1
轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は
空宙空地
INDEPENDENTの「如水」で躍進の年となった空宙空地、満を持しての本公演。
平々凡々で切ない人々の営みを笑いで包みながら、優しいまなざしを送り続ける安定した作風に、今回は大掛かりな舞台装置を活かした重層的な演出な演出が印象的。
沁みるんだよね、ホント、ここの芝居は。
短篇をカップリングさせたり、超短篇のビフォアシアターで5分押し対策したり、ここの公演は観客を心地よく過ごさせる趣向に満ち溢れています。
2
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】
壱劇屋
大阪劇団の雄、壱劇屋がミソゲキ2015をプロローグに、名古屋に侵攻した第1弾!
爆音と光と人間の躍動が洪水の様に溢れる舞台で、
異空間に紛れ込んだと思わせる構成と巧みなロープワーク!
心を鷲掴みにされました。
3
小説家の檻
廃墟文藝部
名古屋演劇界 ゆび折りの奇人・後藤章大氏が、得意の「人の内なる欲望との対峙系のお話」に、最近の短編で廃墟文藝部定番となってきた「口当たりの良い女の子系のお話」をバランスよくミックス。
彼の表裏明暗を注ぎ込んだ集大成にSF短編的な切り口の設定が良いインパクト。
なお、廃墟文藝部は作演、役者だけでなく、音楽、ダンス、美術、漫画等の異能が集っていて、芝居以外の多様な楽しみも特徴です。
4
『今日(こんにち)の判定』、『ソコナイ図』
dracom
このうちの「ソコナイ図」に特に強い印象を受けました。餓死の過程を描く異色作。
当人達による "自分の死の客観視" の描き方、境界の曖昧な死の状況表現に費やす "時間の使い方" に驚きを隠せなかった。
臨終に立ち会うかの様な途方もないリアルタイム感・臨場感。
5
義経千本桜—渡海屋・大物浦—
木ノ下歌舞伎
一つのシーン、セリフを様々な切り口で描き、語り、伝える。ある時は現代の若者の…しかも敢えてチャラい語り口で軽く分かりやすく、ある時は歌舞伎に忠実に即して威厳を漂わせる。
「媒体を身近なものに差し替えることによる理解と共感の促進」が本作の演出全般に言える。
6
虚仮威
柿喰う客
見た目の派手さとスタイリッシュさに目を奪われがちな「柿喰う客」の舞台ですが、
どんでん返し的なシナリオと、そうと感じさせずに張られた伏線、その連鎖・回収により溢れ出る物語の奥行きが見事で、柿に対する認識を改めました。
7
お家族
大名
大阪演劇人数名が、転居をキッカケに名古屋で集って活躍中の「大名」
演出家主体の劇団で、公演の都度、他地域の脚本家に台本を委嘱するのが特徴で、名古屋若手でも得難い存在。
本作は、色々気持ち悪さが纏わりつくんだけど、巧妙な構図と展開で観客を引き込む。
安部公房の『友達』を下敷きにしながら、今現在の「自己と社会(コミュニティ)との関わり」に対する懐疑と不満が無駄なく密に散りばめられている。一般には前向きと捉えられる意識にすら刃が向けられるのが印象的。
8
沈澱タイ
room16
リクリエーションだが、短期間のうちに名古屋で2度公演し、日本劇作家協会 東海支部の2016年 俳優A賞でも本作から6名ものキャストがノミネートされて、演技の質の高さをみせつけている。
クリエーター主観と自負に強く彩られる展開で、観る側としては色々な感情が綯い交ぜになる、ある意味恐ろしいとも言える芝居。
9
フカフカがーる
劇団「放電家族」
私は初見ですが、リクリエーションで3度目の舞台らしい。
不条理感の強い構成で作品イメージのピースをばら撒いて、単体ではほぼ解釈不能だが、ひたすら丹念に下地を作り続けて、後半一転、メインモチーフに紐づけて伏線回収。
結果、心に染みるラストが演出されるが、作演・天野氏にまんまと騙されている気がしてしまうほどの手際の良さ(笑)
10
虹色のリリー
演劇ニッケル
年末に名古屋ミソゲキにも登場し、岐阜から徐々に活動を拡げる意識が出てきたかに見える、演劇ニッケル。
断片的にばら撒かれ繰り返される言葉のピース達。言葉遊びとしてだけでも、かなり面白い秀でた表現が多々出てくる。
話の核心は、どの言葉に触発され、観客が何を結び付けるかで大きく変わるであろう、ダイバーシティの申し子の様な作品。