満足度★★★★
夢が行き交う街角
加藤道夫作ということで、見たかった演目。先の大戦で前線に出て、生きるか死ぬかという思いをした人だから書ける物語だと思った。
戦争で荒れ果て、それでも人びとが行き交う街角。生き延びた人の思いがゆらゆらさまよっている感じだ。すれ違う人の大半がスマホを見ている今から考えると、人びとの心が濃密に行き交っている感覚だ。その街角に、音楽とともに思い出を売っているという男がいる。影絵をうまく使った思い出の数々がとても美しい。
終戦から6年で書かれたという。加藤道夫は米軍兵士の故郷の恋人の思い出も盛り込んでいる。そこには敵も味方もない。ただ思い出だけがある。心に触れる短編だった。