1
『ミナソコ』
廃墟文藝部
二室構造の舞台で重なる様に展開する芝居。各室に誂えられたプロジェクションが更に二重構造を形作り、終始 水底に揺蕩う感覚を醸す照明効果に…観る者の感傷を支配する音楽。
あらゆる面から絶え間ない波状攻撃を仕掛けて…観る者を多重に揺さぶり追い詰めてくる見事なサイコミステリーとファンタジーの融合でした。
緻密な脚本もまた色々なものを重ね合わせてくる。…
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2
ヒバカリ
電光石火一発座
痺れた…尋常じゃないほどグッときた。前半の緩い雰囲気から一転してのヒリヒリする空気、さりげない仕草の演技、撒き散らされる毒…そして周りの案じる気遣いの深さ。あぁ、みんながヒバカリだったんだねぇ。電光の株がまた上がりました。収穫多し。幸せ満喫。
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3
「轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は」
空宙空地
かなりしっかり骨子は保ったままの再演だったので、根本のところの感想は2016年当時と変わっていない。
2016年の私の観劇ベスト2でもあるし、名古屋市民芸術祭2016・特別賞受賞という客観的な評価も得た作品だから、その根幹のところを改めて生で観るだけでも価値は高いのですが… それに留まらない満足感。再演の価値というか、良い作品を改めてブラッシュアップすること、別キャストで表現してみることの素晴らしさを改めて感じた。
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4
体温と体液
よこしまブロッコリー
人と機械人形が自然に混在し、社会を形成する世界が舞台。
登場人物の思考と仕草や反応が緻密にコントロールされている印象で、その差異の表現に「人と機械人形を分つものは何なのか」を常に考えさせる。
全般として非常に発言が理性的で、厳密な言葉選びや…微妙な差異を意識した説明を駆使する…「繊細さ」が心地よい。
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5
さらばコスモス
世界劇団
凄い!興奮冷めやらぬ世界初演でした。何てジャンルと語れば良いのか分からぬ時空を超えた世界の融合ぶり。ミステリーの様であり、観念世界の様であり、社会を憂う様でもあり、様々に意味深な妄想と現実。こふく劇場でのトークから後引いたのも嬉しいオマケ。
役者の身体表現も異国文化の趣きで新鮮、放つ圧力と目力にもドキドキだ。音楽、照明、衣裳、小道具…演出効果の構成要素全てに隅々まで凝っていて、良い意味で古さと新しさ、和と洋のハイブリッド感も。初の長編新作なのに2018年上演台本と謳う辺り、ツアーの先も見据えてるよ これは。
6
가모메 カルメギ
東京デスロック
朝鮮半島北部 ヨナン温泉付近の湖畔の村を舞台に、日帝時代を背景にしてチェーホフ「かもめ」をベースに翻案した作品です。
この2週前に双身機関のチェーホフ「三人姉妹」を観たが、あれも翻案と言うべき内容で、上手く仕上げてくれると原作ストレートプレイより、極めて馴染み良い。
原作では どうしたって観る側が社会背景や価値観を共有し難いので、当然といえば当然だが、韓国は古典に対して翻案で挑むのが主流と知ってちょっと感心した。
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7
星をみた少年
パズル星団
パズル星団は「冥王 Ver. 1.02」と「パパ・ユートピア」しか観ていませんでしたが、本作でごっそりイメージが置き換わりました。今まで、どこか垢抜けない印象があったのが、一挙に洗練度が増したように思えました。主宰・高倉麻耶さんの貪欲さが実を結んだ… 怯まず大胆に様々な要素を取り込んでいかれた結果でしょうか。観た直後は…今までに無いものを観れた…という感激でいっぱいでした。(勿論、更に劇団内での試行錯誤の賜物であることも後で伺いました。)
最も印象深かったのは、ダンスと芝居との調和。特に芝居の「核心」を具体的に表現してみせたコンタクト・インプロヴィゼーションの効果です。「他者に接触することで在り様を変えていくコンタクトインプロ」と「人生における他者との関わり合い」は、本質的に近いのものと感じられました。
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8
今日も、バスが来ない!
劇団 蒼天の猫標識
「バスが来ない」「バスは来ない」に続く…再演に非ず…リメイクというべきブラッシュアップ。結構、後味も変わった。
夢を叶えるため東京行のバスを待ち続ける少女・ひじき。バス亭にたむろする…夢追いの先輩たち(海藻女子)。そして意味ありげにバス亭に座する謎の男。
楽しく夢を語り続ける先にあるものは… 果たしてバスは来るのか…そもそもバスとは何なのか。短編アレンジとなり、長編での味でもあった不穏さとミステリー感を思い切って削ぎ落した代わりに…核心に よりストレートにリーチ。
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9
逢いにいくの、雨だけど
iaku
色んな考えと嗜好が人の数ほどある… 理屈では分かっていても、人が自分の価値観から逃れることは難しい。問題点が部外者のバイアスで逸れていく、物議があらぬ方向に肥大化していく… その様が印象に残る。
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10
几ノ虫、夜ないて、転がる朝
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
昨年の学祭公演短編「午後6時、踏切ニ ニ分後クル君ヲ観ル」で その独特な切り口と演出力を印象付けた荒井さんが、遂に丸々1公演を任され、ハイレベルなキャスト/スタッフの力を借りながら、その感性で彩る…詩的な空間で劇場を埋め尽くした。
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