メメントC

Geki地下Liberty(東京都)

2016/03/17 (木) ~ 2016/03/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

今回も魅せた会話劇
旧日本軍の南京侵攻で、南京市街に設けられた「安全区」。ここを舞台に物語は展開する。
主役は日本や英国に留学経験もある中国人経済学者。日本軍の侵攻後、国民党幹部の兄から諜報活動を頼まれ、南京臨時政府にやってきた特務機関の中尉の下僕となって自宅を守ろうとする。そこに戦地を渡り歩いてきた従軍僧が訪れる。作・演出の嶽本あゆ美の手腕は、今回もこの3人の会話劇で遺憾なく発揮されている。
見どころは、この怪しげな従軍僧だ。中尉は日本軍が民間人も暴行、殺戮するなど暴虐の限りを尽くしたという欧米によるリポートへの反証をする任務を帯びていて、従軍僧に南京などの戦いの現場を聞く。だが、この従軍僧は「殺される前に殺す」「戦場になった場所にはそもそも慰安所などない。民間の女性を相手にするのは当然だ」などと、暴虐はさも当たり前だというようにうそぶく。そんな彼の傲慢とも言える言動が、何だかまっとうな話に聞こえてくるが、それが嶽本の描く戦争の狂気だと思い知らされるわけだ。
日本軍は捕虜を取らない、という指令を出していた。日本軍に大量の捕虜を国際法に則って処遇できる能力などないからだが、捕虜を取らないというなら現場は、自分たちをいつ襲うかしれない敵国住民を殺すしかない。今回の戯曲では真正面から触れてはいないが、それが南京大虐殺につながったということは容易に想像できる。

前作の「太平洋食堂」「プロキュストの寝台」でも魅せたが、今回も戦争の狂気という大テーマに、戯曲の力でもある舞台での会話の応酬で、約二時間の上演に釘付けになる。

熊本の皆さん、ぜひ見てくださいね。

ネタバレBOX

中国人経済学者を演じた立花弘行、特務機関中尉を演じた清田正浩、そして従軍僧を演じた間宮啓行。この三人の俳優は、下北沢の小劇場で息もつかせぬ迫力をまとって嶽本会話劇を演じきった。見応え十分。

さらに、この劇では効果音がきわめてうまく使われている。舞台袖で発しているスタッフの力は大きい。
いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

劇団☆新感線

新橋演舞場(東京都)

2016/03/05 (土) ~ 2016/04/01 (金)公演終了

満足度★★★★

古田さん、お疲れさま
50歳の古田新太の舞台だ。全編で登場し、冒頭とラストの殺陣までこなす。相当なハードさだと思う。同年代としては、敬服に値します。

劇団☆新感線初の本格的な時代劇という触れ込み。倉持裕の書き下ろしということで期待度も高い。劇団のテイスト維持したまま、笑いのツボも押さえ、楽しめる内容だ。特に、話が急展開する第二幕がいい。

古田新太あっての舞台だが、脇を支える人たちもなかなかの存在感。その中でも、江戸っ子の町人で居酒屋の女将役、稲森いずみが光っていた。この人は、しっかりした姉御肌だが繊細な面も持つという役はうまい。

ネタバレBOX

私が見に行った日は、稲森いずみの誕生日だったとか。カーテンコール中にケーキの贈呈もあり、ファンを楽しませた。
家庭内失踪

家庭内失踪

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2016/03/11 (金) ~ 2016/03/23 (水)公演終了

満足度★★★

豪華メンバーなのだが
風間杜夫、小泉今日子、小野ゆり子。出演者は豪華なのに、いまひとつピリッとしない。なぜだろう。それぞれの複雑な胸の内を出し切れてないのか、脚本に難があるのか。
ベテランの風間杜夫が要所で締めてはいるものの、ちょっと違うかな、という微妙な違和感は解消されないまま、最後まで来てしまった。もっと何かあるはず、という期待感は、カーテンコールが終わっても消えなかった。

キョンキョンの色っぽさがうれしい。

おれたちは天使じゃない

おれたちは天使じゃない

無名塾

ももちパレス(福岡県)

2016/02/10 (水) ~ 2016/02/18 (木)公演終了

満足度★★★★

明るく笑える囚人物語
無名塾も40年。仲代達矢は83歳だ。世代交代が大きな課題だと思われがちだが、やはり無名塾は仲代による演劇道場だ。世代交代というより、若手俳優がいかに仲代から学ぶかという舞台であり続けるのかもしれない。
今回は、明るく笑える楽しいコメディだ。3人の囚人役では、役柄の差もあるけどやはり仲代が一番おもしろい。さすが師匠、なんである。
もちろん、脇を固める無名塾のメンバーも高水準だ。安心してみていられると言っていい。
そんな楽しいコメディに仕上げたのは、またも民藝から仲代に呼ばれた丹野郁弓の本領発揮だ。丹野ならではの演出に、仲代らがきっちりハーモニーした。
人が死ぬ場面もあるのに、明るい囚人物語。東京公演は今日が千秋楽だけど、地方の皆さん、これはオススメです。

ルンタ(風の馬) 〜いい風よ吹け〜

ルンタ(風の馬) 〜いい風よ吹け〜

劇団態変

座・高円寺1(東京都)

2016/03/11 (金) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

そのまま受け止めた
東京公演は久しぶりとのことで、私は劇団態変は初体験。観るというより、体験する舞台だ。
自分はそうなのだが、周囲に障害者がいる人でないと特に、彼らがどう体を使って動くのか見たことがない。いや、想像だが、障害者が家族にいる人でも、このパフォーマンスは新鮮に映ったのではないだろうか。
本来、舞台芸術から感じるものは、一人一人違うはずだ。そんな観劇の原点みたいなものを思う。

ライ王のテラス

ライ王のテラス

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2016/03/04 (金) ~ 2016/03/17 (木)公演終了

満足度★★★★

色あせない三島由紀夫
宮本亜門が熱望して実現したという舞台。初演時にできなかったのは、カンボジアの演者たちとの共演だろう。オープニングはそこから始まるのだが、やはり三島由紀夫が描いた世界観は、当地の人たちの姿があってこそ鮮明になるのだと思う。
主役の鈴木亮平が見事だった。鍛えられた肉体はいかにも三島のイメージ通りではないか。対照的な二人の王妃を演じた倉科カナと中村中にも注目だ。
舞台が成功しているのは、やはり宮本亜門の演出が最大の要因。影絵をうまく使った王妃の心理戦は印象的だった。

月の平均台

月の平均台

タテヨコ企画

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2016/03/09 (水) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

シュールなひととき
スペース雑遊にウッドチップを敷き詰め、深い森を演出。そこに迷いこんだ、妻を捜す男の一行が森の住人たちに翻弄される。結構、シュールな展開に不思議と引き込まれていく。
夢の世界のようで、現実感がある。そんな微妙なリアリティーがいい。
妻を捜しに来た男を演じた西山竜一の演技が良かった。理不尽さに振り回されながらも前に進む男の小さな勇気を、目線で感じた。

ネタバレBOX

煙が出ます。山火事です。開演前に配られるマスクは、もらった方がベター。
客席は3方向にあるが、入って真正面の席がいいと思います。
焼肉ドラゴン

焼肉ドラゴン

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/03/07 (月) ~ 2016/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

見逃すと、損するぞ!
開幕前にも幕間にも、客席を楽しませる演出がある。そこで「以前にこれを見たことがある人」との問いに、驚くほど多くの人が手を挙げた。こんなに熱烈に支持されている舞台だということを、見終わって痛いほど思い知らされる。また明日も見たい、と心の底から感じる舞台はそう滅多にあるものではない。

歴史の流れに翻弄される在日韓国人家族たちを真正面から本音ベースで描いている。笑いもあるし、見ていて楽しく、元気が出る舞台だ。だが、本当に心を揺さぶる理由は、名もなき人たちが懸命に生きようとする姿を描き切っていることだ。在日の人たちの行き場のない怒りとか、さまざまな要素があるが、本当に泣けるのは、自分と等身大の人間として見ることができるからだろう。

鄭義信の三部作の一つだ。残り2作も、断然見たくなる。

サロメ

サロメ

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2016/03/06 (日) ~ 2016/03/15 (火)公演終了

満足度★★★★

目が離せなかった
囚われの身である聖職者を好きになり、言いよったものの袖にされた王女。「踊りを見せてくれたら好きなものをあげる」と義理の父に言われたので、その男の生首を要求する。義父は困惑するが結局は認め、王女は最後、生首にキスをする。こんな物語だけに当初は上演できなかったというのもわかる気がする。

しかし、かの有名な踊りの場面など、一幕ものの舞台から目が離せない。王女の心や周囲の人たちの恐怖を掻き立てるような不協和音交じりのオーケストラ。シュトラウスの見事な腕前だ。

中央に古井戸を配した演出も効果的だ。

池袋モンパルナス

池袋モンパルナス

劇団銅鑼

俳優座劇場(東京都)

2016/03/02 (水) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

今だからこそ見たい
「描きたいものが描けない」。その叫びがどこまで客席に伝わるかがこの舞台の鍵だろう。戦時色が濃くなり、従軍画家の話や、兵隊を暗いタッチで描くものは駄目だとかのエピソードは出てくる。若き芸術家たちの苦悩も描かれてはいるものの、何だが意外にそのあたりがさらっとしているところが気になった。池袋モンパルナスが芸術家たちで活気にあふれていた時代ともっと対比させて、次々に届く赤紙で芸術家たちが絵筆を銃剣に持ち替えていく、そうした時代の苦悩をもう少し強烈に出してあると、もっと胸に響く舞台になったと思う。

とは言え、今の時代に見るべき戯曲である。1997年に初演された台本が20年近くを経て今、上演されるのはとても意義深い。「描きたいものを描きたいんだ」とお国言葉で叫ぶ若者たちの姿は、とても印象的だった。

キキ役の土井真波、紅一点の画家役の向暁子。この二人の演技はとてもよかった。楽曲で声がかすれる場面があったのは、連日の舞台の疲れなのだろうか。千秋楽まで頑張ってほしい。

Be My Baby いとしのベイビー

Be My Baby いとしのベイビー

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

何とも幸せなコメディ
カトケン事務所のコメディの選び方は秀逸だ。クレイジーフォーユーなどで知られる米国の脚本家ケン・ラドウィッグの名作。カトケン事務所は初演時と同じメンバーで再演した。

翻訳がいいのか、鵜山仁の演出がイキなのか、あちこちでしっかり笑いが起きる。幸せ感で泣けるラストシーンなど、役者たちがきっちり仕事をしていて、翻訳劇にありがちなぎこちなさがない。

加藤健一の長男と高畑淳子の長女が若い夫婦役。カトケン事務所の加藤忍も、今回も面白い。

ネタバレBOX

今日は初日で、メディアの御招待も多かったと見られる。近くの席にいたのは朝日新聞の演劇記者、見た目はOBだ。開演しても隣接の記者としゃべり続ける無神経さ、その中身も「楽屋で有名女優に駄目出しした」とか聞くもむなしい会話。終演時に至っては拍手もせずカーテンコール中に携帯を覗いて帰り支度。

舞台に酔いたいお客さんの神経を逆なでしていた。
リビング

リビング

O-Parts

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/03/02 (水) ~ 2016/03/07 (月)公演終了

満足度★★

宝塚出身女優のドタバタコメディ
作・演出の荻田浩一は宝塚出身。だが、歌や踊りがメーンではなく、宝塚出身の女優がドタバタを繰り広げるという舞台だ。

アクションが得意な栗山航が、引きこもりという意外な役でうだうだの主役を務める。コメディと銘打ってはいるが、爆笑が続くわけではない。役者たちに入れ込んで見られる人でないと、残念な結果になるかもしれない。

ネタバレBOX

踊りの場面は、ちゃんとあります。ただし、タンゴ。でも、さすが宝塚出身。魅惑的だ。
私としては、ここが最大の見どころだった。
『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』

『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』

マームとジプシー

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)

2016/02/18 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

再構築の妙
藤田貴大が少し前、寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」を演出したとき、この作品のパーツも含めさまざまな断片を用意し、それをつなぎ合わせるスタイルで新たな戯曲を演出した。寺山の言葉をなぞるように、藤田は「演劇の実験」として「いろいろ試す姿勢を引き継いでいる」と言った。

今回は「夜」「不在」をベースに三つの戯曲をつなぐだけでなく、おそらく個々の断片を再構築してつくりあげていったのだろう。繰り返されるせりふ、機敏でシャープな俳優たちの動き、そしてそれらの塊としてのリフレイン。劇場の奥行き、スポットや蛍光灯などの照明、スクリーンに映し出す映像。これらも断片として効果的に縫われていく。名作「cocoon」で見せたあの舞台芸術の原点は、ここにあるのではないかと想像する。

俳優に個性が見えない、という批判も出るかもしれないが、藤田はおそらく、舞台上で俳優が個性を発揮するのではなく、均質でかつ機敏で正確な動きを要求している。それは俳優も再構築されるパーツだと言えるのかもしれないが、かといって無機質な冷たい舞台ではない。

透明感のある、みずみずしい空気感がいい。客席の想像力を刺激し、さまざまな物語の続きを客に想像させる。

ネタバレBOX

蜷川幸雄の体調不良で延期となっている「蜷の綿-Nina's Cotton-」で使われる舞台の断片たちを展示したスペースを、今回の舞台の半券で無料で見られる。ここで断片立ちに向き合っていると、蜷の綿で藤田貴大がどうこれらを再構築していくのか、想像するだけで楽しい時間だ。
思い出を売る男

思い出を売る男

浅利演出事務所

自由劇場(東京都)

2016/02/24 (水) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★★

夢が行き交う街角
加藤道夫作ということで、見たかった演目。先の大戦で前線に出て、生きるか死ぬかという思いをした人だから書ける物語だと思った。

戦争で荒れ果て、それでも人びとが行き交う街角。生き延びた人の思いがゆらゆらさまよっている感じだ。すれ違う人の大半がスマホを見ている今から考えると、人びとの心が濃密に行き交っている感覚だ。その街角に、音楽とともに思い出を売っているという男がいる。影絵をうまく使った思い出の数々がとても美しい。

終戦から6年で書かれたという。加藤道夫は米軍兵士の故郷の恋人の思い出も盛り込んでいる。そこには敵も味方もない。ただ思い出だけがある。心に触れる短編だった。

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